「3月のライオン前編」のネタバレあらすじ結末

3月のライオン 前編の紹介:2017年3月18日公開の日本映画。羽海野チカの人気コミックを『るろうに剣心』シリーズの大友啓史・監督が、神木隆之介・主演で実写映画化した2部作の前編。孤独な青年棋士が三姉妹との出会いを通して成長していく姿を描く。主人公を癒す三姉妹を倉科カナ、清原果耶、新津ちせが演じ、ライバルの二海堂を特殊メイクによってまるで別人に変身した染谷将太が熱演。

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予告動画

3月のライオン前編の主な出演者

桐山零(神木隆之介)、島田開(佐々木蔵之介)、後藤正宗(伊藤英明)、宗谷冬司(加瀬亮)、川本あかり(倉科カナ)、川本ひなた(清原果耶)、川本モモ(新津ちせ)、川本相米二(前田吟)、幸田香子(有村架純)、幸田柾近(豊川悦司)、林田高志(高橋一生)、神宮寺崇徳(岩松了)、柳原朔太郎(斉木しげる)、三角龍雪(中村倫也)、松本一砂(尾上寛之)、山崎順慶(奥野瑛太)、安井学(甲本雅裕)、川本美咲(板谷由夏)

3月のライオン前編のネタバレあらすじ

簡単なあらすじ

①幼くして両親と妹を失った桐山零は、父の親友のプロ棋士・幸田に引き取られて幸田家で育つ。桐山は中学生でプロ棋士となって幸田家を出たが、父に見捨てられた実子の歩は引きこもりになり、香子は妻のいる後藤に走った。 ②居場所を作れず模索する桐山は、川本三姉妹と出会うことで居心地のよい場所を作る。島田に頭をかち割られた桐山は将棋の世界の厳しさを知り、やがて将棋と向き合う覚悟を決める。

【起】- 3月のライオン前編のあらすじ1

…九年前、平成十八年(2006年)。
両親と妹が交通事故で他界し、八歳の息子・桐山零だけが取り残されました。葬儀の席で、桐山は居心地の悪い思いをします。
医者であった父が趣味の将棋をやめ、個人病院を継いだばかりだったのですが、夫婦と妹の乗る乗用車が飲酒運転のトラックの巻き添えになり、死亡したのです。
父の病院は妹と妹婿が継ぐことになりそうですが、幼い桐山を引き取ってくれそうな親類縁者はいませんでした。
いたたまれなくなって席を立とうとした桐山の前に、父の将棋仲間の友人・幸田柾近が立ちはだかりました。幸田は桐山に「君は、将棋、好きか?」と聞きます。
桐山はしばらく無言で佇んでいましたが、やがて口をきゅっと結ぶと「はい」と答えて幸田を見上げました…。

平成二十七年(2015年)、梅雨入り前。
東京都中央区、六月町(注:架空の町)。
川の近くのアパートの三階から川を見下ろした十七歳の桐山は、殺伐とした部屋で着替えを始めます。部屋は無駄なものをそぎ落とし、カーテンすらありません。テレビはあるものの付箋が貼られて使われておらず、たまに聞いてもラジオニュースくらいです。
階段をおりた桐山は、住んでいるアパートから徒歩で最寄りのJR八丁堀駅まで歩き、電車に乗って千駄ヶ谷駅で降りました。
神社を通り、坂道をくだって着いた先は、将棋会館です。
桐山は中学生で史上五人目のプロ棋士になった青年で、現在は五段です。
将棋会館では桐山の師匠で養父でもある、八段の幸田との対戦の日でした。
また兵庫県姫路市の書写山圓教寺(えんきょうじ)では、第73期名人戦の第七局が開かれています。宗谷冬司・名人と後藤正宗・九段(各自、後述)が今日も対局する予定で、封じ手の開封の後「3四歩」と読みあげられました。後藤から指します。
宗谷名人は既に名人戦を四連覇しており、通算で十一期の記録を持ちます。その強さは断トツで、桐山が幼い頃から既に宗谷名人は孤高の人でした。
桐山は幸田と向かいます。「元気だったか、零」の問いには無言でうなずき、対局も無言で行ないました。
その日の姫路は午後から雨になり、時折雷鳴も響き渡ります。東京では夜半から雨になりました。
幸田は「はあー、もう無いのか」と呟くと「負けました」と投了(敗北を認める)します。
同じ頃、後藤も宗谷名人の前で打つ手がなくなり、あぐらをかいて悩んでいました。
「ちゃんと食べてるのか」という幸田の問いに「はい」と答えた桐山ですが、「急に家を出てったから、香子も歩も心配してるぞ」と言って去る義父には無言で、去ったのち小さく「嘘だ」と呟きました。

