「ハドソン川の奇跡」のネタバレあらすじ結末

ヒューマンドラマ

ハドソン川の奇跡の紹介:2016年9月24日公開のアメリカ映画。制御不能になった機体をハドソン川に不時着させ、乗客乗員全員を救ったサレンバーガー機長の実話を、クリント・イーストウッド監督&トム・ハンクス主演で映画化したヒューマンドラマ。パイロットとしての長年の経験から、不時着という手段で乗客を救いながらも、周囲から疑いの目で見られるサレンバーガーの苦悩を描く。

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予告動画

ハドソン川の奇跡の主な出演者

チェスリー・"サリー"・サレンバーガー(トム・ハンクス)、ジェフ・スカイルズ(アーロン・エッカート)、ローリー・サレンバーガー(ローラ・リニー)、チャールズ・ポーター(マイク・オマリー)、ベン・エドワーズ(ジェイミー・シェリダン)、エリザベス・デイヴィス(アンナ・ガン)、マイク・クリアリー(ホルト・マッキャラニー)、ケイティ・クーリック(ケイティ・クーリック)、クック大尉(ジェフ・コーバー)、ラリー・ルーニー(クリス・バウアー)、シーラ・デイル(ジェーン・ガバート)、ドナ・デント(アン・キューザック)、ドリーン・ウェルシュ(モリー・ヘイガン)

ハドソン川の奇跡のネタバレあらすじ

簡単なあらすじ

①サリー機長の乗る飛行機が離陸直後バードストライクに遭遇、両エンジンが停止した。墜落を免れないと判断したサリーはハドソン川へ着水させ、全員生還する。ところが「もっとうまいやり方があったのではないか」と当初から国家運輸安全委員会(NTSB)に指摘される。 ②公聴会の日、シミュレートすると空港に戻った場合には墜落し、サリー機長の判断が正しいものだったと証明された。

