「二重生活(2015年)」のネタバレあらすじ結末

サスペンス映画

二重生活の紹介:2016年公開の日本映画。小池真理子の小説を、文化庁・芸術祭大賞に輝いたドラマ「ラジオ」などを手がけた映像作家の岸善幸が大胆に脚色し映画化したサスペンス。大学院の修士論文のため、見知らぬ男の尾行を始めた女子学生が、男の知られざる姿を知り、尾行にはまっていく姿を描く。

予告動画

二重生活(2015年)の主な出演者

白石珠(門脇麦)、石坂史郎(長谷川博己)、鈴木卓也(菅田将暉)、篠原弘教授(リリー・フランキー)、春日治江(烏丸せつ子)、石坂美保子(河井青葉)、彩夏(岸井ゆきの)、桜井(宇野祥平)、澤村しのぶ(篠原ゆき子)、桃子(西田尚美)

二重生活(2015年)のネタバレあらすじ

簡単なあらすじ

①哲学科の院生・珠は修士論文を仕上げるため、担当の篠原教授の勧めで『理由なき尾行』をすることに。対象者Aを向かいの家の夫・石坂史郎に定めて尾行をすると、石坂は不倫していた。 ②石坂の不倫が妻・美保子に露見し、珠は石坂に尾行を気づかれる。対象者を篠原教授に切り替えた珠は論文を完成させ、篠原教授はそれを読んで自殺した。

【起】- 二重生活(2015年)のあらすじ1

〝何ヵ月か前から、街なかで
見知らぬ他人の後をつけるのが習慣になった。
後をつけるのが面白かったからで、
相手に興味を持ったからではない。〟
       ソフィ・カル『本当の話』より

パソコンを閉じた後、そのLANケーブルを引きぬいてドアノブにかけ、ドアノブとケーブルで首吊り自殺を図った男がいました。ノックの音が響きます…(このシーンは後に出てくる。この時点では場所や人物は分からない仕組み。再び出てくるシーンで人物名と場所を明らかにする)。

白石珠は哲学部の大学院に進学する、女子大学院生です。ゲームデザイナーをする青年・鈴木卓也と、マンションの一室で同棲生活をしています。
珠と卓也との仲は順調でした。
2015年3月のある日、朝から愛し合った2人は、その日の夜に外食しようと約束します。
卓也がシャワーを浴びる間、珠はベランダに喫煙に出て、向かい側の豪華な一軒家に住む住人・石坂史郎、妻・美保子、娘・美奈の一家を見かけます。美奈が補助輪なしで自転車に乗れるよう手伝う家族の姿は、いかにも幸福な家庭を絵に描いたような光景でした。
マンションから出た時、管理人の春日治江さんから卓也と珠はビラを貰います。ゴミ出しのルールを守っていない者が多いので、ごみ捨て場に監視カメラを設置したことを知らせるビラでした。
大学に行った珠は、ゼミの担当の篠原教授に修士論文の作成計画書を見せます。
珠自身が哲学の道に進んだのは、自分の中にある空虚な部分を埋めたいのと、人間に対してあまり興味が持てないからでした。
修士論文のテーマとして『現代日本における実存とは何か』を掲げた珠は、街を行く人100人に無作為にアンケートをとり、それをまとめて提出しようと考えています。
担当教諭の篠原教授は、珠を高く評価してくれていました。
珠のアプローチは哲学のそれではなく心理学あるいは社会学的なものだと篠原教授は指摘し、ある提案をします。
ソフィ・カルの文章を例に挙げた篠原教授は「たったひとりの対象者を追いかけて、生活、行動を観察し、人間とは何かというのを考えてみたらどうか」と言いました。つまりそれは『理由なき尾行』と呼ばれるものです。
ただしそのためには万事を廃さねばならず、つまり尾行を知られてはなりません。尾行を知られた瞬間から、その対象者は尾行を意識してしまうので、意味をなさなくなるのです。
やってみろと勧められた珠は、その場では「考えてみます」と答えました。
帰りに本屋に寄った珠は、『探偵入門』の尾行の仕方のページを読み、尾行とはどのようなものなのか思いを馳せます。
その珠の目に留まった人物がいました。本屋でサイン会が開かれていたのですが、その作家・甲崎恭一に付き添っている人物が、今朝がた見た向かいの家の住人・石坂だったのです。
それを見た珠は試しに石坂を尾行する気になりました。サイン会が終わった石坂の後を尾けます。
尾行の最中に珠へ電話がかかりました。恋人・卓也からで「焼肉キャンセル、別キャラ直さないとならない」というものです。
夕食の約束もなくなったので、珠は徹底して尾行すると決めました。
自動改札で手間取りながらも、必死で尾行します。電車の中でも距離を置いて対象者を観察し、明治神宮前でおりた石坂についていくと、石坂はセルフタイプの喫茶店に入りました。珠も入り、さりげなく見える場所の席に座ります。
目が合いそうになったのでまずいと思った珠は、曲を聞くふりをしました。
しばらくすると、石坂の待ち合わせの相手らしき女性・澤村しのぶがやってきます。
用件は石坂の忘れ物をしのぶが渡しに来ただけのようでしたが、向かい合わせに座ってつっかけを脱いだしのぶは、手の指を石坂に絡めます。その関係はただの仕事絡みの相手ではなく、深い男女の仲のようで、思わず珠は口をぽかんと開いて見入ってしまいました。
石坂としのぶは共に店を出ていきます。それを追った珠は、ビルとビルの隙間で石坂としのぶが熱烈なキスと抱擁、さらには身体を重ねる現場を見てしまい、3回までは往き来したのですが、それ以上は不自然なので離れた場所で待ちます。
しのぶと別れた石坂がタクシーを拾ったので、珠は尾行の対象者を女性に切り替えました。女性はすぐ近くのマンションに住んでいました(つっかけでやって来られる距離)。郵便受けを持って入った場所から、女性がクレア・ド・ルーン南青山に住む『澤村デザイン事務所』を経営していることが分かります。あとはスマホの検索で、フルネームと顔写真で合致確認できました。
面白い、興味深い…と思った珠は、篠原教授の勧めどおり、『理由なき尾行』によって論文を完成させようと考えます。

