映画:さらば、わが愛覇王別姫

「さらば、わが愛覇王別姫」のネタバレあらすじと結末

さらば、わが愛/覇王別姫の紹介:チェン・カイコー監督、レスリー・チャン主演の歴史ドラマ。李碧華の小説を映画化した作品で、京劇「覇王別姫」の名優二人の愛憎劇を時代の荒波とともに描いていく。第46回カンヌ国際映画祭パルムドールを始め、数多くの映画賞に輝いた。1993年 中国・香港合作。

あらすじ動画

さらば、わが愛覇王別姫の主な出演者

程蝶衣(レスリー・チャン)、段小楼(チャン・フォンイー)、菊仙(コン・リー)

さらば、わが愛覇王別姫のネタバレあらすじ

簡単なあらすじ

【起】- さらば、わが愛覇王別姫のあらすじ1

物語の舞台は、文化大革命から時を経た中国。二人の京劇俳優が稽古をする場面から物語は始まります。二人が演じるのは、古典の名作「覇王別姫」。覇王・項羽を演じるのは段小楼、虞姫を演じるのは程蝶衣という女形でした。二人はかつて京劇のトップスターとして人気を博していましたが、時代の変化に翻弄され長い間共演せずにおり、今回の舞台は実に22年ぶりのことでした。

二人が出会ったのは1925年のことでした。程蝶衣は小豆という9歳の少年で、娼婦の母親に連れられ京劇訓練所の門を叩きました。これ以上妓楼に男の子を置くことができなかったため、母親は泣く泣く小豆を訓練所に入れようとしたのです。小豆は美しい顔立ちをしていましたが、京劇俳優になるには決定的な欠点がありました。左手の指が6本あったのです。訓練所はこれを理由に入門を拒否しますが、母親はすぐに小豆の指を切断、入門を認めさせました。

小豆が血まみれになって泣き叫んでいるうちに母親は姿を消してしまい、小豆は突然の環境の変化に戸惑いました。すぐに始まった拷問のような厳しい稽古、人格を否定してくる師匠の心ない言葉…つらいことばかりが続く小豆に手を差し伸べたのが、後に段小楼となる石頭でした。石頭は特に師匠から目をつけられ、厳しい稽古を課されていましたが、それも気にせずいつも明るい調子でいました。小豆はそんな石頭を思い慕いながら稽古に耐え、やがて女形として頭角を表していきました。

ところが、小豆はあるセリフをどうしても言い間違えてしまう癖がありました。それは、女形の基礎とも言える「思凡」の「私は女に生まれ、もとより男ではない」というセリフでした。小豆はこのセリフの性別をどうしても逆に言ってしまっていたのです。師匠は何度も間違える小豆に苛立ち、何度も小豆の手のひらを鞭打ち、稽古が終わる頃には手は血で真っ赤になってしまいました。小豆はくじけそうになりますが、石頭は小豆の傷に包帯を巻き、優しく励ますのでした。

それからすぐのことでした。小豆はやんちゃな仲間の癩子と一緒に訓練所を脱走、街で本物の京劇を初めて鑑賞しました。「こんな名優になるまでに、何度ぶたれたことだろう」…二人は泣き出し、俳優たちの演技にしみじみと感動しました。

その後、二人が訓練所に戻ると、二人の脱走を手伝ったとして石頭ら仲間たちが鞭打たれていました。小豆は師匠の前に姿を現し、自らも鞭打たれますが、その間に大事件が起こります。仲間が皆鞭打たれる様子に絶望し、癩子が稽古場で首を吊ったのです。小豆は仲間の死に深い衝撃を受けるのでした。

小豆はさらに厳しい稽古を重ね、美しい歌声と舞に磨きをかけました。そんなある日、那という支配人が訓練所を訪れたとき、小豆は「思凡」を歌うよう指示されました。ところが、またしても同じセリフを間違ってしまい、那を失望させてしまいました。すると、ここで突然石頭が怒り出し、小道具の煙管を小豆の口の中に入れて痛めつけ始めました。小豆は突然の石頭の仕打ちに呆然とするも、気を取り直し、再び「思凡」を那の前で歌い始めました。すると、今度はセリフを一つも間違うことなく、小豆は歌い切ることに成功、那は小豆の演技にたいへん満足しました。そんな小豆の姿を、石頭は笑顔で見守っていました。

この出来事がきっかけとなり、小豆と石頭は張宦官という大物の前で舞台に立つ機会を得、二人で「覇王別姫」を演じました。「覇王別姫」が描くのは、楚の項羽とその妻である虞姫の物語だった。漢の軍勢に囲まれ項羽が孤立する中、虞姫は足手まといになるまいと項羽の剣で自らの首を斬り自害する…この悲劇の物語を二人は見事に演じ切り、張を満足させました。

「覇王にこの剣があれば、劉邦を殺してお前は皇后になれた」…舞台が終わった後、石頭は張の屋敷にあった高価な剣を手にしてそう語りました。そんな石頭の姿を見て、小豆は「いつか兄さんに贈るよ」と口にするのでした。

しかし、そんな二人の幸せな時間もすぐに終わりを告げました。小豆は一人張の部屋に呼び出されると、突然肉体関係を求められてしまったのです。この出来事は小豆の心に深い傷を負わせました。その帰り道のことでした。傷心の小豆は捨て子の赤ん坊を見つけ、黙ってその子を訓練所に連れて行くのでした。

【承】- さらば、わが愛覇王別姫のあらすじ2

それから時が流れ、小豆と石頭は名実ともにトップスターとなり、それぞれ程蝶衣、段小楼と名乗るようになっていました。1937年になると、日本軍の中国への進軍が人々の関心を集め、非常時に京劇を催すことに反発する意見も多くなり始めていましたが、二人はそんな民衆を冷ややかに眺め、変わらず京劇の舞台に集中しました。

そんな中、二人が演じた「覇王別姫」が袁という京劇界の大物の目にとまりました。袁は蝶衣の演技を絶賛する一方で、小楼の見得の切り方が決まりと違うと指摘しました。しかし、自立心の強い小楼は袁の言葉を遮り、そのうえ女と約束があると言って袁からの食事の誘いを断ってしまいました。蝶衣は小楼のあまりに失礼すぎる態度と、女の存在がちらつくことに苛立ちを覚えました。蝶衣は死ぬまで小楼と舞台に立ち続けたいと自らの思いを伝えますが、私生活は別と小楼は冷たく返答し、蝶衣の恋心にまったく気づくことはありませんでした。

それからすぐのことでした。小楼が突然劇団仲間の前で娼婦の菊仙との結婚を発表したのです。この一件で深いショックを受けた蝶衣は、袁の屋敷に向かいました。そこで蝶衣はかつて張の屋敷で見た剣を見つけました。それは没落した張から買い取ったものだといい、「心の友」になってくれれば蝶衣に譲りたいと袁は言い出しました。

その後、蝶衣と袁は屋敷の庭で「覇王別姫」を演じ、蝶衣は本物の剣とわかっていながら舞台で演じる通りに剣を首に当てようとした。とっさに袁が止めたため怪我はなかったものの、蝶衣は涙を流しただ呆然としていました。袁はそんな蝶衣の美しさを讃えるのでした。

時を同じくして、その夜は盧溝橋事件が発生。街中には爆撃音が響いていましたが、蝶衣はかまわず袁からもらった剣を持って小楼と菊仙の披露宴を訪れました。蝶衣は黙って小楼にあの剣を渡し、披露宴会場を後にしました。道には大勢の日本兵が行進していました。

それから間もなく、蝶衣と小楼は日本兵のために舞台に立つこととなりました。蝶衣の歌と舞は多くの日本兵を感動させましたが、その舞台裏では小楼が無礼な態度を取った日本兵と揉め事を起こし、捕まっていました。

事情を知った蝶衣はすぐに日本軍の上層部を訪ねようとしますが、ちょうどそのとき目の前に菊仙が現れると、蝶衣は途端に出かける準備をやめてしまいます。そして、「逮捕を手をこまねいて見てただけ?」と菊仙を批判しました。菊仙はなんとか小楼を助けてもらうため、二度と小楼に近づかないと蝶衣に申し出ました。蝶衣はその言葉を聞くとすぐに日本軍の青木という将校の元に向かい、宴席で歌と舞を披露しました。青木は蝶衣の舞台に心を打たれ、小楼の釈放を指示。すぐに小楼を迎えに行った蝶衣でしたが、小楼は日本軍将校の宴席で歌った蝶衣を軽蔑し、唾を吐きかけるのでした。