【起】- ハドソン川の奇跡のあらすじ1

(注:この映画は中盤になるまで事故の詳細が明らかにされません。それまでずっと聴取と取材などが展開されるのみです。映画上での演出です。本当は順番を並べ替えると効果的であったり、分かりやすかったりしますが、このあらすじでは「触れられた順番」を重視し、その順番で記載します。また映画で触れられなかったことについては基本的には記述せず、括弧書きは正式名称や、説明した方が分かりやすいもののみに留めます。ご了承くださいませ)
(ワーナーブラザーズの配給会社のロゴの最中、ノイズと共に「メーデー、メーデー、メーデー。プルアップ(機首を上げろ)」の無線が入る)
…アメリカ、ニューヨーク州ニューヨーク。
ラガーディア空港を離陸直後の飛行機の操縦席に乗る、真っ白い髪の初老男性・サリーことチェスリー・サレンバーガー機長は、高度不足で飛行機がニューヨークのビル街のど真ん中に墜落する夢を見て、飛び起きました。夢だと知った後も、生々しい夢にしばらく放心状態です。
朝、ジョギングしていたサリーは、車道を横断しようとしてタクシーにクラクションを鳴らされました。タクシーが去った後に車道を横断し、ホテルの部屋に戻るとシャワーを浴びます。
こんな夢を見るのは、サリーが操縦した飛行機がとんでもない事故に遭遇したからでした。数日が経過した現在でも、世間では連日そのニュースでもちきりです。どの局も飛行機事故について報道していました。
2009年1月15日。サリーが操縦する飛行機は、離陸直後に飛行困難となりました。サリーはハドソン川に不時着水させて、難を逃れました。数名のけが人だけで済み、1人の死者も出さずに155名全員が生還したこの事故を、テレビ局は「奇跡的な運に恵まれた」として賞賛しています。
しかし、英雄であるはずのサリー機長は複雑でした。というのも、NSTB(国家運輸安全委員会)の聴取が控えているからです。
NSTBの聴取はかなり厳しいものです。保険金の支払い金が関係するために、事故の原因調査は微に入り細に穿って行なわれるのです。
サリー機長とジェフ副機長は揃って呼ばれ、墜落事故について聞かれました。サリーは「墜落ではない、不時着水だ」と訂正します。
人的要因はなかったか、旋回して最寄りの空港に戻って着陸する方法は取れなかったか、そう質問されたサリーは「40年以上、何千回もの経験によって、高度不足で旋回もできなかった。ハドソン川だけが長さと幅があり、着水に足ると思った」と答えます。
今回重要なのは「片方のエンジンが停止するエラーはあっても、両方のエンジンが停止するトラブルの前例がない」ということです。そう、サリーの操縦した飛行機は、離陸直後にバードストライク(鳥の群れに遭遇してエンジンの中に入りこみ、それが原因で推力が得られなくなる)で両方のエンジンが停止してしまったのでした。そしてこれはジェット機で初の例だったのです。
サリー機長は低血糖の問題はなかったか、最後の飲酒はいつか(9日前)、麻薬はやったか(経験なし)、家庭に問題を抱えていなかったかと、矢継ぎ早に質問されました。家庭のことを聞かれたサリー機長は「皆さんと同じ程度には良好です」と皮肉をこめて答えますが、妻子との仲は本当は良好です。
聞き取りは時間をかけて行なわれ、帰りの車中でジェフ副機長が「我々のミスをなぜ探そうとするのか」とぼやくほどでした。
それに対しサリー機長は「保険会社などの問題で厳しいんだよ」と言いながら、妻・ローリーへ電話をかけます。一度は繋がらずに切った電話ですが、二度めには繋がりました。事故直後にかけて以来の通話です。
サリー機長は事件後ずっとホテル住まいですが、自宅には大勢のマスコミ勢が押し寄せ、娘2人は呆然としているそうです。「しばらく帰れない」と告げたサリーに、ローリーは「あなたは全員を救ったわ」と声をかけました。サリーは「起きたら1月14日(事件の前の日)に戻っていてほしい」と言って電話を切ります。
NSTBでなぜ最寄りの空港に着陸しなかったのかと質問されたのが、精神的に堪えたのでしょう。
「命を危険にさらした」と指摘し、「機長は英雄? それともペテン師?」と女性キャスターに詰め寄られる夢を、またサリーは見ました。
深夜に目覚めたサリー機長は、寝付けなくてジェフ副機長に電話してみます。ジェフ副機長も眠れずに起きていました。2人はロビーに待ち合わせて、外へ出かけます。
次のNSTBの後で〝レターマン〟という有名な報道番組(デイヴィッド・レターマンという全米屈指のトップ・コメディアンが司会を務める番組)に出演が決まったと、ジェフ副機長は言いました。
それにしても、わずか208秒のことでとやかく言われるとは…とサリーは頭を抱えます。
ケイティ・クーリックという女性アナウンサーとのインタビュー対談で「英雄と呼ばれる感想は?」と聞かれたサリーは「英雄ではない。ただやるべきことをやっただけ」と答え、42年間操縦席に座り続けた者として、当然のことをしたまでだと表現しました。
休憩の間、サリーは若い頃のことを思い出します。まだプロペラ機だった頃、サリーの教官は「私は農薬散布の仕事があるから、その間派1時間6ドルで飛行機を貸してやる。とにかく練習しろ。操縦し続けることが大事だ」と言っていました。教官の教えには、ほかにも「いつも笑顔でいろ」というのもあります。
取材で疲れて窓の外に目をやると、都会のビルにジャンボジェット機が落ちるイメージが湧いてきて、サリーは何度もPTSD(トラウマ)に悩まされます。
何度目かのNSTBの聴取で、「ACARS(航空無線データ通信)では、左エンジンがわずかだか動いていた」という情報がもたらされ、サリーは愕然としました。そんなわけはない、何度も確認したと主張しますが、聴取者はデータ結果を重視します。
聴取の際にいちいち「墜落」と言われ、「着水だ」「不時着」と訂正せねばならないことにも疲れます。こんなうえにさらに「ラガーディア空港に戻ればよかった」「そうでなければ、テターボロ空港へ行けばよかった」とNSTBで何度も何度も言われます。 この映画を無料で観る

