「人間失格(2010年)」のネタバレあらすじと結末の感想

人間失格(2010年)の紹介:2010年公開の日本映画。2009年に生誕100年を迎えた文豪・太宰治の代表作で、自叙伝とも言われる同名作を、生田斗真・主演で荒戸源次郎・監督が映画化。酒に溺れ、破滅していく主人公と、そんな彼に惹かれる女たちとの物語を描く。

予告動画

人間失格(2010年)の主な出演者

大庭葉蔵(生田斗真)、大庭葉蔵〔少年時代〕(岡山智樹)、堀木正雄(伊勢谷友介)、常子(寺島しのぶ)、良子〔よしこ〕(石原さとみ)、武田静子(小池栄子)、礼子(坂井真紀)、寿(室井滋)、平目〔渋田〕(石橋蓮司)、井伏鱒二(緒形幹太)、中原中也(森田剛)、堀木の父(麿赤兒)、堀木の母(絵沢萠子)、律子(大楠道代)、鉄(三田佳子)

人間失格(2010年)のネタバレあらすじ

簡単なあらすじ

①大庭葉蔵は資産家の次男として生まれ、何不自由のない環境で育った結果、何をしても満足できない人間となる。高校卒業後に上京した葉蔵は、堀木という男と知り合い、徐々に自堕落な生活を送るようになる。 ②複数の女性を渡り歩いた葉蔵は、自殺を繰り返し、やがてモルヒネに耽溺する。故郷の津軽で療養生活を余儀なくされた葉蔵だが、再び東京に舞い戻る。

【起】- 人間失格(2010年)のあらすじ1

シューベルトの『アヴェ・マリア』のレコードが流れる中、男・大庭葉蔵はかつての自分のアルバムをバーのカウンターで見ながら、うたたねをしていました。それを、バーのマダム・律子が見守ります。
…大正時代の中期。
葉蔵は、青森県津軽の資産家の息子として生まれました。家は「一乃家」と言い、洋風の豪邸の屋敷には、たくさんの使用人が雇われています。
故郷からはいつも津軽で有名な山・岩木山が見えます。葉蔵は何不自由のない生活を送っていました。
…昭和の初め。
十歳の誕生日を迎えた葉蔵は、女の子たちと集合写真を撮りました。思えば葉蔵は幼少期から女性に囲まれる生活を送っていたのです。
写真の葉蔵は両手を握り、作り笑いをしていました。
使用人の平目(本名は渋田)から「今日は特別に馬車に乗ってもよいそうです」と言われます。
自室の机に唇の形を彫った葉蔵は、赤い水性絵具を垂らしました。
津軽の里神楽で地獄絵を見た葉蔵は、げ術に強い興味を抱きます。ただそれ以外には欲がありませんでした。裕福な家庭で恵まれて育ったので、欲がないのです。
「生まれで(津軽弁)、すみません」あとで思えば、葉蔵はそう思うばかりです。
…数年後。
中学生になった葉蔵は、世渡りを覚えていました。作り笑いをして道化を演じていれば、人生をうまく渡り歩けると思ったのです。
体育の時間、跳び箱を飛べない振りをして笑いを取った葉蔵ですが、同級生の竹一にだけは露見しました。
竹一は「ワザ、ワザ、ワザとやってんべ」と葉蔵の耳元で囁き、竹一に看破された葉蔵は不安と恐怖でおののきます。
ごまかすために竹一に近づいた葉蔵は、家に招きました。ゴッホやゴーギャンの自画像を見て「お化けだ」という竹一の発想が興味深く、葉蔵は自分が描いた自画像を見せて「オラのお化げ」と言います。
竹一は感心して、葉蔵は立派な絵描きになると言いました。
その頃、従姉のアネサが部屋に入ってくると倒れ込み「葉ちゃん、あたしを助けてくれるんだね。こんな家、一緒に出でしまっだ方がええんだよ。助けで」と言って泣きますが、葉蔵がりんごを剥いてやると、アネサは「面白い本を貸してくれ」と言いました。
昭和十三年頃。
高等学校を卒業した葉蔵は上京し、仕事をするわけでもなく、絵を描いて過ごしていました。
東京都台東区にある不忍池を見ながら水彩画を描いていた葉蔵の筆を取り上げて、素早く筆で描き足すと「5円(現在の1~2万円)貸してくれないか」と声をかけた者があります。彼は堀木正雄と言い、画塾で初めて会った時から葉蔵を誘おうと思っていたそうです。
堀木と葉蔵はバーに呑みに行きました。そこでバーのマダム・律子や、井伏鱒二、小林秀雄、壇一雄らに会います。
中に「戦争は茶色、クソと同じだ」と言う中原中也がいました。中也は葉蔵に好きな花を聞き、葉蔵が「桃」と答えると絡みます。葉蔵は中也に悪印象を持ちつつも、一方で強烈に惹かれるものを感じました。
堀木に連れられて、葉蔵はカフェ(現在のキャバレー)に呑みに行きました。当時のカフェには女給(ホステス)がいます。
芸者遊びも堀木に教わります。勘定は葉蔵持ちでした。
葉蔵は堀木に「どんな男だって、どうしようもなく女に好かれる時期が、一度はあるそうだ」と言い、堀木に茶化されます。

【承】- 人間失格(2010年)のあらすじ2

何をしても気が晴れない葉蔵は、ある日堀木に「一緒に死のうか」と言いますが、堀木は笑って「女と一緒じゃないと格好がつかないだろう」と答えます。葉蔵は納得しました。
葉蔵の父が引退し、津軽の豪邸は平目が父の命令で処分をします。
葉蔵には本郷(文京区)に下宿を用意しました。働くことなく悠々自適の生活を送っていた葉蔵は、仕送りで生活するようになります。無駄遣いをすると金に困るようになりました。
引っ越しの時にも堀木がやってきます。
同じ下宿に住む礼子が、引っ越し祝いをさせてくれと言います。
金に困るようになった葉蔵は、少し堀木と距離を置きました。二人で遊ばず、独りで行動します。
薬局でハルモチン(注:原作では正しい名称「カルモチン」。映画では薬が表示されるシーンがあるが、ハルモチン表記だった。睡眠薬の一種)を買ってきてくれと、葉蔵は礼子に頼みました。
カフェで知り合った女性・常子と葉蔵はデートします。常子の夫は前触れもなしに失踪したのですが、二度夢枕に立ったので死んだのではないかと、常子は言いました。
常子と深い仲になった葉蔵ですが、下宿先では礼子が部屋掃除するなど、葉蔵の身の回りの世話をなにくれと焼いてくれます。
独りで遊ぶのがつまらなく感じた葉蔵は、堀木のところへ戻り、再び二人で遊び始めました。
カフェに行った堀木は「隣に座った女給にキスしてやる」と宣言しますが、隣に座ったのは常子でした。堀木が「さすがのおれも、こんな貧乏くさい女には…」と言ってやめます。
所有欲はないものの、関係を持った常子を「貧乏くさい」と表現した堀木に、葉蔵は目を覚まされた思いでした。そのようにして見ると常子は野暮ったく感じられます。それでいて、いとおしいとも思えました。
その日葉蔵は吐くほどに呑みました。常子が「うちが稼いであげても駄目なん?」と聞きますが、そこまでして葉蔵は生きたいわけではありません。
しかし生きるには金が必要です。常子と二人で街中で牛乳を買って飲んだ時、牛乳代の小銭すら持っていないのを常子に「たったそれだけ?」と言われた葉蔵は、死のうと決意しました。
常子と葉蔵は鎌倉に行き、そこでハルモチン(睡眠薬)を服用してあやとりの赤い糸を互いの足首に繋ぎ、海に入って入水自殺を図ります。
常子は死にましたが、葉蔵は命を取り留めました。使いの平目がやってくると、常子の実家には見舞金を払ったと言います。自殺幇助罪にあたる葉蔵ですが不起訴になるだろうと告げ、葉蔵は父から「勘当(縁を切ること)」を言い渡されました。
平目の家『青龍園 渋田』という骨董屋の二階に身を寄せた葉蔵は、平目に「どうしたい」と聞かれます。平目は葉蔵の心配もし、またまっとうに生きてほしいと思っています。
「画家になりたい」と葉蔵が答えると、平目は含み笑いをしました。画家になれるわけがないと、ばかにされたのです。
絶望した葉蔵は平目の家を出て、持っていた画集を質屋に売りに行きました。そこで中原中也の詩集『山羊の歌』を見つけた葉蔵が手に取ろうとすると、中也がやってきて声をかけるので、葉蔵はいたく驚きます。
中也は「本人を見てがっかりしたかい」と言うと、葉蔵の売った画集を買い直してくれました。それを渡しながら「いたずらピエロ。道化の役は、僕だけでいい」「鎌倉まで付き合ってくれ。(葉蔵の心中の件は)承知の上だ。嫌な思いはさせない」と言って、連れていきます。

【転】- 人間失格(2010年)のあらすじ3

小坪トンネルに葉蔵を連れて行った中也は「もう少しだけ、生きたいんだ。書きたいことが頭の中にたくさんありすぎる。しかし、ことによると僕はもう、存在していないかもしれないよ」と言いました。
中也はトンネルから垂れた雫を舌で上手に掬い取りますが、その背後には線香花火のような鬼火が散っています(中也が病に侵されていて余命いくばくもない描写)。降りしきる桃の花も見えます。
「ボーヨー、ボーヨー」と呟く中也に問うと、「前途茫洋だよ(注:本来はこの言葉はない。「前途有望」という言葉と対比させて「先行きがまるで見えない」という意味で作ったものだと思われる)」と中也は答えました。
恵まれていながら葉蔵は生きる意欲がなく、対照的に中也は書きたい、生きたいと思いながらも時間が残っていませんでした。葉蔵は中也にやはり強烈に憧れている自覚を持ちます。
ほかに頼る者がいない葉蔵は、堀木の家を訪ねました。
堀木の家は貧しい家でした。「ばかもこの辺でやめるんだな」と堀木は冷たく言います。
堀木は挿絵の仕事を受けており、女性編集者・武田静子が絵を受け取りに来ました。
静子と親しくなった葉蔵は「金の切れ目が縁の切れ目」と呟き、自分の方が堀木より上手に描けると言います。静子は「もし出来がよければ会社の上にかけあう」と答えました。葉蔵はマンガを描いて掲載します。
葉蔵のマンガは人気が出て、また堀木が「5円貸してくれないか」と顔を出し始めました。
壇一雄と小林秀雄が山梨県の御坂峠で長逗留をしているので、同行してくれないかとバーのマダム・律子に言われた葉蔵と堀木ですが、その会話の際、中也が前年の秋に亡くなったことを初めて知らされます。
中也の死を知った葉蔵は、鎌倉の小坪トンネルに出向き、詩集『山羊の歌』に花と蝋燭と線香を手向け、酒を注ぎました。
静子の家を出て、マダム・律子の家に居ついた葉蔵は、昼間から酒を呑むようになります。
煙草屋の娘・良子に「これ以上呑まないでくださいな」と声をかけられた葉蔵は、「今日から呑まない」と答えますが、店に戻るとすぐアブサン(酒の種類、リキュール)を呷りました。そして「すみません、今度こそ呑みません」と良子に言いますが、良子は葉蔵を疑っておらず、酔った振りをしているのだと受け取ります。「誓ったのだもの。呑むわけないわ」と言われた葉蔵は良子を手に入れたいと思い、マダム・律子に頼んで良子と結婚しました。つかの間、幸せな時間が流れます。
ところが幸福な時間は長くは続きませんでした。新居に堀木が遊びに来て空腹を訴えたので、そら豆ができると葉蔵は言いましたが、待ち切れず二階から一階へ降りた堀木は、葉蔵に「とんだそら豆だ」と言うと招きます。
一階では、バーに以前から来ていた男・藤田が良子を犯していました(合意ではなさそうだが、良子は声を出して助けは呼ばない。前に藤田が良子に耳打ちするシーンがあるので、良子は脅されていた可能性あり)。
ショックを受けた葉蔵に、堀木は「ここへはもう来ない。まるで地獄だ。でもお前だってろくな奴じゃないんだから、良子ちゃんは許してやれ」と言って去ります。
砂糖壺の中に睡眠薬・DIAL(ジアール)を見つけた(良子も自殺を考えていたと思われる)葉蔵は、それを服用しました。自殺は失敗し、病院のベッドでまた葉蔵は目を覚まします。

