「王手」のネタバレあらすじと結末の感想

王手の紹介:1991年公開の日本映画。『どついたるねん』に続く、阪本順治監督の新世界3部作の第2作にあたる(ちなみに第3作目は『ビリケン』)。大阪を舞台に、将棋の世界に生きる若者たちの姿を描く。

王手の主な出演者

飛田歩(赤井英和)、香山龍三(加藤雅也)、照美(広田レオナ)、嶋田加奈子(仁藤優子)、三田村早苗(若山富三郎)、天王寺(金子信雄)、駒田成次(梅津栄)、李貞錫(汐路章)、恵美須(國村隼)、鬼詰(シーザー武志)、大熊三段(芹沢正和)、矢倉名人(坂東玉基)、桂八段(伊武雅刀)、白銀(麿赤児)、オッサン(笑福亭松之助)

王手のネタバレあらすじ

簡単なあらすじ

①通天閣近く・新世界の真剣師・飛田と関西奨励会の香山はアマプロの垣根を越えて友人づきあいを続けている。飛田はアマプロ勝ち抜き戦で有段者を倒していく。 ②飛田と香山は立場は違えど同じ将棋好きということで、一度は喧嘩したものの互いを理解する。初心に帰った飛田は老真剣師・三田村に教えを乞い、矢倉名人に勝利した。

【起】- 王手のあらすじ1

平成3年(1991年)、日本・大阪。
天王寺区にある通天閣の界隈は、新世界と呼ばれています。そこでは男たちが娯楽として将棋を指して楽しんでいました(注:男女差別ではなく、この時代のこの映画では男たちの世界として将棋が描かれているため、指しているのは男性ばかり)。
飛田歩は30代くらいの男性です。いつもスーツを着ている真剣師です。
真剣師とは、賭け将棋をして金を稼ぐ人のことです。本来は賭け将棋は禁止なので、アウトローの世界です。もちろん日本将棋連盟は禁止しており、だからというわけではありませんが、飛田はアマチュアの将棋指しです。
飛田よりも10歳ほど年下の親友に、香山龍三がいました。飛田が香山に将棋を教え、将棋の楽しさを教えました。
香山は将棋連盟に所属し、プロの棋士を目指しています。ですから飛田と行動を共にしていても、決して真剣には加わらず見ているだけで、アマチュアの真剣師の飛田とも将棋を指すことはありませんでした。

夏のある日。
行きつけの将棋の店『とクラブ』で賭け将棋をしていた飛田は、相手を強いとおだて、香山に金を借りて賭け金をアップし、盤の横に立てて隠していた駒を指して勝ちました。相手はずるいと怒りますが、その相手こそ銀の駒を5枚持っているなどズルし放題でした。
そこへ借金取り・恵美須が借金の回収にやってきました。通天閣で落ち合う約束をし、飛田は香山と二手に分かれて逃げます。香山の方に借金取りが追ってきたので、香山はあせって「飛田、あっちや」と言いながら逃げました。
通天閣で飛田と落ち合った香山は、もうつきあえないと言います。エリートコースの奨励会員なので、賭け将棋で目をつけられると困るのです。とはいうものの、飛田と香山は腐れ縁のつきあいです。
飛田と別れた香山は、薬局に行きました。そこには香山が好きな女性・嶋田加奈子が店の売り子として勤務しています。
香山は加奈子と幼馴染みですが、なかなか思いを打ち明けられません。察した加奈子が馴染みのおじちゃんに中座してもらっても、「6年後に名人になる宣言」をするばかりで、加奈子はやきもきしました。香山は遠回しのプロポーズのつもりなのですが、遠回りすぎてちっとも加奈子には分かりません。

