「海辺のリア」のネタバレあらすじ結末

ヒューマンドラマ

海辺のリアの紹介:2016年製作の日本映画で、「愛の予感」で知られる小林政広監督がメガホンを取った仲代達矢主演のヒューマンドラマ。認知症を患った元有名俳優が海辺へと逃げ出し、芝居と現実とを交錯させながら家族への思いを独白する。

予告動画

海辺のリアの主な出演者

桑畑兆吉(仲代達矢)、行男(阿部寛)、伸子(黒木華)、由紀子(原田美枝子)、工藤(小林薫)

海辺のリアのネタバレあらすじ

【起】- 海辺のリアのあらすじ1

夜が明けて間もなく、一人の老人がトンネルから出て来ました。上等なパジャマに黒いコートをはおり、黒のスーツケースを引くこの異様ないで立ちの老人は、かつて日本を代表する俳優でした。老人の名前は桑畑兆吉、つい昨日までは認知症患者として高級介護施設で日々を過ごしていました。ところが突然兆吉は施設から抜け出し、一心不乱に歩き続けた末、千里浜海岸にたどり着いたのです。

兆吉が海辺を歩いていると、男のような身なりの若い女性に出会いました。女性の名前は伸子、兆吉がかつて愛人に産ませた実の子供でした。二人は同じ方向に向かって海辺を歩いて行きますが、すでに伸子の記憶を失った兆吉は次々と伸子に不躾な言葉を浴びせて行きます。「ひでえ、身なりだ」、「何、ちんたら歩いてやがんだ」、「何でえ、けちんぼ」。伸子は語気を荒げ「クソ馬鹿野郎」と目の前にいる父親に暴言を放ちますが、兆吉はまったく気にする様子を見せません。伸子が兆吉にどこに向かっているかを尋ねると、兆吉は「判らねぇ…」と答えました。そして、「そう言やぁ、俺、どこから来たんだ?」と困惑した様子を見せるのでした。

その後、二人は砂浜のコンクリートに座り込みました。目の前には太陽に照らされ輝く海が広がっていました。それを見つめながら、兆吉は空腹を訴え始めました。しかし、スーツケースの中にはタオル一枚が入っているだけで、食べ物は見当たりません。兆吉は半ばヒステリーを起こしたように空腹を訴えたかと思えば、突然黙り込んでしまいました。そして、「綺麗な、海だなあ…」と目の前に広がる海に素朴な感想をこぼすのでした。

【承】- 海辺のリアのあらすじ2

時間は流れ、再び兆吉は空腹を訴え始めました。兆吉は伸子にステーキを食べたいと伝えますが、それに対して伸子は冷たく「いい気なもんよ、娘と孫、捨てといて」と返すだけ。この言葉を聞いて突然真顔になる兆吉に、伸子はさらに兆吉の記憶を刺激しようと語り続けます。「あなたを一番大切にしてたのは、私だって事」。ところが、伸子の思いは実ることはなく、再び兆吉は空腹を訴え伸子に弁当を買うよう命令してきました。そして、銀幕のスターだった自分に対して敬意を払わない伸子に対して、兆吉は自己紹介を始めました。「私は、正真正銘の桑畑兆吉であります!いや、皆さん、どうもどうも…」。伸子が呆れ果てていることにも気づかず、兆吉は舞台挨拶に立つ俳優のように陽気な笑顔を見せていました。

挨拶を終えた兆吉は、伸子を見ながら自らの家族について語り始めました。孫のように年が離れた娘がいたこと、その後その母親が逃げてしまったこと、腹違いの姉がその娘を憎悪していたこと…しかし、兆吉は伸子がその娘であることに気づくことはありません。伸子はただ涙を流しながら兆吉の話に耳を傾けていました。

