映画:ちいさな独裁者

「ちいさな独裁者」のネタバレあらすじと結末

ちいさな独裁者の紹介:「RED/レッド」などで知られるロベルト・シュヴェンケ監督が手がける、2017年のドイツ映画。第二次世界大戦末期、敗戦直前のドイツで偶然軍服を手に入れた若き脱走兵の実話を基に描いている。日本公開は2019年。

あらすじ動画

ちいさな独裁者の主な出演者

ヴィリー・ヘロルト(マックス・フーバッヒャー)、フライターク(ミラン・ペシェル)、キピンスキー(フレデリック・ラウ)、ユンカー(アレクサンダー・フェーリング)、ハンセン(ワルデマー・コブス)、ロジャー(ザムエル・フィンツィ)

ちいさな独裁者のネタバレあらすじ

簡単なあらすじ

【起】- ちいさな独裁者のあらすじ1

ちいさな独裁者のシーン1 1945年4月。ソ連軍と連合軍の攻勢によって敗北の時を待っていたドイツでは、兵士の脱走や略奪などの軍規違反が頻繁に起きていました。
ヴィリー・ヘロルトという青年上等兵も、所属部隊を命からがら脱走していました。ユンカー大尉率いる憲兵隊は、ヘロルトを軍用車で追い回して銃撃しますが、彼は林へ逃げ込みます。
憲兵たちの怒声が響く中、力尽きたヘロルトは木の根元の穴の中に隠れて、彼らが去るのを待ちます。やがて憲兵隊は捜索をあきらめて、命拾いしたヘロルトはあてもなく無人地帯をさまようのでした。

道中、行き倒れになった脱走兵を見つけたヘロルトは、彼を人気のない小屋へ運びます。
ヘロルトは彼と手を組み、夜農家に侵入して食料を略奪することにします。しかし、近くに首を吊った脱走兵の姿があり、「略奪者は、処刑に処す」と書かれたプレートが設置されていました。
卵を強奪する際、ヘロルトの相棒は農家の飼い犬に噛まれて、騒ぎで住民が目を覚ましてしまいます。相棒が殺害されている間に、ヘロルトは逃げ出しました。

飢えと寒さに耐えながら無人地帯をさまようヘロルトは、ぬかるみにはまった無人の軍用車両を見つけます。
ヘロルトは中に入り、まずリンゴを手に取って食らいつきます。そして、ナチス将校の勲章が付いた真新しい空軍大尉の軍服を発見します。
ヘロルトは寒さのあまりその軍服を身にまとい、偶然サイズがぴったりだった靴も履き替えます。車のミラーに映った自身の姿は大尉そのものでしたが、小柄な彼にはズボンの丈が合っていませんでした。

完璧に着替えたヘロルトは歌をうたったり、将校の物真似をして悦に入ります。
そこへ一人の兵士が近づいてきて、軍服姿のヘロルトに敬礼してきます。彼はフライタークという名の上等兵で、部隊からはぐれたので同伴したいと言うのです。
ぬかるみから車を出してドアを開けるフライタークに対して、ヘロルトは本物の大尉のように軍隊手帳の掲示を求めます。
「脱走兵ではないのか」などと尋問すると、腹を空かせていそうな彼にリンゴを渡します。フライタークは感激して、リンゴを頬張るのでした。
ヘロルトはフライタークに自分の指揮下に入るように命じて、後部座席に乗り込みます。そして不敵な笑みを浮かべながら、町へ向かうように指示しました。

【承】- ちいさな独裁者のあらすじ2

ちいさな独裁者のシーン2 日が暮れる頃、2人は小さな町の食堂に入り込みます。
昼間よりも自信満々に大尉を演じるヘロルトでしたが、脱走兵の略奪に手を焼いていた市民たちは、2人を邪険に扱います。
そこでヘロルトは、軍隊の後方で起きている横暴の調査にやってきたと説明し、損害を補償するので被害額を報告するように告げます。
すると市民たちは態度を一変させてヘロルトに群がり、立派な食事を用意するのでした。

嘘の任務によってすっかり市民たちを信用させたヘロルトでしたが、その夜店主に呼び出されます。
外では窃盗犯の脱走兵が拘束されており、店主はもてなしの見返りとして、ヘロルトに脱走兵を処刑するように命じます。ヘロルトは躊躇しますが、言われるがまま脱走兵を射殺するのでした。
その後、フライタークはヘロルトの就寝の世話をします。部屋で一人になったヘロルトは、ハンガーにかかった空軍大尉の制服を眺めました。