新世界将棋道場で、飛田は「先生」と呼ばれていました。
飛田は現在アマプロ戦で、プロの棋士を次々に倒しています。先日は藤田七段を倒し、地元の新世界では飛田は期待の星でした。
新世界将棋道場の奥には、いつも偉そうに真剣師の鬼詰(おにづめ)という和装の男が居座っていました。飛田にケンカを売り、自分が見込んだ手下を飛田と対局させます。
その日、チョビヒゲ男と対戦して50万円の勝利を得た飛田は、景気づけに風俗へ行こうとしました。気前よくタクシーに乗り込んで阿倍野のスキャンティに行こうとしますが、ツケがたまっていることを思い出します。行き先を天満のハメハメ大王もツケがたまっており、顔を出しにくいと飛田は思います。
大阪に来て日が浅いタクシー運転手おすすめの店へ走らせてくれと飛田は頼み、運転手は日本海の小さな温泉街へ行きました。兵庫県・城崎です。
タクシー運転手におごって2人でストリップ劇場に入った飛田は、そこで魅力的な美女のストリッパーと出会いました。
飛田はストリッパーを口説き落とし、一夜をともにします。
翌朝、海辺を散歩した飛田は、「キミとボクとは前世からの運命の人だ」と口説きました。いつも言っている口説き文句だろうと指摘する女に対し「死ぬほど言うた!」と正直に答えます。
ストリッパーは砂浜に自分の名を書き、照美と書いて「てれび」と読むのだと、それが名前だと言いました。父親が娘に、いつかテレビに出るような有名人になるようにとつけた名前だそうです。
恋人だった男は沖合の渦の中にいると言った照美は、「海より大きい人やった」と告げます。恋人は漁師で、海で亡くなったのです。
対局の時間が迫っていました。飛田は照美と別れて運転手とともに大阪へ戻りますが、照美に惹かれていました。

【承】- 王手のあらすじ2

桂道明・八段とのアマプロ勝ち抜き戦の対局が始まりました。さすがに飛田も苦戦します。
棋士は扇子を持っており、そこに自筆で文字を書いています。桂の『一手入魂』に対し、飛田は『自給自足』と書いていました。
トイレに立った飛田は、個室で次の手を必死で練りますが、いい手が思いつきません。破れかぶれの攻撃の手に出ました。扇子をパチパチ鳴らして、桂八段の集中力を欠く戦法にも出ます。真剣師にとっては勝つことこそが大事なので、マナーは二の次です。
対局は一分将棋にもつれ込みました(考える持ち時間を使い切ると、制限時間一分の将棋になる)。そこで打つ手がなくなった桂・八段は投了(負けを認めること)し、飛田の勝利が決まります。桂・八段はプロの棋士の敗北を恥とし、引退を決めました。
同じ頃、香山も対局相手に苦戦していました。押されて鼻血を出しながら長期戦に臨んだ香山に対し、相手は勇み足の手を繰り出してきます。
香山と対局相手も一分将棋になりました。そこで香山はわざと駒を指すのを遅らせて、相手に二手指し(続けて二回指すこと)させます。対局相手の反則負けで、香山の勝ちが決まりましたが、相手は激怒しました。

飛田を目の敵にする新世界の真剣師・鬼詰が、またもや新たな対局相手を飛田に紹介します。
今度の相手は盲目の棋士でした。目は見えませんが、負け知らずです。一局30万円で対局します。
盲目の棋士は駒の先に細い釘のようなものを打ち込んで、点字代わりにしていました。
飛田はすかしっ屁をすると、『万国共通』と書いた扇を広げて相手の方に送ります。
「わて、鼻だけは人一倍ききまんねや。殺生な」と言い、対局相手は屁のくささに倒れました。
勝った飛田は「真剣師はどんな手を打っても勝たなあかんのや」と言います。

香山は会社に出張して、会社の将棋部の仕事をすることもあります。そこで褒められても香山は謙遜しないので、年上の人たちからも煙たがられていました。
香山はとにかく奨励会で勝ち進むことしか考えていませんでした。そのためにどんなあこぎな手を使う…これは確かに、親友の飛田の「どんな手を打っても勝たなあかんのや」という思想の影響もありました。
そのため香山は奨励会の他の会員に嫌われています。
関西奨励会と関東奨励会の野球をした時に、香山はメンバーの小学生に心配され、声をかけられます。
いわく、香山は裏では「椿油にまみれた奴」とさげすまれていました。将棋の駒を磨く椿油にまみれた虫のように、あくせく星(勝ち星、白星)を稼ぐ奴と陰口されていますが、それを聞いても香山は「天才に陰口はつきものや」と気にしません。

飛田に呼ばれ、香山と加奈子がてっちり屋に集まりました。いつまでも進展しない香山と加奈子の仲に業を煮やした飛田が、一席設けたのです。3人は夏の暑い時に、てっちり鍋を囲みます。
最初は渋面を作っていた香山も、酔いが回って楽しいひとときを過ごしました。
飛田はそのまま店で眠り込み、加奈子を送った帰り道、満月を見上げた香山が口にしたのは、やはり将棋のことでした。香山としては早く昇段して加奈子と結婚…ということを告げたいのですが、将棋の世界を理解できない加奈子にとっては、香山のそういった言葉はすべて「ただの将棋オタク」に感じられます。
その香山が師匠に呼ばれました。
真剣師の飛田と付き合っていることが問題となり、香山は「真剣指していません」と否定しますが、一方的に破門されます。
それを聞いた飛田が怒って香山の師匠のところへ乗り込んで、文句を言いました。「こいつは真剣指していない」と言いますが、追い払われます。
香山も飛田も、好きで将棋を指していました。香山は後に土下座して師匠に謝って、奨励会に戻りますが、スランプに陥ってしまい、負けがこみます。