その夜、帰宅した桐山は、やはり家でも将棋の勉強をしています。
休憩でカップラーメンを啜っていた桐山は、ラジオニュースでは自分と同い年の十七歳の少年が実父を刺したニュースを聞き、昼間の出来事を思い出しました。
ラジオのニュースのように父親を実際に刺したわけではありませんが、桐山が義父を敗北に追いやったことで、胸の奥に苦い想いが湧きあがります。
続いてのニュースは宗谷名人が対局に勝利したニュースでしたが、桐山は再び盤に向かっていました。

桐山は普段、私立駒橋高校に通っています。しかし教室に居場所のない桐山は、昼休みを屋上で独りで過ごしています。
そこへ担任の中年男性・林田教諭がやってくると、「対局料は振り込み?」「考えたくないんだけど、お前、俺より月給高くね?」と、ずけずけと質問しに来ました。
「友達いないくせに」と言われた桐山は、「言われなくても分かってますよ」と答えます。
その日、将棋会館の事務室で、幸田がその後四連敗を喫していると知った桐山は、自分が引導を渡したせいだと落胆します。
先輩棋士の松本と三角(みすみ スミスというあだ名もある)に誘われた桐山は『王将』という高級クラブへ行き、未成年なのに酒を呑んで悪酔いしました。
路上で酔いつぶれて倒れている桐山を見つけた二十代前半の女性・川本あかりが見つけ、声をかけます。泣いている桐山を家に連れ帰ると、寝かせました。

翌朝、桐山が目覚めると、モモという川本家の三女の幼稚園女児が顔を覗きこんでいました。モモは桐山が目覚めたのを見て「生き返った~」と言います。
川本家には長女・あかり、次女・ひなた、三女・モモの三姉妹がいました。この日はいませんでしたが、母方の祖父・相米二(そめじ)も住んでいます。猫も二~三匹います。
川本家は、桐山が住む六月町と川を隔てた向かいの、三月町に住んでいる一家でした。桐山は覚えていませんが、前の晩に桐山は自己紹介したようで、登校直前のひなたも名を知っています。
二日酔いで苦しむ桐山をよそに、モモとあかりがまず出かけ、続いてひなたがご飯を食べると出かけていきました。ひなたは出て行く前に家の鍵を渡し「鍵は煙突のある店、三日月堂に預けといて下さい」といって、さっさと登校していきます。
学校に通学した桐山は、授業中も川本家の鍵を見つめます。三姉妹には何か、あたたかなものがあって、鍵にもそのあたたかさが宿っているようでした(キーホルダーはリスポッケ先生)。
放課後、エンブレムに王将を掲げたリムジンが桐山の高校に現れ、拡声器を持った二海堂晴信が「桐山、君に大事な用がある、出てこい」と大声で騒ぎました。出て行くまでいつまでも大声で迷惑をかけそうなので、急いで桐山は出ていきます。
二海堂は桐山とほぼ同年齢のふくよかな青年で、裕福な良家の子息でした。幼い頃から子供将棋で桐山と対局を重ね、二海堂の方は桐山をよきライバルと思っています。二海堂は現在、四段です。
この日の二海堂の用事は、日本将棋連盟より新人戦のトーナメント表が発表されたので、それを届けにきたのです。桐山が家を出て独り暮らしを始めており、電話番号が変わったことを教えなかったため、学校までこうして押しかけてきたのでした。
桐山はじいや(原作では執事の花岡)にリムジンに乗せられ、勝手に家まで送られます。
二海堂は桐山の家まで押し掛け、シベリア産とウクライナ産の羽毛布団を引っ越し祝いに贈りました。そのまま二海堂は居座って、桐山と対局練習しながら、Aブロックの桐山とBブロックの二海堂が勝ち進めば決勝で対戦できると話します。
その話の最中に、鍵を渡しに行くのを忘れた桐山は、家を飛び出して三月町の三日月堂へ行きました。
あかりたちの祖父は桐山を見て、史上五人目の中学生プロの桐山だと看破します。初めてそれを知ったあかりたちは、驚きました。

