映画:白鯨(1956年)

「白鯨(1956年)」のネタバレあらすじと結末

白鯨(1956年)の紹介:巨大な白鯨に片足をもぎ取られ復讐鬼と化した船長と、捕鯨船の乗組員たちを描いた1956年製作のアメリカ映画。原作はハーマン・メルヴィルの同名長編小説。監督は「黄金」「アフリカの女王」のジョン・ヒューストン。脚本はSF小説で知られるレイ・ブラッドベリ。エイハブ船長を「ローマの休日」「オーメン」のグレゴリー・ペックが演じ、共演は「道」のリチャード・ベースハート、「クォ・ヴァディス」のレオ・ゲンなど。オーソン・ウェルズが神父役で出演している。

あらすじ動画

白鯨(1956年)の主な出演者

エイハブ船長(グレゴリー・ペック)、イシュメール(リチャード・ベースハート)、スターバック(レオ・ゲン)、マップル神父(オーソン・ウェルズ)、クィークェグ(フレデリック・フォン・レデブール)、スタッブ(ハリー・アンドリュース)、フラスク(シーモス・ケリー)、ダグー(エドリック・コナー)、タシュテゴ(トム・クレッグ)、イライジャ(ロイヤル・ダノ)、ブーマー船長(ジェームズ・ロバートソン・ジャスティス)、ガーデナー船長(フランシス・デ・ウルフ)など。

白鯨(1956年)のネタバレあらすじ

【起】- 白鯨(1956年)のあらすじ1

1841年末の土曜日、捕鯨の町ニューベッドフォードには激しい嵐が吹き荒れていました。
イシュメールは、はるばる野山を越え、鯨捕りが集まる酒場兼宿屋”潮吹き亭”へとやってきます。気のいい主人は「銛打ちと相部屋だが泊まるか?」と聞き、地元の鯨捕りクレッグに声を掛けます。彼は、鯨の巨大さ、恐ろしさを誰より知っていて「神様が魚になるとしたら、絶対に鯨になるだろうよ」と豪語し、よそ者のイシュメールをにぎやかな歌とダンスで歓迎します。
しかし彼は、その雨の中を傘も差さずに、コツコツと音を立てて通り過ぎるシルクハットの男を見て「エイハブ船長だ」と眉を顰めます。
また主人が「相部屋の銛打ちは陰気な男で、今”首”を売りに行ってる。しかし数があり過ぎてすぐには売れんだろうよ」というのも気になります。
夜遅く戻った銛打ちは、見上げるほど背が高く、顔と上半身に奇妙な刺青がある男で、年季の入った頑丈な銛を片付け、干し首を暖炉に並べトマホーク型のパイプで一服しながらベッドに入ってきて、隠れていたイシュメールに気づくなり、殺す!と脅します。
彼は慌てて主人を呼び「人喰い人種と寝るなんて!」と文句をいいますが、「”首”を売りに来たと言ったろ?」と往なされ、結局ひとつベッドで寝ることに。男の名はクィークェグ。無口ですが物分りも良く紳士的でした。

翌日、イシュメールは日曜礼拝に行き、マップル神父が船の舳先型の講壇で語る、ドラマチックな聖書のヨナの説教を聞き、宿屋では、英語が読めず、ページを数えていたクィークェグに本を読んでやって友だちになり、一緒の捕鯨船に乗ろうと約束します。
彼は片言の英語で「父親は部族の大首長で叔父は高僧、西南の遠い島から来て世界中を回ってる」と話します。
2人は、港に行き、たくさんの鯨の骨が部品に使われていたピークォッド号に目を付け、乗り込みます。
船主の一人は「捕鯨経験は無いが捕鯨が見たい」と息巻くイシュメールに「エイハブ船長を見たか?」「捕鯨が知りたきゃ彼を見ろ。彼は島ほどもある鯨に身を引き裂かれ、鯨の骨で義足を作った。教会の説教を聞くより人生が分かる」と前置きし、取り分は利益の777分の1だと言い張るリーダーの船主に、300分の1が妥当だと交渉し契約を取りつけます。
また、クィークェグはクリスチャンではないため拒否されますが、彼が舌打ちして銛を投げ、見事に樽のマークを射抜いたのを見たリーダーの船主は、利益の60分の1で即決します。クィークェグのサインは、名前ではなく鯨のマークでした。

