映画:幸福なラザロ

「幸福なラザロ」のネタバレあらすじと結末

幸福なラザロの紹介:第71回カンヌ国際映画祭で、コンペティション部門脚本賞を受賞したイタリア映画。1980年代初頭のイタリアで実際に起きた詐欺事件を元に、キリスト教の聖人ラザロのような無垢な青年の人生を描いている。日本公開は2019年。

あらすじ動画

幸福なラザロの主な出演者

ラザロ(アドリアーノ・タルディオーロ)、アントニア(アニェーゼ・グラツィアーニ)、成長したアントニア(アルバ・ロルヴァケル)、タンクレディ(ルカ・チコヴァーニ)、成長したタンクレディ(トンマーゾ・ラーニョ)、デ・ルーナ侯爵夫人(ニコレッタ・ブラスキ)、ニコラ(ナタリーノ・バラッソ)、ウルティモ(セルジ・ロペス)

幸福なラザロのネタバレあらすじ

簡単なあらすじ

【起】- 幸福なラザロのあらすじ1

幸福なラザロのシーン1 20世紀後半、イタリアの山間部にインヴィオラータ村という小さな集落がありました。
大洪水の影響で、外の世界と隔絶された渓谷にあるその村では、政府によって廃止された小作制度が維持されていました。
何も知らない村人たちは、領主であるデ・ルーナ侯爵夫人からタバコ農園での過酷な労働を強いられていたのです。なかでも働き者の若い農夫ラザロは、仲間からも軽んじられる存在で、いつも仕事を押しつけられていました。

ある夜、村人の一人が住人に電球を貸してほしいと頼みます。
やがて女性たちが眠る部屋に、男性たちが音楽を演奏しながらやってきました。村人全員に見守られる中、若い男性ジュゼッペは恋人のマリアグラツィアにプロポーズをして、求婚の儀式が執り行われます。
コップ一杯のワインを皆で回し飲みしますが、ラザロの分は残されませんでした。
ジュゼッペとマリアグラツィアは、結婚して村を出て行くと宣言しますが、侯爵夫人が許さないと反対の声が上がるのでした。
その後も村人たちが宴を繰り広げる中、ラザロは一人で鶏小屋の見張りをさせられることになりました。

ある日、監督官のニコラがやってきて、子どもたちにアメを配ります。
ジュゼッペとマリアグラツィアは、村を出て行くと言ってニコラのトラックに乗り込もうとしますが、彼はそれを許しません。
ニコラは「お前たちの家族が無事では済まない」と脅かし、ジュゼッペは素直に引き下がります。マリアグラツィアは明らかに不満を抱きながらも、トラックを降りるのでした。

村人たちは収穫したタバコの葉をトラックに積み込みます。
皆の前で帳面を広げて計算を始めたニコラは、彼らに何かを欲しいものがあるかと尋ねます。ところが結局現金収入はなく、負債が増えてしまったと告げられるだけでした。
こうして村人たちはニコラによって負債があると信じ込まされ、無給で働かされているのでした。同席していた中年女性は「そいつ(ニコラ)の足を折っちまいな」と言い放ちます。

【承】- 幸福なラザロのあらすじ2

幸福なラザロのシーン2 そんなある日、村人たちから密かに「毒ヘビ」と呼ばれているデ・ルーナ侯爵夫人が、息子のタンクレディ、ニコラとその娘のテレーザを連れてやってきます。
村人たちは搾取する側であるタンクレディが近づいてきても、一切目を合わそうとしません。しかし、ラザロだけは限られた自分の食べ物を、彼の愛犬のエルコレに分け与えるのでした。

暇を持て余しているタンクレディは、ラザロに散歩の案内をさせます。
ラザロは村から離れた秘密の隠れ家にタンクレディを連れて行き、彼の相手をしてあげるのでした。
タンクレディが仕事をサボる口実にしているとからかうと、ラザロは彼の目をまっすぐ見つめながら「あなたが望んだから」と答えます。
タンクレディは、そんなラザロを気に入るのでした。

村人たちがタバコの葉を収穫しています。
「ラザロ」と声がかかると、彼は収穫された葉を受け取ってトラックに運びます。また別のところから「ラザロ」と声がかかり、次第に重なるように四方八方から「ラザロ」と声がします。
ラザロは常に誰かから呼びかけられて、村人全員にいいように使われていました。
村人たちの働きぶりを見ていたデ・ルーナ侯爵夫人は、「領主は村人を搾取して、村人はラザロを搾取する」と言います。
それを聞いたタンクレディは、「ラザロは誰のことも搾取しない」と反論します。彼は時代錯誤な労働搾取をおこなう母親に嫌悪感を抱いていたのです。

