映画:存在のない子供たち

「存在のない子供たち」のネタバレあらすじと結末

存在のない子供たちの紹介:2019年公開のレバノン映画。貧困に苦しむ12歳の少年が「自分を産んだ罪」で両親を告発する衝撃作。監督は自身で脚本・主演も務めたデビュー作「キャラメル」で一躍注目されたナディーン・ラバキー。

あらすじ動画

存在のない子供たちの主な出演者

ゼイン(ゼイン・アル・ラフィーア)、ラヒル・シファラ(ヨルダノス・シフェラウ)、ヨナス(ボルワティフ・トレジャー・バンコレ)、スアード(カウサル・アル=ハッダード)、セリーム(ファーディー・カーメル・ユーセフ)

存在のない子供たちのネタバレあらすじ

簡単なあらすじ

【起】- 存在のない子供たちのあらすじ1

存在のない子供たちのシーン1 舞台はレバノンのベイルートのスラム街。少年たちがゴミや木で作った武器を持って、路地裏を楽しそうに駆け回ります。
その中にいた一人の少年が、後ろ手に手錠をつけられて刑務所内で連行されていきます。途中歯科検診をおこない、医師から「乳歯がないので多分12歳くらい」と告げられます。

少年の名前はゼインといいます。彼は裁判所の法廷の原告席に座り、裁判長から年齢を尋ねられます。ゼインは「わからないからそっちに聞いて」と、被告席に座る両親を指します。
なぜ逮捕されたのかと問われたゼインは、「クソ野郎を刺したから」と答えます。ゼインは男を刺した罪で5年の実刑を受けて、刑務所に収監されていました。服役中に両親を相手に、12歳という若さで自ら裁判を起こしたのです。
何故両親を訴えるのかと問われた彼は、まっすぐ前を見つめて「僕を産んだ罪で」と答えます。

数カ月前まで、ゼインは両親とたくさんのきょうだいたちとボロボロのアパートに住んでいました。
働かずに昼間から酒を飲む父親のセリームは、ゼインに学校へ通うことを禁じていました。ゼインはきょうだいを連れて路上で自家製のジュースを売ったり、大家の中年男のアサードが営む雑貨店で、プロパンボンベを運ぶなどの肉体労働をして家族を養っていました。
食べ物をまともに与えられないゼインたちは、年頃の割に小柄でした。そんな状況なのに子どもの数は増えるばかりでした。
朝から晩まで働かされるゼインは、毎日夕方になるとスクールバスに目をやり、学校への憧れを募らせていたのです。

ゼインの母親のスアードの仕事は、刑務所内の麻薬中毒者に薬物を売ることです。
ゼインは両親の具合が悪いと偽り、処方箋を使って薬局でトラマドール(トラマール)錠剤を購入します。それをスアードと11歳の妹のサハルと一緒に砕いて粉にすると、水で溶かして洋服に含ませます。
その後刑務所の職員の監視をすり抜け、身内への差し入れとして薬を持ち込むのでした。

両親は育児放棄をしているだけではなく、日常的にゼインを罵倒したり暴力を振るっていました。
そんな彼の唯一の心の支えが、年が近くて仲のいいサハルの存在でした。
しかし、アサードはサハルに目をつけており、度々彼女に食べ物を与えて気を惹こうとしていました。アサードを毛嫌いするゼインは、サハルから必死に遠ざけていたのです。

【承】- 存在のない子供たちのあらすじ2

存在のない子供たちのシーン2 そんなあるとき、サハルに初潮が訪れます。
このままではアサードに売られてしまうと察知したゼインは、両親に知られないようにするようサハルに言い聞かせて、盗んできた生理用品を与えます。
ゼインはこのことを隠すために画策しながら、サハルと2人で逃げ出して新生活を始めるための計画を進めていました。