【承】- 二重生活(2015年)のあらすじ2

帰宅すると、卓也はゲームのキャラクターの直しをしていました。
ゲームの発売が1か月ずれることを卓也は愚痴りますが、珠はヘッドホンで音楽を聞いています。実はこのあたりから卓也は珠との同居生活に疑問を抱くのですが、珠は『理由なき尾行』に夢中になり、気づきませんでした。
すぐさま珠は篠原教授に報告します。篠原教授は「対象と接してはならない。接すると尾行にならない」と念押しします。

珠の、石坂への尾行生活が始まりました。
珠はてのひらサイズのメモ帳を持ち歩き、24時間態勢で石坂が誰といつどこで会ったか記入します。いっぽうで、尾行がばれないように本を読んだり、曲を聞いたり、スマホに見入っている振りをしたりします。
3月下旬、石坂が「来週恵比寿のホテルで泊まれる」と電話をしているのを聞いた珠は、電話の主はしのぶだろうと見当をつけました。
石坂はその後、ケーキ屋でケーキを土産に買い帰宅します。家では「よき父親」です。
石坂が家に入るのを見送った珠に、たまたま居合わせたマンションの管理人・治江が話しかけてきました。おしゃべりな治江は、石坂史郎の情報を補ってくれます。
石坂の家は昔からこの周辺の地主にあたる家系で、石坂の祖母が亡くなって4年後に、石坂たちが妻子を連れて今の家に住み始めたそうです。
石坂は英林出版の部長を務める編集者で、石坂が手がけた本はことごとく売れるとのことです。
妻・美保子は美人で上品で、町内会の雑用でも嫌な顔せずやってくれる、完璧な女性です。
娘・美奈は学志大附属に通う優等生で、「なんでも満たされる家族ってあるのねえ」と治江は締めくくりました。セレブな家庭です。
その日のメモは後日、大学ノートに清書しました。そうして珠は対象者A、つまり石坂の行動を記していきます。
向かいの家の石坂が出て行くと、急いで身支度をして中途半端な言い訳をして出かけていく珠を、もちろん卓也は不審に思います。しかし卓也はそれ以上何も追及しませんでした。

休みの日、洗車の最中に電話が鳴った石坂は、車中で電話を取りました。鉢植えを持って家を出てきた妻・美保子はそれを見て、怪しげに思っています。
珠は冷静な第三者として観察しながら、妻・美保子が浮気を察知しているのではないかと考えました。
恵比寿のホテルで石坂が泊まる夜、珠はロビーでチェックしていました。フロント係の目が気になります。
しのぶが足早に来て直接エレベーターに乗り込みました。ルーム番号は1025と石坂がチェックインした時に知っている珠は、エレベーターに乗ってその階まで行ってみますが、何をするわけでもなく戻ります。
石坂たちが連れだって出てきました。珠は後を追います。
2人は近くのイタリアンレストランで食事を始めました。予約制ですが店内の席が空いたので、珠も入れてもらい、いつ席を立ってもいいように軽食(カルパッチョと白ワイン)を頼みます。
店内で石坂としのぶは少し揉めていました。「俺の何が分かるんだ」「誤解」などの言葉が聞こえてきます。
しのぶが店を走って出て行き、残った石坂は会計をして店を出ました。珠も続いて店を出ようと立ち上がりかけた時、店の外になんと妻・美保子と娘・美奈がいるのに気づきます。
美保子はGPS機能で場所を探り、この店へ来たようでした。
娘を石坂に預けた美保子はしのぶの後を追い、石坂はタクシーで娘を連れて帰ります。
美保子はそのままホテルへ行き、石坂史郎で予約が入っていないかフロントマンを問い詰めました。卓也からの着信がありますが、珠は取りません。
美保子の目を避けてトイレに入った珠は、そこにしのぶがいることに気づきました。しのぶは人目を避けて電話しています。内容は別れ話のようです。
個室から出てきた珠を、泣いていたしのぶが「奥さんに頼まれたの?」と詰問しますが、珠は知らない振りを装います。
フロントで美保子がまだごねていました。その背後をしのぶが通り、美保子が追おうとしましたが、しのぶがタクシーに乗ったので無理でした。
珠は対象者を美保子に切り替えます。
美保子は酒びんを煽って誰もいない道で大泣きし、明け方に始発電車に乗って帰宅します。3月28日のことでした。当然、珠も朝帰りです。

夜、向かい合わせに机に向かっていた卓也と珠は、救急車のサイレンの音を聞きました。サイレンは近くの石坂家で停まります。
妻・美保子が薬を服んで自殺を図ったそうだと、管理人の治江が救急隊員の無線を聞いて言いました。石坂は救急車に乗り込みますが、その際に治江が娘の美奈を預かると申し出ます。
その時、石坂は治江の横にいた珠を見て、はっとした顔をしました。それは石坂が珠の尾行に初めて気づいた瞬間です。

【転】- 二重生活(2015年)のあらすじ3

救急車は去っていき、野次馬も立ち去りましたが、珠はいつまでもその場に残っていました。それをベランダから卓也が見ています。

次の日の朝。
駅前で珠は石坂に待ち伏せされました。「分かるよね、俺のこと。つけてるよね?」と珠に話しかけます。
どうやら石坂はあのあと、管理人の治江にさりげなくいろいろ珠のことを聞きこんだようです。
石坂は珠を、妻の美保子に頼まれて尾行していたものと思い込んでいました。
説明しづらい珠は「私、会っちゃいけないんです、あなたと。それがルールなんです!」と言って、駆け込み乗車します。意外なことを言われたので石坂は乗り損ねました。
珠は電車から降りると急いで篠原教授に連絡を取りますが、教授とは連絡が取れませんでした(後に記述、この時篠原教授は母親の最期を看取っていた)。
どう対処すればよいのか分からぬ間に、珠の携帯に石坂から電話が入ります。管理人・治江から聞いて石坂がかけたのです。
珠は無視したいのですが、卓也に促されて電話を取りました。
「ちゃんと話そう」と言われた珠は、石坂に会いに行く約束をします。
電話を切った後、相手を卓也に聞かれた珠は「教授」と答えますが、嘘が見抜かれました。
仕方なく珠は哲学の論文の題材で、石坂を尾行していたことを卓也に言います。しかし卓也にとっては、その行為自体が意味不明でした。
卓也はかねてから珠との間に距離を感じていました。一緒に暮らしていて仲は順調であるように見えますが、同じ空間にいながら別の音楽を聞いている珠に、疑問を抱いていました。
その尾行に何の意味があるのか、自分たちはなぜ一緒に暮らしているのかと責め、卓也は怒って部屋を出ていきます。珠もどうしてよいか分からず、泣くだけでした。

石坂に会った珠は、卓也につづいて石坂に、洗いざらい正直に答えます。
石坂としても、想定外の尾行動機でした。てっきり妻に頼まれて尾行していたのだと思っていた珠が、自分の修士論文の題材のために石坂を対象者Aとして勝手に尾行していた…と聞いて、肩すかしを食らいました。珠は提出用のノートを見せ、どうやら本当らしいと知った石坂は、無言で困った顔をします。
夜、呑みに行った石坂は、遅ればせながらちくちくと珠に嫌味を言い出しました。「自分は何もしないで、頭の中だけで人の秘密をこねくり回して面白かったか」と言い、自分が対象者Aであることを拒否します。「書くな」と言います。
ところが…珠は石坂以上に混乱しており、呑みの席でぐいぐい呑んでいました。石坂も気づかぬうちに珠は泥酔していました。
「書くな」と言う石坂に珠は「お願いします」とすがりつき、そのままダウンします。
困った石坂はホテルに珠を連れ込みました。珠が色仕掛け戦法か、「書かせてくださいよ」と言いながら迫ってきて、石坂も寄った勢いで事に及ぼうとした時に、「パパ パパ」というメール着信音が鳴って、石坂は我に返りました。珠も気まずい思いをします。
気まずい珠は、過去の話をしました。高校2年の時に珠が好きで初めて身体を許した男性は父の親友だった人であること、父は8歳で亡くなったこと。肉体関係を持ったものの、その後相手の男性はガンで急死したこと。
父に続き好きだった男性も亡くなったことから、なぜ自分は取り残されるのだろうと考えるようになった珠は、心の深いところが空っぽのままだと思い、それを伝える術を持ちたいと思って哲学の道に進みました。そのことを話します。
石坂の尾行をしているうちに、自分の空っぽの部分が埋まっていく感覚があったので、何か分かるかもしれないと思っていた…と珠は言いますが、石坂は「陳腐だな、お前の物語。ありふれてるよ。少しも面白くない。この世界に満たされている人間なんていないんだよ」と言いながらも、「使っていいぞ、俺の秘密」と最後に言ってくれました。
そのままタクシーに乗り、石坂と珠は帰りますが、ホテルの出口で煙草を吸いながら張っていた者がいました(明確に顔は示されないが、卓也)。

篠原教授に会った珠は研究の進み具合を訊かれ、対象者Aに悟られたことも書いた資料を見せました。
篠原教授は、そのうえで「対象者を変えてでも、続けてください。私はあなたがどのように考察するのか知りたい」と言います。
珠は、対象者を篠原教授に切り替え(篠原教授は「対象者B」)、尾行を再開しました。帽子を目深にかぶってばれないよう、石坂以上に距離を保ち、珠は篠原教授を尾行します。

【結】- 二重生活(2015年)のあらすじ4

4月。
篠原教授は妻らしき女性・桃子と仲良くスーパーで買い物し、一緒に帰宅します。
珠はその女性が妻と思ってメモをしますが、篠原教授側では全く違うやりとりをしていました。別れのあいさつです。
帰宅した珠に、卓也が会社でデザイン賞を受賞したことを告げ、同棲解消を切り出しました。珠は引き留められませんでした。

夏。
ひとりになった珠がベランダで洗濯物を干していると、向かいの石坂家の一家が出てきました。音で気づいた珠は、いちはやく隠れます。
その後石坂家はなんとか持ち直したようで、妻・美保子も娘・美奈も普段どおりでした。ただ去り際に、石坂が珠の部屋を見上げます。
あとはひたすら論文を執筆し続けた珠は、完成させて、篠原教授に提出しました。
それを読んだ篠原教授は、「優れた論文と評価します。ただ一点、対象者Bの尾行に修正を加えてください」と言い、代行エージェンシー・国下悦男の名刺と劇団のチケットを渡します。

実は…。
遡ること、3月の中旬。ちょうど珠が石坂の尾行を決意した頃。
篠原教授の母・佐代子が肺転移の直腸がん、つまり末期がんと判明しました。余命は2か月と宣告されます。
母・佐代子を安心させたかった篠原教授は、代行エージェンシーに依頼し、妻を演じてくれる女性の派遣を頼みました。そこでやってきたのが桃子という劇団員です。
篠原教授は夫婦の振りを頼むため、結婚指輪も購入していました。なので映画の途中から篠原教授の左手薬指には、指輪が光ります。
桃子は「日常的なところからの役作りをしたい」と言い、篠原教授にお弁当を作ります。それはつかの間、篠原教授にとっては嬉しいできごとでした。篠原教授は桃子から弁当を受け取るたび、食べる前にスマホで撮影しました(桃子への篠原の好意はあったと思う)。
佐代子にも紹介し、結婚したことも告げ、最期も桃子と共に看取りました。桃子は完璧な妻役を演じ切り、母・佐代子が亡くなった時にも泣きながら「お義母さん」と声をかけました。
珠が対象者を篠原教授に切り替えた頃は、その契約派遣が終了し、篠原教授が桃子に感謝の念を告げていた頃でした。篠原教授は「またいつか、お会いできますか」と聞きますが、桃子の方は黙ったまま微笑んで立ち去ります(桃子側は好意がなかったか)。
受け取ったチケットの公演を見て、珠は桃子が篠原教授の妻ではないと知りました。

篠原教授は大学の研究室で、珠の論文に93点の高評価をしました。
その後、パソコンをシャットダウンしてLANケーブルを抜き(冒頭のシーン)、ドアノブにひっかけると首を吊ります。
珠が篠原教授の研究室のドアをノックしますが、応答はありませんでした。

春になりました。
珠も引っ越しのための荷造りをしています。
棚をどけた珠は、そこに卓也が描いた珠のラフスケッチを見つけました。つかの間、珠は切ない気持ちになります。
引っ越しトラックに乗せてもらった珠は、赤信号で停車した車中から、石坂家を見送りました。石坂家は珠に全く気付かず、目の前の横断歩道を通っていきます。横断歩道を渡り切った後、石坂の手が妻・美保子の肩を抱いたので、家庭は崩れるおそれがなさそうです。

〝平凡で、穏やかで、裏切りも隠し事もウソもない。
ひたすら公平な愛だけで満たされている人生など、どこにもない。
人は苦しみからも逃れられない。
ほんの少し、その苦しみを軽くしてくれるもの。
きっと、それが秘密である。
理由のない尾行とは、他人の場所と立場に身を置くこと。
自分を他人と置き換えること。
すなわち、互いの人生、情熱、意志を知ること。
それは、人間が人間にとってかけがえのない存在となる、おそらく唯一の道ではないだろうか。〟
(珠が修士論文に提出した文章の一節)

駅の改札を抜けて渋谷のスクランブル交差点に出る珠と同じ方向に、雑誌を落とす卓也がいました。しかし珠も卓也も互いの存在には気づいていません。
お互い同じ方向へ歩み出しますが、違う道へ分岐していきます(珠と卓也の未来の暗示)。
雑踏を振り返った珠は、最後にふと思います。
『あなたは私のことをどう思っていたのか。私をどうしたかったのか。あなたにとって私はなんだったのか。私は永遠に知らない』
振り返った珠の視線の先には、篠原教授の結婚指輪と愛用のバッグがありました。

(石坂家の夫妻は修復した。石坂としのぶとは、別れたと思われる。
卓也と珠も修復不能。
篠原教授は自殺した。ラストシーンで篠原教授が出てくるが、あくまで心象風景。
篠原教授が珠を買っていたのは本当。
自殺したのは、母親の最期を看取って安心し、珠の修士論文も見られて満足し、いわばこの世の未練がなくなったから。
珠は初恋の男性のように、年上の男性に惹かれる傾向があるようなので、本人も知らぬうちに篠原教授に傾倒していたのかもしれない。
あれこれ深読みできそうなシーンは多々ある)

関連する映画

サスペンス映画

みんなの感想

ライターの感想

難しい&見た後、決していい気分にはならない(どーんと落ち込むほどでもないが)。
小池真理子の原作とかなり異なる。
小池バージョンでは卓也は50代の女優桃子・の運転手をしており、珠は卓也と桃子の関係を穿ってみる。
石坂の不倫を知った後は、妻・美保子と自分を重ねて見るシーンもある。最後まで同棲は解消しない。
いっぽうで、小池バージョンには篠原教授サイドの話は皆無に近い。
提案は確かに教授の「唆し(そそのかし)」ではあるものの、末期がんの母は出てこない。
珠の父は小池バージョンでは健在で、フランスに日本人の女性と再婚して暮らしている。
初恋は19歳設定、スキルス性胃がんで亡くなった父の親友の死がきっかけで2年休学した。
ラストシーンは「珠が新たな対象者(今度は姿勢の綺麗な髪の美しい女性)を見つける」ところで終わる。

映画の感想を投稿する

映画「二重生活(2015年)」の商品はこちら