出帆当日。イシュメールとクィークェグは、自称予言者のイライジャに呼び止められ「エイハブ船長は呪われた男だ、鯨はヤツの心までもぎ取ってしまった」と言われます。
2人は聞き流そうとしますが、男はさらに「海の上で、島もないのに島のにおいがする日、エイハブは死ぬ。だがすぐに甦り、皆を手招きし、1人を残して全員が死ぬ」と言い残します。男は浮浪者のようでしたが怯えきっていて、嘘を吐いているようには見えませんでした。
船員たちは勇ましく出港準備を進めますが、見送る女たちは無言で、夫や家族を一心に見つめていました。航海期間は3年、木造の帆船で巨大な鯨に挑む乗組員全員が、無事に帰れる約束は一つもないのです。
そんな中、副船長のスターバックは、家のバルコニーから手を振る妻と幼い子供たちに小さく手を振り返し、船主たちは、航海の無事を祈って船を降り出帆となります。

天候にも恵まれ、航海は順調でした。船員は、宿屋で知り合った陽気なのん気者二等航海士のスタッブ、”自分よりデカいから”と鯨を憎んでいる三等航海士のフラスク、ちょこまかと動き回るキャビンボーイの黒人少年ピップ、白髭の老人の鍛冶屋、船体から人体の骨折の修理までこなす船大工等々、実に多種多様な人種や性格の人々です。
中でも勇壮なのは銛の射手で、相棒となったクィークェグ他、獲物をバッファローから鯨に替えたというインディアンのタシュテゴ、1人でライオンを仕留めたという黒人ダグーがいます。
また副船長のスターバックは代々鯨捕りで、物静かで勇気があり、銛打ちの腕前も町一番と言われた男でした。
エイハブ船長はといえば、昼間は船長室にこもりきりで姿を見せず、夜になると甲板を義足で歩き回るコツコツという音を響かせているだけでした。

しかしある日の日中、エイハブ船長はデッキの上に姿を現します。
噂通り、左足の膝から下は鯨のアゴの骨で作った円錐形の義足、長身で、右顔面を斜に過ぎった大きな傷跡、その麓だけが白髪と化し、黒いシルクハットにコートで水平線を眺めるその異様な姿に、船員たちは皆圧倒されます。
彼は、見張りを含めた全ての船員を甲板に集め「我々が狙うは、雪山のように白く巨大な鯨、モービー・ディックだ」と演説し、1枚のスペイン金貨をマストに打ちつけ、第一発見者への褒美とします。皆は興奮し、中でも銛打ちのタシュテゴ、ダグー、クィークェグは「そいつは敏捷で、潜る時に癖があり、体中に銛の刺さってるヤツか!」と叫びます。
エイハブ船長は「そうだ!そいつがわしの心も体もズタズタに引き裂いたのだ。わしはあの鯨を捕まえるまでは、地獄の業火も怖れぬつもりだ!この船の目的は、あの白鯨を地の果てまで追って追って、黒い血の潮を吹いて死ぬまで追い詰める事だ!」と演説し、強い酒を銛や槍にかけて回し飲みさせ、檄を飛ばし、皆を煽り奮い立たせます。

【承】- 白鯨(1956年)のあらすじ2

船底での昼食時、物知りの船員は「白鯨の名はモービー・ディック。その姿は白く巨大で海に浮かぶ大理石の墓石のようだ。空には白い鳥が群がり、世界中で同日時刻別々の海に現われる。アゴが曲がり背中に無数の槍が刺さってる。大勢の鯨捕りが挑んで復讐された、不死の鯨だ」と語ります。
そこに「鯨発見!」の号令がかかり、皆一斉に甲板に駆け出します。
船は帆を畳んで停留し、スターバック、スタッブ、フラスクの3チームが、木製の手漕ぎボートで鯨に近づき、クィークェグら銛打ちが一斉に銛を投げつけます。
銛には頑丈なロープがついていて、ボートは暫し振り回されますが、やがてスターバックの銛が命中、鯨は血の潮を吹いて絶命します。その獲物は本船で解体され、巨大な鍋で煮られ、85樽もの鯨油となり、残った骨は海に捨てられます。