ところが、ある日ゼインが帰宅すると、滞納する家賃とニワトリの代わりに、サハルはアサードと強制的に結婚させられていたのです。
自分の権利のなさに泣き叫ぶサハルでしたが、セリームは嫌がる彼女を無理やりオートバイに乗せて、アサードの元へ連れて行ってしまいます。
あと少しのところで間に合わなかったゼインは、サハルに別れを告げることもできませんでした。ゼインは両親を責めますが、彼らは「結婚すれば食事の心配をしなくていい」などと言うだけでした。
なおも反論するゼインに怒ったセリームは「お前なんか生まれてこなければよかった」と暴言を吐きます。

最愛の妹を守れなかったゼインは、挫折感と怒りに身を任せて、ゴミ袋1つを片手に家を飛び出します。
サハルと乗るはずだったバスに乗車したゼインは、スパイダーマンそっくりの格好をしてタバコをふかす奇妙な老人に遭遇します。しかし、胸にはクモではなくゴキブリのマークを付けており、彼は「ゴキブリマン」と名乗りました。
ゴキブリマンはゼインがこれから祖母の家へ行くと言うと、「おばあちゃんは幸せだな。私には誰もいない」と呟きます。
そしてゴキブリマンは遊園地でバスを下車し、行く当てのないゼインも一緒に降ります。お金がないゼインは、街を歩く人々に仕事はないかと聞いて回りますが、身元がわからない子どもを相手にする人はいませんでした。
ゼインは遊園地にある巨大な女性の像によじのぼって、服を脱がせて乳房を丸出しにします。それを見て笑ったのが、清掃員の若い黒人女性でした。

遊園地で一晩を明かしたゼインは、清掃員の女性に食べ物をもらいました。
彼女はティゲスト(本名はラヒル/以下ラヒルと記載)と名乗り、拠り所のないゼインをバラック小屋へ連れて帰ります。彼女はシングルマザーで、歩けるようになったばかりの息子のヨナスを、遊園地のトイレに隠して仕事をしていました。
エチオピア移民のラヒルは、かつて身元引受人のレバノン人の家でメイドをしていました。しかし、恋人の子どもを身ごもったことで仕事をクビになり、行き場をなくしてスラム街に紛れ込んだというのです。
ラヒルはゼインを家に置いてやる代わりに、自分が働いている間ヨナスの子守りをするように言いました。
ゼインはヨナスをあやすために、音楽や音の鳴るおもちゃを聴かせると、彼はノリノリで踊り出します。さらにゼインは近所の家のテレビを鏡に映して、ヨナスにアテレコしてやりました。
ゼインは生家では決して味わえなかった安堵の思いで眠りにつくのでした。

実はラヒルは偽装された証明書でレバノンに滞在していました。
常に警察に拘束される危険にさらされており、おまけに不法就労していることから雇い主に何度も賃金を不払いにされていました。
偽装証明書の期限がもうすぐ切れてしまうため、ラヒルは偽装屋の中年男アスプロに相談へ行きます。ところが、相場よりもはるかに高い値段をふっかけられ、十分なお金のないラヒルは困り果てます。
するとアスプロは、ヨナスを養子に出せば無料で証明書を偽装できると、人身売買をほのめかします。
出生届が提出されていないヨナスは、このままでは社会的に存在していないことになり、将来学校にも行けないし仕事も見つからないと、アスプロは言うのです。
しかし、息子を養子に出すなど考えられないラヒルは、必ず期限までにお金を用意すると拒否するのでした。

ラヒルは正式な移民登録をしてもらうために、遊園地の同僚であるゴキブリマンに協力を仰ぎ、身元引受人に仕立てますが失敗に終わります。
新たな職探しもしますが上手くいかず、ラヒルは大切にしていた自分の髪を売って、どうにかお金を工面することができました。
ところがアスプロの元へ向かう途中、不法就労の疑いで逮捕されてしまいます。ラヒルは連行されながら泣き崩れ、母乳を絞って捨てるのでした。

その頃何も知らないゼインは、夜になっても帰ってこない彼女を心配していました。
翌朝ヨナスを連れて市場へ行ったり、アスプロを訪ねたりしますが、手がかりとなるものはありませんでした。
ヨナスと置き去りにされてしまったゼインは、途方に暮れてしまいます。

