「人生タクシー」のネタバレあらすじ結末

人生タクシーの紹介:テヘランのタクシー乗客を通して語られるイラン社会の核心をついた社会派ドラマ。ドキュメンタリータッチで描くユーモアと愛に溢れた作品。
イランの名匠ジャファル・パナヒ監督が政府への反体制的な活動を理由に映画監督禁止令を受けながらも、自身がタクシー運転手に扮しダッシュボードに置いたカメラで撮影した意欲作。2015年ベルリン国際映画祭金熊賞・国際映画批評家連盟賞をW受賞したほか、多数の映画賞を獲得した。

予告動画

人生タクシーの主な出演者

ジャファル・パナヒ(ジャファル・パナヒ)

人生タクシーのネタバレあらすじ

【起】- 人生タクシーのあらすじ1

車や人の往来で賑わうテヘランの街。信号が青に変わり、停車していた一台の黄色いタクシーが走り出しました。
タクシーはまず男を1人乗せた後、もう1人別の女も乗車してきます。(イランの個人タクシーは乗合の場合が多いそうです。)
男は乗るなりダッシュボードに設置してあるカメラに気付いたので、運転手は防犯用だと答えました。それを聞いた男は、いとこが車のタイヤを盗まれた事件について語り出し、泥棒は見せしめに絞首刑にするべきだと主張します。すると後部座席に乗っていた女が反論しました。イランは中国の次に死刑が多く、追い詰められて犯罪が起きるのだという女と男は激しく言い争います。互いに意見は譲らず男は女に職業を尋ね、「教師」と回答されると鼻で笑いました。現実を知らないと言うのです。一方男の仕事はフリーランスと答えていましたが、降車する際に路上強盗だと激白しました。貧乏人のタイヤを盗むような奴らとは違うと自負する男に、女は呆れて言葉を失います。その後女も車を降りました。

タクシーは次に体の小さな男の乗客を乗せると、彼は嬉しそうに貸切を申し出ます。男は運転手に「パナヒさんですよね?」と声をかけました。男の言う通りタクシーを運転しているのはイランの映画監督ジャファル・パナヒです。
映画に詳しい男は、車内のカメラを見て撮影しているのだと察知しニヤケました。先程の男の台詞が他の映画のシーンと似ていたと言うのです。オミドと名乗る男は、僕をお忘れですか?と親しげです。彼は海賊版のビデオ屋で、以前パナヒの自宅にも届けたことがあったのでした。その時借りた作品名を言うと、パナヒも彼のことを思い出しました。

タクシーは貸切にしていましたが、事故に遭い血だらけの夫とその妻に遭遇し、急遽病院へ向かうことになりました。もうダメだと嘆く夫は、何も相続できずホームレスになってしまう妻に遺言を遺したいと言い出します。“家や他の所有物も妻に相続するので、兄弟たちは口出しせず遺言に従うこと”という夫の発言をパナヒの携帯でオミドが撮影しました。妻は始終泣き喚いています。

【承】- 人生タクシーのあらすじ2

病院へ着き担架で運ばれる夫を妻も追いかけました。しかし彼女はすぐに戻って来て、映像を下さいとパナヒに泣きながら懇願します。今は無理だと言ってパナヒは名刺を彼女に渡し、タクシーを発車させました。ところが早々に彼女から電話が来ると、オミドは「全部映画なんでしょう」とニヤリとしました。

タクシーは住宅街へ到着し、オミドは顧客の立派な家へ入って行きました。パナヒがオミドを待っている間、再び先程の妻から「主人はまだ生きているけど、市内にいるうちに念のために映像を引き取りたい」と連絡が来ます。この後も約束があったパナヒは、映像をコピーしたらすぐに送ると約束しました。
オミドは顧客の大学生をタクシーに連れてくると、パナヒも“仲間”だと言って鞄に詰まった海賊版のDVDを大学生に選ばせます。悩む大学生が商業映画はいらないと言うと、オミドはキム・ギドクや黒澤映画などを勧めました。悩んだ大学生はパナヒに選んでもらうと「あなたとオミドが組んでいるとは…」と驚いていました。パナヒは苦笑です…。監督志望だという大学生が題材を探しているとパナヒに相談するので「映画は既に撮られ本は書かれている。題材は自分で見つけるんだ」とアドバイスしました。
大学生と別れタクシーを発車させ、パナヒが「君と私は組んでるそうだね」と厭味を言うと、オミドはしまった!という表情を浮かべました。

途中で金魚鉢を持った2人の老女が、アリの泉水(テヘラン近郊の遺跡)まで急ぎで行きたいと懇願してきます。オミドの向かう場所とは反対方向ですが、老女の勢いに負け乗せることにしました。
後部座席でおしゃべりな老女らが何やら話す中、オミドは「さっきはつい口走ってしまった」と謝りつつも、パナヒがいたお陰でいつもより客が多く買ったと話し、2人で活動すれば一儲けできると誘ってきます。こうでもしないと外国映画が見られないのだから、これも文化活動だと付け加えました。その後オミドが降車し代金を貰わなかったパナヒが彼に言った言葉は「文化活動に充ててくれ」でした。

【転】- 人生タクシーのあらすじ3

老女らは時計を合わせろ、正午までに着くかと口うるさく言ってきます。すると運転中に急ブレーキが掛かったため鉢が割れて、金魚が飛び出ます。パナヒは慌ててトランクにビニール袋と水を取りに行きますが、老女らは彼が席を外したのをいいことに悪態をつきました。金魚は無事でしたが老女らは、金魚2匹を連れてきた日が私たちの5年違いの誕生日で、この金魚は自分たちの代わりだから、正午ぴったりに返さないと死ぬのだとパナヒに訴えました。しかしパナヒは姪・ハナを迎えに行かなければならず、老女らに他のタクシーに移って貰いました。

