「夢売るふたり」のネタバレあらすじ結末

夢売るふたりの紹介:2012年公開の日本映画。『ディア・ドクター』の西川美和監督が、火事で店を失った夫婦が再出発のために結婚サギを繰り返す姿を描くラブストーリー。松たか子と阿部サダヲが夫婦役で初共演を果たし、タイプも様々な女性たちを騙していく姿が痛快。

予告動画

夢売るふたりの主な出演者

市澤里子(松たか子)、市澤貫也(阿部サダヲ)、棚橋咲月(田中麗奈)、睦島玲子(鈴木砂羽)、太田紀代(安藤玉恵)、皆川ひとみ(江原由夏)、木下滝子(木村多江)、岡山晃一郎(やべきょうすけ)、中野健一(大堀こういち)、白井(中村靖日)、日野洋太(山中崇)、松山和子(村岡希美)、園部ますみ(猫背椿)、佐伯綾芽(倉科カナ)、木下恵太(佐藤和太)、太田治郎(伊勢谷友介)、探偵(ヤン・イクチュン)、東山義徳(古舘寛治)、金山寿夫(小林勝也)、外ノ池俊作&外ノ池明浩(香川照之)、堂島哲治(笑福亭鶴瓶)

夢売るふたりのネタバレあらすじ

簡単なあらすじ

①夫婦で営む居酒屋『いちざわ』を火事で失った貫也と里子は、夫婦で結婚詐欺をすることに。里子が指南して貫也が実行役、金を得る際には借用書を書いていずれ倍にして返すつもり。 ②金を取られたことよりも騙されたことに憤った咲月が堂島探偵を雇い、貫也のところへ行く。堂島を刺した少年・恵太をかばって貫也は刑務所へ。里子は魚市場で働きながら出所を待つ。

【起】- 夢売るふたりのあらすじ1

日本、東京。
早朝の青果市場に市澤貫也(いちざわ かんや)は食材の仕入れにきていました。妻の里子と手分けして、よい野菜を仕入れます。
貫也と里子は夫婦で小さな居酒屋『いちざわ』を経営していました。夫婦ともに、九州出身です。
今日はその『いちざわ』開店5周年の記念日で、店もいつも以上に賑わっています。
里子は客の接客と配膳をし、時には酔っ払いの介抱もします。貫也は焼きもの、揚げもの、煮物などを一手に引き受けていました。
注文が相次いで焼き鳥が焦げ、その炎がメニューの短冊に燃え移り、火事が起こります。
慌てた貫也は揚げ物の鍋を落とし、火が広がってしまいました…。

…『いちざわ』は全焼し、家主さんからもうその場所は貸せないと言われます。
馴染みのオカヤン(岡山晃一郎)夫妻からは「時間あけずに始めたほうがいい」とアドバイスされますが、そのオカヤンが火事のせいで短期入院したために、貫也と里子は保険金の残りと貯金をオカヤンに支払いました。
夫婦は10年前から必死で働いて、5年前にようやく『いちざわ』を立ち上げたのです。
財産がなくなった夫婦は、互いにアルバイトに出て再び店を持とうとします。
里子はラーメン屋『旨くてご麺』のウエイトレスのアルバイトをし、貫也は大きな日本料理店の板前の仕事をすることにしました。
しかし料理人としての誇りを持つ貫也は、店で古い魚を扱っていることが気に入らず、板長と喧嘩して早々に辞めてしまいます。
パチンコをして荒れた貫也は、昔の板前仲間・日野洋太と出会い、店が焼けたと言い出せずにいました。
妻・里子の働くラーメン屋に行った貫也は、里子が前向きに働く姿を見て店の悪口を言います。
貫也は、自分の失火で店が全焼したのに責めることもなく、ひたすら前向きな里子が不憫でならないのです。自分には過ぎた妻だと思い、離婚も考えます。
働く先を探すのが面倒になった貫也は、店の焼け跡の前で缶ビールを飲んで時間を過ごすようになりました。

ある夜、貫也が駅のホームで寝ていると、隣に座った酔っ払いの女性が馴染み客の睦島玲子だと気付きました。
玲子は会社の上司・外ノ池俊作部長と、長らく不倫していました。しかし俊作が交通事故に遭い、医者をしていた弟・明浩が手切れ金を渡してきました(200万円くらい、ありそう)。
ショックを受けた玲子はしたたかに酔いつぶれ、駅のホームで吐いて、貫也の服を汚してしまいます。
服を洗うために貫也を家に招いた玲子は、『いちざわ』の火災を知っていました。玲子と貫也は互いに失ったものを埋めるように、関係を持ちます。
貫也は玲子に弱音を吐きました。妻の里子が頑張っている様子が不憫で、夫婦生活ももう潮時だと思うと言います。
玲子は貫也に、受け取った手切れ金の封筒を渡しました。もらえないと貫也が言うと「1発殴らせてくれ」と言って顔を殴り、憂さを晴らします(本当に玲子が殴りたかったのは外ノ池の関係者)。

