「大誘拐RAINBOWKIDS」のネタバレあらすじ結末

サスペンス映画

大誘拐 RAINBOW KIDSの紹介:1991年公開の日本映画。82歳の小柄な大金持ちの老女が誘拐された。しかし実行犯の三人組の若者と国家権力とマスコミを手玉に取り、まんまと100億円をせしめるという痛快なクライムサスペンス。日本推理作家協会賞を受賞した、天藤真の同名作品を映画化。

予告動画

大誘拐RAINBOWKIDSの主な出演者

柳川とし子〔刀自〕(北林谷栄)、戸並健次(風間トオル)、秋葉正義(内田勝康)、三宅平太(西川弘志)、柳川国二郎(神山繁)、柳川可奈子(水野久美)、柳川大作(岸部一徳)、柳川英子(田村奈巳)、串田(天本英世)、安西(奥村公延)、吉村紀美(松永麗子)、邦子(岡本真実)、『東京』(嶋田久作)、鎌田(橋本功)、古参(常田富士男)、高野(本田博太郎)、テレビ和歌山報道局長(上田耕一)、長沼(松澤一之)、ラジオ和歌山社長(藤木悠)、ナレーター(寺田農)、佐久間(竜雷太)、テレビ和歌山社長(中谷一郎)、中村くら(樹木希林)、井狩大五郎(緒形拳)

大誘拐RAINBOWKIDSのネタバレあらすじ

簡単なあらすじ

①軽犯罪を繰り返す健次ら男3人は新生活への資金を得るために、紀州一の多金持ちの刀自を誘拐し、身代金5000万を要求しようと企んだ。健次なりに入念に準備を進めて誘拐をしたが、刀自にあっけなく手口を看破される。刀自自らが指揮を取るが、身代金の要求額は100億円だった。 ②刀自はマスコミと警察相手に対等に頭脳線を仕掛け、勝利する。誘拐犯らは金額の多さに受け取りを辞退、金は刀自の庭のお堂の土台に使われた。 ③刀自の行動の動機は息子や娘の命を奪ったうえに、さらに自分の財産までも相続税で奪おうとする国への意趣返し。

【起】- 大誘拐RAINBOWKIDSのあらすじ1

〔大阪刑務所 八月十五日〕
・戸並 健次(雷)…スリで一年二か月。刑務所には何度かお世話になっている。3歳の時に捨てられて養護施設育ち。三人の中ではリーダー格。28歳。
・三宅 平太(雨)…カッパライで二か月。母の病気でまとまった金がほしい。健次らと同年代。
・秋葉 正義(風)…空き巣で三か月。大柄な男。26歳。

健次はスリで服役中、犯罪は割に合わないと思っていました。いっぽうで、前科持ちの自分が出直すためには、それなりの資金が必要だと考えていました。
服役中に計画を練った健次は、出所した後その計画を実行するために、姫路の中古車センターで25万の車・茶色のマークⅡを購入します。
八月十五日は平太と正義の出所日でした。マークⅡで迎えに来た健次は、2人に最後の大勝負として『誘拐』を持ちかけます。
平太と正義は尻ごみしました。年端もいかない幼い可愛らしい子どもを誘拐するなど、人のすることではないと口々に言います。
健次は「誘拐は誘拐でも、可愛い可愛い82歳のおばあちゃんや」と2人に告げました。「しかも紀州(和歌山)一の大金持ちで、持ち山がなんと4万ヘクタールの女あるじや」と言います。
4万ヘクタールと言われてもぴんとこない2人に「大阪がぽっこり入ってお釣りがくる」と健次は説明しました。平太と正義は身を乗り出します。
身代金は5000万で、平太と正義の取り分は1000万円ずつ(健次は3000万)と聞いた2人は、健次の作戦に乗ることにしました。

〔八月十六日〕
健次たちは誘拐する相手・柳川とし子・刀自(とじ)を見に行きます。刀自とはご老人の女性の敬称です。
(以後あえて「刀自」表記なのは、劇中でもずっと刀自と呼ばれるから)
この日は雨で、和歌山の山に車で入り込むと、車がぬかるみで動かなくなりました。仕方なく途中に車を置き、迷彩の雨カッパで3人は山の監視場所へ移動します。
刀自のお屋敷は和歌山県竜神村にありました。
刀自は風呂上がりに体重計に乗り、「ま、こんなもんでっしゃろ」と呟いていました。
部屋に移動し、自分の息子や娘たちの遺影を見ます。
健次たちが見ているのは、車の出入り口の門でした。健次がいうには、お屋敷には大きな玄関があるのですが、刀自が外出する時には車を利用するから、車の出入りを見張っておいた方がいいということです。

〔八月二十九日〕
監視を始めて2週間が経過しましたが、お屋敷に変化は見られませんでした。
そもそも平太も正義も、刀自の顔を知りません。健次は「見たら分かる。まる描いて、チョンチョンチョンや」と答えます。
健次が刀自を知っているのは、その出自ゆえでした。
(刀自と健次の過去は、紙芝居風イラストで説明される)3つで捨てられた健次は愛育園という養護施設に入っていましたが、その施設にやってくるスポンサーが刀自でした。
15~16年前、健次はクリスマスプレゼントに登山ナイフを希望し、却下されます。その直後に健次は園を抜けました。