ラザロの隠れ家にすっかり馴染んだタンクレディは、アンテナ付きの携帯電話をいじったり、ウォークマンで音楽を聴いたりして過ごします。
あるとき、タンクレディは母親に反抗するため、身代金をせしめる狂言誘拐を思いつきます。協力をあおがれたラザロはもちろん了承し、さっそく脅迫状をでっち上げることにします。
ところが、血判を押すためにナイフで傷をつけることを恐れたタンクレディは、ラザロに丸投げするのでした。
それからタンクレディは、壊れた手作りの木製パチンコを、友情の証としてラザロにプレゼントします。

ラザロはタンクレディがこしらえた手紙をデ・ルーナ侯爵夫人に届けます。
侯爵夫人はタンクレディの自作自演であることを見抜き、まるで相手にしませんでした。村人たちも気に留めませんでしたが、タンクレディに想いを寄せるテレーザだけが大騒ぎします。

身代金が届くのを待ち構えるタンクレディは、あるときラザロに家族の所在を尋ねます。
ラザロは肉親には祖母しかおらず、両親の存在を知らないと答えました。
するとタンクレディは、好色家である自分の父親が村人の誰かを孕ませたのだと冗談めかし、「俺たちは半分兄弟だ」と告げました。
疑うことを知らないラザロは、タンクレディの戯言を素直に受け止めて喜びます。
その後、タンクレディがオオカミの遠吠えの真似をすると、オオカミがそれに応えて、遠吠えを返しました。ラザロも促されるまま真似をして、2人はしばらくの間遠吠えをして遊ぶのでした。

ラザロはタンクレディの言いつけを守って、隠れ家にこっそり食べ物を運び続けました。
しかし、ある夜ラザロは珍しく高熱を出し、タンクレディに食べ物を届けられませんでした。
翌朝、病み上がりの身体に鞭打って隠れ家へ向かうラザロでしたが、不意に足を滑らせて崖から墜落してしまうのでした。

同じ頃、タンクレディはテレーザに電話をして「身代金を用意しないと命が危ない」と嘘をついていました。
テレーザの通報によってやってきた警察は、子どもまで働かされている村の実態を見て愕然とします。警官が「学校は?」と質問すると、村人たちは馬鹿にしたように金持ちの行くところだと返すのでした。
警官は村人たちに、小作制度がすでに禁止されていること、今までデ・ルーナ侯爵夫人が大がかりな隠蔽工作をしていたことを説明します。
事実を知らされた村人たちは怒りを覚え、村から退去させられることになりました。
バスで町へ向かう最中、侯爵家でメイドをしていたアントニアは、子どもにオオカミの昔話を語り聞かせます。

【転】- 幸福なラザロのあらすじ3

幸福なラザロのシーン3 崖の上からオオカミが現れて、谷底に倒れるラザロの元に駆け下ります。
するとラザロは目を覚まし、荒廃してしまった無人の村へと戻ります。
タンクレディの身を案じたラザロは、廃墟と化した侯爵家の邸宅へ向かいました。そこで家具や調度品を運び出す盗人の男2人と鉢合わせます。
盗人たちは「引っ越し業者」と偽り、ラザロもそれを疑うことなく荷物運びを手伝い始めるのでした。
盗人たちが車に荷物を積み終えると、ラザロは町まで乗せてほしいと頼みます。ところが歩いて辿り着く距離だと断られ、ラザロは雪の中歩き続けることになるのでした。

ラザロは難民ブローカーとなったニコラと再会を果たします。
ニコラは難民たちに重労働を底値で提示して、最も安い賃金で働いてくれる者にだけ仕事を紹介していました。
ラザロはニコラに声をかけますが、彼は闇商売に夢中で、冷たくあしらうのでした。

道中、ラザロはガソリンスタンドで強盗を働いていた盗人2人と再会します。
今度は町まで乗せてもらえることになり、彼らの住まいである線路沿いのスラム街に辿り着きます。
貯水タンクを改造したような建物から出てきた女性は、ラズロを見て驚き、拝むようにひざまずきます。彼女は成長したアントニアで、昔と全く変わらない姿のラザロを見て、聖人ラザロを連想したのでした。
ラザロは若いままですが、世の中はすでに数十年の時が経過していました。
盗人の若い青年は成長したアントニアの息子のピッポで、もう一人の中年男性はアントニアの夫のウルティモでした。

行くアテのないラザロは、そのままアントニアたちと一緒に暮らし始めます。
村出身の老人たちは相変わらず口が悪く、ラザロを見るなり幽霊だと罵倒します。そして、幽霊でも食べるなら稼ぎが必要だと告げるのでした。
アントニアたちの生活の糧は泥棒や詐欺で、村を出て以来その日暮らしの生活を送っていたのです。

アントニアは正直者の顔をしているラザロを、詐欺に利用することにします。
さっそく街で盗品を売りつける仕事に同行させますが、ラザロはほとんど役に立ちませんでした。
しかし、自然の事情に精通しているラザロは、線路脇の草むらなどから食べられる雑草をどんどん見つけ出します。
こうして白い目で見られていたラザロでしたが、アントニア一家に徐々に受け入れられるようになります。そして彼らは、今や放棄されてしまった村で農場を再建したいと考えるようになるのでした。

ある日、ラザロは線路沿いでタンクレディの愛犬のエルコレが歩いているのを見つけます。
エルコレを抱えて街へ向かったラザロは、ついにタンクレディと再会を果たすのでした。
中年となったタンクレディはすっかり落ちぶれており、銀行にだまされたせいで生活に困っていると愚痴をこぼします。
タンクレディはラザロを連れて商談へ向かい、すでに失った領地を使って儲け話をでっち上げ、気晴らしをするのでした。
ラザロはタンクレディをアントニアたちにも会わせます。気をよくしたタンクレディは、ラザロたちを翌日のランチに招待すると告げました。

【結】- 幸福なラザロのあらすじ4

幸福なラザロのシーン2 翌日、ラザロ一行は貴族からの招待に期待をふくらませていました。
小ぎれいな服装に身を包み、手土産として有り金をはたいて高級菓子を購入し、タンクレディの自宅へ向かいます。
しかし、予想に反して辿り着いた家は壁などが剥げ落ちて、貴族の邸宅とは思えない場所でした。
約束の時間ちょうどに訪問すると応対したのはテレーザで、タンクレディは招待した覚えはないと言って、出てきてもくれませんでした。
タンクレディから罵られたテレーザは、ラザロ一行を門前払いしますが、しばらくしてから呼び戻します。ラザロは喜びますが、彼女は遠慮がちに手土産として持ってきた高級菓子をもらえないかと頼んできたのです。
アントニアは怒り出しそうな仲間を静止して、手土産を渡しました。それからテレーザは、かつてタンクレディが起こした狂言誘拐事件が警察沙汰となり、侯爵家が没落してしまったのだと語り聞かせます。
搾取される側だったアントニアたちは怒りを露わにしますが、ラザロだけは真剣に耳を傾けていました。

タンクレディの気まぐれに振り回されたラザロ一行は、帰り道賛美歌が流れる教会に立ち寄ります。
ところが、関係者しか入れないのだと追い出され、一行は落胆しながら出て行くのでした。
その後、オルガン奏者が演奏を再開しても音が出なくなります。ラザロ一行の後を追うように、空から賛美歌が流れるのでした。
歩みを止めて一行から置き去りにされたラザロは、月夜の下で一筋の涙を流します。

翌日、ラザロは銀行を訪れて、タンクレディのお金を返してほしいと銀行員に訴えます。
挙動の怪しさからラザロは強盗に間違われてしまい、彼のズボンのポケットの膨らみに気づいた客は、銃を持っていると大騒ぎします。
「システムが自動化されているので金はない」と銀行員が説明しても、ラザロは訳がわからず、ただ澄んだ目で人々を見つめるだけでした。
しかし、ラザロが持っていたものが銃ではなく、かつてタンクレディからもらったパチンコだとわかると、激怒した客たちはラザロに飛びかかります。
彼らは「俺たちの金だぞ」「働けよ」などとラザロを罵倒しながら、床に倒れた彼を袋叩きにするのでした。
為す術もなく暴行を受け続けたラザロは、ついに動かなくなってしまいます。

すると、ラザロの元に再びオオカミがやってきます。
オオカミは無残な姿となったラザロの周りを歩き、そのまま銀行を出て行きます。
オオカミが車をくぐり抜けながら道路を走り、どこへともなく去って行く場面で、物語は幕を閉じます。

みんなの感想

ライターの感想

目の前で起きていること、目の前にいる人をただそのまま受け止めるラザロというキャラクターは、善悪や私利私欲、感情からも切り離されているようで、共感や同情が全くできませんでした。そんなラザロをスクリーン越しから見つめていると、彼の周辺のキャラクターだけではなく、自分や世の中の人間全てが汚く見えてしまいます。ラザロの立場から見ると、搾取する側の人間も幸せそうには映らず、時間や環境、お金などに縛られながら生きている自分は、本当に幸福と呼べるのだろうかと考えさせられました。言葉で説明するのは難しいですが、ラストシーンで無残な姿となったラザロを観たとき、不思議な感動がありました。

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