【転】- 存在のない子供たちのあらすじ3

存在のない子供たちのシーン3 しかし数日後、ゼインはヨナスを本当の兄弟とみなし、一人で世話をすると決意を固めました。
問題は周りに大勢大人がいるのに、誰も救いの手を差し伸べてくれないことでした。
ゼインはお腹をすかせたヨナスのために、道端にいた乳児が持っていた哺乳瓶を奪いとってきますが、飲んでくれません。そこで機転を利かせて、粉ミルクを氷にかけて舐めさせてやります。
さらにゼインは、家にあるタライと近所の子どもから奪ってきたスケートボードを使って、ベビーカーを作ります。
ヨナスを連れて市場に出て、食料の調達に奔走するのでした。

ある日、ゼインは市場でシリア難民の少女メイスンと出会います。
彼女も路上で物乞いをしたり、花を売ってその日暮らしをしていました。メイスンはシリア難民の救済センターで支援物資をもらえるコツをゼインに伝授します。
さっそくゼインはシリア人になりすまして、救済センターで粉ミルクとおむつをもらいに行きます。だますことに成功すると、今度は自分の食料を要求するのでした。
その後貯水槽の水が尽きてしまい、水道の蛇口から赤色の水が出てきます。仕方なくゼインは粉ミルクをヨナスの口に直接放り込むのでした。

ある日上機嫌なメイスンは、アスプロの手を借りてスウェーデンに移住できることになったと、ゼインに報告します。
外国でなら幸せな生活を手に入れられると聞き、自分もその夢を実現したいと思ったゼインは、さっそくアスプロに頼みに行きます。
ところが、アスプロは移送の交換条件としてヨナスを要求します。ゼインは旅費を自分で工面すると言って応じませんでした。

スウェーデンへ行くためのお金を貯めるために、スアードがやっていた仕事に手を染めることにします。
薬局で嘘をついてトラマドールを入手し、水がないため海水を使って薬物を作りました。ゼインはそれを不良相手に必死に売りつけます。時には大人から暴行を受けたりしながらも、新天地への移住を夢見て順調にお金を貯めていました。

ところが、ある日帰宅すると勝手に鍵が施錠されていました。家賃未払いのため締め出されてしまい、隠していたお金を回収することも叶いませんでした。
こうして帰る家もお金も失ってしまったゼインは、ヨナスを連れて当てもなく街を歩きます。
絶望に駆られた彼は、言うことを聞かないヨナスの足に紐をくくりつけて、路上に捨てようとします。しかし、しばらくすると自分がしてしまったことを痛感し、涙を流しながらヨナスを再び抱きかかえるのでした。

ヨナスの安全を考えたゼインは、アスプロの元へ辿り着きます。
アスプロはゼインに400ドルを渡し、ヨナスは富豪の養子になれると嬉々として語るのでした。
ゼインは外国に渡る決意をしたと訴えますが、アスプロはそのためには出生証明書か身分証明書が必要だと告げます。
やむなく実家へ戻ることにしたゼインは、今までどこへ行っていたのだと叱る両親を無視して、証明書を探します。
すると両親はゼインの身分を証明するものなど存在しないと、笑いながら告げました。出生届を出さなかった上に誕生日すら覚えていないため、ゼインの正確な年齢は誰にもわからないと言うのです。

ゼインが両親の言葉にショックを受けていると、サハルの死亡が記された病院の書類が出てきました。
死因は妊娠にまつわるトラブルで、わずか11歳でアサードに妊娠させられたサハルは、無謀な出産で病院に運ばれました。ところが、身分証明書がないサハルは病院に受け入れられず、そのまま大量出血で亡くなったのです。
激高したゼインは、「どっちが死ぬべきなのかわからせてやる」と包丁を持ってアサードの店へ向かいました。
ゼインは怒りに任せてアサードを刺し、これにより禁固5年を言い渡されて刑務所に送られたのでした。