〔九月五日〕
監視を始めて3週間が経過しました。
9月に入ってから雨続きで、健次たちは苦労しています。また雨続きということで、刀自も外出を出控えているのだろうとのことでした。
和歌山市に借りた賃貸物件に出入りがないと怪しむだろうという理由で、明日、平太が顔を出してくると言います。

〔九月十二日〕
行儀見習いの若い女性・紀美(きみ)が体重計に乗って「500g太ったわあ」と嘆きます。
それを聞いた刀自が、紀美に「お山歩きしまひょか」と誘いました。
9月に入ってから続いていた雨も止み、洗面所から見える山は綺麗です。
監視していた平太は、車の出入り口の門が開いて、白いスカイラインが出てくるのを見ました。後部座席に乗っているのは…「まる描いてチョン、チョン、チョン」の顔の老女です。
それを聞いた健次は反射的に飛び起きました。健次たちはマークⅡで尾行します。
健次たちは刀自の行動を把握して、誘拐できるチャンスを探っていました。屋敷の中に入るのは危険なので、刀自の外出を狙ってさらおうと考えています。
その日、刀自を乗せた初老の男性・安西運転手は、山で刀自と紀美をおろすと、夕方4時に東谷で落ち合うと決めました。
健次たちはというと…車で尾行していると山中では不便だと感じ、バイクを調達してこようと考えます。
紀美を連れた刀自は山歩きしながら、生えている樹木に「45歳、立派な働き者ですな」と声をかけました。その樹木たちは戦争の終わりに植樹したものです。

〔九月十三日〕
車に加え、バイクを用意しました。ホンダのスーパーカブです。
刀自の車は昨日と同じ頃に出てきましたが、今度は反対方向へ向かいました。
健次がバイクに乗り、平太と正義が車で追います。顔は見られないよう、マスクとサングラスをかけています。
途中、車がエンストを起こし、引き返す安西運転手に声をかけられました。咄嗟に平太は車のボンネットを開けて指だけで「手伝いはいらない」と示しますが、安西運転手は山奥に通行しているマークⅡを怪しみます。

〔九月十四日〕
ところで刀自が出かける折には、ご近所の人たちが大勢でお見送りをするのが常でした。
刀自は大人物なので、ただのお出かけでも、やってきて見送る人は多いのです。
この日、健次は道に迷った振りをして村人のひとりに近づき、「今日は西谷という場所へ向かった。明日は瀬尾に行くらしい」という情報を得ました。
明日の行き先を知った健次は、平太と正義に決行を口にします。

〔九月十五日〕
〝瀬尾〟廃道にて。
刀自と紀美が歩いていたところを、健次、平太、正義の3人が取り囲みました。3人とも灰色っぽい綿のシャツに、デニム地のジーンズです。顔はストッキングで覆い、目はサングラスで隠していました。ストッキングの色は「肌色=健次、白色=平太、黒色=正義」です。互いを名前で呼ばず「雷、雨、風」という暗号で呼びます。
誘拐だと健次が告げると、刀自は紀美の解放を要求しました。健次が断ると「肉色仮面はん(肌色のストッキングをつけているので…)」と呼びかけて、メリットとデメリットを話します。
この時点で3人は刀自に翻弄されてしまうのですが、3人たちにその自覚はありません。
紀美を解放すると「誘拐犯は3人の男で、背格好などが露見してしまう」というデメリットがあります。いっぽうで、紀美を拉致すると人質が2人になり、見張りの手間ひとつとっても倍になる煩わしさがあることを告げ、刀自ひとりに絞った方が便利ではないか…と刀自は指摘しました。健次は納得します。
健次は「ほんなら、おばあちゃんがなんでも言うことを聞くことを条件に」ということで、紀美を解放するという契約が成立しました。
刀自は「ほな、手、打ちまひょ」と三本締めをおこないます。つられて健次、平太、正義も手を叩きました。

かくて、刀自を誘拐することは成功しました。健次たちはルンルン気分で山道を下りていきます。
その3人が冷水を浴びた気持ちになったのは、目隠しされた刀自が「ところでアジトやけども、和歌山やないやろな」と言ったからです。図星だったので運転する平太は思わずブレーキを踏みます。後部座席でつきそっている健次が「なんでや」と刀自に聞きます。
和歌山県の警察本部長・井狩大五郎というベテランの刑事がいます。井狩は四浪して大学を出ており、その際には刀自に非常に多大なる援助をしてもらっており、恩人と慕っています。
「井狩はんやったらどない考えるか」と言った刀自は、刀自が住む竜神村を中心にしてコンパスで円を描き、その中で「人口が一番多うて、人の出入りが激しくて、潜伏に一番都合のええところが和歌山や」と言います。そこへ犯人が行く可能性が高いと刀自は言いました。健次は、そうだろうと頷きます。
しかし刀自は2つ手がかりがあると指摘しました。「1つ、犯人がアジトを手に入れたのはそう古い昔やない。1~2か月前」「2つ、マークⅡという車を足に使っている」…ぎくっとした平太がまたブレーキを踏みます。
安西運転手が不審な車を連続して見かけた、それがマークⅡという車だったと言っていた…そう刀自は言いました。
ここまでずばっと当てられると、健次も困ります。
刀自の目隠しを外し、自分たちがマスクとサングラスをして、刀自と交渉をします。
刀自は、井狩本部長の裏をかけるようなアジトに心当たりがないことはない…と言いました。これで3人組は、刀自に頭が上がらなくなります。
かくて3人は刀自の案内で、刀自の家に以前勤めていた初老の女中頭・中村くら、通称:くーちゃん宅へ行きます。くーちゃん宅は周囲から孤立した一軒家で、テレビアンテナもない場所にありました。