川本家でまたもや夕食をごちそうになった桐山は、たくさんのおかずを前にして、卵焼きのおいしさに思わずがっつきました。
それを見た次女・ひなたが「お姉ちゃん(あかり)はね、スズメ、猫などを拾ってくるのよ。ガリガリなのをフクフク(ぽっちゃり)にするのが好きなの。でもまさか人間を拾ってくるとはね。大丈夫、お姉ちゃんがすぐにフクフクにしてくれるから」と言い、それを聞いた桐山は苦笑します。
帰宅する桐山に、あかりはお土産のおかずを持たせました。「六月町はすぐ近くだから、またいつでもおいでよ」と言われた桐山は、三人に見送られながら川本家を辞去します。
橋を渡りながら帰る桐山の心は、あたたかなもので満たされていました。 この映画を無料で観る

【承】- 3月のライオン前編のあらすじ2

季節は巡り、夏になります。
事務室では獅子王戦の話題が行き交っていました。三角は後藤にこてんぱんにやられたそうです。
スーパーでインスタントラーメンとカップ麺を買い込んでいた桐山は、川本家の三女・モモに見つかりました。あかりに「そっか。桐山君は私が作る料理より、カップ麺の方が好きなんだ」と言われた桐山は、遠慮していた川本家の夕食に招待されます。
その日はあかりたちの叔母・美咲も来ており、祖父も加わっての六人の食卓は、賑やかで楽しいひとときでした。桐山がついぞ味わったことのない、家族で囲む食卓の末席に参加させてもらっています。
夕食後、亡き祖母と母の送り火をしていたあかりに、モモが「どうしてお母さん、向こう(あの世)へ行っちゃうの?」と質問します。
それを聞いた次女・ひなたが涙をこらえ、「コンビニにマンガを買いに行ってくる」と言って出かけていきました。あかりに頼まれて桐山はひなたのあとを追います。
ひなたが走って行った先はコンビニではなく、川のそばでした。黙ってひなたの横に寄りそう桐山に、ひなたは「人の前で、泣いちゃダメだと思って。ごめん、すぐ戻るから」と言います。
桐山は無言でした。ひなたは桐山に、家族のことを思い出すか質問します。
桐山はそれには答えず、ただ「…ちゃんと泣いてあげるのは、いいことだね」と言いました。言いながら、自分が家族を失ってから「ちゃんと泣けていないこと」を痛感します。

