映画:歌声にのった少年

「歌声にのった少年」のネタバレあらすじと結末

歌声にのった少年の紹介:2015年のパレスチナ映画。戦争が絶えないパレスチナ自治区のガザで暮らす少年ムハンマド。スター歌手になることを夢見るムハンマドは、姉たちとバンドを組んで人々を魅了していくが、姉は病で命を落としてしまう。青年になったムハンマドは、ガザという高い壁を越えて、エジプトのオーディション番組に挑戦することに決めたのだが…。中東で絶大な人気を誇る歌手ムハンマド・アッサーフの奇跡のような実話を『オマールの壁』のハニ・アブ・アサド監督が映像化した。

あらすじ動画

歌声にのった少年の主な出演者

ムハンマド・アッサーフ(タウフィーク・バルフム)、ムハンマド<子供時代>(カイス・アタッラー)、ヌール(ヒバ・アタッラー)、アハマド(サーベル・シリーム)、アハマド<子供時代>(アハマド・カセィーム)、アマル(ディーマ・アワウダ)、アマル<子供時代>(テッヤ・ホサイン)、ウマル(アハマド・ロッホ)、ウマル<子供時代>(アブドルカリーム・アブバラカ)

歌声にのった少年のネタバレあらすじ

簡単なあらすじ

【起】- 歌声にのった少年のあらすじ1

2005年 パレスチナ自治区・ガザ地区。
紛争が絶えないこの地では、様々な規制を強いられていますが、子供たちは元気にたくましく生きています。ガザで暮らすムハンマドはとても歌のうまい少年で、仲良しな姉のムールや友人のアハマド、ウマルと共にガラクタで作った楽器を使って、バンド活動をしていました。閉鎖的なガザで夢など見られずに、お遊びで活動する3人に対し、ムールだけは高い目標と信念を掲げています。

4人は本物の楽器を手に入れるために、魚を獲って売り、多少の悪さもして小銭を稼いでいました。しかし食料品や燃料さえ不足しているガザで、楽器を自由に買うことなど到底叶いません。ムハンマドたちは闇商人がいる倉庫を訪ね、これまで貯めた僅かな資金を預けました。ところが数週間経っても、闇商人から連絡が来ません。たまらず再び彼に会いに行った4人は、騙されたことを知ったうえ、乱暴に追い払われました。
ヌールが闇商人に金を先に渡してしまったことを、アハマドたちが責めました。心優しいムハンマドはヌールを思いやり、夜間にたった1人で闇商人の倉庫に向かいました。しかし闇商人の仲間たちは、少年相手にムハンマドを袋叩きに。怪我をしても頑なに誰にも理由を語らないムハンマドを、今度はヌールが慰めます。「いつかここを出て、カイロのオペラハウスで歌う。スターになって世界を変える」と。それは子供の絵空事のようですが、ムハンマドのやる気を引き起こす約束となりました。

今度こそ稼ぐと本気になったムハンマドは、その美声を活かし、モスクでコーランの暗唱をして小遣いを得ます。そしてコツコツと貯めた金で、バンドの中古楽器を揃えました。次に必要だったのは指導者で、ボランティアで音楽指導をするカマールに依頼します。楽器未経験者のメンバーは、最初こそ散々でしたがカマールの指導下、必死に練習を重ね徐々に上達していきました。
4人の次の計画は、結婚式で演奏すること。イスラム圏は女性に対する戒律が厳しく、ヌールは男の子のフリをしてステージに立たなければなりません。それでも結婚式で演奏を披露し始めた4人は、ムハンマドの歌声を武器に依頼を増やしていきます。結婚式での演奏は資金集めだけではなく、4人の恰好の練習もなりました。