場所は変わって。
3人組から解放された紀美は、瀬尾集落で安西運転手と落ち合って、刀自が誘拐されたことを知らせます。
安西運転手はお屋敷に戻ると、早速警察へ通報しました。駐在が知ったのは午後7時13分で、所轄の田辺署へ連絡が入ったのは午後7時14分のことです。さらに和歌山県警に連絡が入ったのは午後7時15分でした。
ところがこの電話を受けたのは、〝東京〟と呼ばれる(最後まで〝東京〟呼ばわり)、いわゆる中央からやってきたキャリア組の若造でした。彼は「刀自」という言葉の意味を知らず、ただの82歳の老婆の失踪ということで、放置します。
刀自のお屋敷には知らせを受け、続々と刀自の娘や息子がやってきました。次男の国二郎(長男は戦死している)、次女・可奈子(同じく、長女は戦死している)、三女・英子、四男・大作(三男は戦死)の順番で、知らせを聞いた4人の子が屋敷に集結します。
午後10時15分、〝東京〟の夜勤のところへ話をしに来た〝古参〟がメモを見て、一大事だと言います。〝古参〟は警察のクリアファイルを見せて、刀自が本部長の井狩の恩人だと答えたインタビュー記事を見せました。
自宅で既に就寝していた井狩のところへ、午後10時20分に電話があります。独身の井狩は何時にその事件が発生したのかと聞き、「午後3時半に発生し、通報を午後7時15分に受けていた」ことを知ると、なぜ放置したのかと言いました。
刀自がお年寄りのご婦人の敬称だと知らなかった〝東京〟を電話口で叱責すると、すぐに井狩は出動します。
井狩は刀自が想像した通り、竜神村を中心にして円を描き、捜索範囲を広めに取りました。誘拐対策本部を県警に置くことに決め、自分が指揮を取ります。
連絡を怠った〝東京〟には懲罰として、ずっと井狩のそばを離れるなと命令しました。

【承】- 大誘拐RAINBOWKIDSのあらすじ2

刀自のお屋敷を訪問した井狩は、4人の子どもたちとも顔なじみです。その4人へ、いずれ身代金の要求があるから、一定程度の金額の金を用意しておくべきだと言いました。
家族たちはどのくらいだろうと言い、「最低1億、最高3億」と見積もって、その程度用意しておこうと話が決まります。金を用意しろとは言ったものの、億単位の金がぽんぽんと気軽に口に出されるので、井狩は今更ながら驚きます。
捜査は公開捜査にさせてほしいと、井狩は家族たちに頼みました。犯人を刺激することになりやしないかと心配する末娘の英子に対し、井狩は「マスコミに知らせて世間を味方につけることで、刀自の身の安全が確保される」と答えます。

さて、刀自の方へ話が戻ります。
刀自の来訪を、くーちゃんは手放しで喜びました。箪笥を倒して駆け付けるほどです。
女中頭のくーちゃんは、なぜかセーラー服の上半分だけを着倒していました。
くーちゃんにとって大事なのは刀自なので、あとの3人組など最初は見えていません。3人組は〝お供の衆〟呼ばわりされます。
刀自はくーちゃんに、しばらく家に滞在させてくれと頼みました。くーちゃんはもちろん、大歓迎です。
この3人も…と刀自が頼むに至り、くーちゃんは初めて3人組に目をやりました。3人は眼光鋭いくーちゃんに、身を縮めます。
サングラスにマスク姿の3人を見て、くーちゃんは「みんな目が悪くて風邪を引いているのか」と洩らしますが、信頼を寄せる刀自が連れている者なので、あまり深追いはしません(分かっている節はあるが、刀自に全面協力するつもり)。
刀自は3人を「雷太郎、風太郎、雨太郎」と紹介します。勝手に太郎とつけました。
夜になり、くーちゃんが寝ます。納屋で健次と正義が眠り、見張りは平太でした。
刀自はいちにちを振り返って「えらいドラマティックな日でしたなあ」と言います。興奮のあまり目が冴えているそうです。
平太は刀自の話し相手になります…。