貫也が初めて帰って来ない夜を心配した里子は、夜通し貫也を探しまわりました。追いつめられた貫也が自殺でもしないかと、不安なのです。
そこへ嬉しそうな顔をした貫也が帰宅すると、「昔の厨房仲間に会った」と下手な嘘をつきました。「その金で物件だけでも押さえて、店始めよう」と言います。
その嘘はすぐにばれます。貫也の服が自宅の洗剤と違っていたからです。
封筒の中に玲子への一筆箋もあり、手切れ金だと里子は知りました。
衝動的に札束をコンロの火で焼いた里子は、火のついた札束を貫也のいる湯船に投げ入れます。
しかしふと思いなおした里子は、玲子とのやりとりを洗いざらい白状させました。そして、嘘が言えない貫也のあたたかい人柄が、玲子の心を慰めたのだと気付きます。
里子は思いました。玲子のように世間で寂しい思いをしている女性がいたら、そこへ「結婚」という「夢」を売ることで、金を巻き上げられないかと考えたのです。
物事には万に一つのタイミングというものがあり、そこさえ上手に見極めれば、星たちを照らす小さな太陽になれるはずだと、里子は冷静に考えました。

【承】- 夢売るふたりのあらすじ2

貫也と里子は夫婦で、都会の高級料亭『しま津』で働くことになりました。貫也は板前で、里子は接客業です。しま津は大きな店なので、スタッフは2人以外にも大勢います。
客席を動いた里子は、棚橋咲月という姉が、医者と結婚し子どもも持つ妹・綾芽に「上から目線で」結婚しろと諭されているのを聞きました。
里子は厨房に回ると、貫也に白い手拭いを渡します。
綾芽が電話で席を立った時、貫也は咲月に手拭いを渡して涙を拭くように言いました。あたたかい言葉もかけます。
綾芽が戻ってきそうな時、貫也は手拭いを返してもらい、マスカラの染みを手で拭き取りました。咲月は心を動かされます。
里子が思ったとおり、咲月は店に通うようになりました。デートを重ねる貫也は、嘘は何一つ言わず、妻帯者だいうこともつまびらかにしています。
貫也はほかにも並行して、松山和子や園部ますみとも付き合いました。
貫也は和子から金を受け取り(一度「こげなもんいらんちゅうとるやろが」と突き返し、その後借りるという手練手管)、園部ますみにも借用証書を書いて、金を受け取ります。
咲月も時間の問題でした。貫也は里子の指示どおりに、里子が書いた文言を読み上げて電話をかけ、芝居をします。
咲月も金を出しました。その時点で貫也と里子は店を辞めます。

咲月が店に行くと、貫也は辞めていました。それを知った咲月は、貫也との結婚を思い描いていただけに、騙されたと口惜しく思う気持ちが強まります。
貫也と里子は金をだまし取っていましたが、「将来的には倍にして返すつもり」で、借用書の証文を家の壁に貼りつけて拝んでいました。
作戦がうまくいって簡単に金が入るので、貫也の理想の店のレベルが高まります。隅田川沿いのスカイツリーが見える一枚カウンターの店が欲しくなりました。
里子が「1000万あっても足りないよ」と言いますが、貫也は憧れます。
隅田川の店を目標にして、再び貫也と里子は資金を蓄えるために動き始めました。
今度は2人で任せられる店(店長代理と接客係)『とまり庵』を紹介してもらいます。ちなみに、この時にハローワークの女性・木下滝子と会います(滝子は後に出てくる)。
『とまり庵』の時には意図的に夫婦であることを隠し「兄と妹」という設定にしていました。確信犯です。

『とまり庵』で新たなターゲットを見つけようという目論見は、そうそうに破綻しました。店に通う客は労働者層や、劇団員などの金のない男性ばかりでした。
考えた里子は、出会い系のパーティーに行きます。里子がそこでチェックしたのは、脈がありそうな女性でした。
ウェイトリフティングをする女性・皆川ひとみと出会った里子は、親しくなります。
大会の日、兄と偽って貫也と引き合わせました。
ところがこの辺りから、里子は貫也に言えない心の闇を抱えるようになります。
大会で140kgの記録を出したひとみに感心した貫也は、惜しみない拍手を送るのですが、横で見ている里子は不愉快でならないのです。
つい「あんな人でも大丈夫?」と里子は言いますが、貫也は怒りました。そういうふうに考える里子のほうがよほど気の毒だと返します。
里子は、自分の身体が悪い設定を付け足しました(注:病名ははっきり触れられないが、乳がんに関する書籍を読んでいるので、乳がん設定にしたのかも)。

