映画:十年

「十年」のネタバレあらすじと結末

十年の紹介:本作の製作時点の2015年から10年後の2025年を舞台にしたオムニバス映画。激変する香港政治に翻弄される人々や、抵抗運動を続ける若者の姿を描いていく。第35回香港電影金像奨では作品賞を受賞した。2015年香港製作。

あらすじ動画

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十年の主な出演者

エキストラ:ピーター(ピーター・チャン) / 冬のセミ:ウォン・チン(ウォン・チン)、ラウ・ホチ(ラウ・ホチ) / 方言:タクシー運転手(リョン・キンピン) / 焼身自殺者:オウヨン・キンファン(ン・シウヒン) / 地元産の卵:サム(リウ・カイチー)

十年のネタバレあらすじ

簡単なあらすじ

【起】- 十年のあらすじ1

十年のシーン1 エキストラ

物語の舞台は、香港のとあるビル。このビルでは近々政治集会が行われることとなっており、真愛連の党首ラムと金民党の党首ヨンが出席することとなっていました。集会の準備が進められる中、同じビルの別の部屋では二人のチンピラの姿がありました。一人は中国系の長毛という中年男で、もう一人はインド系のピーターという若者でした。

二人はボスから政治集会でヨンを暗殺するよう依頼を受けており、そのリハーサルを行っていました。長毛とピーターが属する組織に今回の依頼を持ちかけたのは、行政長官ら香港の政治中枢にいる人間たちでした。香港の高官たちは中央政府の意向を受け、国家安全条例の法案通過を目指していました。そこで、チンピラたちに集会でラムとヨンいずれかを暗殺させ、香港市民たちにテロリストの恐怖を植え付け、法案を支持させようと考えたのです。しかし、ギリギリまでラムとヨンどちらを殺すのか高官たちは決めかねていました。

待たされている間、長毛とピーターは暗殺後のことについて考えを巡らせていました。長毛は香港に移住してからろくに稼ぐことができなかったため、裏組織で働くようになっていました。長毛は金のためなら何でもやると考えていましたが、ピーターは政治に関わることを快く思わず、いまだに迷っていました。そんなピーターに、長毛は自分一人で仕事をやると言い出しました。そこで、ピーターはコイン投げでどちらが仕事をやるか決めようと提案。長毛はすぐにコインを投げ、二人はコインが落ちていくのを黙って見守るのでした。

ところが、組織は長毛とピーター二人でラムとヨンを暗殺するよう命じました。命令通り、長毛とピーターはスタッフに変装し集会に潜入、ラムとヨン二人に銃口を向けました。しかし、長毛とピーターは暗殺に失敗し、警官に射殺されてしまいました。

この事件を受けて、中央政府は警察の迅速な対応を称賛する声明を発表しました。「外部勢力の浸透を示す事件であり、国家安全条例の成立は確実でしょう」…香港のニュースはこう事件を伝え、中央政府の思惑通りに物事が運ぼうとしていました。

冬のセミ

物語の舞台は2025年の香港。当局の逮捕を逃れ、二人の男女は様々なものを標本にする日々を送っていました。女の方はウォン、男の方はラウといい、彼らが標本にしていたのは、当局によって破壊された友人の家のガレキや、街で見つけた日用品などでした。

そんなある日、ラウは自分を標本にして欲しいとウォンに頼みました。自分はすでに活力を失っており、これまで標本にしてきたものと同様、消えゆくものになりつつあることをラウは自覚していたのです。ウォンはラウの頼みを拒みますが、「自分の信念を曲げたくない」と語るラウの熱意に負け、標本化に手を貸すことを決めました。

ウォンはラウの汗や毛を採取し、ラウの食事には凝固剤を出しました。しかし、ウォンは衰弱していくラウの姿に耐えられなくなり、ラウを部屋に閉じ込めてしまいました。ラウはウォンを批判し、壁を殴りつけて部屋から出ようとしましたが、やがて力なくその場に座り込みました。

朝になると、ラウはぐったりと椅子に座ったまま動かなくなっていました。ウォンはラウの周りの床にテープを丁寧に貼りながら、デカルト派の科学者が犬を鞭打った話を思い出していました。打たれた犬が鳴くのは時計の鐘が鳴るのと同じであり、犬は何も感じないと彼らは考えていました。「この家で過ごした数年間、私たちも鐘を鳴らしているつもりだったの?」…ウォンはこう自問しながら、淡々とテープを貼り続けていました。