〔九月十六日〕
朝一番、くーちゃんが寝ている正義を蹴り、さらにのしかかり攻撃で起こして、農作業の手伝いをさせました。
農作業から戻ってきた正義がマスクとサングラスなしなのを見て、健次と平太は驚きます。
正義が言うには、農作業の後に顔を洗うために外してひょいと顔をあげると、若い近所の女性・邦子が立っていて、挨拶されたとのことです。
邦子に顔を見られてしまった後に、サングラスとマスクをかけるのは不自然なので、そのままにしてしまったと言います。
さらに…邦子に自己紹介された正義は、つい本名を名乗ってしまっていました。風太郎は早々に「正義」呼びになってしまいました。
そう告白した正義は、照れながらくーちゃんと邦子と共に、稲刈りに出かけます。
ついでに平太も名前がばれていることを、健次は知りました。前夜、身の上話をしている時に、つい刀自に本名を洩らしてしまったと、平太は言います。
ばからしいと思いつつも、健次だけはまだ頑なに「雷太郎」で居続けます。マスクとサングラスもつけたままです。
刀自に「3人組の名前をつけろ」と言われ、暗号の由来を聞かれた健次は、大阪のデパートで日本画展を見ていた時に、3人の童子が黒い雲に乗っていた絵を見たと答えました。
それを聞いた刀自は『虹の童子』という案を出します。雷、雨、風つまり暴風雨が去った後には虹が出る…それを聞いた3人は、『虹の童子』という名を気に入りました。刀自の一本締めで決定します。
さてあとは身代金を要求する手紙を書くだけという段になり、刀自が金額を尋ねました。健次が5000万と言うと、刀自の顔色が変わります。
「この私をなんと思うてはるん? 痩せても枯れても大柳川家の当主やで。見損のうてもろたら困るがな。キリよく100億や! それより下で取引されたら、末代までの恥さらしや! ビタ一文まからんで!」と言い、怒ってその場を去ります。
普通ならば身代金が高いと人質が洩らすことがあっても、身代金の釣り上げを要求されると思っていなかったので、3人は思考停止しました。しかも億単位など、今までの人生で考えてもみなかった金額です。
その後、健次がなんとか金額を下げてくれないかと交渉しますが、刀自の意思は曲げられませんでした。むしろ健次が懐柔される始末です。
100億円はおよそ1トントラック1台分の金ですが、健次は刀自に「100億円で手に入るものを考えてみろ」と言われました。
たとえばF16戦闘機が1機で50億円、なので100億円だと2機です。いっぽう、5000万円だとそのミサイル1発分だそうです。つまり、ドン、ヒュルルルー、パンで終わりだそうで、その1発で終わりだそうです。
この刀自の説得を聞いてしまっていること自体が、すでに3人組が主導権を刀自に掌握されている証ではあるのですが、刀自の話を聞いていると、なんとなくそうかという気持ちにさせられるのです。人徳のなせる業でしょうか。
健次たちはなんとなく懐柔されてしまいました。そして、以後の主導権はすっかり刀自主体になります。

警察側はというと。
竜神村を中心にして半径80km周辺をしらみつぶしに捜索したところ、早々にアジト発見の知らせが入ります。
8月11日に契約し、2か月分前払いの賃貸物件がありました。しかも布団が4組用意されています。
ところがこのアジトを見張っても、誰も来ませんでした。
井狩は「主犯格が身長170cm、体重60kg、27~28歳、一見美男子風の男が率いる3人組」という手掛かりしかなく、捜査は暗礁に乗り上げます。
以後は、誘拐犯からの接触待ちになりました。

〔事件発生から四日目 九月十八日〕
いつまでも連絡がないことに、井狩はやきもきしていました。犯人たちは金が欲しくないのかと、いらいらします。
その矢先、犯人の接触がありました。刀自自身の筆跡によるもので、家族全員がそれを認めます。
お屋敷からの入電をスピーカーに切り替えて、井狩は身代金の内容を読みあげさせました。
『始めに我々が犯人であることは、この手紙が刀自自身の手で書かれていることから、確実に了解してもらえると考える。
さて我々が刀自を誘拐した目的は他にない。我々が必要とする資金を入手するために、これが唯一の手段だと信じたからである。従って我々には刀自に機外を加える意思は毛頭ないし、刀自は安全に、そして快適に我々に保護されている。
しかし身代金が支払われない限り、刀自を解放することができないのは、その目的からいって当然である。
我々の要求する身代金は百億円である。この数字が誤記でないことを念のために算用数字で記す。
\10,000,000,000
更に確認しておくが、右の(注:文章はすべて縦書き)数字のゼロの数は十個である。
これで我々が刀自を誘拐した理由が了解されたと考える。世界広しといえども、家族がこのような巨額の身代金を支払うであろう人質は、柳川とし子刀自をおいては他にないからである。
我々はもちろん、いかに柳川家でも百億円という現金を調達するのは用意でないことを知っている。
従って十月一日までの猶予を与え、授受の方法については後日連絡する。
その前に、次の要領で我々に連絡することを要求する。
一つ 時間 明日十二時十五分
一つ 方法 テレビ和歌山、ラジオ和歌山による生放送
一つ 代表者 和歌山県警本部長 井狩大五郎氏
代表者に家人ではなく本部長を煩わすことにしたのは、努めてビジネスライクに事を運ぶためと、本部長ならば公の場において虚偽の言を弄するはずがないという、我々の当局に対する信頼に基づくものであることを付言する。
虹の童子 柳川一族各位』
(およそこんな文章を3人組が書けるはずもなく、また「ビジネスライク」などという言葉が出てくることからも、文章はほぼ刀自が考え、健次たちはこれでよいかと聞かれた程度だろうと容易に想像できる)
この金額の多さに、身代金の額が読み上げられた瞬間から県警はざわつき、井狩は禁煙パイプを折りました。
また県警側からの接触方法としてマスコミを挙げたことからも、犯人側が公開捜査を希望することが見てとれます。
マスコミはこぞって騒ぎ立てました。この騒動は海外でも話題になり、日本に派遣されている全世界のマスコミも母国へ記事を配信します。
井狩は取材しようと詰めかけているマスコミにもみくちゃにされながらお屋敷に行き、家族と相談しました。
そんな金額など用意できないと揉める国太郎と可奈子をよそに、英子だけは刀自の身を心配します。それを聞いた井狩は、「安全かつ快適に」というのを武器に使えると考えました。

