「楢山節考(1983年今村昇平監督)」のネタバレあらすじ結末

ヒューマンドラマ

楢山節考(1983年今村昇平監督)の紹介:雪深い山村の因習”楢山まいり”と呼ばれるいわゆる”姥捨て”にまつわる人間模様をリアルに描いた1983年公開の日本映画。監督/脚本は「復讐するは我にあり」「にあんちゃん」の今村昇平。深沢七郎の同名短編小説と「東北の神武たち」を原作とし、1958年公開の木下惠介監督による同名作品とは別物である。おりん役坂本スミ子は前歯を削っての熱演で69歳の老婆を見事演じきったが、主演の緒方拳とは実年齢1歳差の40代。1983年カンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドールを受賞。

映画「楢山節考(1983年今村昇平監督)」のネタバレあらすじを結末まで解説しています。まだ映画を観ていない方は「楢山節考(1983年今村昇平監督)」のネタバレあらすじに注意ください。

予告動画

楢山節考(1983年今村昇平監督)の主な出演者

辰平(緒形拳)、その母おりん(坂本スミ子)、その弟利助(左とん平)、その後妻玉やん(あき竹城)、その息子けさ吉(倉崎青児)、その嫁松やん(高田順子)、雨屋(横山あきお)、おかね(清川虹子)、欣やん(江藤漢)、仁作(常田富士男)、銭屋の忠やん(深水三章)、その父又やん(辰巳柳太郎)、おえい(倍賞美津子)、新屋敷の親爺(ケーシー高峰)、塩屋(三木のり平)、照やん(殿山泰司)など。

楢山節考(1983年今村昇平監督)のネタバレあらすじ

【起】- 楢山節考(1983年今村昇平監督)のあらすじ1

雪深い山中の小村。
新屋敷から帰った”根っこ”の辰平は、藁で筵を編む母親おりんに、病に伏せる親爺の様子を報告しワラジを編み始めます。辰平の長男けさ吉は69になっても固い藁を歯でむしるおりんを丈夫な歯だとからかい、辰平に叱られ「中屋のおとりさんぁ、運がえぇぞぇ、御山に行く日にゃ 雪がどんと降る、あぁよ」と”楢山まいり(姥捨て)”の囃し歌を歌いながら藁を打ち始めます。馬小屋では農耕馬の春松が空腹で騒ぎ、辰平は寝坊した弟でヤッコ(農家の下男)の利助を起こしに行き、昨日新屋敷の牝犬の所に行ったかと聞きます。辰平は、新屋敷は先代の父親が娘に夜這いしたヤッコを叩き殺した過去がある家だから、変な事されたら困ると話しますが、利助は行ってないと言い張ります。

雪解け間近。村では雪囲いの撤去作業が始まっています。利助は口臭がひどく皆から”クサレ”と蔑まれていましたが、家の田んぼで水子(嬰児の遺体)を見つけ、嫁が妊婦だったおかねの家に苦情を言いに行きますが、おかねは病で寝込み囲炉裏では”しらはぎ様(白米)”が炊かれていました。利助が責めるとおかねが嫁の水子は自分が墓に埋めたと言い、ついでに長男の欣やんからおかね用の棺桶を作るよう頼まれます。利助はヤッコの常が犯人とつきとめますがケンカになり、雨屋の年頃の娘松やんにからかわれて終わります。
その頃、辰平の家には行商人の塩屋が売られた女児を連れて訪れ、藁籠で眠る赤ん坊ゆきを見て目を細めます。おりんは辰平の嫁の竹やんが去年その子を生んで間もなく崖から落ちて死んだと話しますが、彼は事情を知っていて、向こう村の米八さんからだと塩の塊を渡し辰平の再婚話を持ちかけます。また、辰平を西の山で見かけたが人違いだったかもとも話します。
おりんは田んぼで作業中の家族の所に走り、向こう村から37で後家になりたての玉やんが喪が明けたら嫁に来ると騒ぎますが辰平は憮然として作業を続けます。また彼女はけさ吉と利助のケンカを、けさ吉は跡継ぎだから利助が折れろと納めます。また、辰平に西の山に行ったかと聞き、30年前に失踪した彼の父親利平に似てきたから人違いだとこぼします。辰平は西の山に行き、おどおどと木の根っこを蹴っていました。

