「日本の悲劇(2012年)」のネタバレあらすじと結末の感想

日本の悲劇の紹介:末期の肺ガンで余命宣告を受けた老父が、失業し家族にも見捨てられ出戻った息子のため、年金の不正受給をさせようと思い立ち、自殺を決意するという2012年の日本映画。2010年に発覚した”所在不明高齢者””年金不正受給”問題を題材としている。監督/脚本は「バッシング」「海辺のリア」の小林政広。老夫婦を仲代達也と大森暁美、息子夫婦を北村一輝と寺島しのぶが好演している。

予告動画

日本の悲劇(2012年)の主な出演者

村井不二男(仲代達矢)、その息子義男(北村一輝)、良子(不二男の妻/大森暁美)、とも子(義男の妻/寺島しのぶ)

日本の悲劇(2012年)のネタバレあらすじ

【起】- 日本の悲劇(2012年)のあらすじ1

昭和を髣髴とさせる古く狭い一戸建てに、足元もおぼつかない老父村井不二男と30絡みの息子義男が帰宅します。居間には、文机の上に不二男の妻良子の大きな遺影と遺骨が置かれた、急ごしらえの仏壇がありますが、2人は気にせず台所で話し始めます。
不二男は、散らかった台所のテーブルにため息をつき「俺の席はこっちだろ?」と廊下側の席を指差します。義男は生返事をしながら手際よくテーブルを片付けて不二男を座らせ、持ち帰った汚れ物を洗濯しに行きます。不二男は「下着以外は洗わんでいい」と言い張りますが、聞き流されます。
また義男が居間に布団を敷き始めると「俺は寝ないぞ。夜になっても寝ない」と言い張り、「喉が渇いたから茶を入れろ」と言い出し、ちょっと待ってろと言われた途端キレて怒鳴ります。また、ようやく一息ついて一服する義男をくどくどと往なし肺ガンになると言いますが、「肺ガンは父さんだろ?」と言い返されます。
良子は1年前に亡くなりましたが、不二男は納骨を拒否するうち、肺ガンが判明し入院。手術で複数の転移が見つかり、余命3ヶ月を宣告されたものの、勝手に治療を拒否して退院してきたのです。
義男はそんな父親に「半年も経たずに死ぬんだぞ!」と怒鳴りますが、不二男は「3ヶ月でも長いと思ってる、1週間か10日、長くても1ヵ月、それ以上、もういいんだ」と言い「バカなこと言うな!」と怒鳴られます。

夜になり、義男は良子の遺影に手を合わせ、台所のテーブルに用意した寿司を不二男に勧めます。けれど不二男は箸もつけず「そろそろお別れだ、お前の顔も見納めだ。じゃあな」と立ち上がります。けれど息子をじっと見つめ、座り直してようやく箸を手に取ります。
義男はその向かいで水割りをちびちびやりながら、「あんたの年金頼りだから寿司なんか食える身分じゃない」「いつもはスーパーの380円の弁当2個で一日過ごす」「煙草は3日で1箱、水道光熱費含めて月6万、ツメに火ぃ灯して暮らしてるんだ」と愚痴り、「でも今日は母さんの命日だから特別なんだ!忘れちまったのかよ!頼むから俺を蔑んだ目で見ないでくれよ!」と怒鳴り、酒を呷ります。

義男は、5年前会社をリストラされ、すぐ社会復帰するつもりで実家に戻ったものの、帰ったその日に、これまで病気1つした事が無かった母親が倒れて寝たきりとなり、4年間の介護生活を強いられ、1年前「やっと死んでくれた」となって間もなく震災があり、被災地にいた妻とも子は、何度も避難所にも探しに行ったがいまだ行方不明のまま、同時に不二男の肺ガンが見つかり再び病院通いの毎日だったと口説くうち、「俺の人生ってどうなの?!教えてよ!」と叫び、子供のように声を上げて泣き出します。
不二男はただ黙って彼の話を聞き「義男…義男ぉ」と困り果て、泣き続ける義男の頭を撫で、ふらふらと仏壇の前に座り、良子の遺影に「忘れるはず、ねぇじゃねぇか…なぁ」と呟きます。

翌朝。不二男は居間の窓や戸口に板を打ちつけ、良子の仏壇と共に立てこもります。
その音で起き出した義男は、廊下から窓から説得し怒鳴りますが、不二男は飄々と「戸を壊せば入れるだろうが、その時は商売道具のノミで喉を突く」と脅し、「俺は金輪際ここから一歩も出ねぇ、飯も食わねぇし、水も飲まねぇ、そう決めたから実行する」と言うのです。義男が何と喚いても状況は変わりませんでした。

