映画:戦場でワルツを

「戦場でワルツを」のネタバレあらすじと結末

戦場でワルツをの紹介:2008年公開のイスラエル映画。監督のアリ・フォルマンが兵士として参戦したレバノン侵攻にまつわる体験をもとに制作した斬新な手法のドキュメンタリー・アニメ。同年のゴールデン・グラブ賞、セザール賞で外国語映画賞を受賞したほか数々の映画賞に輝いた。PG12指定。友人が猛犬に襲われる悪夢を見続けていると聞いた映画監督のアリは、それが戦争の後遺症ではないかと疑う。一方でアリは当時の記憶が全く無いことに気付き、戦友を訪ねる旅に出るのだったが…。

あらすじ動画

戦場でワルツをの主な出演者

アリ・フォルマン、ボアズ・レイン=バスキーラ、オーリ・シヴァン、ロニー・ダヤグ、シュムエル・フレンケル、ロン・ベン=イシャイ、ドロール・ハラジ、ソロモン博士

戦場でワルツをのネタバレあらすじ

簡単なあらすじ

【起】- 戦場でワルツをのあらすじ1

※レバノン侵攻、サブラ・サティージャ事件、ファランヘ党などの詳しい説明は省略します。

2006年イスラエル、冬のある夜。映画監督のアリは旧友のボアズに久々に呼び出され、26匹の猛犬に襲われる悪夢に2年半前からうなされていることを打ち明けられます。それは1982年のレバノン侵攻時にボアズが兵役した際、吠える犬を26匹始末したことに起因していました。その時の状況を鮮明に覚えていたボアズですが、この20年間は夢に見ることはありませんでした。このところ苦しんでいるボアズはカウンセリングではなく、多くの題材を扱っている映画監督アリに相談してみたのです。

ところがボアズの話を聞いたアリは、自身もイスラエル軍として兵役したのにも拘わらず、当時の記憶が無いことに気付きました。そしてこの夜アリは、20数年ぶりにフラッシュバックを体験します。サブラ・サティージャ事件(以後表記:大虐殺)の現場にいた自分が、ベイルートの海から2人の戦友と海岸から這い上がり、空に照明弾が打ち上がるという幻覚でした。

アリはこれまで作品を共同制作してきたオーリ・シヴァンを早朝から訪ねて、20年も経過した現在になって何故フラッシュバックするのかを問います。記憶は無意識に作り出されるものだという見解のオーリは、アリの友人で幻覚に登場するカルミ・クナアンに会うことを勧めました。不必要な記憶が蘇ることを恐れたアリですが、オーリの強い勧めでカルミのいるオランダへ向かうことにしました。

核物理学者だったカルミは、兵役後はオランダで飲食業を展開し成功していました。数十年ぶりに再会したカルミは、戦時中の出来事を語ってくれました。肉体派でなかったカルミは戦争が始まると、恐怖に苛まれて司令船で嘔吐。とりあえず寝ると、船上で幻覚を見ました。やがて船が上陸すると、強い恐怖心と2年の訓練で植え付けられた感覚によって、とにかく銃を乱射したのです。その結果、通りがかりの車の中で命を落とした家族の姿を目の当たりにした苦い過去がカルミにはありました。
アリは自身の幻覚にカルミが登場することを告げますが、カルミもまた、ベイルートへ進軍したことは覚えていても、大虐殺についての記憶を失っていました。

カルミと別れたアリは空港へ向かう途中、19歳で徴兵された初日の記憶を突然思い出します。装甲車から一日中銃を撃ちまくったアリは、夜になって上官から死体や怪我人を回収し、捨てるよう命じられました。犠牲者で満載の装甲車。さらには到着先にも大勢の死体が…。アリはロボットのように死者を車から降ろしました。
アリはカルミとの会話で記憶が僅かに蘇ったことで、散り散りになった戦友を取材することにしました。