約束から1時間も遅れてハナの待つ小学校へ着くと、気の強い彼女はぷりぷりと怒り、捲し立てました。更に彼女は「賢く教養のあるレディに会ったらまずはお洒落なお店でフラッペよ」と生意気な発言です。
学校の課題で映画を撮ることになったハナは、イランの映画のルールに悩んでいました。最優秀賞には賞金が出て文化祭に両親も招待されるというのですが、イランでは上映許可が出ない内容が多いのです。

タクシーは久々に会うパナヒの幼馴染との待ち合わせ場所に到着します。金持ちでスーツ姿の友人はパナヒに見てほしい動画があるとパッドを渡すと、フラッペをご馳走するためにハナとカフェへ行きました。友人はハナに何故かカメラは置いていくよう指示します。車中で待つパナヒが見た動画は、友人が強盗に襲撃される様子が映った防犯カメラの映像でした。
戻って来た友人は、怪我は治ったけど犯人の顔に見覚えがあったうえに、金に困っていると知っていたので訴えられなかったと話しました。強盗に死刑判決が下されたとの報道を見たことも一因だというのです。友人は話せば気が楽になると思い、パナヒを呼び出したのでした。そこへ頼んだ商品をカフェの店員が持ってきます。その男こそ友人を襲った超本人でした。力になれずすまないとパナヒは言って、友人と別れます。男の顔を見逃したパナヒは、戻って来たハナに店員について尋ねると、親切な人で“普通の顔”と答えました。

【結】- 人生タクシーのあらすじ4

再びタクシーを走らせると、ハナは学校で習った上映可能な映画のルールを読み上げます。“女性はスカーフを被り、男女は触れ合わない、暴力は避ける、善人はネクタイを付けずイラン名を使わない、政治や経済に触れない“等々…。

絶対にドアも窓も開けるなとパナヒはハナにきつく忠告し、独り車外へ出ました。ハナは街の風景を撮影していると、ドレス姿の新郎新婦を見かけます。新郎がお札を落とし気付かずにいると、近くにいた少年が拾いました。タクシーの傍のゴミ捨て場を漁る少年に、ハナは窓を開けてお札を拾ったことを指摘し、上映できない映画になったと訴えます。お札を返せばヒーローだと促すハナに少年は、それよりも父に金を渡したいと言い返します。ハナにしつこく責められるので少年はお札が落ちていた場所に戻しますが、結局新郎新婦は車で去って行きました。

渋滞気味の通りで、パナヒの知人であるバラの花束を持った女性弁護士に偶然遭遇し、彼女を乗せました。弁護士は拘禁されている知人女性に会いに行く途中でした。知人はバレーの試合に出掛けて逮捕されたのです。(イランでは女性の男子バレー観戦が禁止されています。)
そんな弁護士自身も、仲間を守るべき弁護士会の決定で3年の停職処分を受けていますが屈することもなく、映画監督協会に監督禁止令を出されたパナヒと同じだと笑って見せました。弁護士もパナヒも服役経験があり、釈放されても外は大きな“独房”と彼女は嘆きます。撮影していると理解していた彼女は俗悪なリアリズムと言われてしまう“私の言葉はカットして”と言い残し降車しました。彼女の言葉を受けてハナは「先生は真実を撮れと言っておいて、真実を撮るなと怒る…」と困り顔です。

車内に年配女性向けの財布が落ちていたため、老女らのものだろうと睨みアリの泉に向かいます。パナヒとハナが入口に車を停め老女らのもとへ行った1分程の間に、2人組の強盗がタクシーの窓を割って中を物色しました。強盗はカメラのメモリーカードを抜こうとしますが、パナヒらが戻って来たのを見て逃げて行きました。

政府から上映許可が下りなかった今作が上映できたのは、支援者のお陰だというクレジットでこの作品は締めくくられます。

みんなの感想

ライターの感想

著名人コメントに「この作品は映画へのラブレターだ」とありますが、まさにその言葉通りだと感じます。パナヒ監督の映画を愛する気持ちが作品中にあふれていて心が温まると共に、一介の映画ファンでしかない自分でさえ、映画を好きなことがとても誇らしく思えました。

車中で撮影した映像で作品を完成させるとは無謀に感じられますが、パナヒ監督の手にかかればこれが斬新な切り口の名作になってしまうわけです。こんな映画観たことない!そんな作品でした。
82分という短い作品の中で、イランの悪しき政治・風習を随分と知ることができた気がします。(実際にはもっとたくさんあると思いますが…。)
最初に登場した男が強盗、最後も強盗で終わる…。なんとも皮肉ですが、犯罪の蔓延も事実として描きたかったのではないでしょうか。

監督禁止令をくぐり抜けて生まれた今作は、怪我の功名というよりもやはり映画への愛だと心から感じました。
  • アート系単館マニアさんの感想

    新宿で鑑賞。
    撮影手法に驚愕。
    ハンディでのシーンは手ブレが気になるが、政府に隠れて製作したのだから仕方あるまい。
    毎度のことながらパナヒの政府批判は颯爽として気持ちがいい。

    しかし、こちらのサイトにこんな通な作品が掲載されていることにも驚かされている。今後も期待。

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