先輩の松本と対局して勝利した桐山は、「先輩に勝ってただで済むと思うなよ。おごれ」と言われました。三角と松本を連れた桐山は、あかりの勤めるバー『美咲(あかりの叔母が経営している)』へ連れていきます。
あかりの美しさを見た三角と松本は、すっかり夢中になりました。あかりが桐山のことを心配し「いじめられていないかしら。たかられていないかしら」と言ったことで、バーの会計はあかりの前で「いいかっこ」をしたい松本持ちになります。
あかりはその席で、桐山が両親と妹の死後、プロ棋士の幸田に引き取られて内弟子になったことや、中三でプロになって以後、家を出て独り暮らしを始めたことを聞きました。
「なんで家を出ちゃったの?」と聞くあかりに、桐山は「出るしかなかったんです」と言葉少なに答えました。
桐山がアパートに帰宅すると、部屋の外で義理の姉・香子が待っていました。様子を見に来た、足が冷えた、トイレに行きたいと言って部屋に上がり込みます。
風呂場で足湯をして温めた香子は、「なんでこの町にしたの?」と六月町に住む理由を聞きました。「川が広くて綺麗だから」と答えた桐山に、ずっと一緒に暮らしていながら、桐山が川を好きだったとは知らなかったと言います。
桐山は「一緒に住んでいても、互いのことが全部わかり合えるとは限らない」と言うと、香子は「私から逃げたくせに」という言葉をぶつけました。
父・幸田と対戦して勝利した桐山におめでとうと言った香子は、もう父とはしばらく会っていないと答えます。
香子は妻子持ちの後藤・九段と交際していました。まだ付き合っているのか、そんなに好きなのかと詰問する桐山に「大好きよ」と香子は答えます。
その夜、香子は桐山の家に泊まりました。香子にベッドを明け渡して自分は床に寝た桐山は、眠れずに幼少時代のことを思い返します。

…九年前。
桐山は自分の父の親友でもあるプロ棋士・幸田に内弟子として引き取られます。
幸田家には、桐山よりも数歳年上の義姉・香子(きょうこ)と、桐山と同い年の義弟・歩(あゆむ)がいました。
引き取られた当初、桐山は将棋で香子に負けました。歩にも負けます。
将棋で頭がいっぱいの幸田の家で居場所を作るには、将棋で強くなるしかないと桐山は思いました。そこで、必死で将棋の勉強をします。
独りで勉強を重ねる桐山に香子が近寄ってくると「零(れい)」という名をからかい始めました。わざと「零(ゼロ)」と呼び、「でもぴったりよね。家族もいない、友達もいない、帰る家もない。この世のどこにも居場所なんてないんじゃない。才能もゼロだよ、あんた」と言います。
香子の言葉は、常に桐山の心の深い部分を刺しました。それは、我の強い香子にそれだけ桐山が惹かれていたからかもしれません…。

現在の翌朝。
桐山が対戦する相手・安井が「負けると呑んで荒れる。それがきっかけで次に負けたら離婚」ということを告げた香子は、「でも娘さんはクリスマスまではパパと一緒に過ごしたいんだって」と言います。対局は来月、十二月二十四日、クリスマスイヴの日です。
「わざと負けたりするんじゃないかって心配してるのよ」と、香子は言い添えました。
対局の日、安井はクリスマスプレゼントの袋を携えて、将棋会館に現れます。桐山は安井との対戦を開始しました。
安井が悪い手を指した瞬間、「投げた(あきらめた)顔」をした桐山は、いやな予感がします。桐山には、まだ安井が起死回生を図る手があるのに気づいたのですが、安井はやる気がなく、とうとう煙草を吸い始めると、煙を桐山の顔に吹きかけて「負けました」と投了します。
「8六歩から嫌みをつけて9五に桂に攻められてたら」と桐山が指摘すると、安井は納得はしますが「俺には見えなかった」と言って、感想戦もいいだろと言って立ち去りました。
その態度が、昔の香子と歩の姿と重なります…。

…幼い桐山が将棋の勉強を重ね、めきめき頭角を現し始めると、香子と歩が負けることが多くなりました。
香子は負けると桐山に平手打ちをし「いい気にならないで、ゼロのくせに」と言います。

安井が忘れたクリスマスプレゼントの袋が、それを思い出しかけた桐山の目に留まります。将棋会館を出た桐山は安井に追いつきますが、安井は既にワンカップ片手に呑み始めていました。
桐山がプレゼントの袋を持って行くと、ひったくった安井は「最後のクリスマスだったのにな」と言って去ります。
やりきれなくなった桐山は、クリスマス一色の街をひたすら走りました。ひとけのない場所まで移動すると大声で叫び、「みんな俺のせいかよ。じゃ、どうすりゃよかったんだよ。弱いのが悪いんじゃないか。もっと勉強しろよ。こっちは全部懸けてんだよ。ほかには何もねえってくらい、将棋しかねえんだよ!」振り絞りました。
不満を抱えてアパートに戻っても、桐山がするのは将棋の勉強です。勉強をしながら、昔のことを振り返ります…。