春。おりんと山菜摘みに行った辰平は、父親が失踪した理由を本当に知らないのかと聞きますが、おりんはあの時は辰平が15、利助が5つ、酷い不作で生まれたばかりの女児を塩屋に売った上、利平の母親が69で楢山まいりだったため(辛くて)逃げたんだと話し、村の恥さらしだと罵ります。そのおりんも69となり、辰平におまえだってと口ごもりますが、彼は「おらぁ父っつぁんとは違う!」と憤慨します。一方、けさ吉は松やんと思い思いの場所でまぐわい、春を謳歌していました。
また、辰平は大声でおりんの歯を揶揄する歌を歌っていた銭屋の忠やんに文句を言いますが受け流され、奥の間に縄で縛られている父親の又やんが夕べも鶏を〆ようとした、もう70だからこの冬は山に行ってもらおうと思うと話し、おまえのおっかあもそろそろだなと言われます。辰平は子供たちとその歌を歌うけさ吉を怒鳴りつけますが、ふざけて逃げられます。
一方、おかねの見舞いに行ったおりんは、元気なあんたが羨ましい病気で死ぬのは嫌じゃとこぼす彼女に、この年で丈夫なのは生き恥さらしだ、死んだらみんな御山に行くからまた会えると話します。また、利助は無法だったが悪い男じゃなかった、鉄砲だけ西の山に残してどこに消えたんだかと言われ、利助はとっくに死んでる、苦労より村の衆に恥ずかしいとこぼし、その帰り石で自分の歯を打ち折ろうとしますが折れませんでした。
芋粥の夕飯時、おりんは、おかねはもって2、3日だと報告し、辰平は遅れてきたけさ吉を無言で責めますが無視されます。おりんは明るく、もう二月もすれば向こう村から嫁が来ると笑い、利助もおっかあも楽になると話しますが、けさ吉が突然おらが嫁を取るから後釜なんかいらねぇ、いっぺんに2人も増えちゃこの家はやってけねぇと言い出します。おりんはばかやろ!飯を食うな!と激怒しますが、弟のとめ吉に雨屋の松やんをもらうとバラされ怒って出て行きます。
翌日、辰平はおかねの棺桶を仕上げ、利助とおかねの次男仁作と共に届けに行きますが、元気に立ち働くおかねを見て驚きます。おかねは”しらはぎ様”食ったら治っただよと笑っていました。

初夏。皆が農作業に精を出す中、向こう村から後妻の玉やんが到着します。彼女は図体もでかく健康で、大泣きしていたゆきを抱き上げ、小枝の束を運びながら家に入り、しらはぎ様とおりんの自慢のヤマメの煮つけをモリモリとほおばり、向こう村が祭りで兄やんは酔って送れず一人で来た、おりんが迎えに来たら背負って帰って来たのにと笑います。またもうすぐ御山に行くと言うおりんに、ゆっくりでいいと言う優しい心根の女でもありました。
おりんは内緒で臼にブチ当て前歯を折り、見ていた利助にも口止めし、もう歯がダメだから御山に行くでと血塗れの口で笑いかけます。また彼女は、その口で祭りの準備会場に行き、辰平の再婚を囃していた皆に見せ回り、鬼婆だと笑われます。
その晩、おりんは1人で送り火を焚き、前妻の竹やんに玉やんと言う良い後添えが来た、御山でゆっくり休んで、恨まないでおくれと歌っていました。
また、辰平と玉やんの営みを覗いていた利助は新屋敷の牝犬にかかりに行き、娘のおえいに見つかりそうになり、隠れて家の様子を覗きます。病で死にかけの親爺は彼女に、先代の父っつぁんが娘に夜這いをかけたヤッコを丸太で叩き殺したためヤッコに祟られた、だから家も傾き病気に倒れ楢山まいりも叶わなくなった、罪滅ぼしにおまえが村のヤッコを一晩づつでも婿にして一緒に屋敷神様を拝めと話していました。
翌日、利助は新屋敷の話をヤッコ仲間に言いふらしてバカにされ、山神様の社にクサレが早く治りますように、新屋敷の親爺が早く死にますようにと拝んでいるところを辰平に見つかり、殴られます。利助は、おりんが自分で歯を折った事や辰平夫婦の営みを覗いたことを白状しますが、辰平は内緒ごとを責め、折檻しようとします。けれどおりんが現れたため、「おらぁおっかあの石みてえなでっけぇ歯が好きだったぞ!」と怒鳴り、田んぼのカラスに八つ当たりします。
おりんは利助の手当てをしながら、辰平は利平と似てる、気が小さいから殴るのだとこぼします。利助はおりんに臭くないかと聞き、臭くないよと言われて微笑み、兄やんも臭いと言った事が無いと笑います。