【承】- 十年のあらすじ2

十年のシーン2 方言

物語の舞台は2025年の香港。このとき、香港では普通話の普及政策が進み、広東語の話者が少数派になりつつありました。昔から広東語を話してきたタクシー運転手の男は、この時代の変化になかなかついていけずにいました。タクシーには普通話非対応を示すシールがデカデカと貼られることとなり、空港や港での客待ちが禁止されるようになっていました。

この頃では、男は学校で普通話を話す小学生の息子との会話にも苦労するようになっていました。例えば、男はサッカー選手のデビッド・ベッカムを英語の発音通りに呼んでいましたが、息子は普通話の発音で「ダイワイ・ブイハッホンモウ」と呼んでおり、男は息子が誰のことを話しているのかすぐには理解できませんでした。

時を同じくして、カーナビが広東語に非対応となり、男は仕事にも困難を感じることが増えてきました。男がいくら普通話の発音を頑張ってもカーナビは認識してくれず、最終的に男は客に行き先を発音してもらいました。

また、男の広東語を聞いただけでタクシーを降りる客も現れ、次第に男は閉塞感を覚え始めました。そんな中、男は広東語しか話さない中年男を乗せました。客の男は普通話しか話さないタクシー運転手に嫌気をさしていたのです。ところが、男が客をタクシーに乗せたのは普通話非対応のタクシーの出入りが禁止されている場所でした。この現場を目撃した同業者のタクシー運転手はすぐに警察に通報、男はその日の稼ぎのほとんどを罰金に取られ、警察は広東語しか話せない客の事情も考慮に入れてくれませんでした。

その後、男は普通話が苦手な女性をタクシーに乗せました。女性は上司と話をしており、普通話で懸命に報告していました。しかし、上司から普通話の拙さを指摘され、女性は激怒して解雇してもかまわないと吐き捨てて電話を切りました。その後、女性はきつい口調でホンハムに行くよう男に指示してきました。男がもたついていると、「広東語もわからないの?」と女は男に八つ当たりするのでした。

その後、男が息子を迎えに行くと、息子が「父さん」ではなく、普通話風に「パパ」と呼んできました。男は息子の口調の変化に驚きつつも、何も言いませんでした。息子は友達の家に遊びに行きたいと言って、そのまま友達と出かけて行きました。男はサイドミラー越しに息子の後ろ姿を見届けました。「普通話の普及政策で運転手に普通話の試験が課せられました。試験に落ちたタクシー運転手は、空港や港で客を乗せることができません」…ニュース音声を背景に、小学校の前から走り去るタクシーを映し出し、物語は幕を閉じます。

【転】- 十年のあらすじ3

十年のシーン3 焼身自殺者

物語の舞台は2025年の香港。イギリス領事館の前で焼身自殺事件が起こることから、物語は始まります。事件が起きたのは早朝だったため、目撃者はおらず、遺書も残されなかったため、一体誰が自殺したのかは謎に包まれていました。報道によれば、このとき香港で起きていた独立運動との関連性が疑われていました。この焼身自殺事件が起こる一週間前、香港の独立運動を主導してきた学生オウヨンが21歳の若さで亡くなっており、今回の自殺は殉教者ではないかと考えられていました。オウヨンは雨傘運動の失敗を受け、かつての宗主国イギリスに香港の窮状を訴えようと主張しており、当局にとって危険極まりない人物でした。しかし、その一方で、中央政府が独立運動家たちの中に亀裂を生じさせるために仕組んだものという見方もありました。

自殺者の身元が判明しない中、ある学生は行方不明の恋人のカレンが自殺したのではないかと考えていました。カレンはオウヨンの思想に心酔しており、自殺をほのめかす発言もしていたのです。学生が大学の中を探し歩いていると、独立運動の仲間からカレンが逮捕されたことを知らされました。仲間たちはカレンを助けるために行動を起こそうとしますが、学生はカレン逮捕が独立運動のせいと批判し、カレン救出に同行しようとしませんでした。