【承】- 歌声にのった少年のあらすじ2

バンド活動が軌道に乗り始めた矢先、悲しい出来事が襲います。ヌールが腎不全で倒れたのです。治療法は週1の人工透析か腎移植しか手段はないうえ、移植には莫大な費用が必要です。姉想いのムハンマドは、自分の腎臓をあげると躊躇いもなく申し出ました。家族が悲しみに暮れても、気丈なヌールはいつもの彼女らしく強気に振る舞いました。そのうえ同じく透析患者で、活発な少女アマルと出会い、すぐに意気投合します。
一方でヌールが欠けたバンドには大きな変化が。ヌールに想いを寄せていたウマルは、彼女に振られました。敬虔なムスリムなウマルは「音楽は悪魔の道具」と話し、バンド活動を辞めると言い出します。ムハンマドもまたヌールのいない音楽活動に無意味さを感じますが、カマールに励まされながら、歌の練習を続けました。努力の甲斐あって、ムハンマドは自主CDを出版するまでに成長します。アハマドと言えば、エジプトからガザに繋がるトンネルを通って、温かいハンバーガーを届けるという危険なバイトをこなし、チップを稼ぎました。何だかんだで、3人はこれまで以上にステージで場数を踏みました。

パレスチナだけではなくアラブ諸国では、米のオーディション番組『アメリカン・アイドル』の中東版である『アラブ・アイドル』が大人気で、多くの人々が番組を視聴しています。ムハンマドとヌールは、すっかり仲良くなったアマルも一緒に、病院のテレビでアラブ・アイドルを鑑賞しました。ムハンマドの声が“最高”と信じて止まないヌールは、彼が番組に出演することを強く望みました。
希望を失わずにいたヌールでしたが、症状が悪化します。ムハンマドの血液型も適合せず、残された手段は腎臓を買うことだけ…。貧しい家庭が多いガザで、高額な移植など無理難題です。家族が費用を用意できないまま、ヌールは短い一生を終えました。スターになって世界を変えるとヌールと約束したムハンマドですが、彼女を亡くしてからすっかり情熱を失ってしまいます。

【転】- 歌声にのった少年のあらすじ3

2012年。大学生になったムハンマドは、タクシーの運転手をして学費を捻出していました。ガザの街は度重なる空爆を受け、壊滅的な状態です。
ムハンマドは久々にカマールを訪ね、パレスチナのオーディション番組に出演したいと協力を仰ぎます。昔のようにアハマドも集まってくれました。しかしガザから現地に容易には行けないため、ネット電話にて番組へ出演することに。いざ生放送の日を迎えますが、電力不足のガザが停電するのは日常茶飯事。放送10分前に送電が止まり、急遽今にも壊れそうな発電機を用意して中継に臨みました。ところが映像や音声が度々途切れたうえに発電機が爆発し、演奏中断を余儀なくされたのです。ムハンマドは行き場のない怒りを、協力してくれた仲間たちにぶつけました。

番組を見たアマルがムハンマドを探していると友人から聞いた彼は、十数年ぶりに彼女に会いに行きました。アマルは今も透析を続けていたものの、マイペースでサバサバとした性格は幼い頃と変わりません。アマルを病院までタクシーで送ったムハンマドは、相変わらず強引な彼女に乞われて、車内で渋々歌声を聞かせました。感激したアマルが「世界中に聞かせるべき」と言ってくれたことで、ムハンマドはアラブ・アイドルへの出場を決意します。
オーディションに応募するためには、まずガザを突破しなければなりません。しかしガザの検問所は殆どが閉鎖されていて、稼働している検問所でも出域の検査が非常に厳しく、特別な理由無しでビザは発行されないのです。そこでムハンマドはアハマドと共に、検問所で働くウマルに緊急ビザの手配を懇願しました。しかしすっかりお堅い大人になったウマルは番組を非難し、ムハンマドの出場にも強く反対します。頼みの綱も切れ、ムハンマドは有刺鉄線が張られた国境を強行突破しようと試みますが、失敗に終わりました。それでも諦めきれないムハンマドは、少年時代に騙された闇商人を訪ねます。かつてウマルの通報によって逮捕された闇商人は、今では足を洗っていました。それでもムハンマドの強い意志は、彼に緊急ビザを偽造させたのです。