【転】- 3月のライオン前編のあらすじ3

…幸田に葬儀の席で「君は、将棋、好きか?」と聞かれた時に「はい」と答えたのは、嘘でした。桐山の「生きるための」嘘です。
両親と妹をいっぺんに失った桐山は、八歳でありながら、自分が身を寄せる場所がなくなったことに気づきました。桐山は幸田に引き取られます。
幸田の生活は将棋中心でした。幸田に愛されるためには将棋で強くなる必要があり、桐山は居場所を作ろうとして必死で勉強しました。
クリスマスの時期。子ども三人に幸田からのプレゼントが渡されます。
香子には携帯電話、歩には超人気のゲームが与えられましたが、桐山には将棋の駒が贈られました。それはあたかも「幸田が桐山の将棋だけを認めた」ように見え、香子と歩の表情が凍り付きます。
桐山が中学に上がる頃には、差が歴然としていました。
ある日、香子と歩は奨励会を辞めろと父に言われます。
歩はショックで部屋にひきこもり、香子は父に楯突きました。しかし幸田は「零に勝てないならこれまでだ。初段へ行けば、もっと強い奴がごろごろいるんだぞ」と諫めます。
香子は「私、ずっとプロになりたくて」と言いますが、父は「将棋以外の人生もあるさ」と声をかけました。
家を出ようとした香子に、桐山は「僕が出ていく」と言います。「僕なら、どこへ行っても心配する人がいない」と言った桐山は、プロ棋士になってから家を出ました…。

現在。
桐山は安井との対局後、風邪を引いて寝込みます。松本と三角に店を教えてもらった将棋連盟の会長もあかりの店に入り浸るようになり、しばらく見かけていないと聞いたあかりたちは、桐山のアパートを訪ねました。
桐山は独りで寝込んでいました。ドアチャイムの連打とモモの「レイちゃん」という声に驚いてドアを開けると、マスクをつけたあかり、ひなた、モモが立っていました。下にタクシーを待たせてるから、早く身の回りのものを持って出てこいと言います。
病院で診察を受けた桐山は、そのまま川本家で看病してもらいます。あかりは携帯の着信履歴を見せながら「心配させているうちは独立しているとは言えない」と言います。そこには幸田父からの着信履歴が並んでいました。
桐山は川本家で、年末年始を過ごします。

新春。
川本家で「食べておいしい現代風おせち」を囲みました。テレビでは、桐山と森崎六段の対局が流れています。
二海堂が熱い解説をしていました。二海堂は解説ではなく、途中から桐山への個人メッセージになっています。
「攻めるだけじゃなく、ちゃんと守れ。自分自身を大切にしろ。それができないのが『伸び悩み』の原因だ!」と言われた桐山は、ついむきになって「なんだよその、上から目線!」と怒りました。
川本家と初詣に行った桐山は、おみくじでも末吉で「粘りが大事」と書かれており「二階堂四段の言うとおりだ」とみんなに指摘されます。
桐山はそこで、後藤と歩く香子を見かけました。桐山は香子を引き留め、後藤にも家族を大事にしろと言いますが、後藤に殴られて鼻血を出します(殴られた背景は後述)。
後藤は「なにお前、神? これがよくてこれが悪い。全部お前が決めるのか」と返します。
獅子王戦で桐山が次(島田八段)に勝つと、対戦相手は後藤でした。桐山は、もし自分が後藤に勝ったら家に帰ってくれと、香子に頼みます。
桐山のところへ川本三姉妹がやってきました。香子はそれを見て「今度はこの人たちなんだ。また他人の家族に不幸ぶってすり寄って、家族をめちゃめちゃに壊すのね」と言って立ち去ります。
桐山はあかりたちに「僕、今日は帰ります」と言うと、将棋会館の事務室に立ち寄り、後藤の棋譜をコピーして帰りました。家に帰って研究します。