その夜、船員らは大いに盛り上がりますが、スターバックは1人船長室に行き、海図を広げたままうなされていたエイハブ船長に「少しお休みになられては?」と声を掛けます。エイハブ船長はすぐに姿勢を正し「寝るなんて死ぬも同然だ」「太平洋に向かえ」と命じます。
彼が作成していたのは、捕鯨船の航海日誌から割り出した、4大洋の鯨の種類別の動きを網羅した海図でした。
スターバックは感服し「これなら獲り放題だ!」と呟きますが、「あの大仕事が終わればな」と受け流されます。彼が指示したのは、白鯨の予想進路で、4月の新月の頃、ビキニ島沖に現われたところを迎え撃つというのです。

エイハブ船長は、無言で立ち去ろうとするスターバックに「モービー・ディックには興味が無いか?」と問います。
彼は「仕事のためなら何でもしますが、個人の復讐が油を生み金を稼ぎますか?」と言い返し「何も知らぬ動物に怒るのは神を恐れぬ行為ですぞ」と往なします。
エイハブ船長は彼を睨みつけ「全ては仮面に過ぎん、白鯨はわしを非難し憎んでおる。だがそれもまた仮面、わしはその仮面の裏にあるものが憎い。有史以来人間を蝕み脅してきた邪悪なモノだ。わしを生かしも殺しもせず心も肺も半分にしたのだ…」と呟きます。
そして、神よと呟くスターバックに「乗組員はわしに従ってる。おまえさんはどうする?…町一番の槍の名手が、獲物を前に尻込みはすまい?」とニヤつきます。
スターバックは「せっかくですが私は反対だ。怖いのはあなた自身、ご自分を恐れなさい」と言い去っていきます。

ピークォッド号はアフリカの海岸沿いを南下、嵐の岬を回ってインド洋を目指します。
イシュメールは初めて見張りを命じられ、一番高いマストに登りますが、甲板ではクィークェグが心配そうに眺めています。しかし見張り台の眺めは最高で、しかも鯨の大群を発見、彼の合図で乗組員は直ちにボートを出し、海を血に染め、何頭もの鯨を仕留めます。
漁が一段落し、ボートが船に獲物を上げている最中、近くを通ったサミュエル・エンダビー号のブーマー船長が挨拶に寄ります。彼は陽気な太っちょの酒好きで、片手が銛の穂先が付いた義手になっています。
彼はエイハブ船長の成果を大いに褒めますが「1ヵ月前喜望峰沖で白鯨に遭遇し、腕をやられた」と愚痴った途端、エイハブ船長は顔色を変え「わしの海図は正しかった!4月の新月にはビキニ島沖に現われる!」と叫んで漁の中止を命令、「獲物を捨て、今すぐ白鯨を追え!」と指示し始めます。
ブーマー船長は呆れて引き上げ、スターバックは懸命に止めますが、エイハブ船長に「この世に神はただ1人、この船に船長はただ1人だ!」と凄まれただけでした。また帰船旗を見たスタッブも「わけが解らん!まだ漁が終わってない!」と抗いますが、「命令に従え!」と押し切られます。

その夜、エイハブ船長は甲板をうろつき、スターバックはスタッブとフラスクにある相談を持ちかけます。
彼は「我々の仕事は、鯨を屠り人々に油を供給し、幸福をもたらすという神も喜ぶ聖なる仕事だ。エイハブは、私怨のためにその聖なる目的を捻じ曲げる悪の帝王だ。彼に手を貸せば、神の怒りに触れ、皆生きて帰れない」と話し、法律書を読み上げます。
それには”船長が私用で船を使用した場合、横領とみなし、乗組員は船長の指揮権をはく奪できる”とありました。つまり皆でエイハブ船長を力ずくで取り抑え、本来の目的を果たそうというのです。
しかし一介の航海士である彼らに船長に逆らうという選択肢はなく、またエイハブ船長に対する信頼も厚く、受け流されて終わります。