【結】- 人間失格(2010年)のあらすじ4

病院には平目とマダム・律子が来ていました。葉蔵は泣きながら「良子と別れさせてくれ」と言います。そして「僕は女のいないところへ行くんだ」と葉蔵が言うと、平目が爆笑しました。笑いすぎて腹が痛いと言います。
その頃、葉蔵は喀血しました。雪の中に倒れて葉蔵は満足げな笑みを浮かべます。
寿薬局の主・寿を訪れて身体がだるくてへとへとなのに眠れないと訴えた葉蔵は、寿から造血剤、ヴィタミンの注射液と注射器、カルシウムの錠剤、胃腸薬のジアスターゼを渡されました。
葉蔵の衰弱が酒の呑み過ぎだと気づいた寿は、最後に「どうしてもお酒が呑みたくなった時の薬」と言って、モルヒネ(麻薬)の薬も包みます。
これがよくありませんでした。葉蔵は酒を呑まなくなった変わりにモルヒネに耽溺し、寿に薬をくれとせがみます。寿は「警察がうるさいので困る」と断りますが、葉蔵は「キスしてあげるから」と言ってモルヒネを受け取りました。
腕に注射が打てなくなり(何度も同じ場所に連続して注射は打てない)、足に注射針を刺すほどに、葉蔵はモルヒネの中毒になります。
どういう経緯か平目に露見し、葉蔵は喀血を口実に武蔵野病院へ入れられました(たぶん精神病院)。餞別代わりと言って堀木がモルヒネを渡しますが、葉蔵は受け取りを拒否します。
「5円貸してくれ」といつものように堀木がせびるのを断ると、堀木は「死にぞこないの麻薬中毒がえらそうに。最初から大庭葉蔵のすべてが嫌いだった」と告白しました。葉蔵はそれを聞いて笑います。
(恵まれた境遇の葉蔵を堀木は憎み、いい金づるになると思って接近し、堕落させようと思っていた。葉蔵もうすうすそれを勘づいていたので、やっと本音を話した堀木に対して、笑った)
父が亡くなりました。父の遺産は兄・伸蔵がすべて相続し(第二次世界大戦前までは長子相続が当たり前だった)、兄の意思で葉蔵は東京を離れ、津軽で療養生活をしろと言い渡されました。
青森・津軽に戻った葉蔵は、屋敷を用意してもらいます。おつきの人は、父ゆかりの鉄という年配の女性でした。兄・伸蔵から金の無心の手紙をすべて返されます。
鉄は「母の縁(えにし)が薄い葉蔵さまと、子の縁が薄い私」と言って、母と子の契りを交わそうと言いました。実際、鉄は葉蔵にわが子以上の愛をそそぎます。
しかし葉蔵は鉄の愛情に護られながらも「僕は、もう人間でさえないのに」と思っていました。「人間失格」です。
しばし鉄の元で母親の愛情に包まれ、心の安らぎを得た葉蔵ですが、また東京に向かいました。
東京に向かうSL列車の中で、葉蔵は戦争の兆しを感じていました。軍人に囲まれて列車に乗る葉蔵の周囲には、やがて葉蔵がいままで知り合った人たちで埋め尽くされます(葉蔵の幻想)。
「ボーヨー(茫洋)」と連呼しながら中也が歩き、堀木がやって来ると葉蔵に「5円貸してくれないか」と言います。
…バーのマダム・律子の元へ行った葉蔵は、また自堕落な生活に戻りました(冒頭のシーン)。
レコードが終わって律子がラジオに切り替えると、ラジオでは臨時ニュースで太平洋戦争の開戦を告げます(昭和十六年)。しかし、世の出来事は葉蔵には何の関係もありませんでした。
「今の自分には、幸福も不幸もありません。ただ、一切は過ぎていきます」葉蔵はそう思うのみでした…。

みんなの感想

ライターの感想

原作と大きな違いはないが(決定的な違いはある。それは後述)、それを退廃的に、耽美的に描いた作品。
イメージ的にはもっと落ち着いた大人の男性がいいと思っていたのだが、生田斗真が好演していた。
そしてもう1人、伊勢谷友介の演じる堀木正雄が、ほんっとに厭な奴として演じられている。演技、うまい。
原作との決定的な違いは「中原中也が出てくる」こと。森田剛演じる中原中也は、太宰の『人間失格』には一切登場していない。それらしき人間も該当しない。そもそも時代が少しずれるのだ。
ただ、登場シーンは少ないながら、森田剛はすごく光る演技をする。葉蔵が中也に憧れる気持ちが上手に演出されている。
ちょーっと長いかも。ただ、見ごたえはある。

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