【承】- 日本の悲劇(2012年)のあらすじ2

雨のそぼ降る夜、仏壇の前で、義男の包丁の音を聞いていた不二男は、良子の呼ぶ声を聞き、いつものように生返事で応え、台所の方を見やります。

良子と差し向かいの静かな夕餉。特別な会話も無く食事も質素ですが、酒のお代わりをねだる不二男に、良子が「あなたの身体を思えばこそ」と小言を言いつつも、笑って徳利半分の燗をつけ始めた時、電話が鳴ります。
2人は義男からの離婚話かと慌てますが、電話は嫁のとも子からで「義男が出て行ったので、明日伺う」と言う内容でした。良子は頭を抱え、それでも酒をねだる不二男に「酒、酒って言わないの!」と怒鳴ります。
翌日、大きな荷物を抱えてやってきたとも子は、泣きながら、義男と連絡がつかなくなった事、子供はすでに彼女の気仙沼の実家が引き取り転校させる事、そしてマンションも退去を余儀なくされ、離婚するしか手立てがないと話し、判をついた離婚届を不二男に押し付け、何度も謝りながら出て行きます。良子はおろおろと追いかけますが、不二男は呆然と座ったままでした。

間もなく義男が夕飯が出来たと声をかけます。彼はすでに2日飲まず食わずの父親を案じますが、不二男は「これからは、話し掛けるのを朝1回の安否確認だけにしてくれ」と言い、「返事が無くなってもすぐに戸を開けず、半年か1年、義男の仕事が見つかるまで閉め切ったままにしておけ」と話します。そして「それがおめぇにしてやれる最後の事だ。ミイラになるんだよ、どうだ?傑作だろ?」と力無く笑い、ため息をつきます。
その後、義男は、不二男の好物のカツオの刺身で一杯やらないかと言う懐柔策に出ますが、不二男に「うるせぇ!」と怒鳴られ「勝手にしろ!」と怒鳴り返します。

不二男は、薄暗い居間で義男が戻った日に想いを馳せます。
その日、良子は近所に買い物に、不二男は台所で漬物を肴に手酌で酒を飲んでいました。
義男は、他人行儀にこんちわと声を掛けて勝手に上がり、灰皿を探して煙草を吸い、不二男に「うちは昔から禁煙だ」と言われても止めようとはしません。
そして不二男に「女房子供を放り出してどこ行ってたんだ」と聞かれ、手首のリスカ痕を見せながら「自分なりに懸命に働いたが会社のためではなく家族のためだった、そのせいでリストラされ、家族への責任から自殺念慮に苛まれ、怖くなったため、退職金の入った通帳と保険証を持って長野の精神病院に入院してた」と打ち明けます。
不二男はとも子から預かった離婚届を出し「やり直す気はないのか?今すぐ気仙沼に、とも子さんとひろ子を迎えに行く気はないのか?」と迫りますが、義男は「今は自分を生かしておくだけで精いっぱいだ、どうしても無理なんだよ!」とごね続け、埒があきません。
その時電話が鳴り、憤然と出た不二男が顔色を変え、メモ用紙を持って戻ります。「スーパーで母さんが倒れた、病院に運ばれた!」…

4年後の明け方、台所で新聞を読みながら咳き込んでいた不二男が取った電話は、良子の臨終の知らせでした。
「ああ、そうか…5時5分だな…今から行くよ、じゃあな」…。不二男はぶっきらぼうに電話を切りますが、テーブルに戻っても咳は止まらず、「とうとう逝っちまったか」と呟き、突っ伏して声を上げて泣き出します。
葬式を終えて戻った時、不二男は良子の遺骨を台所の彼女の席に置き、「ようやく戻って来たんだ、休ませて、茶でも入れてやれ」と言い、位牌と遺影を置かせ、差し向かいの自分の席に座ります。義男は4年前より落ち着いていて、素直に従います。
その後、不二男はテーブルの上で骨壺を覆いから出して両手で慈しみ「まだ暖けぇや、今夜久しぶりに一緒に風呂にでも入るか」と言い、頬を当てます。

翌朝、義男が洗濯を乾しに庭に出ている時、電話が鳴り始めます。それは無言電話でしたが、2度目に取った時、義男がしばらく黙り「とも子か?!」と言いますが、何も言わずに切ります。
電話が鳴るたび、不二男は仏壇の前で耳をそばだてては、ため息をつきます。

良子亡き後、彼女の席には義男が座り、2人だけの生活が始まります。不二男の咳は日ごとに激しくなり喀血もありますが、その都度酒でごまかし、病院には行きたがりません。
また時折、不二男は「とも子さんに連絡したのか?ひろ子には会いたくないのか?」と聞きますが、義男はフリーターである事を恥じ、その資格が無いとこぼします。
ほどなくして、不調が続き、咳の苦しさに堪えかねた不二男は、買い物から帰った義男に「明日病院に行くから付き合ってくれ」と頼みます。義男はホッとして、勧められるままビールを飲み、買って来たばかりの生牡蠣を見せ「摘みに牡蠣酢でも作るかな」と笑います。
が、その瞬間、激しい揺れが来て、2人はテーブルの下に隠れます。