後藤は本格居飛車と重たい地引を指す人物で、長期戦でも隙がないことで知られていました。後藤と当たるには「まず、その前の対局で勝たなきゃな」と担任の林田先生に言われますが、後藤に殴られた口惜しさから、桐山は後藤のことしか見えていませんでした。
次の対戦相手は中年男性の島田開・八段です。「油断して、足元すくわれんじゃねえぞ」と林田先生に言葉を重ねられますが、桐山の耳には届きませんでした。
獅子王戦トーナメント準決勝、島田と桐山の対局が始まります。
定跡(じょうせき)どおり相矢倉(あいやぐら)でスタートした対局ですが、桐山は前のめりで盤面しか見ていませんでした。島田とは指しにくく、玉(ぎょく)を堅く囲って…攻めにいったつもりがいつのまにか守りに入っており、桐山に悪い手になっていました。
金の前に桂を指された桐山は、思わず顔を上げます。その桐山の顔を見て「やれやれ。やっとこっちを見たな」と島田が言いました。桐山の目が覚めた瞬間です。
島田は「じゃ、続けようか」と言います。
後藤への私怨で後藤のことばかり考えて、目の前の対局相手・島田のことをサブキャラ扱いしていた桐山は、猛烈に恥ずかしくなりました。取り乱す桐山は「落ち着け桐山、まずは深呼吸をしろ。呼吸が浅いと視野が狭くなる。広く見渡して、最善の道を探せ」と、島田に言われたように思います。
すべてを見透かされているように感じた桐山は、打つ手がなく投了しました。

会館を出た桐山に、後藤が「A級なめてんじゃねーぞ」と声を掛けますが、桐山は反駁する気力もありません。それほど己の浅はかさを思い知り、打ちのめされていました。
香子も桐山の近所のアパートの川べりに現れると、家に何か言ったのかと文句を言います。クレジットカードが止められたうえにいろいろと質問されたそうで、「それは、家出しているからじゃ…」と桐山が指摘します。
差し入れを持って現れた三姉妹と、香子がバッティングしました。香子は長女・あかりを人妻、ひなたとモモをあかりの娘と勘違いしていました。三姉妹と聞いて驚きます。
その夜もまた香子は桐山の部屋に泊まります。
香子は父・幸田に怒っていました。「『将棋以外の人生もあるさ』って心にもないこと言って」と文句を言います。
…桐山が幸田家を出た日、香子は桐山に「本当に出て行くの? 逃げるんだ、私から」と言いました。
桐山もそう感じていました。引き裂かれるような思いで家を出て、何も変わらないまま、変えられないままです。香子とも、「きょうだい」にも、他人にもなりきれないまま、現在に至ります…。
(注:明確には描かれないが、家を出る直前の桐山は香子に淡い恋心を抱いていたように思われる。自己主張ができない自分とは対照的に、思うまま激情を発せられる香子に、憧れを抱き、惹かれていた)

【結】- 3月のライオン前編のあらすじ4

島田と後藤の対局が行われ、桐山は林田先生に「自分を叩きのめした相手は最高の教科書なの」とけしかけられ、将棋会館に見にいきます。
島田は胃弱で、故郷・山形の期待を一心に背負っていました。一方の後藤は、もうよくはならない意識不明の妻を抱えており、タイトル戦をほしいところです。
(後藤は香子という愛人を持ちながらも、植物人間の妻を病院に見舞いに行き、世話をしていた。後藤の家庭の事情を知らない桐山が、簡単に「家族を大事にしろ」と言ったことで後藤の怒りを買い、それで後藤は桐山を殴った)
獅子王戦は長引きました。
学校を早退して将棋会館に駆けつけた桐山は、マスコミに囲まれる後藤と、対局の和室で放心する島田を見て、勝敗が分かりました。島田の方が勝利していました。
負けを悟った者に対し、勝利する側は最後の一手まで気が抜けないため、激しく消耗しているものなのです。
桐山は島田の元へ駆け寄ると「研究会に入れてください」と頼みました。島田は「変な奴だな」と呟くと、「お前はまだまだ強くなれるよ」と答えます。
島田の取材には、地元・山形から『山形ジャーナル』の泉田が取材に来ていました。