【転】- 白鯨(1956年)のあらすじ3

ピークォッド号は、船長の指示通り、見張りも立てず漁もせず、船長は部屋にこもりきりのままひたすら進み、4月の新月の頃にはビキニ島沖に到着します。エイハブ船長は、ようやくデッキに立ち、見張りを立て、白鯨を迎える準備を命令します。
しかしその時、金貨に目が眩んだ船員の1人がマストから海に転落します。皆すぐに救出に向かいますが、船員は見つかりませんでした。
また、海は凪いだきりで潮も流れず、昼間は熱い日差しにあぶられ、白鯨はおろか鯨の影も無いまま、7日7晩が過ぎます。
船長はその間、甲板から1歩も動かず、水平線を睨み続けていました。

船員たちは疲弊し、1人がイシュメールに金貨をもぎ取って海に投げろと絡んで、テシュタゴに怒鳴られます。
クィークェグはその間黙々と骨占いをしていましたが、突然蒼褪めて、船大工を呼びつけ、高さ2メートル、首長の羽根飾りを彫ったタールで継ぎ目を塞いだ棺桶を作ってくれと頼みます。船大工はイシュメールを気にしつつも、2ドルで請け負います。
イシュメールは動揺して懸命に止めますが、クィークェグは「金も衣装箱もやる、さらばだ」と言って握手をし、黙り込みます。
それは暗くなっても変わらず、イシュメールがいくら話し掛けても答えず、水も食べ物も口にせず座り続けていました。スターバックは「前にも同じ男を見た、彼らは死期が分かるとそうするのだ」と話します。
一方、エイハブ船長はついにスターバックを呼び「今晩8時になったらボートを出せ、ここを抜け出すのだ」と命じます。

甲板では、ピップが動かぬクィークェグを弔いの踊りでからかい、2人の船員が彼の胸の入れ墨にナイフで線を付け足していました。
それでも彼は微動だにしませんでしたが、イシュメールがその船員を殴りつけ揉み合いになると、クィークェグはようやく動いて彼を助けます。
その時、見張り台から「鯨だ!潮を吹いてるぞ!」と号令が響きます。
エイハブ船長はカッと目を見開き「あいつだ!ボートを出せ!」と怒鳴ります。船員たちは皆甲板に立ちつくし、夢であるよう祈っていました。
ボートのリーダーは、エイハブ船長、スターバック、スタッブ。白鯨の上には伝説通り白い鳥が群がり、海は静かで異様な空気に満ちていました。白鯨は間もなく海中に消えますが、鳥の群れは彼らの周りから離れません。
そしてエイハブ船長が「近いぞ!」と叫んだ直後、その巨体が間近に現れ、彼らを嘲笑うかのように横切り去っていきます。
エイハブ船長は、ボートで船を曳航し、白鯨を追うよう命じます。数時間後、数人が倒れる頃になってようやく風が吹き始めますが、白鯨は見失います。

ピークォッド号は再び航行を始めますが、エイハブ船長は白鯨を見つけた船員に金貨をやり、船員たちには「白鯨を殺した者には全員に金貨をやる!わしの分け前を全て分配する!モービー・ディックの血の1滴1滴がスペイン金貨になるのだ!」と約束、酒を振る舞い鼓舞します。
その時レーチェル号が現れ、ガーデナー船長がその甲板から「16キロ先で白鯨に銛を打ち込み、12になる息子がボートごと持って行かれた。もう3日3晩探してるが見つからない。一緒に探してくれ!」と叫んでいました。
スターバックは拒否すれば町で非難されると止めますが、エイハブ船長は「息子さんを殺した白鯨を探し出す!」と冷たく突き放し、先を急ぎます。
エイハブ船長は、数本の銛を取り出し、鍛冶屋に「水を使わず我々の血で冷やし、深く刺さって抜けないような新しい武器を作れ」と命じます。そして船員一人一人の瞳の奥を覗き込むようにして「力を貸せ、心よ、魂よ、肉体よ!モービー・ディックに死を!」と言い酒を呷ります。皆は凍りついたように彼の演説に聞き入っていましたが、間もなく空は暗く淀み、激しい嵐になります。