その後、伸子は兆吉のために弁当を買いに出かけました。ところが、戻ってくると兆吉の姿はありません。伸子は強い怒りを覚えますが、結局兆吉を探すために海辺を歩き始めました。すると、海辺に一台の車が停まっているのが見えました。そして、そのそばでは一人の中年男性が兆吉を車に乗せようとしていました。それは、伸子の腹違いの姉・由紀子の夫であり、兆吉の弟子だった元俳優の行男でした。伸子がそこに現れると、行男はひどく困惑した様子を見せました。行男は後ろめたそうな表情で、兆吉が今高級介護施設に入っていることを伸子に伝えました。父親が介護施設にいることに衝撃を受けた伸子は、容赦ない言葉を行男に浴びせました。かつて腹違いの姉の由紀子が自分を追い出したように、今度は兆吉を追い出したのだ、と。ちょうどそのとき、由紀子から行男に着信が入り、兆吉を見捨てるよう伝えてきました。由紀子はすでに父親への愛情を失っており、興味があるのは莫大な兆吉の遺産だけでした。その遺産があれば、行男が経営する会社の借金も返せる…由紀子のあまりにも冷たい判断に行男は呆然としますが、由紀子の冷徹さを誰よりも知る伸子は驚いた様子を見せません。

車内は緊迫した雰囲気となりましたが、兆吉はそれに気づくことなく伸子が買ってきた弁当を美味しそうに頬張っていました。満腹になった兆吉は後部座席で昼寝を始めましたが、相変わらず伸子は由紀子と行男への批判を続け、いつの間にか伸子の目には涙が溢れていました。伸子は由紀子と兆吉に追い出されたことを思い出していたのです。私生児を身篭ったことを理由にして由紀子と兆吉が伸子を家から追い出したときのことを伸子は語り始めました。お腹の子供を抱えながら家を追い出されたつらさを吐露すると、伸子は自分だけでなく兆吉を追い出した行男たちに強い非難の言葉を浴びせるのでした。

【転】- 海辺のリアのあらすじ3

伸子が落ち着きを取り戻すと、行男は「どうしたらいいか判らない」と正直な気持ちを打ち明けますが、伸子は「判らないのは、こっちよ」と冷たい言葉を返します。伸子は兆吉と電話が繋がらないことを心配に思い、兆吉の家に向かっていたところ徘徊する兆吉と再会したことを打ち明けました。そして、行男たちの残酷な仕打ちを再び批判しようとしますが、行男は兆吉の悪いようにはしないと誠意を示し、許しを乞うてきました。しかし、伸子にとって行男たちを許すことは不可能なことでした。伸子は出産した子供を相手の男性の家族に取り上げられてしまったことを明かしました。絶望的な現実に悲嘆の表情を浮かべる伸子に、行男は言い訳を続けました。由紀子たち家族や、社員の生活を理由にこれまでの行為を正当化しようとする行男に、伸子はこう返答しました。「だからって、何してもいいって訳じゃないでしょ?」。

そのとき、兆吉が車内から出て海辺を再び歩き始めました。行男は慌てて兆吉を車内に戻し、兆吉はまた昼寝を始めました。行男は兆吉の面倒を見ると言いますが、伸子はその言葉を信用しようとしません。「お父さん、見放されたことすら、判らなくなっている」と語った伸子は再び涙を流していました。

夜が明け、行男は伸子を送るべく近くの駅へと向かいました。しかし、駅に着くと兆吉が車から出ようとして落ち着きを失ってしまいます。行男はやむなく伸子を乗せたまま介護施設に向かいますが、兆吉は施設に戻ろうとせず、行男の制止もきかずに海辺につながる道を一人歩き始めてしまいました。行男が途方に暮れる一方、伸子は兆吉の後を追いかけました。そして、先ほどまでは打って変わって丁寧な口調で兆吉に話しかけ、実の娘であることを伝えました。しかし、兆吉の記憶は混沌とした状態にあり、由紀子と妻を混同した存在をただ一人の娘と考えていました。自分の存在が認められないことに深く悲しむ伸子。泣き叫ぶ伸子を兆吉は不思議そうにただ見つめていました。

兆吉と伸子は海辺にたどり着き、ぼんやりと歩いていました。相変わらず兆吉は自分の娘と妻を混同し、その都度伸子から訂正を受けていました。すると、兆吉は「一行も、覚えることが出来なくなった」と役者を引退した理由を打ち明けました。そして、ぼんやりと海を見つめながら、その美しさに感動していました。

その頃、行男は老人ホームに車を停めたまま、ある決意を固めていました。そして、携帯で電話をかけ、由紀子に離婚を切り出しました。会社を解散すること、借金は必ず自力で返すこと、かつての師匠である兆吉は自分が守ること…行男は一方的に自分の思いを由紀子に告白し、電話を切りました。