翌日、2人は農家に立ち寄ります。そこでは粗暴な兵士のキピンスキーとゴロツキの兵士仲間が、農場主をねじ伏せて好き放題に騒いでいました。
ヘロルトは架空の任務をでっち上げて、キピンスキーたちを配下に収めようとします。しかし、キピンスキーはヘロルトの丈の長いズボンを見て、薄ら笑いを浮かべていました。
ヘロルトは彼らの軍隊手帳に「特殊部隊H」と記入して、盃を交わすのでした。

こうして親衛隊を結成させたヘロルトは、移動を続けます。
ところが途中でエンジンがなくなり、ヘロルトは親衛隊に綱で車を引かせます。悠々自適に車に乗っているヘロルトを見て、痺れを切らしたキピンスキーは彼に銃口を向けました。
そこへ脱走兵を取り締まる憲兵隊がやってきます。彼らは親衛隊の軍隊手帳を取り上げて、ヘロルトにも車から降りるように命じます。
窮地に立たされたヘロルトでしたが、「私は空軍大尉だ、礼儀をわきまえろ」と、憲兵隊に向かって激昂します。
部隊の上官は、軍隊手帳の提示を拒否するヘロルトに、命令もないのにどこへ行くのかと詰め寄ります。ヘロルトは特別任務で後方の状況を調べていると答えますが、上官は「誰からの命令だ」と引き下がりません。
ヘロルトが「総統からの命令だ」と言い放つと、上官は言葉を失い、親衛隊も思わず振り返ります。形勢逆転したヘロルトは、今度は上官に軍隊手帳の提示を求めて、権威を振りかざすのでした。
こうして難を逃れますが、ヘロルトはこの先にいくつもの検問があることを知らされるのでした。

【転】- ちいさな独裁者のあらすじ3

ちいさな独裁者のシーン3 脱走兵を取り締まる検問所に辿り着いたヘロルトは、かつて脱走した際に追い回されたユンカー大尉と再会します。
ユンカー大尉はヘロルトを空軍大尉として扱いますが、「前に会ったな」と揺さぶりをかけます。ヘロルトは堂々とした態度で接しますが、さらに彼は「一度会ったヤツの顔は忘れない」と、意味深な言葉をかけるのでした。

ヘロルトたちはユンカー大尉に粗末な収容所に連れてこられました。
ここには規則を犯した兵士が収容されており、警備隊長のシュッテがヘロルトに実情を説明します。司法局から囚人たちの保護を命じられたものの、脱走兵や略奪者は増え続ける一方で、収容所としての機能が果たせなくなっているというのです。
ユンカー大尉とシュッテは、囚人の処分を総統に口添えしてもらいたいと、ヘロルトに訴えます。彼は誘導されるまま、総統は自分に全権を与えたと語り、「略奪者は、処刑に処す」と、いつか見たプレートの言葉を発するのでした。
その後、ヘロルトは収容所を去るユンカー大尉に、どこで会ったか思い出せたかと尋ねます。ユンカー大尉はしばらく考えてから、思い出せないと答えるのでした。

ヘロルトは野戦裁判所を設置して、収容所の秩序を改善させると宣言します。
かねてから司法部とつながりがある所長のハンゼンと折り合いが悪かったシュッテは、ヘロルトに力を貸します。そして、ゲシュタポの全権委任を取り付けられるように手引きするのでした。
こうしてハイゼンの反対を押し切り、法による正当性を無視した即決裁判によって、ヘロルトは囚人たちの処刑を実行に移します。
ヘロルトと親衛隊は、囚人たちが集められた小屋に入ります。ヘロルトは前に立っていた老齢の囚人に、「お前は何をした?」と質問します。
しかし返事がなく、キピンスキーが「大尉が聞いているだろ」と怒声を上げ、囚人を押し倒して鞭で執拗に打ちます。
ヘロルトは親衛隊に、囚人たちを外に並ばせるように命令します。そして、「30人を3回でやれ」と告げるのでした。

日暮れになり、ヘロルトは巨大な穴の中に30名の囚人を押し込めます。
そこへ対空機関砲を掃射して大量殺害を図り、生き残った者は機関銃で抹殺するという、残虐な方法で処刑をおこないます。
親衛隊は穴を狙って銃撃を続けますが、フライタークは一人目を背けて佇んでいました。
穴の中で瀕死の状態になった囚人の咽び声を聞いたヘロルトは、離れて見ていたフライタークにとどめを刺すように命じます。
フライタークはためらいながらも、「楽にしてやれ」というヘロルトの命令通り、囚人を銃殺するのでした。