その後、蝶衣は袁との関係を深め、アヘンに手を出すようになりました。一方、小楼は菊仙を再び家に迎え入れました。穏やかな生活を送りたいという菊仙の願いを受け、小楼は俳優引退を決断。しかし、芸の道を捨てた小楼はうまく金を稼ぐことはできず、賭け事ばかりするようになりました。小楼はやむなくもう一度舞台に戻ることを決めますが、それには長年世話になった訓練所の師匠の許しが必要でした。

【転】- さらば、わが愛覇王別姫のあらすじ3

その場に蝶衣も同席する中、師匠は京劇の伝統に泥を塗った小楼を激しく鞭打ちますが、その最中に菊仙は蝶衣がアヘンをやっていることを暴露し、蝶衣も罰するべきと口をはさんできました。小楼は激怒して菊仙を叩きますが、菊仙は妊娠していることを明かし、その場を去っていきました。

その後、蝶衣と小楼は解散した訓練所を訪れ、そこで二人は小四という少年と出会います。話を聞くと、少年はかつて蝶衣が救った赤ん坊であることが判明。蝶衣はこの小四を引き取り、同じ女形として育てることを決めました。

このとき、日本は降伏し、中国に新たな時代が到来しようとしていました。蝶衣と小楼は変わらず舞台に立ち続けましたが、日本軍の後に入ってきた国民党軍の鑑賞態度は非常に野蛮でした。小楼はなだめようとするも、大乱闘になってしまい、このときの混乱で菊仙は流産してしまいます。さらに、蝶衣は日本軍と親しくしていた理由で売国奴として捕らえられることに。小楼は蝶衣をなんとか助けようと袁に助けを求めますが、袁は「王なら虞姫を救え」と冷たい態度を取るばかり。その後、菊仙が助け舟を出したおかげで小楼は袁の説得に成功したものの、当の蝶衣は小楼から届いた手紙に困惑していました。そこには、二度と同じ舞台に立たないと書かれていたのです。それは、二人が舞台に立ったために子どもを失ってしまった菊仙の怒りがこめられていました。

そして迎えた裁判の当日、袁は蝶衣のために嘘の証言をし、蝶衣が拷問を受けやむなく宴席で歌ったと主張しました。あとは、蝶衣が袁の主張を繰り返せばいいだけでしたが、蝶衣は日本軍からの暴力を否定しました。蝶衣はさらに言葉を続け、「青木が生きていたら、京劇は日本へ伝わったことでしょう」と語り、「私を殺せばいい!」と最後に叫びました。法廷は大混乱に陥り、袁はその場から去り、菊仙はすべてをぶち壊しにした蝶衣に唾を吐きかけました。その後すぐ判決が下り、蝶衣の仮釈放が決定しました。

その後、蝶衣は以前のように舞台に立てるようになりましたが、蝶衣は私生活ではアヘンにますます溺れるようになっていました。そんな中、国民党政権が倒れ、人民解放軍が北京に入場すると、蝶衣と小楼は再び同じ舞台に立ち、その祝賀のために「覇王別姫」を演じました。このとき、蝶衣は歌声の調子を崩してしまい、小楼はその場ですぐ人民解放軍に謝罪しました。ところが、兵士たちは気にする様子を見せず、突然軍歌を大合唱し始めました。蝶衣と小楼はその異様な光景に言葉を失うのでした。

それから間もなく、人民解放軍は京劇界を牛耳る反革命分子として袁を捕らえ、銃殺の刑に処しました。蝶衣は袁が死んだショックとアヘンの禁断症状で取り乱し、ひどく暴れ出しました。小楼だけでなく、菊仙もそんな蝶衣をいたわり、必死に介抱を行うと、間もなく蝶衣は回復しました。

そんな蝶衣に新たな舞台の話が舞い込んできました。ところが、京劇に求められたのは古典的なテーマではなく、労働者が主役の現代劇でした。蝶衣はこの方針に反発しますが、小四ら若手の役者は共産党の思想に染まっており、まったく共感が得られません。蝶衣はそんな小四に腹を立て、過去に自分が師匠から受けた厳しい指導を課しますが、小四はこれを拒否しました。「あんたの指導なしでも主役になってみせる」…小四はそう吐き捨て、蝶衣の前から去っていきました。