【結】- 存在のない子供たちのあらすじ4

存在のない子供たちのシーン2 刑務所の牢獄にいたゼインは、面会のため所内放送で呼び出されます。
同じ刑務所に偶然収監されていたラヒルは、ゼインの名前を聞いてヨナスが無事ではないことを知り絶望します。
その後、ラヒルは職員に自身の境遇を明かして、ゼインはアスプロの人身売買を摘発するのでした。
数日後アスプロの自宅に調査が入り、暗い倉庫に監禁されていた人々は解放されました。こうしてアスプロは逮捕され、元気な状態で保護されたヨナスは、ラヒルと再会を果たすことができたのでした。

面会にやってきたのはスアードでした。喪が明けていないのに普段着の彼女を見て、ゼインは疑問を投げかけます。
スアードはサハルの死を嘆いてから、新しい命を授かったのだと答えました。「女の子だったらサハルと名付ける」と説明する母親に、ゼインは「心はないのか」と刺すような視線を向けます。
傷付くスアードに「二度と来るな」と吐き捨て、差し入れの菓子をゴミ箱に捨てて面会室を出て行くのでした。

ゼインは刑務所のテレビで「自由の風」という社会問題を取り上げる番組を観ます。なかでも悩みを抱える視聴者が電話で生出演して、司会者と話をするコーナーが人気でした。
その後、ゼインは刑務所内から番組に電話をして、このコーナーに出演します。ゼインは「両親を訴えたい」と伝えて、番組を視聴していた囚人たちは大いに湧きます。
ゼインは自分が地獄の中を生きていること、人々から尊敬される立派な大人になりたかったが、神様はボロ雑巾でいることを望んだのだと、切実な心境を吐露します。
ゼインの相談はメディアで大反響を呼び、番組を観ていた弁護士のラディーンから、面会の申し出がありました。一目で信頼に足る大人と判断したゼインは、彼女を代理士としたのでした。

法廷で証言台に立ったラヒルは、ゼインについて聞かれると「人を刺すような子ではない」と答えます。そして、ヨナスのことも許していると述べました。

続いてゼインに刺されて車椅子状態となったアサードが現れます。
彼は裁判長に11歳は結婚に適した年齢であるかを尋ねられます。すると「自分の義母もそれくらいの年齢で結婚した」と悪びれずに答えました。
身体が未成熟なサハルを妊娠させたことについても、「彼女は熟しており、あんなことで死ぬとは思わなかった」と述べます。すかさずゼインは「妹をイモやトマトのように言うな」と反論しました。

裁判長に両親を訴えた理由について問われたゼインは、「僕を産んだから」と答えます。そして、子どもを育てられないなら最初から産まなければいいと告げるのでした。
被告側の両親は、「子どもを作れば救われると言われたが、生活は苦しくなるばかりだった」と涙ながらに訴えます。
意義を唱えたラディーンに向かって、「同じ状況に置かれたことがないから言えるのだ」と感情をぶつけました。
裁判長は「これ以上子どもを作ることはないだろう」と言いますが、ゼインは「お腹にいる子は?」と嘲笑します。それから両親に向かって「子どもを作るな」と告げるのでした。

ゼインは身分証明書用の写真を撮影することになりました。
顔をこわばらせた状態でカメラの前に立つゼインに、カメラマンは「これは死亡証明書ではない」と声をかけます。
ゼインがはにかんだ笑顔を浮かべる場面で、物語は幕を閉じます。

みんなの感想

ライターの感想

移民や難民、貧困、児童搾取など、社会的に見えざる人々の叫びを捉えた、非常に真摯な作品だと思いました。子どもが生きていけるために必要なものは何か、人の人生を始めさせるのがいかに重大な行為であるか、生々しく伝わってきます。また、12歳とは思えないほど自立した顔つきのゼインが持つ、強さと賢さとたくましさに圧倒されました。子どもでは到底乗り越えられないような絶望的な状況でも立ち上がる彼はまさしくヒーローで、人間の中にある「生きよう」とする底力を見せつけられます。妹のサハルや赤ん坊のヨナスに対する優しさや、法廷での誰よりもまっとうな発言には、何度も心を打たれました。劇中ほとんど笑わなかったゼインのラストシーンの柔和な表情に、それだけでは済まされないもののわずかな救いがあります。彼のような子どもたちが屈託のない笑顔を見せられる日が来ることを祈りたいです。

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