一方、けさ吉と松やんは相変わらず作業をさぼっては番い、彼女は妊娠し来年には生まれるようです。けさ吉はねずみっ子(おりんの曾孫)だと言い、おりんに嫌われると不安そうな松やんに、今夜からうちで飯を食えと言います。ほどなくして松やんはけさ吉の嫁になりますが、ずけずけと人一倍飯を食い、農作業の間もけさ吉といちゃつき、その上家事が苦手で皆に煙たがられますが、本人は全く気にしていませんでした。
けれどある晩、松やんが納屋の穀物を盗んで実家の雨屋に運ぶのをおりんに目撃され、辰平にひどく懲らしめられます。雨屋は子沢山で、慢性的に食糧に困窮していたのです。不快そうに帰った辰平におりんは、ねずみっ子は良くないが自分を見てるようでさほど嫌じゃないと言います。

【承】- 楢山節考(1983年今村昇平監督)のあらすじ2

そしてある夜、村に「楢山様に謝るぞぉ!」と号令がかかり、皆は棒きれを持って駆けつけます。現場が雨屋だと聞いたおりんは、参加しようとしていた松やんにゆきを任せ、居残りをさせます。
雨屋の家族は庭に集められ荒縄で括られ、被害者の村人が豆を盗まれた状況を話し、皆は「楢山様に謝らせるぞ!」の合図で、雨屋の家を破壊して食糧を根こそぎ探しだし、雨屋家族の上に積み上げます。それは大量の穀物で、皆は雨屋は先代も楢山様に謝った!と激怒していますが、雨屋の主人は子沢山で苦しかったと言い訳し、けさ吉にも松やんはおまえの嫁なんだから助けてくれとすがります。が、庇う者はおらず、皆で穀物を分配して終了します。それでも長たちは雨屋は泥棒の血統だ、今度はただじゃ済ませられないと話していました。また、同時刻、新屋敷の親爺が死亡し、おえいは参加していませんでした。

長雨が続く秋。玉やんはおりんに代わって家事をてきぱきとこなし、半面松やんは煮豆を柄杓ですすり味見すればするだけ増えると嘯いていました。おりんは、あれは嫁に来たんじゃない雨屋を追い出されたんだとこぼし、腹の子は5カ月過ぎだから間もなく口が増える、うちもこの冬越せるかどうかと頭を抱えます。そこへ忠やんが、再犯の恐れのある雨屋の処分を相談する集まりが今夜照やんの家であると伝えに来ますが、松やんとけさ吉は知りません。帰りがけ、忠やんは辰平に、雨屋が根絶やしになったら松やんもこのままには出来ないと言いますが、辰平は「松やんはうちの嫁で腹の子は根っこ(辰平の血統)の子だ」と煮え切らず、そんなだから利平に似てると言われるんだと言われ憤慨します。