【承】- 戦場でワルツをのあらすじ2

続いて訪ねたのは帰還兵のロニー・ダヤグ。ロニーは戦車で隣に乗っていた先輩が、突然動かなくなった経験を語りました。ロニーは敵に応戦することも忘れて黙りこけていると、その2分後に戦車が爆発。仲間と共に海に逃げますが、仲間は銃撃に倒れていきました。岩場に身を隠したロニーは、後続部隊に自分たちが見捨てられたことを知り愕然とします。
ロニーは危険をかいくぐりながらも、暗くなってから海を泳ぎ続けました。やがて味方の陣地を見つけますが、それは自分を見捨てた部隊でした。ロニーは助かったものの、自分が裏切り者のように感じ、情緒不安定になってしまいます。罪悪感で一杯になったロニーは、帰還後に遺族との連絡も絶ちました。
ロニーの生還から1か月後、イスラエル軍はロニーが逃げきった海岸を制圧します。次はアリたちも参戦する全滅覚悟のベイルート戦でした。

アリが次に会ったのは、シュムエル・フレンケル。パチョリ(香水)の香りをまとった洒落た男です。戦場の暗い場所でも香水は居場所の目印になり、重宝しました。フレンケルは当時テロ分子の捜索中に、こちらに向けて発砲してきた子供を一斉に反撃し、撃ち殺した経験を語りました。この時アリも同じ現場にいたと彼は言うのですが、アリにはその時の記憶がありません。

アリは自身の心理状況を解明させるため、PTSD専門家のソロモン博士を訪ねました。博士は実体験を忘れることを“解離”と言い、一種の自己防衛だと教えてくれました。何か覚えていることはあるかと博士から問われたアリは、鮮明に覚えている休暇中の記憶を語り始めます。
アリが休暇で1ヶ月半ぶりに戦地から戻った時、人々が普段と変わらぬ様子だったため彼は驚きました。アリの少年時代にも戦争がありましたが、残された子供や女性の生活は一変したからです。アリは出征前にフラれた恋人とヨリを戻すために、休暇を取りました。しかし結局休暇は24時間で終わり、ベイルート郊外の豪華な邸宅に呼び出されました。呼び出した司令官は悠長にAVを見ながら、アリに自動車爆弾の処理を命じます。夜中にその任務をしたアリは、当時のレバノン大統領のバシール・ジェマイエル(親イスラエルのキリスト教徒)が暗殺されたことを知り、連絡を受けた2時間後には兵士たちはベイルートへ向かうことになりました。

アリが着いたベイルートはホテルが立ち並び、人々が行き交う都会でした。空港には各国の旅客機が停まっていて、アリは旅行気分になり浮き立ちます。空港内へ入ったアリは、出発ゲートや免税店の前を歩き、旅に出る妄想をしました。しかし現実はすぐに戻り、アリの目に入ってきた真実の姿は残骸化した旅客機や、空っぽの店、数か月前の便が表示されたままのボードでした。

【転】- 戦場でワルツをのあらすじ3

アリたちの部隊は空港から市街地へ向かって進みます。部隊は道路を挟んだ右側のホテル群から攻撃されました。仲間が倒れても、危険で助けることなど出来ません。そんな激しい銃撃戦の中をテレビジャーナリストのロン・ベイ=シャイは、身をすくめることもなく闊歩しました。シャイはこの銃撃戦を近隣住人が見物していたことに驚きました。
アリと共にこの銃撃戦に参戦していたフレンケルは、感覚が麻痺し、突撃銃では物足りず機関銃で応戦する欲望に駆られます。「俺なら向こう側へ渡れる」とフレンケルは言い切って隣の兵士の機関銃を奪い、彼は道路を占領しました。フレンケルは飛び交う銃弾を避けながら、まるでワルツを踊るように乱射したのです。壁にはバシールの巨大なポスター。この光景は、後に起きるバシール暗殺に対する復讐劇の始まりを物語っていました。

再び現在。春になってアリは再度カルミを訪ねます。アリは様々なことを思い出したのに、大虐殺のことを思い出せずにいました。それを聞いたカルミは、レバノン侵攻時にファランヘ党(レバノンのキリスト教徒の極右政党)の党員と死体の処理場にいたことを激白します。ファランへ党員はパレスチナ人を連れ込んではなぶり殺し、死体を切り刻んでホルマリン漬けにするという悪行を働いていました。党員はバシールを崇拝しており、彼の暗殺で党員が暴走するのは当然だと、納得せざるを得ない状況をカルミは見せつけられていたのです。
一方のアリは、大虐殺の日にカルミと海岸にいた幻覚を今も見ていることを伝えます。しかしあの日の夜に海岸にいた者はいないとカルミが断言したので、アリは完全に行き詰まってしまいました。