その夜、大勢の香港市民がオウヨンと焼身自殺者を追悼する式典に参加、主催者はイギリスの力を借りようと訴え、多くの香港市民が亡きオウヨンの考えを支持しました。すると、そこに警備隊が現れ、続けて人民解放軍が到着、香港市民を暴力で鎮圧しようと式典に乱入しました。香港の街は混乱状態に陥り、独立運動の拠点には火が放たれました。

ここで物語は過去に遡り、焼身自殺が起こる直前のイギリス領事館の前に舞台は移ります。このとき、イギリス領事館の前には一人の老婆の姿がありました。老婆は黙ってガソリンを頭からかけ、ライターで自らに火をつけました。この老婆は文革や天安門事件を経験しており、オウヨンが主導した独立運動にも参加していました。独立運動中に老婆は警官に暴力を振るわれ、オウヨンやカレンから介抱を受けました。その直後のことでした。無防備なオウヨンが数人の警官に囲まれ、何度も警棒で殴られる光景を老婆は目の当たりにします。

この衝撃の光景を見てから一週間後、老婆は焼身自殺を決行しました。老婆がつけた火は勢いよく燃え上がり、老婆の体と老婆が手にしていた傘は火に包まれました。傘はすぐに骨組みだけとなり、老婆の隣で燃え続けました。

【結】- 十年のあらすじ4

十年のシーン2 地元産の卵

物語の舞台は2025年の香港。香港で唯一の養鶏場が閉鎖することから、物語は始まります。長年この養鶏場から卵を仕入れていたサムは養鶏場を訪れ、経営者のチャンと話をしました。チャンは長い間政府に従順な態度を示してきましたが、農場の設備で政府から文句を言われたことをきっかけに、養鶏場を閉めることを決めたといいます。チャンは台湾に移住するといい、サムにも台湾行きを勧めました。

チャンと同じように、サムも香港で商売を続けることに困難を感じ始めていました。最近では、中央政府の思想に染まった少年団が商店街を回り、違反行為がないか監視するようになっていました。少年団はサムの店を見回ると、チャンの卵を見て違反だと指摘してきました。「地元産の卵」という表示が望ましくないというのです。「香港産の卵」という表記なら問題ないと言う少年に、サムは理屈に合わないと反論しました。「分からないときはじっくり考えろ。言いなりになるな」とサムは少年を諭しますが、少年は返事をせず仲間を連れて店を出て行ってしまいました。

サムの息子のミンも少年団に入っており、他の少年たちと同様、諜報活動をしていました。ミンは良くない言葉のリストが配布されているとだけサムに伝え、それ以外は何も語ろうとしませんでした。サムは秘密主義のミンに苛立ちつつも、チャンの卵を食べて育ったことと、訳もなく他人を非難してはいけないと教えました。そして、「どんな時も人の言いなりになるな。まず考えろ」と強い口調でミンに語りかけました。

その後、サムは近くの書店で少年団が騒ぎを起こしていることに気づきました。違反している書物を置いているという理由で、少年団は書店のシャッターめがけて卵を投げつけていたのです。サムが大声で注意すると、少年団は一人の少年を残してその場から去って行きました。その場に残った少年は、サムの息子ミンでした。サムが事情を聞くと、ミンは卵を投げていないとだけ語りました。

その後、サムとミンは書店の店主と話をしました。店主はミンがいつも良くない言葉のリストを届けてくれると語り、今回の襲撃もミンが事前に教えてくれたことに感謝していました。その後、店主はある秘密の場所にサムとミンを連れて行きました。そこには、店に置くことができない禁書が何冊も置かれ、読書する人の姿もありました。店主は嫌がらせには慣れていると笑うと、サムは「慣れちゃ駄目だ。俺の世代が慣れたせいで君らがこんな目に」と申し訳なさそうに返答しました。

部屋の奥に行くと、サムはミンが熱心に読書している姿を見つけました。サムは読書するミンの頭をなで、「禁止しても無意味だ」と口にしました。すると、ミンは「『ドラえもん』も禁止だ。馬鹿だな」と言って読書を続けるのでした。

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みんなの感想

ライターの感想

本作を鑑賞したのは2019年のことでしたが、映画の内容がもうすでに現在に追いついてしまっていると思わせる話もあり、香港の映画作家たちの鋭い社会描写に驚かされました。混乱が続く香港の問題を再認識させる作品であり、また、香港以外の国に住む人々にも問題意識を抱かせる作品でもあると思いました。

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