島田の研究会には、二海堂も参加しています。二海堂は昔から島田の門下で勉強していました。
研究会にて、ある盤面を見た桐山が「3七銀がきもちわるい」と言ったのを聞き、島田が言語化してくれと言います。
(注:映画ではこのシーンは深く掘り下げず。原作では、桐山が発した「きもちわるい」という言葉をかつて宗谷名人も吐いたため、島田は詳しく聞こうとしていた)

獅子王戦は島田の勝利で終わりましたが、並行して桐山や二海堂は、新人戦も戦っていました。Aブロックの桐山は勝ち残ります。
Bブロックの二海堂は、あと一人となったところで対局相手の山崎に負けました。対局途中に倒れて救急搬送されたのです。
入院先に駆けつけた桐山は、二海堂が一生付き合っていかなければならない難病に侵されており、そのせいで太っていたのだと知りました。
それでも二海堂は対局相手の山崎にぎりぎりまで粘り、一分将棋で(持ち時間を使い切ると制限時間が一分以内の将棋に持ち込まれる)138手まで持ち込み、優勢に転じた矢先のところでした。
二海堂と山崎の棋譜を見直した桐山は、それを「まるで一編の冒険小説のようだ」と感じます。

新人戦の決勝戦が開かれました。Aブロックの桐山は、Bブロックで二海堂を蹴落とした相手、山崎順慶・五段と当たります。
入院先の個室で、二海堂は対局を見ていました。学校の職員室では林田教諭が、将棋会館でも会長たちが見入っています。
桐山の対局を見ながら、二海堂は島田に「桐山は俺の恩人なんです」と言いました。幼い頃から身体が弱く、将棋しかできなかった二海堂にとって、子供将棋で顔を合わせる桐山は「俺より強い奴がいる。俺より勉強している奴がいる」と励みになる、かけがえのない存在でした。
桐山は二海堂と山崎の棋譜を見直して、気づいたことがありました。山崎は二海堂の体調が悪いことを知っていて、わざと千日手(せんにちて 同じ局面を繰り返す、長期戦)に持ち込んでいたのです。二海堂のためにも負けられないと思います。
山崎も桐山に負けるつもりはありませんでした。桐山をまっすぐ見つめる山崎の闘志に燃える目が「お前だって、自分を育ててくれた師匠である義父を、蹴落としてきたんだろう」と語っています。
陣形を崩した桐山は、思い切った勝負に出ようとしました。飛車をふりかぶった桐山の手が、しかし途中で止まります。
二海堂の言葉「カッコつけるな桐山。本当に勝ちたいんなら、粘れ」という声が聞こえたように思えました。かつて桐山の勝負で解説に立っていた二海堂の発言です。
飛車を持った桐山はそれをてのひらに包み、改めて手の中にある飛車を見つめました。
桐山の心に、もうひとつの声がよみがえります。
「落ち着け桐山。広く見渡して、最善の道を探せ」…島田の声です。
深呼吸をした桐山は飛車を戻し、歩をひとつ前へ進めました。
その頃、川本三姉妹の祖父が桐山の対局を知らせ、三姉妹と祖父もテレビに見入ります。
山崎が攻めてきましたが、やがて山崎は形勢不利に陥ります。
窮地に陥った山崎の、駒を持つ指が震えていました。それを見た桐山は、山崎も勝つために必死だった、ボロボロになってまでも勝ちたいと思っていたのだと気づきます。
桐山は冷静さを保ったまま、山崎に勝ちました。テレビで見ていた林田教諭、川本家、会長、二海堂たちは喜びます。
桐山はまだ実感できずにいました。ただ、気の遠くなりそうな日々を、ただ、指して、指して、指して…そうして生きてきたことを思い起こしていました。
帰り道、香子からお祝いの電話がかかってきます。いつものように皮肉交じりの電話に対して、桐山は素直に「ありがとう」と言えました。

