映画:此の岸のこと

「此の岸のこと」のネタバレあらすじと結末

此の岸のことの紹介:2010年の製作の短編映画。監督・脚本は若手の外山文治。モナコ国際映画祭2011の短編部門・最優秀作品賞をはじめとする5冠を達成し、国内では『わさび』『春なれや』と共に2017年に劇場公開。老々介護による厳しい現実をドキュメンタリータッチで台詞を排し、辛辣に描き出した。故・蜷川幸雄が創設した演劇集団「さいたまゴールド・シアター」の団員が介護する夫、介護される妻を切々と演じた。

あらすじ動画

此の岸のことの主な出演者

能勢雄一郎(遠山陽一)、能勢千鶴子(百元夏繪)

此の岸のことのネタバレあらすじ

簡単なあらすじ

【起】- 此の岸のことのあらすじ1

在郷の古い家に住む雄一郎と千鶴子夫妻。雄一郎は長年に渡り、脚が不自由で認知症も患っている千鶴子の介護をたった1人で行って来ました。食事の世話、清拭、排泄時の介助など千鶴子の生活全てにおいて、雄一郎が面倒を見ています。老いた雄一郎の体にはとても堪える作業ばかりですが、時々は千鶴子を車いすに乗せて外出させ、理解はしてもらえなくともクリスマスにはマフラーをプレゼントするなど、とにかく彼女を大切にしてきました。

春の穏やかな日。縁側で千鶴子の爪を切ろうとした雄一郎は、自身の右手が震えて、まともに爪切りさえ出来ないことに気付きます。恐る恐る病院を受診した雄一郎は、脳に重大な病を抱えていると宣告されました。これまでの重労働が祟ったのか雄一郎の余命は僅かで、千鶴子よりも自分の方が先が短い状況にあると判明したのです。この絶望的な現実に、雄一郎は途方に暮れました。

【承】- 此の岸のことのあらすじ2

周囲に頼れる相手もなく、収入のない雄一郎の貯蓄は底をつきかけていました。このままでは、2人がまともに食べることすらできなくなる危機です。
それでも…。病を宣告された夜も雄一郎は、いつものように千鶴子の動かない脚にマッサージを施してやります。しかし不安に苛まれた雄一郎は、思わず千鶴子の隣に横たわって、縋るように彼女の体を包み込みました。

心の拠り所のない雄一郎ですが、せめての事に神社で神頼みをします。しかし現実は無情で、彼の病状は日に日に悪化していきました。この苦しみを話せる相手もいない雄一郎は、元気な老夫婦と孫が公園で戯れる姿を見ては、むなしさを覚えるのでした。
雄一郎はその足で、敬老祝い金を申請するために役場へ向かいます。震える手で必死に申請書に記入しようとした雄一郎はふと、ある思いが巡って、記入する手を止めました。

【転】- 此の岸のことのあらすじ3

千鶴子に夕食を与えようとした雄一郎は、激しく抵抗され苛立ちます。やり場のない悲しみが爆発した雄一郎は、ごはんやおかずを千鶴子に投げつけて暴れました。憂さ晴らしをするように物に当たり、雄一郎は子供のように声を上げて泣きました。
雄一郎は泣き疲れ、部屋を散らかしたまま夜を明かします。正気になった雄一郎に、死んだような目で視線を届ける千鶴子。ぐちゃぐちゃになったベッドの千鶴子を抱き起こした雄一郎は、ある決意をしました。

かつて湖畔で手漕ぎボートに乗った際に、2人で記念撮影したスナップ写真が部屋に飾られています。それは雄一郎と千鶴子が、にっこりと笑顔を見せた素晴らしき思い出。生きることに力尽きた雄一郎が求めたものは、この2人の姿でした。

【結】- 此の岸のことのあらすじ4

誰もいない冬の湖畔に千鶴子を連れて来た雄一郎は、岸辺に車いすを置き捨て、彼女をボートへ乗せた後に自分も乗り込みました。最初は怖がっていた千鶴子は穏やかな過去を思い出したのか、鼻歌を歌い出します。さらにボートに落ちていた小さな花を拾っては、嬉しそうに雄一郎に渡しました。雄一郎はその花を千鶴子のニット帽へ飾ってやります。そして雄一郎は千鶴子を抱きしめると、彼女の首元に巻いていたマフラーを外して、2人の手首を固く結びました。千鶴子の目元をそっと隠した雄一郎は、そのまま湖へ身を投げました。

(2人が命尽きたその後)
雄一郎が目覚めると湖は雪原と化し、2人が乗っていたボートがポツンと残されていました。雄一郎が振り向くと、そこには元気な千鶴子の姿が…。雄一郎は驚いて、思わず大喜びしました。千鶴子は自らマフラーを巻き直し、降り積もった雪の中からあの花を見つけます。そして雄一郎と千鶴子は手を取り合い、広い雪原を歩き出しました。

みんなの感想

ライターの感想

まずは絶句しました。しかしこの映画が描き出したのも、きっと誰かの現実。数十年後には自分の現実かもしれない…。目を逸らしてはいけないと痛感しました。
さいたまゴールド・シアターの団員さんがキャストとのこと。決して演技がうまいとは思えないのですが、もともとは一介の人間であった人が醸し出すリアルさは抜群で、まるで近所の家庭を見ているようでした。だからこそ作品の内容が胸を突きつけます。
当時30歳前半ながら、この重いテーマを取り上げた外山監督の心意気もすごいなと感じました。自分が何をすべきか、加齢と共に少しずつ考えていきたいと心が動かされました。

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