船は激しい雷雨に翻弄され、帆は破れマストも限界かと思われましたが、エイハブ船長は嵐にかまわず突き進むよう命じます。
太いマストがしなり、ほとんどの帆が破れて飛ばされる中、船員たちは命懸けで傾いだマストによじ登り、帆を貼り替えようとします。
スターバックは必死で止めますが、ついに船長の命に背いて、マストを繋ぎ止めるロープに斧を振り下ろします。エイハブ船長はその彼に銛を突き付け、止めないと刺し殺す!と迫ります。
その時、ふいに甲板に薄い光が射し、傾いだマストが緑の淡い光に包まれます。
船員たちは「セントエルモの火だ!天罰だ!」と怯えますが、エイハブ船長は「この火こそ、白鯨への道案内だ!」と叫んで銛を掲げます。緑の光は銛にも燃え移り、皆息を呑みますが、船長は「怖れるなら、わしがこうして消してやる!」と叫んで握り消し、仕事にかかれ!と号令をかけます。
スターバックは1人憤っていましたが、船員たちは「船長は堂々と嵐に立ち向かい屈服させた」と感動し、誰も相手にしません。彼は、船室で銃を取り懐に隠します。

翌日、空は澄み渡り、波穏やかな晴天となります。
デッキにいたエイハブ船長は、40年前、初めてスターバックと共に鯨を仕留め、以来鯨を追い続けた日々を振り返り、「人間らしい眼を見せてくれ」と言い、傍らにいるスターバックの眼を見つめます。スターバックは濁りの無い眼で彼を見据え「最後のお願いです。故郷に帰りましょう」と頼みます。
しかし彼の答えは「何か名状し難いものがわしに命令するのだ。人間的な愛情や願望に逆らい、しゃにむに突き進めとな。夢想だにしない事をさせるために」…それが何かはわからない、神かもしれない、自分はテコという運命に回される揚錨機のようだと。そしてこんなにも空は穏やかで、海はどこまでも計り知れないといい、空を見上げます。
スターバックは、一度は彼に銃を向けますが、撃てませんでした。
エイハブは、銃を見ても、スターバックの震える指先を見ても動揺することなく、彼の肩を抱き「お前はわしからは離れられん。こうなる事は海が生まれる前から決まっていた事だ」と言います。

【結】- 白鯨(1956年)のあらすじ4

しかし次の瞬間、エイハブ船長は何かに気づき、五感を研ぎ澄まします。船員たちも「島の、陸地の臭いだ」とざわめき、手を止めます。
イシュメールは、出港直前に”予言者”イライジャに言われた「海の上で、島もないのに島のにおいがする日、エイハブは死ぬ。だがすぐに甦り、皆を手招きし、1人を残して全員が死ぬ」という言葉を伝えますが、船長が遠くを見つめたその時、鯨発見の見張りの声が響きます。
それはまごうことなきあの白鯨、モービー・ディックでした。
船長はキビキビと号令し準備をさせますが、ピップには船長代理を命じて船に残します。
白鯨は、懸命に追いかける彼らの前を悠々と泳ぎ、その背にはエイハブ船長が打ち込んだ槍がロープが絡んだまま突き刺さっています。その巨体は雪のように白く輝き、神々しくもありました。
エイハブ船長はどこか嬉しげでしたが、スタッブもフラスクもただひたすら職務を遂行せんと必死で、スターバックは何かを畏れているようでした。

白鯨は間もなく潜行し見えなくなりますが、以前と同じく、鳥の群れは彼らから離れません。
エイハブと銛打ちたちは各々に銛を構え、その出現を静かに待ちます。海は異様な空気に満ちていますが、間もなく鳥が騒ぎ始め、地響きのような音が響きます。
「来るぞ!」…エイハブがそう叫んだ瞬間、白鯨は彼らの左前方にその巨大な頭を現し、彼らの目の前を横切ろうとします。「今だ!」エイハブの号令で、幾本もの銛が白鯨の体に突き刺さります。
全てのボートはその巨大な体躯に引きずられ振り回されますが、ジャンプした瞬間、一艘のボートが転覆します。海面はその水飛沫で白く曇り視界が奪われますが、それでもエイハブはひるむな!と怒鳴り、2番銛を打ち込もうとします。その時、白鯨が正面に現れ船長のボートに噛みつき破壊します。