【転】- 王手のあらすじ3

飛田と加奈子が通天閣の上で凧をあげました。その凧は、飛田がストリッパーの照美にもらったものです。
そこへ借金取りの恵美須が乗り込んできました。通天閣のてっぺんにいるので、飛田は逃げ場がありません。
恵美須は自分では将棋を指しません。その代わりに「将棋で勝負しよう」と言い、三田村を連れてきていました。
三田村とは、老いたりとはいえ伝説の真剣師と呼ばれている大物です。飛田はあっという間に三田村に負けました。悔しい飛田は、親父の形見の王将の駒を賭けると言います。
もう一度勝負したものの、やはり飛田は負けました。飛田は王将の駒を置いていそいそと逃げますが、借金取りの手下が「任天堂って書いてある!」と言い(形見の値打ちものではなかった)、飛田は恵美須たちにこてんぱんに殴られます。
ケンカの場に加奈子が香山を連れてやってきますが、香山はもう関わりたくないと言います。怒った加奈子は元ヤンキーということもあり、突入していきました。けっこう強いです。
それを見た香山もやぶれかぶれで突入し、置かれていたプランターの鉢を振り回して、借金取りたちを撃退しました。
満身創痍になった飛田は、香山に「いまこのときだけ、互いの身分を忘れて将棋を指してくれや」と頼みます。目隠し将棋をする2人を見て、ついていけないと思った加奈子は見送りました。

店で騒動を起こしたことがきっかけで、賭け将棋をしていることが警察に露見しそうになりました。
対決を行った店の店主、借金取り・恵美須、飛田、香山たちが集まり、新世界を仕切る実質的なドンである、中華料理店『満森』の主・天王寺欣也が手打ちをしようとします。
飛田は今までずっと「親父は伝説の真剣師」と言っていましたが、それは嘘でした。父親は新潟から出稼ぎにきた男で、新世界で母と出会って飛田が生まれていました。その父とも、会ったことがありません。
手打ちをしようとした時、恵美須と飛田が取っ組み合いの争いをしようとしました。拳銃を取り出して威嚇した天王寺は、その場を無理矢理に収めます。
店を出た飛田と反対方向に分かれた香山ですが、飛田の後ろ姿をにらんでいたところ、電柱にぶつかりました。眼鏡が割れます。
腹の虫が収まらない恵美須は、つい見栄を切ります。
「飛田が名人さしたら(勝ったら)、通天閣中の借金チャラにしたる」
飛田の馴染みの将棋店『とクラブ』の店主に、吐き捨てるように言いました。
この恵美須の発言は新世界中を駆け巡り、みんなが飛田を応援するようになります。

飛田は再び城崎へ行き、照美と会いました。そこで、今度の対戦相手である、名人の矢倉と会います。
矢倉はまだ若い男でした。
勝手に将棋の店を開いた飛田は地元を仕切るテキヤ(チンピラ)に追われ、照美を連れて小学校に逃げ込みます。
照美はそこで、自分の恋人の話をしました。漁船でケンカをして、気を失ったまま海に放り込まれて死んだそうです。
「海より大きい人やった」…そう呟く照美に、飛田は自分のところへ来いと言いました。
照美は「行くんやったら勝手に行く。行って、びっくりさせる」と答え、どこへ行けばいいのか聞きます。
飛田は「通天閣や!」と答えました。
日本海に小便して去った後、飛田は大阪へ戻ってエレベーターに乗り、通天閣の最上階へのぼります。

【結】- 王手のあらすじ4

飛田は伝説の老真剣師で、先日さんざんに負けを喫した三田村を呼び出していました。教えを乞います。
三田村は平安時代から続く、巨大な平安将棋(泰将棋、または無上大将棋と呼ばれる)を用意していました。盤面も大きく、駒数は実に354枚もあるものです。対局を終えるまでに7日を要する、厳しいものです。
三田村は先日の飛田との対局を例に挙げました。三田村は駒を並べながら世間話を飛田に振ったのですが、それに応じた飛田の態度を戒めたのです。
「名人は、盤外戦には動じんぞ」
そう言って、三田村は飛田がいちいち自分の言葉に応対していた飛田を責めました。
飛田と三田村はそれから数日、盤面に向かい続けました。出前を食べ、ヒゲを剃り、ある時はうたたねして、ひたすら相手の駒を取って減らしていきます。
形勢が不利になった三田村は「…今日も暑くなりそうやな」と話を振りますが、飛田は相手にしませんでした。三田村は投了します。
勝利を収めた飛田の心は穏やかでした。通天閣から見える景色は日本海に変わり、しかし飛田の気持ちは凪いでいました。