輝美という女性と関係して金をもらい、辞去した貫也は、廊下でデリバリーヘルスの女性・柑奈と会います。デリヘルは断られたのですが、車は出てしまっており、貫也が自転車で送る途中、会話が弾みました。柑奈は本名を「紀代」と明かします。
貫也は女性と接するうちに明るくなるのに反比例し、里子は裏で画策するためか、陰気になってきました。自慰をした後、ひとみに病気のことを打ち明けます。

【転】- 夢売るふたりのあらすじ3

後日、ひとみはお見舞い金を渡しました。貫也は里子の病気設定を「シャレになってない」と言います。
「シャレになってないのは私たち」だと言った里子は「まだまだ足りん。全然足りん」と嘆きますが、貫也は「お前の『足りん』は、金やのうて、腹いせの『足りん』たい」と声をかけました。
それでも貫也はひとみに金を借りようと思い、300万円を要求します。
ひとみは「それって自己負担? 自由診療?」「国民健康保険なら限度額給付金という制度もあるよ」と言いました。そこまで知らなかった貫也は言葉に詰まり、思わず怒りでごまかします。
帰ろうとした貫也を追ったひとみに、貫也が怯えた顔を見せました。それを見たひとみは「私は怪物じゃない」と嘆きます。

紀代のところへ行って事情を話した貫也は、「今120ぐらい。来月頑張れば30はいける」という答えを得ました。紀代はカナダへ留学するために金を貯めているのですが、前の夫にもむしり取られる人生を送っていました。
そこへ前の夫・治郎が部屋を突き止めて、追いかけてきました。貫也が治郎の応対をしている間に、トイレのタンクに預金通帳を格下紀代は、熱湯を浴びせて治郎の戦意を喪失させます。
紀代は治郎のやけどの傷に軟膏を塗りました。治郎は「一緒になるのか」と貫也と紀代に聞きます。
「あたしは今が幸せだよ。自分の足で立っていられれば、自分で自分の落とし前をつけられれば」と言った紀代は、「逃げたことは、すみません。でももう、放してください」と治郎に頭を下げます。
治郎は紀代を諦めて、去りました。貫也は紀代から120万円を得ます。

いちょう並木の下を白い三菱の軽乗用車に乗った貫也と紀子は、憧れの隅田川の物件を見に行きました。
その頃、練習中のひとみが足を怪我し、病院の整形外科に貫也が駆け付けます。
普通の生活をする分には支障のない怪我だと告げたうえで、ひとみは「どこかで辞める理由を探していたのかも」と言いました。そして机の中から300万円を出し、里子に渡してくれと言います。
「諦めたのは俺のせいか。諦めんなよ。そんな夢は、なかとね」と貫也は声をかけます。
(直接的に金を受け取るシーンはないが、受け取った可能性が大か)

病院を去ろうとした貫也は、救急で運ばれた祖父・寿夫と孫・恵太が気にかかりました。運ばれたのは祖父のほうで、母が駆け付けるまでの間、恵太はひとりで過ごすのです。
貫也は恵太の遊び相手となり、やってきたのはハローワークの職員・滝子でした。滝子はシングルマザーで恵太を育てていました。

隅田川の物件を押さえ、貫也の理想の店作りが始まっています。大工がたくさん入り、代々的に内部の改装がスタートしました。
その頃、貫也は次なるターゲットとして、滝子を選びます。夫の生命保険があり、滝子の職業も公務員で、祖父は印刷工場をしていました。
「足りないのは人手だけ。不便だと感じ始めたら金を巻き上げられそう」と言い、貫也は自分の包丁を持って出かけます。
しかし里子は不安に思いました。愛用の包丁を出て行ったことで、自分の前からいなくなりそうだと感じたのです。
(貫也は単に使いなれた包丁を持って行く感覚なのだが、里子は穿った見方をしてしまった)
同じ頃、咲月が探偵を雇い、堂島哲治が動き始めていました。貫也があちこちで女を騙している結婚詐欺師だと見抜いた堂島は、詐欺罪で立件しても10年以下の懲役、一般的には5~6年だと咲月に告げます。

『とまり庵』で働く里子の元へ、開店の夕方の6時には帰って来ると言いながら、その日、貫也が帰ってきませんでした。店をひとりで切り盛りした里子は、棚の奥にドブネズミを見つけ、まるで自分たちのようだと受け取ります。
貫也の父から電話がありました。里子がひとりで電話を受けながら、孤独をひしひしと感じていました。