〔九月十九日〕
12時15分、放送が始まります。みな、固唾を呑んで見守ります。
井狩はカメラの前で「諸君の要求は法外である。過去の例から見て最高額の度外れに莫大な要求をするのは、要求を出すほうが無茶なのである」と言いました。
これをラジオで聞いた瞬間、刀自はカチンときます。
井狩はさらに「共通の土俵を作れ、これが第一の条件だ」と言いました。第一ということはまだあるのかと、平太が言います。
「第二に刀自が安全かつ快適に過ごしているのか不安だ。生の声か姿を見せろ」と井狩が要求しました。警察側に一点の下心がないことも付け足します。
最後に井狩は「犯人が使うであろう常套文句、用意できなければ人質の命はないという言葉を諸君らは使わなかった。そのことは評価する」と答えて放送は終了しました。(刀自本人が書いているわけだから当然なのだが)
放送を聞き終わった3人組は頭を抱えますが、刀自は冷静に姦計を巡らせ始めていました。

〔九月二十日〕
雨の日です。
前日の井狩本部長の放送について、毅然とした態度だとしてマスコミの中では好評でした。
また視聴率は地元で88%、全国でも56%を記録します。さらに全世界でも話題になっていました。
9月21日、22日も雨が続き、23日に雨がやっと上がります。

【転】- 大誘拐RAINBOWKIDSのあらすじ3

〔九月二十四日〕
午後3時過ぎに竜神村の郵便物の第二便に、犯人からの書状を発見した郵便局は、局長自らがお屋敷に配達しました。その様子をマスコミが撮影しています。
『刀自をテレビ、ラジオを通じて家族と対面させ、その席上で身代金調達の方法を刀自の口から命じさせることである。
もちろん、このテレビ対面は、我々の完全な主導下に実施されなくてはならない。
我々はこのために、次の実施細目を決定した。
一 日時 来る九月二十七日 午後九時から十時までの一時間とする
二 場所 テレビ和歌山、ラジオ和歌山が選ぶスタジオを家族の集合場所とする。井狩本部長は責任者として必ず同席すること
三 放送 テレビ和歌山、ラジオ和歌山局は右の時間(縦書き)を全部このための特別放送に充てること
四 放送車 両局は刀自及び我々の放送を担当する放送車を、次の諸点を厳守して現地へ派遣すること…(AからGまで7つある)』
(ここまで読み上げたところで、二十七日に突入する)

〔九月二十七日〕
A 放送開始の二時間前、すなわち午後七時、放送会館前を出発すること
B コースは紀伊海岸を周回する国道42号線とすること
C 放送車は時速五十キロを厳守し、交通法規に従った運転を常とすること
D 我々は任意の時間に放送車に接触すること
E トラブルなどで接触ができない場合に電話をかけるため、テレビ和歌山、ラジオ和歌山の社長を社長室で待機させておく…(以下略)(このEが最も大事)

…みなの注目は、出発する放送車に注目していました。
そこへ、ピンクの花柄ワンピースを着て女装し、白いつば広の帽子をかぶってサングラスをかけた健次がテレビ局へ入っていくのですが、誰も気に留めません。
刀自は健次にアドバイスしていました。テレビ局というのは終始人の行き来があるために、誰も注意を払う者がいないと。その通りでした。今回はさらに、出発する放送車があるために、そちらへ世間の耳目は集中しています。
その隙を突いて健次は社長室へ行き、無言で手紙を示しました。刀自直筆の手紙に、社長たちは絶句します。
刀自は、犯人が毒薬入りのカプセルを口中に仕込んでいると書いていました。社長らが顔を上げると、健次は口の中のカプセルを舌の上に乗せて見せます。
刀自はテレビ和歌山社長・東、ラジオ和歌山社長・中沢、カメラマン、放送技師、運転手、使者(健次)の6名で急いで出発し、24号線を走るよう手紙で指示していました。
社長らは井狩に連絡も取れないまま、こっそりテレビ局を抜けて車を走らせます。

井狩と家族らはテレビスタジオに詰めていました。
時刻は午後9時になり、報道特別番組が始まります。しかし、なかなか犯人からの接触はありません。
時刻が刻々と過ぎるなか、放送は緊張感に溢れていました。いつ犯人から接触があるのかと、みなが固唾を呑んで待ちます。
放送が半ばを過ぎる頃、放送車からの映像が入ってきました。しかし予定していた放送車ではなく、社長らが乗る車からです。
社長らは車内で刀自直筆の手紙を見せ、事前に言えなかったことを詫びました。
放送車に大量の追跡車を張りつかせていた井狩本部長は、みごとに裏をかかれて唇を噛みます。
車から健次が降りた間に、社長は持てるかぎりの情報を井狩に告げます。場所は竜神村の一角で、それもおよそ中央やや東側であること、前を谷川が流れている深い山中だと言いました。
竜神村といえば、刀自のお屋敷のあるところです。そんな灯台もと暗しのところに犯人が出没するとは思ってもいなかったので、人員も割いていませんでした。
犯人側から懐中電灯の合図があり、カメラのライトをつけます。時間は午後9時48分でした。
刀自がカメラの前に姿を現しました。川の向こう側の、岩の上にいます。
刀自はマイクでまずテレビ和歌山、ラジオ和歌山の社長に礼を言いました。車中で社長らはむせび泣きます。
続いて刀自は自身が元気であることを告げ、腕の立つ料理人がいて快適に過ごしていると告げました。
その後「時間もないよってに、ここからはビジネスライクにいきますな」と、100億円の用意の仕方を家族たちに言います。
まず刀自はテレビの前で、自分の名義の山村全部を息子たちに生前贈与することを明言しました。
「相続も贈与も税率に変わりはないよってに、山村は4万ヘクタール、この全部を息子たちの共有財産として贈与する」と言います。
以後、すらすらと刀自が数字を口にするので、慌てて警察や家族たちはメモをします。
見ている一般の人たちにとっては、雲の上の数字です。
「今の固定資産税の評価額では、うちの土地は1ヘクタール平均18万、立木(りゅうぼく)はおよそ170万から180万、贈与の課税額は、土地は1.5倍、立木は0.85倍。
土地は108億、立木は595億、祖形は703億。
贈与税は7000万以上の最高税率は70%で、全額を完済したとして3割の、211億ほどのものが(財産として)残る」
そのように、刀自は息子たちに指示しました(注:税率、課税率は1991年当時の計算)。
最後に井狩へのお礼を述べた刀自は「あとはもう、家の者に任せてください。目をつぶってくれ」と言います。
マイクを置いた刀自たちは立ち去りますが、とりどりの色紙(いろがみ)が貼られたマークⅡで立ち去りました。それがカメラに映ります。
この放送は日本だけではなく、全世界で流されました。みな、事の成り行きに注目します。
放送を終えた後から、柳川家では一家総出で電卓片手に計算が始まりました。
広大な地図を広げ、刀自が所有する森林を示して確認します。

