「あゝ荒野(前篇)」のネタバレあらすじと結末の感想

あゝ、荒野 前篇の紹介:2017年10月7日公開の日本映画。寺山修司が遺した唯一の長編小説を大胆に再構築し、2部作として映画化した青春ドラマの前編。生まれも育ちも違う2人の男が出会い、共にプロボクサーを目指す姿がつづられる。

予告動画

あゝ荒野(前篇)の主な出演者

新宿新次〔沢村新次〕(菅田将暉)、バリカン建二〔二木建二〕(ヤン・イクチュン)、芳子(木下あかり)、片目〔堀口〕(ユースケ・サンタマリア)、馬場(でんでん)、恵子(今野杏南)、山本裕二(山田裕貴)、劉輝(小林且弥)、君塚京子(木村多江)、マコト(萩原利久)、川崎敬三(前原滉)、宮木社長(モロ師岡)

あゝ荒野(前篇)のネタバレあらすじ

簡単なあらすじ

①近未来の新宿歌舞伎町。少年院から出た新次は因縁の相手・裕二に復讐したいが、裕二はプロボクサーとなっており、喧嘩はご法度。新次もプロボクサーとなって対戦してやろうと思う。 ②内気な建二は吃音があり、父・建夫の暴力に悩まされていた。家を出た建二もボクサーを目指し、新次と親しくなる。2人はプロデビュー。

【起】- あゝ荒野(前篇)のあらすじ1

〔2021年 東京・新宿〕
少年院から出所したばかりの沢村新次は、歌舞伎町のラーメン屋に入りました。
ラーメンを注文した直後、歌舞伎町の近隣のビルで立て続けに爆破が起こります。
横にいたサラリーマンの男性は、ラーメンに手をつけることなく、爆発を恐れて立ち去りました。その隙に、新次は無心で男性のラーメンを啜ります…。

近未来の日本では『社会奉仕プログラム』という名の、徴兵制度に似たものが確立しつつありました。国家を挙げて行なおうとするその制度に反発する団体がデモを起こし、爆発も耐えません。
歌舞伎町の爆破事故では3名の死者、10人以上の負傷者を出しました。

新次の父は、元自衛隊員でした。海外に派兵されて帰国した後、家の風呂場で首吊り自殺をします。
父が他界し、母は新次を捨てました。教会の孤児院に預けられた新次は、そこでいじめられますが、先輩格の少年・劉輝にかばってもらいます。
やがて新次は劉輝と共に、高齢者相手の詐欺を行なうようになりました。新宿で悪事を重ねます。
10代後半になった新次と劉輝は、ある日、詐欺の現場で仲間だった山本裕二らの集団に襲われました。
目の前で劉輝が血まみれで倒れたのを見て、新次はナイフで裕二の仲間を刺し、公務執行妨害と殺人未遂で逮捕されます。
3年の少年院送致の末、新次は歌舞伎町に舞い戻ったのでした。

出所した新次は元仲間の檜垣と連絡を取り、喫茶店で会います。
新次が少年院にいた間に、檜垣は会社を立ち上げていました。まっとうに生き始めた檜垣は新次に、手切れ金を押しつけようとします。
新次はそれを振り払い、店をあとにしました。
血まみれで倒れて半身不随になってしまった劉輝に、ケガを負わせた裕二の現在を、新次は知りたいと思っています。
やり場のない怒りを、裕二に復讐することで吐き出したいと、新次は考えていました。

…もう1人、新宿に新次と似たような境遇の男がいます。二木建二という男です。
建二は理髪店で働いていますが、吃音(きつおん どもりのこと)と赤面症に悩まされていました。
自衛隊員だった父・二木建夫が韓国人の女性と関係を持ち、できたのが建二です。母と共に建二は日本へやってきましたが、内気な性格が災いし、大人になってからも吃音が治せません。
建二は理髪師で真面目に働いていましたが、稼ぎはみな父・建夫にむしり取られました。父への反発と暴力に苛まされる建二は、その怒りを内側にためこんでいます。

ある日、新次は意外な場所で裕二を見つけました。
裕二は星雲ボクシングジムで、ボクシングの練習をしていたのです。
そのボクシングジムの前で、他店のビラを配布している男・堀口がいました。
新次は裕二に喧嘩をしかけようとしますが、腹に一発叩きこまれました。その拳の重さに、新次は嘔吐します。
よろけた新次をかばったのが、建二でした。
コーチが出てきて裕二を注意します。プロボクサーなので喧嘩はご法度でした。
新次と、そして通りかかった建二を連れ、ビラを配った男・堀口は飲みに行きます。

Bar『楕円(だえん)』は堀口の行きつけの店でした。
堀口は元ボクサーで、『海洋(オーシャン)拳闘クラブ』を北新宿で開こうとしています。
ボクサー時代に左目を負傷し、堀口は左目が見えませんでした。ですから新次は「片目」と呼びます。