【承】- ハドソン川の奇跡のあらすじ2

高度が足りなかったと、その都度説明すると「ACASではエンジンが微速で作動していた」と言われ、では証拠を見せろというと「着水時の過剰な衝撃で証拠が消えた。引き上げには時間がかかる」と言われる始末です。
コンピューターのシミュレーションでは、ラガーディア空港に着陸できた、20回も成功したと聞かされると、サリーとジェフは自分たちがとてつもない悪事をした気分になりました。
それにしても今回もたらされた「左エンジンが動いていた」という情報は、サリーにとってはショッキングな事実でした。もしそうならば何か別の行動ができたかもしれないと自信が揺らぎます。それを汲んだジェフ副機長は必死で慰めますが、とにかく全てが分からないことには、どうしようもありませんでした。
事故以後、ずっと聴取を受けているだけというのも困った事態です。給料がもらえないからです。それどころか、もし本当にエンジンが動いていてサリーの判断が誤っていた場合には、退職金も年金も貰えないまま失職するかもしれません。
サリーたちはレターマンのTV番組に出ましたが、報道番組なのでギャラはありません。レターマンの冗談めかしたインタビューにつかの間、楽しい気分を味わっただけでした。
不動産のローンを抱えた身のサリーは、妻・ローリーから「9か月経過してもまだ空き家だと(投資のための家を抱えていたらしい)、家を手放さないとならないかもしれない」と言われます。副業として安全コンサルタントの仕事を考え、ネットで宣伝を売っていたサリーですが、処分が決まらないことには操縦の仕事もできず、ホテルに部屋を借りてもらっているとはいえ、身柄を半分拘束されたような状態でした。つらい…サリーは途方に暮れます。

さてその事故当日の様子を振り返ってみましょう。
(注:この時点まで肝心の事故の詳細情報は明かされず、ひたすら聴取と取材に徹底して描かれるのです)
2009年1月15日。昼過ぎにサリーはニューヨーク市にあるラガーディア空港内の売店で、顔なじみの中年女性店員・ガーシムランと会話を交わしながら、ガーシムランお勧めのツナサンドを購入します。その日の目的地はノースカロライナ州のシャーロット空港でした(注:最終的にはワシントンのシアトルまで行くらしかったが、そこまで映画では触れられなかった)。
サリーが去った後、同じ売店を乗客が訪れました。孫へのお土産にスノードームを購入したいという車椅子の老女に、まだ孫は1歳だから理解できないのにと苦笑する娘や、赤ん坊を連れた若い母親なども映ります。彼らは次々に搭乗手続きを済ませました。
搭乗手続きが終了してからも、緊急の用事で駆け込んだ男性3人組(父子と従兄弟)が、キャンセルの席がないかと聞きます。緊急の用事とはゴルフでした(冗談で「緊急の用事」と言っている)。父は脚が悪く、遅れてやってきました。席は別れてしまいましたが、3人は乗れます。
このように搭乗手続きが済んでからも離陸まで時間がかかるので、ラガーディア空港で一度くらいは定刻通りに離陸してみたいものだと、CA(キャビン・アテンダント)の女性の1人は軽口をたたきました。定刻通りにしたければJFK空港から離陸したらいいのだと、すかさず別の女性CAが言います。
午後3時半過ぎ、通常の離陸手続きを踏んだサリーとジェフは、互いに確認しながら離陸をしました。ポジティブ・レート(昇降の確認)、ギア・アップ(ギアのシフトを上げる)…ハドソン川を左下に目にしたサリーは、「ハドソンは上から見るとすばらしい」と洩らします。決してよそ見をしていたわけではありません。
その時でした。操縦席の下から上に流れるように、カナダガンの群れが大量にぶつかってきたのです。コクピットの窓にも当たりますし、一部の鳥は不幸なことにサリーの操縦するUSエアウェイズ1549便の両方のエンジンにぶつかりました。
揺れを感じた客席では「乱気流なんでしょ」ということばが出ます。
ところが外から見た映像では、まずエンジンの片側が煙を出しながら止まり、続いてもう片方も止まります。
サリー機長はイグニション・スタート(エンジンをかけなおす)しました。一旦エンジンを切るために、機内は真っ暗になります。暗くなった機内で乗客は不安になりました。
CA(キャビン・アテンダント)は「鳥と衝突したからです」と説明します。ちなみに、酸素マスクが落ちてくるなんてことはありません。離陸直後の出来事なので、そんなレベルの高度まで達していない時点です。
管制塔では、若い男性・パトリックが応対しました。「メーデー」と3回繰り返した後、両エンジンの推力が喪失したので、ラガーディア空港に引き返すと、最初サリーはそのように報告します。
しかし高度が足りませんでした。機転を利かせたサリーは眼下に広がるハドソン川を見ながら、管制塔に「無理だ、ハドソンへ降りる」と伝えます。
パトリックはその時、振り返って上司に判断を仰いでいました。片翼の推力が喪失した場合のマニュアルは存在しますが、両翼の場合のマニュアルはないのです。上司に告げて「右へ、テターボロ空港へ」と指示を出した頃には、かなり時間が経過していました。その直後、エアウェイズ1549便はレーダーから消失します。高度が低くなりすぎて、映らなくなったのです。
「川はやめてくれ!」とパトリックは思ったのですが、GW橋(ジョージ・ワシントン・ブリッジ)にいるヘリに連絡を取り、エアウェイズ1549便の様子を見てもらいます。機はハドソン上空を低空飛行していると、ヘリが視認しました。
「ニューアークまでわずか7マイル(約11.2km)」と必死で伝えるのですが、応答はありません。なんとか空港に着陸させたいパトリックですが、願いは叶いません。着水だと生存不可能かもしれないという最悪の事態が頭をよぎります…。