そしてある日の夕方、おりんは残り少ない芋を松やんに持たせ、泊まってきていいぞと言い実家の雨屋に帰します。松やんは早速雨屋に行き、幼い兄弟たちに囲炉裏で焼いて食べさせ、両親は痣だらけの顔で微笑みながら見ていました。一方村では密かに辰平と利助を含む男衆が招集され雨屋に向かいます。来なくていい!と怒られたけさ吉も知らぬままついて行きます。
男衆は、団らん中の雨屋を急襲し、雨屋家族を藁縄の網で捉え、森の中に掘られた大きな穴に放り込みます。家の門口には紙垂が付けられた鉈が打ち込まれます。数人に抱え上げられた松やんは凄まじい悲鳴を上げてけさ吉を呼び、けさ吉も必死で止めようとしますが数人に取り押さえられ、その目前で這い上がってくるのを棒杭で殴りつけ埋めてしまいます。やがて土盛りからの声が止み、男衆は照やんの合図で終始無言のまま、呆然としたけさ吉は引きずられ各々散って行きます。
辰平の家では雨屋の事をしつこく聞くとめ吉をおりんが諌め寝かせていました。辰平と利助は無言でしたが、けさ吉は、おりんに「騙しやがったな!何で松やんを雨屋に帰した!婆やんが殺した!」と叫び屋根裏で鬼婆ぁ!と泣き喚きます。辰平は黙って縫い物を続けていたおりんに「何で(松やんを帰すことを)言わなかった?」と聞きますが、彼女は「この冬、おらぁ、御山に行くだよ」と答えます。
「実家の婆やんも山に行ったし、ここのお舅も山に行った、おらだって行かなきゃ。ここで暮らすなぁなかなかきついずら…御山に行ったら、松やんにも会えるずら…」そう言って微笑むのです。辰平は何も言わず、母の縫い物を顔にかけごろんと横になります。玉やんは口が一つ減ったしねずみっ子も死んだからこの冬くらいは越せると言いますが、おりんはねずみっ子はまたすぐできると言い、辰平から縫い物を取ると彼は泣いていました。
玉やんは泣いて席を立ち、利助は寝床で豆を頬張り歌い出します。けれど、闇夜に紛れておえいがヤッコと消えるのを目撃し、順を待ちますが飛ばされ泣き出します。
荒れる利助を、辰平が一晩だけの約束で婿にさせる手配をしたとなだめますが、その相手は玉やんで、キレる彼女に頭を下げ頼み込んでいました。一方おりんはおえいを説得しますが断られ、おかねに二つ返事で引き受けてもらえます。

【転】- 楢山節考(1983年今村昇平監督)のあらすじ3

翌朝早く、おりんは家の裏の荒れ地に種を撒き、出てきた玉やんに「明日、楢山行くだ」と言い、辰平にも今夜関係者を呼ぶから皆に知らせろと言い張ります。が、その時、村人の1人が西の山の草っ原に利平がいたと血相変えて駆け込んできたため、おりんと辰平が駆け出します。
おりんは西の山の木の前に立っていたボロボロの野良着の男を「あんた!利平やん!」と大声で呼びます。が、振り返ったのは辰平で、その時強い風が吹き、辰平は魂だろうかと呟きますが、おりんは急に怒り出し、今頃になって出て来たっておらぁ許さねぇだ!おらぁ御山行くだぞ!おめぇなんか呼んでやらねぇぞ!クズ野郎!と罵ります。すると辰平が、「15の時に父っつぁんと熊撃ちに行って、帰りにここで父っつぁん殺しただ」と打ち明けます。
彼は祖母の楢山まいりに消極的な父親に意見をし、喧嘩になって撃ち殺してしまった、遺体をこのあたりに埋めたというのです。おりんは、辰平は好きだったが殺したのは山の神様だ、誰にも言うなと言い含めます。
日暮れ時、家族は総出で人呼びの支度をし、ひとしきり指示を終えた彼女は玉やんを沢に連れ出し、秘密の山女魚の釣り場に案内し獲り方のコツを伝授し、また、利助に身体を貸せと言われただろうが絶対ダメだ、はっきり断れと言います。そして、教える事はこれで最後だ、この場所は誰にも言うなと言います。
辰平は、父親を埋めた木を鉄砲で撃ち、木は不気味に揺れていました。

夜になり、楢山まいりの儀式が執り行われます。
おりんと辰平は並んで上座に座り、照やんを含め7人の経験者が揃い、照やんの口上を合図に次々とおりんのどぶろくの甕を回し飲んで行きます。照やんはどぶろくの出来を誉め、立派な支度だと感心します。
山に行ったらものを言わぬこと、家を出る時は誰にも見られぬこと、山から帰る時はけして振り向かぬこと、決め事はこの3つで、残りは道順を口伝し、その度どぶろくの甕が回り、終了すると6人は無言で帰り、最後に照やんがどうしても無理なら”馬の背”で帰ってもいいんだと話して帰ります。
その頃、おかねは馬小屋の屋根裏で利助にかかられながら、使やぁ使えるもんだなぁと呟いていました。
おりんは、皆が寝静まった後、1人楢山まいりの支度をしていましたが、物音に気付いて見に行くと、銭屋の親爺又やんが庭に来て泣いていました。彼女は眉を顰めて辰平を呼び、彼と玉やんが来たところで息子の忠やんが駆けつけ、縄を食いちぎって逃げた、みっともねぇとくさします。
おりんは、彼女にすがり泣くばかりの又やんにこれじゃ山の神さんに申し訳ない、息子にも神さんにも生きてるうちに縁が切れたら困ると言い聞かせ、辰平が負ぶって送ることに。おりんはそれを見送りながら「ばかだなぁ」と呟きます。
そして夜が明けきらぬうちに、彼女もまた、辰平の背負子で負ぶわれ家を出ます。
玉やんは2人が出た後心配そうに見送り、利助はおかねの隣でお守りのウサギの歯を耳に詰めて彼女の乳を吸い、けさ吉は一人眠れぬ夜を過ごしていました。

白いちゃんちゃんこの装束に筵を背負ったおりんは、村が見える最後の場所で振り向きますが、歩みを止め振り向いた辰平の肩を叩き進ませます。
辰平は朝露で滑る沢を登り、黙々と山道を歩き続け、おりんもただじっと息子の背に頼り、その息を聞いています。が、山の途中の丸太橋が腐っていたため、おりんは這って進もうとする辰平の肩を叩いて止め、遠回りを余儀なくされます。回り道は急斜面で、地べたに取り着くように進むうち、辰平が滑り落ち足の親指の爪を剥がしてしまいます。おりんは黙って布きれを渡し、辰平は爪を取り去り布で縛って、蔦を仕掛けて再び登り始めます。
登り切ったところには清水が湧いていて、彼はおりんを降ろして水を飲み、葉っぱを入れ物にしておりんにやろうと振り向きますが、彼女は消えていました。彼は愕然として周囲を探しますが、やがて「帰ぇっちまったのか」と呟き安堵します。けれど、清水の場所に戻るとおりんも戻っていて、黙って彼に背負子を背負わせ、負ぶさります。彼は一瞬慄然としますが、黙って歩き始めます。
土だけの斜面の先には、底が見えない深い谷がありました。その先の岩で囲まれた小道で、西の山のような強い風が吹き、おりんは立ちすくむ辰平の肩を叩き進ませます。
辰平は、美しい渓流で「おっかあ、疲れただろ」と言い初めて休憩を取ります。おりんは荷物から白米の握り飯を出し、辰平にすすめますが断わられて逆に聞かれ包み直します。
辰平はご先祖様はみんなここ通って御山行っただなぁ、何百人も何千人も…と話し、あと25年でおらはけさ吉に背負われて行き、また25年すればけさ吉が行く、どうしようもねぇだと笑います。また上には山の神様が待ってると言うが本当かと聞くとおりんは笑ってうなづき、彼はほんとにいるんなら、歌の通りに雪降らしてくれりゃいいとこぼします。おりんは再び辰平に合図し、負ぶわれます。

【結】- 楢山節考(1983年今村昇平監督)のあらすじ4

その先はさらに険しくなり、一歩踏み間違えれば死の危険がある岩場を蔦を頼りに降りながら、辰平は「父っつぁん殺して、おっかあ殺してか」と呟きながら先に進みます。
その先の巨石群を越えたところで、2人はついにいくつもの人骨や屍を目にします。道の脇には朽ちた人骨が転がり、辰平は怯えますが、おりんは無表情で辰平に合図をして先に進ませ続けます。間もなく、拓けた場所に行きつきますが、そこは無数の骸骨が転がる終着点でした。周囲の岩山には、無数のカラスがいて、辰平が石を投げても平然としています。
おりんは、その隅を指差し降りようとしますが、辰平はなかなか降ろそうとはしません。彼女は背負子を揺すり何度も合図をして降ろさせ、筵を広げ、辰平に握り飯の包みを渡そうとしますが、彼はおりんに押し返し、最後にはおりんが背負子の梁に通して持たせ、辰平の手を握ります。
辰平はただただ泣き、おりんを抱きしめ、おりんも彼を愛おしそうに抱きしめます。が、なかなか去ろうとしない彼の頬をおりんが叩き、彼に背負子を持たせて後ろを向かせ、突き放します。
辰平は呆然としたまま背負子を引きずり、振り返らず去って行きます。