【承】- あゝ荒野(前篇)のあらすじ2

片目は新次と建二をボクシングに誘いますが、新次は「家も仕事もねえ(それどころじゃない)」と答えました。片目はジムに住み込みでき、仕事も紹介できると答えます。
新次も建二も悩みます。

新次はかつての仲間・劉輝を見に行きました。劉輝は車椅子の身ながら、バスケットボールに励んでいます。
その後、店で出会った芳子と意気投合した新次は、そのまま関係を持ちました。新次としては「愛がある」と思っています。
しかし芳子は男とホテルに入ると、財布を抜いて去るような女でした。
翌朝起きた新次は、自分の有り金が殆ど抜き去られたのを知り、怒ります。
小銭しかなくなった新次は行き場がなく、ジムにやってきました。

同じ頃、建二も分岐点を迎えていました。父親の暴力に耐えかねて、家を飛び出したのです。
いつまでも父に殴られてばかりの生活にうんざりした建二は、海洋拳闘クラブに身を寄せました。
こうして新次と建二は片目の下で、ボクシングの練習に励み始めます。

海洋拳闘クラブはプレハブ小屋です。ジム兼新次たちの居住スペースです。
建二が年上なので、新次は建二を「兄貴」と呼びました。2人で2段ベッドを使います。
2人が仲良くなるのに、時間はかかりませんでした。片目も親身になって2人を鍛えます。
片目は「ボクサーやるんなら、もう外で人を殴んなよ」と新次に釘を刺しました。建二にも「拳を大切にしろ」とアドバイスします。
今まで通り理髪店に勤めながら、ほかの時間はジョギングなどの基礎練習が始まりました。
新次は片目に、老人介護施設の仕事を紹介してもらいます。きつくて汚い仕事ですが、新次も文句を言わずに働き始めました。
ボクシングを全く知らない2人に、片目は基礎練習から叩きこみます。体力と筋力を徹底的に鍛えました。

練習中に廃墟で立ちションした新次は、カップルの情事に見入る中年男性・宮木社長を見ます。
その廃墟は「対テロ防止行動地区」と呼ばれ、周囲から隔離され浮いていました。カップルがそこに潜りこんで情事にふけるのを、宮木社長は覗きみていました。
新次は「チクワのおっさん」と声をかけ、新次の声でカップルは退散します。
宮木社長は、片目らのスポンサーにあたる「会長」の、子会社の経営者でしたが、それを新次が知るのはまだ先のことです。
宮木社長のところを片目が訪問し、トレーナーを雇ってほしいと頼みますが、断られました。
仕方なく片目は夜も中年ホストとして働き、新次と建二にトレーナーをつける金を捻出します。
それを知った新次と建二は、より一層、練習に励みました。プロテストにも合格します。

プロになった新次と建二に、片目はリングネームをつけました。
新次には「新宿新次」、建二には「バリカン建二」という名です。新次は安直すぎると文句をつけますが、建二は気に入りました。
プロテストの実技から、すでに新次と建二の戦い方は顕著に別れていました。

【転】- あゝ荒野(前篇)のあらすじ3

序盤から攻撃的で動きが早い新次に対し、建二は守りの姿勢を貫きます。それでいて、建二の拳は重さがありました。
祝杯を挙げて中華料理屋に行った新次は、そこで店員の芳子と再会します。

金を抜き取られた当初は怒った新次でしたが、芳子に金を取られたからボクシングの道に入ったようなものです。
新次は芳子に思いを寄せており、誰にでも身体を許す芳子をまっとうな道に戻そうとしていました。
芳子も新次の思いに気付きます。もともと金目当てで、芳子は男と寝ていたわけではありませんでした。
芳子は東日本大震災に遭遇していました。母と共に生き残ったものの、その母を置いて芳子は家を出ていました。
心の寂しさを埋めるように、芳子は男から巻きあげた金で多くの服飾品を購入しています。
しかし新次と知り合った芳子は、売春から足を洗いました。

プロになった新次と建二に、コーチがつきます。それは片目の師匠にあたる、馬場という初老男性でした。ニッカポッカ(土木現場作業服)を着ています。
馬場は老いてもなお、鬼でした。2人に厳しい訓練を課します。
さらに新次と建二のデビュー戦が決まりました。4回戦の試合に出場します。
常日頃から建二は、新次のハングリー精神に憧れていました。新次がやみくもに相手に突っかかるのを見て、自分もそこまで相手を憎めるようになりたいと思っています。
対戦相手を知った建二は、その相手・為永猛の住む八百屋へ偵察に行きました。しかし帰れと言われます。
新次は減量に励んでいました。試合前にはセックスも自慰も禁止と言われた新次は、芳子と会ってももどかしく思います。それでもジムの決まりは守ります。

迎えたデビュー戦。
建二は怖さからつい目をつぶってしまい、顔を殴られてダウンしました。負けます。
新次がリングに上がったのを見て、宮木社長が気付きました。「チクワの~」と声をかけますが、新次が見ていたのは、宮木社長の横にいた秘書・京子です。
京子は…新次を教会に捨てて去って行った、新次の母でした。
新次はやりきれない思いをデビュー戦にぶつけ、開始直後1発で勝利をもぎ取ります。
楽屋に母・京子が来て声をかけますが、新次は振り返ったものの声を発せず、そのまま立ち去りました。

その後も新次はどんどん勝ち進みます。
かつての仲間・劉輝が車椅子の身ながら、自分を半身不随に追いやった相手・山本裕二の夫妻と、その赤ん坊と笑顔で会っているのを、新次は見ました。
劉輝と裕二は、とっくに和解していました。うっ屈した思いを抱えているのは、新次だけのようで、それがまた新次は腹立たしく思います。

…話は少しそれます。
同じ頃。
男子高校生・マコトは、親友の小牧が授業中に飛び降り自殺をしたのを見て、ショックを受けます。
それがきっかけでマコトは、自殺について考え始めました。
ネットで知り合った自殺防止の会合に、マコトは出かけていきます。

【結】- あゝ荒野(前篇)のあらすじ4

西北大学の学生・川崎敬三は、弟を自殺で亡くした過去を持っていました。恵子という若い女性もいます。
川崎は弟の遺品というドローンを飛ばし、マコトらに見せました。それは弟が自殺用に作った、顔認証で攻撃を仕掛けられるものです。
自殺防止の会はまず歌舞伎町でインタビューをし、「自殺しようと考えたことがあるか」と聞きました。いろんな反応が見られます。
マコトと恵子が公園で休憩していると、隣の初老男性・建夫が赤いボトルの液体をかぶり、ライターに火をつけようとしました。マコトは灯油かと思い、とっさにかばおうとしますが、かぶっていた液体は水でした。
建二が家を出ていったので、建夫は金が尽き、生きる意欲も喪失していました。
それを知った川崎は、テストケースとして自殺願望のある者に衣食住を提供し、思い直させるという試みを始めます。

川崎は廃墟の地下で建夫ら自殺志願者を、ケアし始めました。マコトもそこで寝起きします。
自殺志願者は少しずつ集まりました。浪人生の橋本、主婦の川上、サラリーマンの男、建夫、マコトの5人がそこで暮らします。
恵子は川崎に、弟は死んでいないのではないかと疑問をぶつけました。実際はその通りで、命を取り留めた川崎の弟は、高校に復帰していました。
しかし弟の自殺未遂をきっかけに、兄の川崎の方が死に魅入られたのです。

西北大学で、自殺防止フェスティバルというパフォーマンスが開かれました。ネットでもリアルタイムで配信しています。
そこで建夫たち自殺志願者4人を立たせ(マコトは主催者側)、川崎は自殺をそそのかすようなことを言い始めました。いわく、「弱者が強者に訴える唯一の手段が自殺」なのだそうです。
自殺志願の者らに、首吊りの輪を通して立たせました。いざとなるとみんな、死を選びません。
サラリーマンの男は原発のお客様相談係で、来る日も来る日もクレーム応対に追われ、死にたいと思っていたのですが、いざとなるとキレて立ち去りました。
建夫は元自衛隊員で、帰国後に部下の4人を自殺に追いやった過去を持っていましたが、それをみんなの前で暴露されても、やはり死を選びませんでした。

会場からブーイングを受けた川崎は、「美しい死を見せてやる」と言い、弟のドローンを起動させます。
川崎の顔を認証し、ドローンは川崎に攻撃をしました。首から大量の血を流し、川崎は死にます。
ネットでリアル配信されていたことで、自殺直後からアクセスが急増しました。運営側が規制をかけるまでに1万アクセスを突破し、この公開自殺はニュースにもなります。

裕二と同じジム所属の神山佐助と戦った新次は、ベテランの神山に苦戦しました。
観客席に裕二を見つけた新次は、怒りが爆発します。相手を挑発し、パンチの連打を浴びせました。
勝利が決まってからも相手を殴り続け、新次を建二が制止します。
リング上で新次は「お前絶対殺してやるからなー、裕二!」と、狂気めいた顔で叫んでいました。(映画『あゝ、荒野 後篇』に続く)

(エンド後)映画『あゝ、荒野 後篇』の予告。
順調に勝ち始める建二。新次は裕二との対戦が決まる。
そして建二からの、新次への挑戦状。

みんなの感想

ライターの感想

この映画は長いものの、一気に通して見たほうがいい。それだけの勢いがある。
ボクシングの知識がなくてもOK。ボクシングの世界の話になっているが、大事なのはそこではない。
新宿歌舞伎町の猥雑とした街で繰り広げられる、場末の近未来の話。
見ればすぐ判るのだが、けっこう濃密な人間模様。
建二の父・建夫の自殺した部下の1人が、新次の父だったり、後篇で出てくるバー『楕円』で働き始める女性が、芳子の母だったり。
ごちゃごちゃの人間模様にもやきもきさせられるが、なによりも「圧倒的なパワー」がすごい。

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