こうして一日で90名の囚人を処刑した夜、収容所では盛大な宴が催されました。
余興として呼ばれた2名の元役者の囚人を気に入ったヘロルトは、彼らにどんな罪を犯したのかと尋ねます。
役者たちが何もしていないと答えると、ヘロルトは「俺は軍服を盗んだ」と正直に打ち明けます。しかし、役者たちやシュッテは、冗談と受け止めて大いに笑い合うのでした。

その後、酒に溺れてしまったキピンスキーが、乱闘騒ぎを起こします。
ヘロルトは彼を止めるため肩に発砲し、騒ぎに巻き込まれた数名の囚人を縄で縛り、「走れ」と命じます。
ヘロルトは必死に逃げる彼らを容赦なく銃撃します。そして、役者の一人に銃を渡し、囚人を撃つように命じるのでした。
ところが、役者の一人はその銃で自らを撃って自殺し、もう一人は他者に銃口を向けました。

【結】- ちいさな独裁者のあらすじ4

ちいさな独裁者のシーン2 翌日、朝食の準備にやってきたフライタークは、ヘロルトがズボンの丈を直しているのを目にします。
そこへシュッテが駆けつけてきて、国民突撃隊が脱走兵の捜索に合流していると報告します。ヘロルトは大勢の兵士を前に下着姿のまま登場し、脱走兵を見つけて迅速に始末するように命令を下すのでした。
その後、ズボンの件を問われたフライタークは、「サイズが合って安心しました」と答えました。

あるとき、至るところに死体が散乱するほど没落した収容所が、連合軍による空爆を受けます。
収容所は跡形もなく吹き飛ばされますが、どうにか生き残ったヘロルトと親衛隊は、逃亡を決意します。
彼らは「ヘロルト即決裁判所」と書き殴った軍用車両に乗り、小さな町へと向かいました。そこで「WELCOME」と書かれた垂れ幕を見つけたヘロルトは、建物から出てきた男性に向かって「売国奴だ!」と叫びます。
ヘロルトは集まってきた市民たちに対して、「売国奴に代償を支払わせる」と宣言して、取り押さえた男性を射殺しました。
さらに「この地に法と秩序を取り戻す」と言って、通行料として市民たちから金品を奪うのでした。

それからヘロルト一行はホテルに入り浸り、意のままに過ごします。
生真面目だったフライタークさえも、いつしか乱交や残虐行為に参加するようになっていました。
あるときヘロルトは、キピンスキーに娼婦を横取りされたことを怒り、彼を拷問にかけます。そして、キピンスキーを全裸にして町中を歩かせ、銃殺するのでした。

ところがある日、野戦憲兵隊がホテルに乗り込んできます。
ヘロルトたちはあっさり拘束され、軍隊手帳の提示を求められた彼は、ついに上等兵であることがばれてしまうのでした。

ヘロルトは裁判にかけられることになりました。
弁護士はヘロルトの指揮官としての素質を評価し、無罪にして前線に送るのはどうかと提案します。
裁判官は大量虐殺を無実にできないと猛然と反論しますが、ヘロルトは直立不動の姿勢で自分の行いはナチス党員として正しかったと主張するのでした。
こうして前線行きが確定して命拾いしたヘロルトでしたが、その夜窓から脱走を図ります。白骨死体が折り重なる林に辿り着き、彼はそのまま闇へと消えていくのでした。

その後ヘロルトは、パン1斤を盗んだ罪でイギリス海軍に逮捕されました。
取り調べによって数多の戦争犯罪をおこなったことが明らかとなり、被告であるヘロルトと6名の敗残兵には死刑、5名に無罪の判決が言い渡されるのでした。

エンドクレジットでは、ヘロルトと親衛隊が現代の街を練り歩き、通行人の手荷物を強引に検閲する様子が描かれ、物語は幕を閉じます。

みんなの感想

ライターの感想

例え借り物の権力であったとしても、「地位」があれば容易に大衆を支配できるということを思い知らされた作品でした。ヘロルトには人の心を掴む話術や風格が備わっていましたが、彼が独裁者として君臨する手助けをしたのは、紛れもない周囲の人間でした。権力に従う人々に乗せられて増長していくという構図は、現代社会にも十分通じますし、ヘロルトと本物の大尉の違いさえもわからなくなりました。自分もヘロルトのようになり得るのだと思うと怖くなりましたが、皮肉の効いたエンドクレジットには思わず笑ってしまいました。本国ではモノクロ上映だったらしく、そちらのバージョンも是非観てみたいです。

映画の感想を投稿する

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください