「仕立て屋の恋」のネタバレあらすじと結末の感想

仕立て屋の恋の紹介:殺人事件の容疑者として浮上した中年男イール。彼がいつものように美しい娘の部屋を覗いていると、彼女の方からイールに接近を始める…。
サスペンス調で綴る孤独な男の人間ドラマ。監督は『髪結いの亭主』や『橋の上の娘』などで知られるフランスのパトリス・ルコント。1989年の作品で、日本では遅れて1992年に公開された。原作は同名(邦題)小説で、今作以前にも別タイトルで映像化されている。

予告動画

仕立て屋の恋の主な出演者

イール(ミシェル・ブラン)、アリス(サンドリーヌ・ボネール)、エミール(リュック・テュイリエ)、刑事(アンドレ・ウィルム)

仕立て屋の恋のネタバレあらすじ

【起】- 仕立て屋の恋のあらすじ1

22歳のピエレットという女性の死体が空き地で見つかり、殺人事件として捜査が始まります。容疑者として名前が挙がったのが仕立て屋を営む中年男・イールでした。彼は神経質な性格で、人付き合いが全くなく周囲からも嫌われています。いつもスーツ姿のイールが着ているコートや背丈が逃走した男と似ていることや、何よりイールにわいせつ罪での前科があることから、刑事は彼が犯人だと睨んだのでした。

孤独なイールの唯一の楽しみは、アパートの中庭を挟んだ向かい側にある若く美しい娘・アリスの部屋を覗くことでした。カーテンの無いアリスの部屋は丸見えで、イールは夜でも部屋に灯りもつけずに、ただ静かに彼女を見つめていました。アリスにはエミールという婚約者がいますが、彼女が越して来てからずっと部屋を見ていたイールはそれさえも認識しています。アリスは早く結婚したいと望んでいますが、エミールはいつも曖昧な態度でした。

ある日イールは刑事に逃走シーンを再現させられ、アパートの周りには住人が集まり、冷ややかな視線が送られます。犯人を目撃したタクシー運転手は、結局イールが犯人だとは断言できませんでした。
その夜部屋にいたアリスは稲妻が光り雷鳴が響き渡った時に、向かいの暗い部屋の窓にイールの顔が浮かび上がったことに驚いて腰が抜けます。彼女は部屋を覗かれていることに初めて気づいて戦き、ある不安が脳裏を過りました。

【承】- 仕立て屋の恋のあらすじ2

数日後イールの帰宅を待ち伏せたアリスは、故意に階段からトマトを落として彼に近づきます。艶っぽくトマトを拾う彼女の姿に動揺するイールでしたが、会話もせず部屋の扉を閉じました。その日アリスはイールに見せつけるように、エミールと行為に及びます。

数日後アリスはこちらを覗くイールを見つめ返した後、彼の部屋を再び訪ねます。部屋に招いてくれたイールにあることを確認したいアリスは、“警察には通報しなかった”と鎌をかけてきました。イールの反応にやや安心したアリスは態度を変え、あなたは優しそうと言って色仕掛けをしてきます。イールは思わず怒号を放ちアリスを部屋から追い出しますが、彼女が腰かけたベッドに顔を埋め残り香を嗅ぎました。イールはアリスを見た時からずっと彼女に恋焦がれていたのです。実はピエレットを殺害したのはエミールで、アリスの部屋で実行されたのでした。その現場も目撃していたイールですが、その場にいたアリスも共犯になってしまうため、警察には通報しなかったのです。

イールが犯人ではないと察した刑事は、アリスやエミールの身辺調査のため、しつこくイールに付きまといます。帰宅したイールに玄関の床に置手紙があると指摘した刑事は「知的で可愛い娘だ」と言い残し、去って行きました。アリスからの手紙は“日曜にお会いしたい”というもので、それを読んだイールはハンカチを握りしめながら短い眠りにつきます。イールはアリスの香りと同じ香水を買い、ハンカチに香水を浸して気持ちを落ち着かせるようになっていたのでした。