久しぶりに幸田に会った桐山は、幸田がその後白星を収めてB2への残留が決まったと聞きます。島田の研究会に入ったのだなと言った幸田は「明日の大盤解説もためになる」と言います。

平成二十八年(2016年)二月二十六日。
獅子王戦の挑戦者となった島田は、桂山荘ホテルで王座に君臨している宗谷と対局します。
宗谷は十数年間、王座に君臨し続けていました。
宗谷は「僕たちの国の、神さまの子どもだ」と桐山は思います。
対局を始めた島田は、みぞおちの中で黒いものが脈打っているようで、生きている実感を味わいます。
桐山は島田に対局前、宗谷のことを聞きました。島田はしばし考えて「人じゃないのかもな」と漏らします。
「頂点に居続けても決してゆるまず、自分を過信しない。だからどこまでいっても差は縮まらない。…だが、『縮まらない』からといって、それが、俺が努力しない理由にはならない。追い抜けないことが明らかでも、届くために進まなければならない」
そう、島田は付け足しました。桐山の心に響きます。
島田は宗谷に苦戦しました。その大盤解説をしながら、桐山は島田を心で応援していました。届いてほしいと思います。
島田は宗谷と対局しながら、「ああ、雪だ。どんなにもがいても容赦なく埋め尽くしてくる、目のくらむほど美しい、白い闇だ」と思います。
周囲も、そしてもう一人の解説員も、島田自身も「勝負あり(宗谷の勝ち)」と思いました。しかし桐山は盤が死んだようには思えません。島田の駒がまだ生きていると主張します。
桐山の発言を聞いた後藤が「ふざけんな」と言って席を立ちます。
桐山は7九角を指して会場を去り、島田の元へ急ぎました。残った一同と、戻ってきた後藤はその手を見て「詰んだ(形勢逆転で、宗谷があと一手で負けた)」と気づきます。
しかし…会場へ行くと、島田は投了していました。島田はその手、活路があったことに気づいていませんでした。
宗谷が桐山と同じ手を指摘します。それは死地に垣間見えた、一閃の雷光でした。
「美しかったんだよ」と言って宗谷は立ち去ります。残された島田は愕然、呆然、悄然としていました。

その二人を見た桐山は、彼らが先輩棋士たちが歩いてきた道のりに思いを馳せます。
それは、倒れても、飛び散った自分の破片(かけら)を拾い集め、何度でも立ち上がって進むしかない、終わりのない彷徨(ほうこう)でした。
そして…「なぜそこまでして進まなければならない」…その答えは決して、誰かの横顔に問うてはならないのだと桐山は悟ります。
その答えは嵐の中で、自らに問うしかないのだと、桐山は身にしみて思ったのでした…。
(映画『3月のライオン 後編』に続く)

(エンド後)後編の予告。
川本家の父親の出現、川本家のピンチ。婚約者を名乗る桐山!?
宗谷の秘密とは。ひなたに襲いかかるいじめ。などなど。

みんなの感想

ライターの感想

開始1時間半くらいまでは、静かに話が進む。盛り上がるのは島田の登場シーンから。
やがて島田と後藤の対局、島田と宗谷の対局でクライマックスを迎えて前編が終わる感じ。
この作品、将棋を知らなくてもじゅうぶん楽しめる。原作ファンの方なら既に御存じだろう。
前編では…正直なところ「川本三姉妹」よりも「香子」メインになってしまっている。
色恋絡みはすべてどうやら後編に持ち越しのようで、前編は将棋メインの回。
線の細い主人公を上手に神木が演じているので違和感がない。また脇を固めるキャストもイメージどおり(特に佐々木蔵之介の島田は原作そっくり)。
後編の予告でいきなり川本家の父親出現と桐山(自称)婚約者発言までバラしちゃってて、ここまでネタバレしちゃってていいのかと思った(笑)。

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