アリは再びオーリに相談します。するとオーリは、夢における海が表すものは、“恐怖の感情”だと説きました。虐殺への恐怖の根源は、アリの両親がアウシュビッツの収容所にいたこと。たった6歳で虐殺の存在を知ったアリが、それ以来虐殺の記憶と生きているのだと解き明かしたのです。オーリ曰く、大虐殺の日のアリ自身を思い出す唯一の方法は、大虐殺について細かく関係者に聞くこと。そこでアリは、大虐殺についての聞き込みを始めました。

アリはパレスチナ人の難民キャンプに配属されていたドロール・ハラジに話を聞きました。ハラジは大虐殺の日にファランヘ党員が何故かイスラエル軍の戦闘服を着て到着したのを見たうえに、上官から党員の進軍を援護するよう指示されました。翌朝には、テロ分子でないとみなされた難民の女性や老人、子供たちが競技場へと連れて行かれました。怪我防止のために難民が移動するのだと思っていたハラジですが、党員に跪かなかった老人が銃殺される現場を目撃し、部下からも難民が虐殺される瞬間を見たと聞かされます。ハラジは本部の司令官に異常を報告しますが、ビルの屋上からよく周囲が見渡せている司令官からの返事は「承知している」と淡々としたものでした。大虐殺を実行したのはファランヘ党ですが、イスラエル軍も側面で指示していたのです。しかし現場の兵士たちは、誰もそれを理解していませんでした。

【結】- 戦場でワルツをのあらすじ4

アリからハラジの証言と、彼自身の記憶を報告されたオーリは、アリの心境を悟りました。大虐殺の日に後方部隊にいたアリは、状況を理解せずビルの上で照明弾を飛ばす手伝いをしていました。しかし照明弾の用途は、党員の行動がしやすくなるためだったのです。真相を知らなかったとは言え、当時のアリは大虐殺の傍観者も実行者も同罪と判断し、自身の事件の記憶を封印したのです。これはナチスと同じだと…。「君は19歳で罪を背負ったのだ」と、オーリは諭すようにアリに語りかけました。

大虐殺の日、シャイは事件の噂を知人から耳にします。確かにシャイは、トラックに詰め込まれたパレスチナ人の男たちが、胸に十字の切り傷をつけられていたのを目撃しました。その夜シャイは、「虐殺を止めないといけない」と国防相へ連絡しますが、「知らせをありがとう」と軽く流されて、返事はそれきりでした。
シャイは翌日、虐殺現場へ取材クルーと共に向かいます。弱者の列が並ぶ姿はワルシャワのゲットーとよく似ていました。その時現れた准将は、攻撃中止と難民は家へ戻るよう指令を出します。何があったのか見ておくべきだとシャイとクルーが難民キャンプ内へ入ると、そこはまさに廃墟でした。男性の処刑後に家族も殺されたのでしょう。がれきの中で土埃にまみれた少女の頭、女性と子供の死体で溢れた中庭…。狭い路地には、シャイの胸の高さまで若い男性の死体が積まれていました。

※ここで映像はアニメーションから、シャイらが実際に撮影した映像に変わります。
生き延びた女性たちが、キャンプ内の現状を目にして泣き喚いていました。無惨に並ぶ死体の山々をハエが舞っていました。

みんなの感想

ライターの感想

アニメ化したことで通常のドキュメンタリー映画よりも、感情移入しやすかったように思います。抽象的なタッチながら、戦場のシーンはとてもリアルに感じました。またラストで実際の映像に変わる演出も非常に効果的だったと思います。信じがたいほど強烈な映像で、詳しく知らなかった事件の凄まじさを知りました。
淡い希望を感じさせるタイトル(原題:バシールとワルツを)ですが、あんな虚しい光景が由来だったとは…。戦争を知らない世代の自分が思う以上に、戦争は人を狂わせる。戦争とはなんと罪が深いものだと痛感しました。

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