その夜、放送を終えた後、刀自の前で健次は顔を見せました。名乗ろうとした健次をさえぎって、刀自は「登山ナイフの子やないか」と言い、「戸並健次くん」と名前まで言います。
健次は覚えていてくれたことに感激し、うれし涙を流しました。そして、刀自を全面的に信頼しており、刀自を解放された後、自分が犯人として突き出されても文句は言えないと、全面降伏の意を表します。

〔九月二十八日〕
朝7時の時報と共に、柳川家での計算が終わりました。こまごまな数字はすべて、刀自が放送で言ったとおりでした。
4人の子どもたちは計算しているうちに、一致団結します。
殊に四男の大作は今まで絵描き志望でのらりくらりと生活していましたが、自分に経理の才能があると見出しました。
税金として払う森林はカスのものを回し、お屋敷の近くの上質の土地1万2000ヘクタールを残すプランや、あるいは全部売るよりも、その土地を担保にして銀行に融資してもらうのはどうかと、大作が言います。
次男の国二郎は大作の案に感心し、自分の会社で働けと言いました。大作もそのつもりです。

その頃、警察は竜神村に犯人のアジトがあるのではないかと、捜査を進めていました。
出没した近くをR地区(竜神地区)と呼び、奈良県との県境も含め、紀宮村(きのみやむら)などをしらみつぶしに当たります。
〝東京〟が、周囲から孤立した一軒家を見つけました。井狩本部長に知らせます。
この家こそが、刀自が潜伏している「くーちゃん宅」でした。
ところが「テレビアンテナがない」という理由で、捜索の対象から除外されます。刀自は、「犯人側がテレビ視聴の環境にないことを、警察側が知る由もなし」ということで、わざとテレビ和歌山を噛ませていたのです(いわば捜査撹乱のため。放送はすべてラジオで聞いていた)。
こうしてせっかく刀自の潜伏先を〝東京〟は見つけていながら、それ以上調べることはしませんでした。井狩本部長へ報告はしていたので、今回は井狩のミスです。

〔十月一日〕
井狩はR地区を重点的にマークし、警察官を配置しました。
午後3時、身代金輸送の実況中継が始まります。
この日、全世界の注目は身代金受け渡しに集まっていました。アメリカ海軍は「警察が勝つか、犯人のRAINBOW KIDS(虹の童子)が勝つか」賭けをしています。
日本でも工場はこの時間休憩を取り、みなが放送に見入りました。
身代金を運ぶヘリのパイロットは、柳川家の若い男性・高野(たかの)です。
札束がすべて本物だということを示すため、カメラの前で札束をぶつけあわせます。その後札束は透明なビニール袋に詰め込まれました。
100億円あるので、作業は乱雑です。ビニール袋に詰められ、足で蹴られる札束を見て、「お札が可哀そう」とテレビの前の人が言います。
ビニール袋は25袋になりました。ヘリに乗せるとぎゅうぎゅう詰めで、パイロットの邪魔にならぬよう、操縦席の手前で落下防止の網が張られます。
100億円を乗せたヘリは午後4時ちょうどに和歌山の基地を離陸し、コース上を飛びました。後ろからマスコミ用のヘリも追尾しており、一部始終が放送されます。
午後5時4分、犯人の指示を受信した高野パイロットは、犯人が指示する場所へ着陸します。
またもや山中の川の中州らしき場所でした。100億円を乗せたヘリは赤い布でバッテンを示す場所に、中継機は黄色い布で示す場所に着陸します。
県警は急いでその場所の特定に入りました。尾鷲市の西、熊野川の源流近くの場所で、近くに細い山道はあるものの、車が入れない場所です。
しかしカメラには、トラックらしきものが映り込んでいました。
午後5時11分、犯人が現れたという知らせとともに、中継機は以後の追尾を禁じるという命令が入りました。ヘリはいずことなく去っていきます。
その直後、トラックが爆発しました。一部の者は「仲間割れか」と言いますが、井狩は、トラックに見せかけた車の正体がマークⅡで、証拠を消すために爆発させたのだろうと考えます。
100億円を乗せたヘリは消えました。しかし井狩は「消えたところから戦いが始まんねや」と、テレビに禁煙パイプをぶつけて呟きます。