乗組員は皆、白鯨の巨体が立てる大波にのまれますが、エイハブだけはその巨体に絡みついたロープにしがみつき、格闘しているかのように、背びれによじ登り、手にしたヤリで何度もその体を突き刺していました。
「わしのヤリを受けてみろ!怨みを込めて、わしの最後の息を吹きかけてやる!ちきしょう!地獄に落ちろ!」…それが船員たちの見た、闘う船長の最後の姿でした。
白鯨はそのまま海中に没し、スタッブたちは生き残った船員たちを残ったボートに引き上げ、「もうたくさんだ…帰ろう」そう呟いた時、白鯨が再び彼らの前に姿を現します。
その背には、エイハブ船長が、まるでロープで磔にされたように括られ、鯨の体が上下するたび、唯一戒めを逃れたその右手が、あたかも彼らを手招きしているかのように揺れていました。
スタッブ始め船員たちはその姿に慄然としますが、スターバックが突然「追え!」と怒鳴ります。

スタッブはゾッとして振り向き「あの悪魔を?」と言いますが、スターバックはひるまず、「バカでかいがただの鯨だ!鯨捕りが鯨に背を向けるのか?!モービー・ディックを殺せ!」と叫びます。
それはまるで、エイハブ船長の魂が乗り移ったかのようで、乗組員たちは皆、スイッチが入ったかのように白鯨に槍を突き立てますが、白鯨はまさしく悪魔のごとく暴れ回り、ボートを破壊し、海に落ちた乗組員たちに襲いかかり、海上は阿鼻叫喚に包まれます。
白鯨は、ピークォッド号の周囲を旋回した後、船の横腹に猛スピードで突っ込みます。ピップはへし折れたマストに押し潰されて死亡、船体は間もなく白鯨が起こした巨大な渦にのみ込まれますが、白鯨は再度体当たりをして止めを刺し、船体は完全に海に没します。

唯一の生存者はイシュメールでした。
彼は、クィークェグが船大工に作らせた首長の羽根が彫ってある棺桶にすがって1昼夜漂流し、レーチェル号に救助され、息子を亡くしたガーデナー船長の養子となります。
-劇は終わり、全てが去った…海は、ピークォッド号も乗組員もモービー・ディックも呑み込んだ…ただ1人生き残った俺が、この話を伝えよう-

みんなの感想

ライターの感想

1956年製作とはとても思えない特撮技術とカメラワークの粋を凝らして完成された、神がかった白鯨モービー・ディックが荒ぶる様に、ただただ圧倒される大作です。
2011年のリメイク版「白鯨 MOBY DICK 冒険者たち」では、CGの白鯨がド派手に暴れまわるシーンもありますが、改めて本作を見ると、やっぱり白鯨はこうでなくちゃ!とひどく納得させられる。白く圧倒的に巨大な、そして”常に白い鳥の群れを従え””島の臭いがする”、神の力が宿ったかのような、崇高ななにか。
エイハブ船長役がグレゴリー・ペックだった事にも賛否があったそうですが、大変申し訳ない事に始まりが「ローマの休日」ではなく「オーメン」だったので、むしろ彼じゃなくちゃと今でも感じてしまいます。当時はよくTVの洋画劇場でかかり見るたびワクワクした事を思い出します。
年を経て初めて気づいたのは、エイハブ船長の圧倒的なカリスマ性とリーダーシップ、スターバックのまともさでした。
スターバックこそが、船で唯一正気の知識人なんですが、最後の最後で「殺せー!」となるシーンが一番恐ろしかった。単に恐怖心からなのか、そもそも彼の中にその獰猛さが宿っていたのか、エイハブ船長への長年の複雑な思いが駆り立てたのかは定かではありませんが。
そういやあれ良かったよねという方は、ぜひ再見をお奨めします。
  • ヘムロックさんの感想

    原作にほぼ忠実で面白かったです。白黒でも迫力がありました。特にペックのエイハブに凄味が溢れていました。ペックは本当に「役者」ですね。どんなジャンルの役柄も見事にこなします。
    因みに、原作で「葉巻を丁寧に準備する登場人物」は、二等航海士のスタッブだったでしょうか?御存知でしたら御教示ください。

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