彼が深い谷が見えるところまで戻ると、背負子に荒縄で括られた又やんが忠やんにすがり泣き喚いているところでした。又やんは荒縄の間から腕を伸ばして息子にすがり、どちらの腕もひっかき傷で血と泥で汚れています。やがて忠やんはすがる父親の手を振り切り「御山に行ってくれ!」と叫んで、荒縄でだるまのようになった又やんの体を谷底へ突き落とします。その身体は一気に転げ落ち、谷からは無数のカラスが飛び立ちます。忠やんは谷に向かって大急ぎで手を合わせ、辰平に気づくことなく逃げ去ります。
辰平は忠やんが去った後、谷を覗き込みますが、その時一陣の風が吹いて小雪が舞い始め、彼は「雪が降った…」と呟き、空の背負子を背負ってあの終着点に駆け戻って行きます。
着いた時には、骸骨も全て雪に埋もれていました。おりんはあの場所にきちんと座り、目を閉じ、静かに手を合わせていました。
「おっかあ!雪が降ってきたよぅ!」…辰平が叫ぶと、おりんは目を開け厳しい顔で行けと合図をします。
「おっかあ、寒いだろうなぁ」と言うと首を振り、「山へ行く日に雪が降って、運がいいなぁ」と言うと、静かにうなづき、再び行けと合図をします。
辰平は「おっかあ…ほんとに雪が降っただなぁ…」と呟き、踵を返し戻って行きます。
おりんは再び手を合わせ、静かに雪の中に佇んでいました。

辰平が戻った時には、村はすでに深い雪に埋もれていました。
家では玉やんが労をねぎらい、雪が降って良かったと言い、甲斐甲斐しく食事の支度をしますが、けさ吉は酒に酔い大声でおりんの歯の歌を歌い、婆やんは運がいい、歌の文句の通りだと笑っていました。そこにけさ吉の新しい女房が、美味そうな匂いだなぁと顔を出し、けさ吉は今夜から家で飯食ってるだと話します。
辰平はその女の腹をじっと見つめ、玉やんの腹にも目をやり、雪の中で手を合わせるおりんの姿を思い浮かべ、深いため息をつきます。
利助は藁に埋もれて、楢山まいりの歌を歌っていました。

みんなの感想

ライターの感想

冒頭おりんが丈夫な歯で作っている筵は自分が御山に入る時の支度品で、その後彼女は自ら歯をおっ欠きます。また、彼女が自分で歯を折るのは、慢性的な食糧難の中、69の大年寄りが弱りもせず食い扶ちが減らせない事を恥じる自傷行為で、日頃からその丈夫な歯を揶揄されていた彼女はあえて血塗れの口を村の衆に見せ回る。”ねずみっ子”と言うのはりんにとっての曾孫の事だそうで、これもまた曾孫が見れる年まで行き恥を晒すという意味の忌み言葉。りんの執念じみた体裁や世間体へのこだわりは、30年前利助が失踪し母子家庭となった際、村の衆から卑下された屈辱から来ることは想像に難くない事です。
本作は息子天願大介監督の「デンデラ」に憤慨した後偶然に見て、あまりの衝撃に言葉を失いラストシーンはだく泣きでした。が、改めて見るとけして憐れが売りの人情話ではなく、むしろ”知る”べき作品なのだと思い知らされました。
時代は漠然と江戸から明治初頭とされているようですが、出てくる家族は現代の家族の縮図そのもので、今では表向き美徳とされる丈夫で矍鑠とした年寄りと中年夫婦、頼りの長男は次々と女を孕ませては親にすがる怠け者で次男は全くの役立たず、また盗品で身を立てる子沢山、ボケた年寄りを持て余し殺害する独男などなど、近代にもよく聞く揉め事ばかりで、頼りにしていた母親を身を切る思いで捨て去り、精根尽き果て家に帰ればわがままな長男と大食いの女房子供が待っていて、深いため息をつく辰平の気持ちは、誰よりも明るい老後を夢見てフェイドアウトしたばかりの中年男性に染みる事なのかもしれません。

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