【結】- 大誘拐RAINBOWKIDSのあらすじ4

警備の者たちから、ヘリの音が聞こえる知らせが続々と入り始めました。それを元に警察は、ヘリが向かう先を予測しようとします。
ヘリは迷走しているように見えました。この日、上空には霧が立ち込めており、1時間ほどヘリは飛び続けます。
午後7時過ぎにヘリは竜神村へ向かいました。いよいよだと井狩は思います。
ところがヘリは柳川家の上空を通過していきました。小さな円筒形のものがパラシュートをつけて、上から柳川家の庭に落ちてきます。
それは、100億円をいただいたという領収証でした。裏面に『刀自は十月四日正午までにお返しする』という一筆が付されています。
なぜ刀自をすぐに帰さないのかと井狩は怒りました。
ヘリはその後、海側に出ます。そして午後8時半、ヘリの燃料が切れる頃になって、南方の洋上へ消えていきました。
その後のヘリの消息は明らかになりません。

警察と柳川家、もっというと全世界が注目するなか、時間はゆっくりと経過します。
10月2日、3日…。井狩はその間に、〝東京〟にある計算をさせていました。
札束が入ったビニール袋25袋を運び出すのに、およそどのくらいの時間がかかるだろうか…2人だと約3分、3人だと2分半で終わると、シミュレートの結果が出ました。

〔十月四日〕
未明に、幽鬼岬にて高野パイロットが発見されます。
高野パイロットの証言では、午後9時28分に黒色仮面と肉色仮面に目隠しされ縛られたと言いました。その後、少なくとも7~8人のかけ声が聞こえたとのことです。
かけ声は「イヨーホゥ」という、外国人の船乗りが使うような言葉だったそうです。
(お気づきだろうが、すべて刀自の指示。捜査を撹乱するために、わざと高野パイロットは嘘の証言をしている)
その後、船外エンジンで沖合へ出たようで、縄を解かれ、目隠しを外された高野パイロットの目には、ヘリはもうなかったとのことです。
高野はその後洞窟に閉じ込められ、前夜、白色仮面に『さよならパーティー』ということで缶ビールを渡されたのですが、その中に睡眠薬が入っており、眠らされていた…と証言しました。
この話がマスコミに伝わり、「犯人たちは海外逃亡したのではないか。行き先はマカオか香港か、いずれにせよ海外へ逃亡しただろう」という説が主流になります。

柳川家には正午近くになって、行儀見習いの紀美へ電報が入ります。デートの誘いだそうです。
『ゴザミサキデマツ RC』
御座岬とは、四男の大作の家がある場所でした。家族と井狩が急行すると、アトリエで刀自が眠っているのが発見されます。
こうして100億円と虹の童子なる犯人たちの行方は分からずじまいでしたが、無事に刀自が戻ってきたということで、事件は収束しました。

〔十一月三日〕
事件の終わりから1か月が経過し、竜神村にマスコミの姿はありません。
代わりに竜神村は観光の新名所となっていました。事件を知った観光客たちがバスに乗り、柳川家をひとめ見ようと、竜神渓谷前で多くの乗客が降ります。
そんな事態になっていると知らなかった井狩はバスに乗り、女子大生に井狩と露見して、きゃーきゃーと騒がれます。振りほどきながらお屋敷の裏門から入った井狩は、刀自に接見を申し込みました。
刀自は事件後に「新たな気まぐれ」を起こしていました。自分が誘拐されたのは「信心が足りなかったのだ」と言い、庭に長らく雨ざらしになっていたお堂の手入れをしています。
若い男性職人(健次)を雇い、修理をさせていました。
そこへ井狩がやってきます。刀自は職人(健次)に休憩を命じ、井狩と縁側で差し向かいに座りました。対決の時です。

井狩は刀自に煙草を吸う許可をもらいました。禁煙はすっかりあきらめたようです。
「誰も信じませんやろな。誘拐された人質がボスになって、3人の犯人を手足のようにこき使って犯行を行なったなどと」
そう告げる井狩に、刀自はとぼけます。かく申す井狩もそのメンバーの1人だと告げ、井狩は「獅子の風格と狐の抜け目なさと、そしてパンダの親しさを兼ね備えた者」が、犯行に見え隠れするのだと言いました。
それをいまさら暴くつもりはないと言った上で「なぜこんな大芝居を打ったのか」と井狩は動機を聞きました。
それを聞かれた瞬間、刀自の視線は遠いお山の方へ向けられます…。