【転】- ハドソン川の奇跡のあらすじ3

回想の途中で、サリーの朝の日課・ジョギングの風景が挿入されました。事故以降も普段の日課を守っていなければ、サリーはもう冷静でいられないのです。
走りながら、爆撃訓練の思い出がサリーの頭をよぎります。2人乗りのファントム戦闘機がエンジントラブルを起こした時も、サリーはろくに減速できないまま、それでも直線侵入で着陸させました。着陸と同時に後方に減速させるためのパラシュートが開きます。
通りがかりのバーに入ったサリーは、店主に機長の名をつけたドリンクを作ったと言われました。客も店主も好意的ですが、絶えずトラウマに脅かされ、処分が決まっておらず、先行き不安なサリーは複雑な気持ちで、金を払ってバーを出ました。
…さて、事故当日の続きです。
観光船TJ号は21名を乗せて出航していました。川に着水しそうなエアウェイズ1549便を見つけて、NY市警航空隊に連絡します。
機内ではCAたちが「頭を下げて、姿勢を低く、身構えて」ということばを何度も何度も繰り返していました。機は急速度で川に降ります。水が少しずつ入ってきました。
この日は水温2度、外気温は氷点下です。
着水と同時にサリー機長はすぐコクピットを出て客席に移動し、救命胴衣の着用と緊急脱出の指示を皆におこないます。「外は寒い。可能な限り上着を羽織って」とサリー機長が呼びかけました。
CAは緊急脱出口を開け、脱出シューターを作動させました。シューターは空気で膨らむので、水の上で浮きます。
ハドソン川を通行する全てのフェリーへ、「着水している航空機に注意しろ」という伝令が走ります。
先に外に出た人は後から出てくる人の邪魔にならないよう、翼の上へ移動しました。
1人の男性が慌てふためいて水に飛び込み、皆に引き揚げられます。
「燃料漏れだわ」と早とちりした太った女性が水に落ちました。この女性は後に船に見つかり、上空からのヘリの救難隊に助けられます。
NY沿岸警備隊も救助の要請を受けて出動し、ヘリも出ました。
近くにいた水上バスや観覧船、水上タクシーが駆け付けます。水上バスは赤いビート板の浮きを放り、船を停止させると、壁面をのぼらせてひとりずつ救助していきます。
両側の翼に船が到着して、順番に救出作業が進みます。そのため大きな混乱も起きませんでした。
但し遅れて搭乗手続きを取ったために、座席が別れた3人組の父・ロブと息子・ジェフはすぐには安否が分からず、父・ロブ側には甥っ子のジミーがついています。たぶん別の船に乗ったよと甥っ子のジミーが言い、すぐ後に電話で連絡が取れ、息子のジェフは「ニュージャージー側にいるよ」と父に告げました。
サリー機長は何度も機内を確認し、本当に人が残っていないか念入りに調査します。そしてジェフ副機長やCAに催促されてようやく、コクピット室に戻って資料を手にし、機長のジャケットを羽織ると誰よりも最後に外に出て、脱出シューターのフックを外しました。フックを外すと、シューターは浮きいかだのようになります。
助けてもらうのも最後にしてもらったサリー機長は、着水した飛行機を見ながら妻・ローリーへ電話しました。家でテレビもつけていないローリーは事故のことを知らず、ぴんとこないのですが「事故が起きたが、私は無事だ。テレビをつけろ。今日は帰れない。また連絡する」と言って電話を切ります。
電話を受けたローリーは、通話の後でテレビをつけました。そしてハドソン川に飛行機が浮いているのを見て、仰天します。
NY市消防局も出動し、救急車が順番に救助された人たちを手分けして運びました。車椅子の初老女性も運ばれます。
市長と警察の本部長が会いたいと言っているという伝令がサリー機長に回ってきますが、サリーが気にしているのは乗客全員の生存安否でした。それどころではないと答えます。
管制塔にいるパトリックは、エアウェイズ1549便の乗客は全員死亡していると思いこみ、別室で頭を抱えて落胆していました。そこへ仲間が「テレビを見てないのか、無事に着水した」と知らせます。パトリックは急いでテレビを見に部屋を出て行きました。
サリー機長も病院に運ばれて、検診を受けます。平常時より血圧が高めでしたが、これは致し方がないことです。
そこへ知らせが入りました。生存者は155人で、つまりは全員生きている(乗客150人・客室乗務員5人)と知ったサリー機長は、やっと安堵の息を洩らしました。
早くもマスコミは全員生還の知らせを受けて、ハドソン川の奇跡と報道しています。
しかしサリー機長とジェフ副機長にとっては「全員生還だからよかったね」と結果オーライなわけではありません。よくも悪くもマスコミをにぎわせ、警官隊と救助隊、多くの人手を煩わせたわけです(ここが要点となる)。
マスコミ対策で、サリー機長とジェフ副機長の2人はしばらくの間、ホテルに匿われることになりました。ホテルの客室案内係の女性・エヴリンは、感激してサリー機長にハグします。
助っ人の男性・ラリーがKマートで着替えの服を買い物して現れました。同僚の男性・マイクも明日やってくると言います。「なぜまだ機長の服のままなんだ」とラリーが指摘しました。事故から何時間も経過した深夜ですが、それだけサリー機長の気が張っている、緊張していることの現れです。
〝遅れても災難よりマシ〟…つねづねサリーはそう思っていたのですが、今回のトラブルはどうしても避けようがありませんでした。