9月5日、対決の日。通天閣から巨大な垂れ幕が下がります。
JR大阪環状線の新今宮駅のホームにいた香山は、なんだろうと見上げました。
巨大なので、垂れ幕が下がりきるには時間がかかります。
『飛田勝ったら借金帳消し』
それを見た香山は、電柱にぶつかって割れたままの眼鏡をかけて、何かをこらえました。しかしこらえきれず、笑い始めます。「(面白すぎて)腹痛い」とつぶやきました。
その頃、照美は本屋で将棋の本に、飛田と矢倉名人の対局が載っているのを見つけます。飛田のページだけ破り取るとお代を払い、急いで通天閣に向かいました。
矢倉名人に日本将棋連盟の理事たちが、こんな体たらくになってしまって申し訳ないと頭を下げますが、名人は「普及のためですから」と対局に臨みます。
盤を隔てて向かい合わせに座った矢倉名人は、扇子を広げると飛田に「日本海で会いましたね。女性の方を、お連れになって」と話し掛けました。矢倉名人の扇子には『身心一如』と書かれています。
飛田は「ごちゃごちゃ言わんと始めよか」と言うと扇子を広げました。飛田の扇子には『欧陽菲菲(オーヤン・フィーフィー 歌手の名)』と書かれています。
照美は間違えて、神戸のポートタワーに到着していました。通天閣ではないのかと、何度もポートタワーの係員に質問します。

朝の10時に始まった対局は、長引きました。
新世界の面々は新世界将棋道場に集まっています。道場の前部には売り物のテレビが置かれて、対局の様子が映し出されていました。恵美須は得意げに「借用書なくした人は、再発行しまっせ」と言い、テレビの前にわざと立ちはだかる地味な嫌がらせをします。
テレビに見入るのは主に、恵美須に借金を作っている人たちでした。その顔の中には、普段は居丈高で飛田に突っかかる鬼詰もありました。紙切れ片手に「飛田、頑張れ」と応援しています。
香山は薬屋へ行き、加奈子に迫っていました。「子どもは長男と長女(一男一女)でええやろ」という香山に「飛びすぎや」と加奈子は答えますが、「俺とお前は前世からの因縁や」という香山の口説き文句(飛田の真似)と接吻に、加奈子は香山の胸に顔を埋めます。

対局の場は水を打ったように静まりかえっています。矢倉名人と飛田の呼吸の音しか聞こえません。
相矢倉で始まった対局はもつれこみ、記録係も居眠りしそうになります。駒を指す音で起きて記録を取ります。
照美は通天閣に到着しました。照れくさそうに通天閣の下で佇みます。
勝負は夜までかかりました。おされる名人の額に汗が浮かびます。
飛田は…海中に身体を丸めていました。無心の極みです。
やがて矢倉名人は「負けました」と投了しました。アマチュアの飛田の勝利です。
新世界の住人は手放しで喜びました。借金帳消しになったことだけが理由ではなく、新世界の顔の飛田が勝利したからです。
その脇で「お前らなんか、すぐまた借金作るわい」と負け惜しみを言う恵美須の顔は、半泣きでした。
飛田は矢倉名人に「名人、今度は真剣(賭け将棋)でやろや」と言って去ります。負けを喫した矢倉名人はあぐらをかき、上空を見つめていました。マスコミは無遠慮にその名人を姿を撮影します。

…今日もまた飛田は、新世界将棋道場へ向かいます。顔なじみの通行人と、あいさつをかわして…。

みんなの感想

ライターの感想

この映画、とにかく痛快なのだ。見終わった後、すっきりする。
かつてはプロボクサーだった赤井英和が引退後、自らの自伝を元にして阪本順治が監督をつとめた『どついたるねん』。この作品もよい。
その赤井&阪本コンビの第2作が今作品。
プロ棋士相手に快進撃を続ける真剣師。それを赤井英和が上手に演じている。
広田レオナの格好が「あ~、バブルっぽい」…これもその当時の世相を上手に活かした演出。
展開としてはオーソドックスを地で行く感じなのだが、出てくる人物が悪役であれ、みんな愛嬌があって面白い。
なにわの下町情緒あふれる一品。

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