【結】- さらば、わが愛覇王別姫のあらすじ4

この小四の言葉はすぐに現実のものとなりました。いつものように蝶衣が「覇王別姫」の舞台で出番を待っていると、そこに同じ虞姫の衣装を着た小四が現れたのです。小楼や菊仙含め、その場にいた人々が皆今日の舞台で虞姫を演じるのが小四だと知っているのに気づき、蝶衣は深いショックを受けました。菊仙は気まずさを覚えつつ、蝶衣にそっと上着をかけますが、蝶衣は感謝の言葉だけ口にし、上着を脱いでその場を去ってしまうのでした。

それから時が流れ、蝶衣は1966年の文化大革命の前夜を迎えました。蝶衣は小楼と菊仙の様子を窓から覗いていると、二人は旧社会の遺物を次々と燃やし、破壊していました。その後、小楼は時代の変化に怯える菊仙を抱きしめ、やがて情事に及び始めました。蝶衣はその様子を見ていられず、その場を去るのでした。

それからすぐ、京劇関係者たちは堕落の象徴として晒し者にされました。この共産党の動きに小四は陰ながら支援し、小楼に残酷な尋問までも行なっていました。京劇の衣装を着させられた蝶衣、小楼ら京劇関係者たちは人民の前に引きずり出され、仲間の告発を強制されました。蝶衣はこの屈辱にも毅然とした態度を取っていましたが、小楼は耐えきれず蝶衣が日本軍や国民党軍のために舞台に立ち、アヘンに溺れていることを告発しました。さらに、小楼は蝶衣と袁との関係にも言及し、蝶衣からもらった剣を炎の中に投げ捨てました。その場にいた菊仙はすぐに剣を炎から取り上げましたが、兵士に取り押さえられてしまいました。

一方、蝶衣は小楼の裏切りに傷つき、小楼を「人の振りをしたケダモノ」と批判しました。「覇王でさえ命ごいしてる。これでは京劇はどうなる?滅びるしかない」と蝶衣は泣き、自らも告発を始めました。その対象となったのは、娼婦の過去を持つ菊仙でした。蝶衣の裏切りに続き、小楼は命欲しさに菊仙を愛していないと言い出し、菊仙は言葉を失ってしまいました。

やがて混乱が収まると、菊仙は剣を蝶衣に返し、自らの命を絶ちました。蝶衣は菊仙の死にひどく取り乱し、小楼が必死になだめるのでした。一方、小四は虞姫のメイクをしながら蝶衣が持っていた宝飾品を手にして機嫌よく虞姫の歌を歌っていました。すると、そこに大勢の人民解放軍が現れ、小四は呆然と立ち尽くすのでした。

それから11年の時が経ち、蝶衣と小楼は再会を果たし、22年ぶりとなる「覇王別姫」の稽古に臨んでいました。蝶衣は昔と変わらぬ美しい声と舞を保っていましたが、小楼には明らかな衰えが見えていました。小楼は優しく見守ってくれる蝶衣に、「思凡」を歌うよう求めました。すると、蝶衣は昔のように「私は男に生まれ、もとより女ではない」と歌い、感慨深げな表情を浮かべました。

その直後のことでした。漢軍の進軍を前に虞姫が項羽に剣を求めるシーンで、蝶衣は背を向ける小楼の懐から剣を引き抜きました。それは、かつて蝶衣が小楼に送った本物の剣でした。次の瞬間、剣の鋭い音と、蝶衣が倒れる音が響き渡りました。「覇王別姫」の結末と同じように、蝶衣はその剣で自らの命を絶ったのです。小楼は蝶衣の名前を叫びますが、反応はありません。小楼は「小豆…」と呟くのでした。

みんなの感想

ライターの感想

芸術家の視点から見た戦争時代を描いた作品は多くありますが、その中でも特に本作は悲劇的であり、それと同時に非常に美しい作品だと思いました。京劇の舞台はもちろん、京劇俳優になりきったレスリー・チャンの圧倒的な演技や、当時の中国の状況を描いたリアリティなど、どんどん作品の魅力に引き込まれていきました。

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