【転】- 仕立て屋の恋のあらすじ3

日曜日。待ち合わせ場所に先に着いたイールは、しばらくアリスを眺め、遅れて来たフリをしました。食事をしながらイールの退屈な話にも耳を傾けたアリスは、探るようにエミールの名前を出します。婚約者の存在は知っているとだけ答えたイールは話題を変え、スイス・ローザンヌに永住するつもりだと汽車の切符を2枚見せると、珍しく心を弾ませていました。店を出るとアリスが接近してきたため、僕を愛していないとイールは拒みます。それでもキスをしたアリスに、イールはいよいよ事件のことを切りだしました。血の付いたコートを隠し、血を拭くためにエミールに起こされた君を見ていたと…。
イールは通い続けている娼館へアリスを連れて行き、娼婦との過程を説明すると、それは過去の話で今は違うと語ります。戸惑うアリスにイールは「娼婦と寝ない訳は君に恋をしたから。愛している君を失いたくなくて、警察に通報しなかった」と彼女への想いを告げました。

イールの気持ちを知ったアリスは彼の気持ちを利用しようとします。エミールらとのボクシング観戦に、アリスはエミールに隠れてイールも同行させました。観戦中エミールが友人と共にアリスから離れると、イールはアリスのシャツやスカートの中に手を入れて彼女を弄りました。一瞬恍惚の表情を浮かべたアリスでしたが、警察を発見し逃げ出したエミールを追いかけて行ってしまいます。エミールはアリスに「来るな」と言って、彼女を踏み台にして裏口の窓から逃げました。

【結】- 仕立て屋の恋のあらすじ4

取り残されて塞ぎ込んでいたアリスを見つけたイールは、必死に自分の愛を伝えます。彼は卑怯だ、私なら君を守ってあげる。君のペースで愛してくれればいい。人生を君に捧げると。イールは私と逃げようと言って、ローザンヌ行きの汽車の切符をアリスに渡しました。
帰り道で刑事に捕まったイールは、何故頑なに口を閉ざすと責められますが、それでも口を割りませんでした。帰宅したイールは刑事宛てに、とある場所の鍵を送ります。

出発の日。イールは飼っていたネズミを餌と共に線路脇に放ち、旅立つ準備をします。やがて汽車の出発時間になりますが、待ち続けてもアリスは来ませんでした。イールが虚しく部屋に戻ると、刑事とアリスがいました。アリスは隠し持っていたピエレットのバッグをイールの部屋に移し、罪を擦り付け通報したのです。刑事に問われても何も答えなかったイールは、「君を少しも恨んでいない。とても切ないだけ。君は喜びをくれた」とアリスに言い残し、屋上へ逃げました。アパートの屋根を走ったイールは足を滑らせ落下し、僅かな突起を掴みぶら下がりますが、やがて力尽きます。アリスは落ちていくイールを彼の部屋の窓からただ見つめました。イールの手にはアリスの香りがするハンカチが握りしめられていました。

イールからコインロッカーの鍵が届いた刑事が中を開けると、事件の日エミールが捨て、イールが拾ったピエレットの血がついたコートが入れられていました。添えられた手紙には、こう綴られていました。“これを読む頃には自分とアリスは国外にいます。彼女に罪はないので、彼女の無実を守るために旅立ちます。刑事さんなら2人の幸せを願ってくれると信じます“と…。

みんなの感想

ライターの感想

イールは純情であるものの終始不気味なうえに、人間の非情さが描かれた悲しすぎる結末…。決して後味はよくないのですが、それでも非常に記憶に残る作品でした。ラストシーンは切なさで胸がつまりそうです。台詞も少ない分、イールの人柄や官能的なシーンはさりげなく映像で綴られており、品のよさを感じました。
また絶妙なタイミングでブラームスのピアノ四重奏曲が流れ、イールの孤独や彼の運命の不吉さが表現されていました。セザール賞で音楽賞を獲得したというのも頷けます。

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