(以後はモノローグの形を取りつつ)
…それは、体重計の目盛りやった…。
8月16日時点で35kgだった刀自の体重(「ま、こんなもんでっしゃろ」の時)は、9月8日に26kgに落ちていました。
それを見た瞬間、刀自の脳内にいろんな場面がフラッシュバックします。
別の老人の葬儀の時、後ろの親族が「10kg減ったら赤信号やて」「ガンやったらしいわ」と囁いているのを聞いて、刀自は自分もガンに侵されているのではないかと思いました。
残り短い人生を思った刀自は、洗面所から見えるお山を見ます。
そのお山は、現在は刀自のものですが、刀自が亡くなると国のものになる予定です(相続税などで取られる)。刀自が死んだら否が応でもそうなります。
「お国って、私にとって、なんやったんやろう」
長男の愛一郎を奪い、長女の静江を奪い、三男の貞好(さだよし)を奪い、今度はお山まで国に奪われる…、だとしたら私の一生は何やったんか…そう、刀自は考えたのです。
そんな折、あの誘拐騒動が勃発しました。刀自にとっては渡りに舟でした。
一日一日が充実していたと刀自は言います。人生の最期にメルヘンのような日々を過ごしたいと思っている老人は多いのではないか、そう刀自は括りました。
世間では柳川家のことを「100億円も盗まれた」ということで、大損害を受けているのではないかと思われているだろうと告げる刀自は「世間が思うほどのことではない。3分の1ちょっとというところでんな」と答えます。
厳密には柳川家の損害は36億円で、子1人あたり9億といったところです。
昔から数字の苦手な井狩にとっては、頭を抱えるものでした。「あとの64億円はどこから?」と聞いた井狩に、「せやなあ。他にどこもないよってに、お国、いうことに、なりますやろか」と刀自は答えます。

つまりこうです。
刀自が亡くなると相続税として莫大な金額を国に納めねばなりません。それが刀自は癪なのです。
だから生前贈与という形態を取り、控除分が27億円、お目こぼし分が37億円、国に負担させたのです。
(非常に難しいのでざっくりと説明すると「誘拐事件を起こしたことで、100億円の出費があったことがテレビの前で明らかになる。それにより、100億円分身代金があったことを出費してカウントし、国に税金を免除してもらった」と思ってもらえば分かりやすいだろうか)
そのためには、はした金ではなく100億円くらい必要だったのです。

蓋を開けてみれば、今回の件があったことで刀自の息子たちの絆が深まりました。さらに税金対策の知恵もつきました。
井狩は、犯人のその後を聞きます。刀自は思いを馳せます…。

ヘリに接触したと思われる犯人は刀自でした。刀自が高野パイロットにじきじきに指令し、迷走飛行のどさくさで100億円を降ろさせます。
(ヘリをどう始末したかだけは触れられないが、瑣末な問題として処理してもよいのではないか。南の洋上で廃棄した可能性も)
高野と口裏を合わせて解放し、3人組は100億円をみごと手に入れました。
ところが、まず降りると言い出したのは正義でした。くーちゃん宅で農作業を手伝っている間に邦子と懇意になった正義は、くーちゃんに「邦子を嫁にして、正義と2人でうちの養子にならないか」という打診を受けていました。願ってもない申し出です。
もしそれを受けるとなると、身代金をもらうのはいけないと思うと、正義は言うのです。
続いて降りると言い出したのは平太でした。
平太は病気の母のために金はもらうと言います。ただし、最初に健次が提示していた金額…1000万円だけ受け取ると答えました。
平太は刀自の手を握って「俺にも何かやれる自信がついた」と言い、別れを告げます。その後、ホンダのスーパーカブに乗って去りました。
平太は去りましたが、刀自からもらった1000万円を悪事には使うことはないでしょう。そして平太自身ももう悪に手を染めることはないだろうと思われます。
残る健次は、刀自に「日雇いで雇ってもらいたい」と言い出しました。刑務所で木工をしていたので、雑用はできるというのです。
紀美に背格好を見られている危険性を刀自は挙げますが、健次は「むしろ犯行直後の方が、まさか実行犯がのこのこと出入りすると思われなくてすむ。『そっくりさん』という程度のことだろう」と答えました。
大胆だと思いながらも、刀自は健次の案を採択し、雇いました。
100億円から1000万円(平太の取り分)を引いた99億9000万円が、庭のお堂の土台部分にぽっこり納まると計算した刀自は、健次にお堂の修理を頼みます…。

…話を聞いた井狩は唖然としました。99億9000万円が悪事に使われるわけではなく、この屋敷のお堂の土台になる…井狩は修理があらかた終わったお堂のところへふらふらと行き、観音扉を少しだけ開けて閉じます。
井狩は振り返り、縁側に座る刀自を見ました。刀自の姿は小さく、警察や国家を相手に100億円を要求し、まんまと騙し取った一味のリーダーとは思えません。
毒気を抜かれ、考えていた心配(100億円が悪事に使われることはない、犯人たちが罪を重ねることもない)は全くの杞憂だったと知った井狩は、縁側に戻って座ると刀自に「おばあちゃんは少し、お太りになりはりましたなあ」と声をかけます。「はい、さいです。夏はすっかり、弱なりましてなあ」と刀自は答えました。
刀自が9kg痩せたのはガンではなく、単なる夏痩せでした。
井狩は最後に「あれは、おばあちゃんの、楽しいメルヘンやったんですな」と確認します。
刀自は笑うと「あ、今日もお山が綺麗や」と言って、かなたの山を見上げるのでした。
(99億9000万はお堂の土台に使われている。全く知らない柳川家の子孫がある日それを見つけ、吃驚仰天するのを想像するのもまた楽しい)

みんなの感想

ライターの感想

…いままで映画を見て来た私のなかでの「邦画ナンバーワン」それがこの作品。
大幅にカットしているところもあるが、ほぼ原作のままである。
しかも映像化により、面白さが増しているのは役者ゆえか。
刀自の北林谷栄あっての映画。彼女が体調不良になった折に撮影を中断してまで監督が望んだのも、頷ける。
これはぜひとも見てほしい。なかなかレンタルも難しいかもしれないが、絶対に見て損はない映画。

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