さて、話はまた現在、事故から数日が経過した段階に戻ります。

【結】- ハドソン川の奇跡のあらすじ4

公聴会が3日後に待ちかまえる夜、ふとサリーは気づきました。「タイミング…」。
その後、あちこちのシミュレーションで、同じ想定によって「空港に戻ることは成功だった」という報告を受けて、自分の判断が誤っていたのかと打ちのめされていたサリーでしたが、まさしく問題になっている〝人的要因〟に大事なことがひとつ抜けていることに気づいたのです。
サリーは同僚のラリーに電話をし、公聴会の席で、リアルタイムでシミュレーションしてもらえないかと頼みます。ラリーは奔走し、異例ではありますが、衛星中継でシミュレーションを見せてもらうことが可能になりました。

運輸局連邦航空局で公聴会が開かれます。
議長を務めたのは、NSTBでさんざんサリーを聴取した、スキンヘッドの男性チャールズ・ポーターでした。他に、中年女性のエリザベス・デイヴィス、銀髪のしぶい初老男性ジェイミー・シェリダンも顔を揃えています。彼らが聴取した調査員です。
サリー機長とジェフ副機長の前で、実際に「事故が起きた時から空港の滑走路に引き返すプラン」のシミュレーションがなされました。
まずはサリー機長が離陸したラガーディア空港へ戻るパターン。続いて、GW橋から近いテターボロ空港へ行くパターン。どちらも成功します。
それを見せた後、チャールズ議長は「滑走路に着陸していたら、大勢の手を煩わせなくて済む」と指摘しました。なにせ救助の費用に保険金がおりるかおりないかがかかっていますから、NSTB側の追及は機長らスタッフにとっては厳しい指摘をすることになります。
サリー機長は発言しました。「人的要素が加味されていない」と。「初めて事故に遭遇した。APU(補助動力装置)もない状態で、航空史に例のないものを、日常の出来事として我々は受け止めることができますか?」
シミュレーションはいずれも「鳥がぶつかりました。はい、ラガーディア空港に引き返します」というふうに、シミュレーターが「既に鳥がぶつかることが分かっており、その後、引き返す空港まで決まっている前提で」操作しているのでした。そこには、初めて起きた事故に対して「考えて判断を下すまでの」時間は考慮されていません。すでに空港へ帰ることがあらかじめ決定されているわけです。
言われるまでNSTB側の人間は、誰もそれを視野に入れていませんでした。ジェフ副機長も横で「ビデオゲームじゃないんだぞ」と言います。そして事実、事故の時にも管制官のパトリックは上司に打診するなど、時間がかかっていました。
慌てた一同の中で、うっかり本音が漏れました。実はテターボロ空港に離陸するパターンのシミュレーションは、17回練習をしたうえで成功させていたのです。
調査委員会でやりとりがあった後「では、考慮の時間として35秒を追加する」と決断が下されました。ジェフ副機長はそれでも足りないと主張しますが、サリー機長が宥めて「35秒置いた後、引き返す」設定でシミュレーションをし直します。
ラガーディア空港バージョンは、滑走路の手前の海に突き出た桟橋部分で機は墜落し、盛大に桟橋に突っ込みました。
テターボロ空港バージョンはもっと悲惨です。シミュレーションする操縦士が既に小さく「行けるかどうか…」「駄目だー」などと小さく呟いています。こっちの空港バージョンは、都会のビル群に突っ込んでいました。
この現実に、公聴会に出席していたメンバー全員が(議長はもちろんのこと、参加して見ている人たちも)、押し黙るしかありませんでした。
続いてエリザベス調査員が、USエアウェイズ1549便の事故当時のフライトレコーダーを再生します。
音声だけですが、改めて事故当時の状況が再現されます。鳥のぶつかる音、2基ともエンジンの回転が低下したこと、イグニッション・スタート(エンジンのかけ直し)、APU(補助動力装置)作動、作動したので操縦を交代してリトライしてみて、それでも両エンジンが始動しないことを確認して、アイドリング(エンジンだけかけた状態。これでスピードを緩和してみた)して無理だと判断、ハドソン川に降りる決断をし、救難信号を確認します。
周囲の確認を行なった後、船舶がいないのを確認しました。GW橋上空にさしかかります。
再点火ができないまま30秒が経過したので、サリー機長は機内へのアナウンスで「こちら機長、衝撃に備えて」と伝え、ハドソン川に着水しました。フラップを出せとジェフ副機長に指示し、出力なしという答えを得て、着水前に、できるかぎりの措置と確認を行なっていました…。