故郷を失った難民のために歌うというムハンマドの信念は変わらず、家族やカマールも危険を承知でムハンマドの出国を応援しました。ウマルの非番の日を狙ってアハマドが車を出しましたが、なぜか検問所にはウマルの姿が…。こちらの車を発見したウマルが近づいて来る隙に、ムハンマドは走って逃げました。ウマルに問い詰められたアハマドは、白を切り続けます。そのころムハンマドは、検問所を通過できるトラックの荷台に乗り込んでガザを脱出しました。
入国審査場まで辿り着いたムハンマドでしたが、審査官に問われ、ビザが偽物であることを正直に答えます。コーランの暗唱コンテスト出場のためにカイロに行きたいと、ムハンマドがごまかすと、審査官は一節歌うよう求めました。するとムハンマドの歌声に感動した審査官が、エジプトへの渡航を許可してくれたのです。しかしその時、ウマルが入国審査場へ追って来ました。揺るがない想いのムハンマドが「ヌールのために、ここを出たい」と訴えると、その一言がウマルの心を動かし、偽造ビザでの出国を見逃してくれたのでした。

【結】- 歌声にのった少年のあらすじ4

いよいよムハンマドはエジプト・カイロへ。
アラブ・アイドルの集合場所に行ったムハンマドは、他の出場者が数日並んでオーディションを受けるためのチケットを入手していたことを知ります。チケットが無ければ、来年の開催時まで諦めるしかありません。そこでムハンマドは、幼い頃によくやっていたように、柱から屋根を渡って会場内に侵入します。警備員に追われ窮地に陥ったムハンマドは、トイレの個室へ逃げ思い切り歌いました。するとムハンマドの素晴らしい歌声を聴いた出場予定者が、チケットを譲ってくれたのです。こうして奇跡的にムハンマドは挑戦権を得て、第一次審査を突破しました。

本選は勝ち抜き戦になるため、ムハンマドら出場者は番組が用意したレバノンの豪華なホテルに滞在することに。ガザ出身初の出場者として、ムハンマドは本番でも心を込めて歌いました。地元の家族や仲間もテレビにかじりつきです。ムハンマドは見事に1週目をクリアすると、審査員から好評を得て7週目まで勝ち進みます。ムハンマドの快進撃に、ガザの街は大騒ぎ。アラブ全体がいつの間にか、彼を“ガザの救世主”という目で見るようになりました。ガザの期待を一身に背負っていると知ったムハンマドは、大きなプレッシャーを感じ、極度の緊張でパニック発作を起こしてしまいます。弱気になったムハンマドは、アマルに電話しました。「“我々の声を聞いてもらう”との約束を果たして」と、アマルに背中を押されたムハンマド。レバノンの海岸を見ては、ヌールたちと過ごした日々を思い出し、歌うことを決めました。

(ここから当時の実際の映像が流れます)
ムハンマドは故郷の人々の想いが綴られた曲を決勝戦でも披露し、見事数千人の頂点に輝きました。街中に集まっていたガザの人々は、その瞬間歓喜に湧きました。ムハンマドの歌声はガザに大きな希望を与え、アラブ全体の光となったのです。
優勝したムハンマドは、国連のパレスチナ難民救済事業機関の青年大使に任命されました。彼は外交パスポートで世界を自由に飛び回りますが、ガザを出入りする際には今も特殊な許可が要るのです。

みんなの感想

ライターの感想

劇中ではさほどガザの過酷な現状には触れないのですが、ガザについての予備知識がちょっとでもあれば、この作品の印象がガラリと変わるかもしれません。後半の展開はフィクションだったならば、鑑賞者の気持ちが冷めてしまいそうなくらいの怒涛の好機ばかり。これが実話だというのだから、胸を打たずにはいられませんでした。
平和な環境下の子供なら「スター歌手になる」と願うのではないでしょうか。「スターになって“世界を変える”」と、自ずと子供に思わせてしまうところに、ガザの状況がうかがい知れました。

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