【結】- 夢売るふたりのあらすじ4

翌日の昼間、思い切って里子は貫也が行った先の工場へ出かけていきます。
2階の事務所は無人で、使いかけの貫也の包丁がまな板の上に放置されていました。それが、放置された里子と重なって見えます。
1階へ行くと、祖父・寿夫におだてられながら、にこにこと貫也が働いていました。
里子は2階へ取って返すと、貫也の包丁を手に持ちます。事務所を出たところで恵太と出会いがしらにぶつかった里子は、包丁を階下に落としました。
階段を尻から滑り落ちた里子は、包丁を忘れてそのままよろよろと立ち去ります。
(貫也は他意がなく、単に気に入られようと思って寿夫に愛想よく接していただけ。しかし里子はこの家に移り住むのではないかと思い込んでしまった)
雨の中、傘もささずに歩く里子は、横断歩道で手切れ金を渡した玲子と会いました。玲子は会釈して去ります。

里子が来たことを全く知らない貫也は、恵太と2人で料理を作りました。滝子の家の包丁だと切れにくいので、貫也は包丁がどこに行ったのかとぼやきます。恵太は外に出ていきました(貫也の言葉を聞いて、落ちた包丁を拾いに行った)。
そこへ入れ代わりに堂島探偵が、咲月を連れてやってきます。貫也が逃げようとしたので、階段の下で咲月は貫也に馬乗りになり、往復ビンタをします。
堂島探偵が咲月を制止し(放っておくと咲月も暴行罪になるので)、貫也に手を差し伸べました。
そこへ、包丁を持った恵太が「いくぞー! やーっ!」と言いながら、包丁を堂島の背中に突き立てます。
驚いた貫也は、「俺がもらう。ちょうだい」と恵太に言いました。恵太は堂島の背中から包丁を抜き、素直に貫也に渡します。
恵太が持つ包丁を受け取った瞬間、恵太を膝に抱いたまま包丁を持つ貫也を見た祖父・寿夫が勘違いをし(この構図は、貫也が恵太に危害を加えようとしているように見える)、滝子もちょうど帰宅しました。さらに工場から工員も出てきます。
包丁を持っている貫也が不利になりました。

真相を知っているのは堂島、咲月、貫也ですが、貫也は恵太の罪を自分でかぶる決意をします。
堂島は東山刑事に「トシなんだな、堂島さんも。素人相手に刺されるようじゃ」と言われながらも、敢えて否定しませんでした。罪をかぶる貫也の気持ちを斟酌したからです。
幸い、堂島探偵は命を落とすほどの怪我ではありませんでした。
その場で現場検証をした貫也は、ぺらぺらと嘘をまくしたてます。火事の前は嘘をつけなかった貫也は、子どもをかばうためとはいえ、今では立派に平然と嘘をつけるようになりました。結婚詐欺で得た技術です。
(刺した瞬間には向かい合っていた堂島と貫也のことが現場検証で指摘されているが、それを無理やりの論理で貫也が刑事たちに納得させようとしている)

里子はラーメン屋の店長と、できあがったばかりの隅田川沿いの店舗でビールを飲んでいました。
店主は里子に以前から気があり、口説こうとします。見つめられて困った里子は、表にパトカーが止まるのに気づきました。
「店長、すみませんけど、私、約束が」と言って、里子は裏口から資料を持って逃げました。
全力疾走で逃げる里子の手から、資料がどんどんこぼれ落ちます…(貫也と里子の夢が落ちていくことの暗喩)。

…貫也は傷害罪で刑務所に入っていました。里子はアパートを引き払います。
ひとみは、ウェイトリフティングの指導員になっていました。
紀代の働く店に、治郎が決まり悪そうな顔で入ってきます(復縁しそうな気配)。
恵太と滝子の暮らしは、元に戻りました。
咲月は実家から離れ、一人暮らしを始めます。
手切れ金を渡した玲子のところへ、封筒が届きます。差し出し人は『いちざわ』のマークで、中には貫也に渡した金が全額戻ってきました。
…里子は居を移し、魚市場で働きます。フォークリフトを操る里子に、漁港にいるカモメの声が聞こえます。
同じ頃、貫也は刑務所内で食事を作る仕事を割り当てられていました。そこにも二羽のつがいのカモメの鳴き声が聞こえます…。
(貫也と里子の結婚は続いており、貫也は獄中で里子の無事を祈り、里子は貫也の出所を待つつもり。それがつがいのカモメに込められている。
詐欺で得た金についても、夫婦は本気でいずれ金を返すつもりであろう。玲子のところに返金されたことからも分かる。騙した順番どおりに返すつもりか)

みんなの感想

ライターの感想

人間の心の機微について、上手に扱った作品。
表層部分(ストーリー)だけ追って行っても面白いのだが、裏に隠されたメッセージを読み解くのも興味深い。
朴訥だった貫也が多弁になり、対照的に明るかった里子が徐々に陰鬱になっていく、この対比も印象的。

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