兆吉と伸子はまだ海を眺めていました。兆吉は海の美しさに刺激され、シェイクスピアの「ヴェニスの商人」の一節を読み上げました。伸子は昔兆吉の書斎にあったシェイクスピアを隠れて読んだことを打ち明け、兆吉に笑顔を見せました。そして、これ以上生きていくことがつらいと伸子が伝えると、兆吉はかつて主役を演じた「リア王」に登場するコーディーリアと伸子とを錯覚し始めました。それは、リア王に一度は国を追放されながらも、父を救おうと力を尽くした末に命を落としたリア王の娘の名前でした。兆吉は「ああ、我が娘よ!」と感激しながら伸子を抱きしめますが、伸子は父に別れを告げその場を後にするのでした。

【結】- 海辺のリアのあらすじ4

兆吉は呆然とその場に立ち尽くしますが、突然家族との思い出を大声で一人語り始めました。娘の由紀子が舞台の仕事を制限したこと、弟子の行男に会社経営を任せたことを悔いていること、由紀子に言われるがままに遺言書を書いたこと…家族の裏切りをすべて吐き出すと、兆吉は「リア王」のセリフを語り始めました。それは、リア王が愛する娘コーディーリアの死を悼む悲劇的な場面でした。それと同じ頃、伸子は靴を脱ぎ、海水に体を濡らしながら海の中へと歩いていました。

リア王を演じ切った兆吉はその場に倒れ込んでしまいます。そこに、行男が現れ兆吉に道路に出るよう促してきました。道路には兆吉を施設に送り返すべく、由紀子が運転手で愛人の工藤とともに待機していました。数分前まで師匠・兆吉への愛を貫こうとしていた行男でしたが、由紀子に大金をちらつかされて容易に兆吉を見捨てることを決めていたのです。兆吉を見送った後、行男は目に涙をためながら自らの行為を笑っていました。

由紀子は兆吉を車に乗せようとしますが、兆吉が自分を亡くなった妻と勘違いしていることに衝撃を覚えます。由紀子は最後に親子の会話を持とうとしますが、兆吉は構わず自らの役者人生を振り返っていました。母が役者の夢を応援し続けてくれたこと、映画「素晴らしき哉、人生!」に深い感銘を受けたこと、努力の末に主役の座を勝ち取ったこと、そして、ローレンス・オリヴィエのような芝居をしたいと思っていること…しかし、兆吉にはそれが叶わぬ夢であることはわかっていました。兆吉は施設に戻りみんなの思い出の中で生きて行きたいと伝え、由紀子はその言葉通りに車を施設へと向かわせました。介護施設の前で兆吉を降ろすと、兆吉は丁寧な口調で感謝の言葉を由紀子に伝えてきました。涙を抑え車に乗り込む由紀子でしたが、すぐにその表情には笑顔が浮かび、工藤にドライブに行きたいとせがみました。そんな由紀子に工藤はただ一言、「悪党」と言葉を返すのでした。

由紀子がいなくなったのを見計らって、兆吉はもう一度海辺へと向かいました。海辺に着いた兆吉は上機嫌に「素晴らしき哉、人生!」の挿入歌「蛍の光」の鼻歌を歌っています。そして、兆吉は海の向こうにいる見えない観客に向かって挨拶の文句を語り始めました。しばしの沈黙の後、兆吉による一人舞台が始まりました。「お前たちのうち、誰が一番この父の事を思うておるか、それが知りたい」。兆吉は夕陽が輝く海に向かって進み始めました。体を海水に浸しながらも演劇を続け、愛娘の死を前にして狂乱するリア王の言葉を叫ぶ兆吉。セリフを言い終えると、兆吉は海の中に倒れ込んでしまいました。そのまま溺れ死にするかと思えたとき、兆吉の体は勢いよく起き上がりました。混乱する兆吉の体を力強く抱えていたのは、兆吉がコーディーリアと錯覚した実の娘、伸子でした。

みんなの感想

ライターの感想

固定カメラでじっくり長廻しで役者の演技を撮り、一方で感情がぶつかる場面では手持ちカメラを使用するなど、メリハリのあるカメラワークが物語を盛り上げます。主役級の俳優たちが出演していますが、そのすべてを圧倒する存在感を放つのが仲代達矢です。前半はどこかコミカルで可愛らしい場面が続きますが、終盤に見せるリア王の独白では長いセリフを堂々と語り、それまでの物語を忘れさせるような迫力を見せていました。仲代達矢という俳優の凄みがダイレクトに伝わってくる作品です。

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