聞き終わった後、当時のことが蘇ったサリー機長は、しばしの休憩を願います。
会場にいた誰もが、声を出せずにいました。休憩は受け入れられます。
ジェフ副機長と一緒にロビーに出たサリー機長は、「…どう思った?」とジェフ副機長に聞きました。ジェフ副機長は「とても誇らしい、あの危険な状況で」と答え、サリー機長は「チームプレーだ」と言います。

公聴会に戻ると、発見された左のエンジンの報告書があがっていました。着水当時、左のエンジンは微速ながら動いていたという報告がACARS(航空無線データ通信)からあがっていた、あのエンジンです。
「壊滅的な欠損がみられ、推力はゼロだった」という結果でした。機械のミスで、サリー機長らの言い分のほうが正しかったのです。
エリザベス調査員は『成功の要因』=『Xの存在』と評しました。Xとは、サリー機長のことです。
サリー機長はやんわりと否定しました。皆が力を尽くし、全員が生還したのだから、これは皆のおかげだと言います。
サリー機長とジェフ副機長は責任を問われることはなく、むしろ表彰ものだと実証されました。
ジェフ副機長が質問されました。「もし同じ状況に置かれたら、どうしますか」という問いに、ジェフ副機長は「やるさ。ただしやるなら7月に」と答えて笑いを取ります(注:事故は厳寒期だったので生命の危機あり。7月だと夏なので、着水してもまだ凍死や溺死のおそれが少ないという意味)。

『2009年1月15日、1200人以上の救助隊員、フェリー7隻が
1549便 搭乗者を救った。
ニューヨークの良心が集結し、
24分で全員を救助した』

(エンドロール)本物のサリー機長とその奥さんが出演。乗客も。現在でもなお、機長のところには毎年感謝の手紙が届くそうです。

みんなの感想

ライターの感想

この演出が効果的。
スタート地点は事故から何日か経過して。繰り返されるフラッシュバック(それも、最悪の想定の)。しつこい聴取。
何が起きたのかというのが判らないまま話が進み、ああだこうだと言われて、観客が「じゃあ、その事故当時の様子を見せてよ」と思い始めた時、つまり映画の中盤に、事故当時の回想シーンが流れる。
早く見せてよ~と思っていながらも、いざ見せられると衝撃的! 操縦席にばちばちと当たる鳥の群れ。着水シーンも操縦席から見せる。臨場感あり。ありすぎるほど。こんな事故に遭遇したくないよね…。
トム・ハンクスが終始「おさえた演技」を見せている。
そして悪役になっちゃってるNTSBの側の気持ちも、事故の再現が中盤に持ってきたためによく判るのだ。
すんごい数の救助隊が出動している。そのためにひとりの命も損なわれることなく済んだわけだが、大騒動だというのは理解できるので、追及が厳しいのも頷けてしまうのだ。
とにかく映像が迫力満点。すばらしい。

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