仏壇の前にいる不二男は、その時の激しい揺れと、テーブルの下で激しく咳き込んでいた自分を思い出し、わなわなと身を震わせ激しく咳き込みます。
その時、3度目の電話が鳴りますが、義男が気づかぬうち、切れてしまいます。

”東日本大震災”…2人がいた台所では引き出しが開き、物がいくらか落ちた程度で終わりますが、気仙沼の海沿いの町にあるとも子の実家に電話をしても繋がりません。
不二男は、テーブルの下で激しく咳き込み、動けなくなります。

【転】- 日本の悲劇(2012年)のあらすじ3

翌朝、義男は閉まったままの戸に向かって「お父さん、おはよう」と声をかけますが、弱々しい嗄れ声の返事が来るまでにはかなり時間がかかり「お願いだから、バカなことすんの止めてくれよ!」と叫んで泣き出します。
「あんたの年金なんかいらない!みんないなくなっちまったんだぜ?!とも子も、ひろ子も、母さんも…!父さん!俺を1人にさせる気か!」「何日も飲まず食わずだと内臓がやられるって聞いた!もう手遅れかもしれないけど、あんたをこのまま死なせるわけにはいかないんだよ!そんなのは犬畜生のする事だ!俺はこんなダメな人間だけど、犬畜生じゃないぜ!」「浅ましくて卑しくて下品だけど、俺やっぱり、人間なんだよ!」…
義男は激しく戸を叩き、「お父さん!」と叫び嗚咽します。
すると中から「義男…義男ぉ…」と弱々しい父の声が聞こえますが、「頼むから…、俺をこのまま死なせてくれ」と言われ、「何言ってんだよ!お父さん!!」と絶叫します。

やがて義男は戸に頭をもたせ掛けたまま、眠ってしまいます。
不二男は、変わらず仏壇の前に座っていましたが、夜になり、激しい雨になった頃、義男たち夫婦が初孫を見せにやってきた日を思い出します。

良子は前の晩からそわそわと支度をし、不二男は満面の笑顔で2人を出向かえます。
赤ん坊を抱いたまま恐縮し、先に自分の実家にお披露目した事を何度も詫びるとも子に、不二男は「いいの、いいの」を連発し、良子の席に座らせ、時おり真顔に戻る良子そっちのけで、義男にはビールを、とも子にはご馳走を薦めます。
ビールはすぐに酒に代わり、見る間に杯が進み、義男と笑顔で酒を酌み交わし、孫を中心に何枚も写真を撮り…
不二男は、その至極の酒を思いながら、真っ暗な部屋で、仏壇の前に座り続けます。

【結】- 日本の悲劇(2012年)のあらすじ4

翌朝、居間の戸の前で目覚めた義男は「お父さん、おはよう」と声をかけますが、返事はありません。
彼はしばらく声を掛け続けますが、戸を叩こうとした手を止めてすすり泣き、やがて座り込んで嗚咽します。
不二男は、無言で、仏壇の前に座っていました。

ほどなくして。義男は父の席に遺影を置き、コンビニ弁当を食べながら新聞の求人欄をチェックし、急須の茶をペットボトルに詰めて持ち、居間の戸に向かって「お父さん、今日も面接に行ってきます」と挨拶をして出かけて行きます。

「2010年、日本の自殺者は3万1560人。東日本大震災の死者、行方不明者は約2万人。無慈悲にも死者となったひとりひとりに捧ぐ。」
電話のベルだけが、誰もいない家の中で、誰にも気にされる事なく、鳴り続けていました。

みんなの感想

ライターの感想

2010年に発覚し、社会問題となった”所在不明高齢者”の親族による年金の不正受給問題は、続いて高齢の所在不明者が続々判明、ついその数週間前日本が世界最高齢国家かもねというお祝いムードが一転、世界的な大恥晒しとなり、愕然とした覚えがあります。
年が古いほど年金受給額は高額で、死亡届を出さないだけで濡れ手に泡というのなら、とりあえずそうしとくかと思う気持ちもわからなくはない。けれど本作は、おこぼれに預かる側ではなく、不甲斐ない息子にそれをさせようとする親の話。若者の年金と年収が先細る一方で、親世代にはますます長寿が加速し”ピンコロ体操”や”祖父母手帳”が流行ってしまう昨今、他人事では済まされない話です。
名優仲代達也は言わずもがな、北村一輝の”捨て身の泣き”にも胸が詰まります。
101分と尺は短めで、カメラは動かずじっと家族の様子を見つめる舞台劇のようですが、外の情景はありありと目に浮かびます。画面はほとんどモノクロですが、楽しい思い出だけがカラーなのも本当に切ない。また、震災の映像はありませんが、仲代達也の演技とわずかな音と”気仙沼の海辺”と言うだけで、とても恐ろしいシーンになっていますのでご注意を。
ちなみに、2010年の事件発覚以降、所在不明の高齢者に関しての判断も厳しくなったそうで、発覚と同時に複数の罪名の犯罪となるようで。親のでも自身のでも終活だの年金だのが気になり始めた方は、一度は見とくべきだと思います。

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