「紀子の食卓」のネタバレあらすじと結末、みんなの感想(1件)

「女子高生集団自殺シーン」で話題になった、2002年製作の「自殺サークル」の続編にあたる作品で、前作と同じく園子温監督が監督・脚本を務め、自ら書き下ろした小説「自殺サークル 完全版」が原作になっています。続編ではありますが、前作の登場人物は回想の形でしか出演せず、別の家族を主役に据えた物語になっています。

あらすじ動画

紀子の食卓の主な出演者

島原紀子(吹石一恵)、島原ユカ(吉高由里子)、クミコ(つぐみ)、島原徹三(光石研)、島原妙子(宮田早苗)、池田(並樹史郎)、みかん(三津谷葉子)、喫茶店の男(古谷兎丸)

紀子の食卓のネタバレあらすじ

【起】– 紀子の食卓のあらすじ1

紀子の食卓のシーン1

画像引用元:YouTube / 紀子の食卓トレーラー映像

海辺の田舎町に住む高校生・島原紀子は、眼鏡をしたいかにも内気そうな外見の女子高生で、紀子自身もそんな自分が嫌であり、平凡で退屈な毎日から抜け出したい、「ここではないどこか」へ行きたいと、いつも考えていました。

そんな紀子が楽しみにしていたのが、ネットで見つけた「廃墟ドットコム」という掲示板サイトでした。そこでは、「上野駅54」というハンドルネームのリーダーのもと、紀子と同世代の女子が集まり、明らかに紀子とは違う世界の会話がなされていました。紀子は「ミツコ」というハンドルネームを使い、自分がミツコという別人になったつもりで、サイトの女子たちとの会話を楽しんでいました。

東京に住んでいるという「上野駅54」への憧れから、紀子は高校を出たら東京の大学に進学したいと両親に訴えます。しかし紀子の上京を、父親の徹三は頑なに反対します。紀子の従妹にあたる女子2人が東京に出て、すぐに子供を作ってしまったこともあり、田舎に住む若い女子に、都会は危険だと考えていたのです。

自分の希望で現在住んでいる「平和な田舎町」に引っ越しを決め、そこで地元の小さな日々の話題を取り上げる新聞記者の仕事に満足している父親の意思が変わることはないと判断した紀子は、年季が入った家のブレーカーが落ちて停電になったある夜、家出することを決意します。

急いで仕度を整えた紀子は、そのまま電車に乗り、東京駅を目指します。初めて来た都会は何もかもが新鮮に感じ、ネットカフェに入った紀子は、上野駅54と待ち合わせしようと決めます。上野駅54は紀子を歓迎し、「上野駅の54で待ってるわ」と返事を送って来ます。

紀子は喜んで上野駅に向かったものの、そこで初めて「54」が何を意味しているのか知らないことに気付き、駅員などに聞いてみますが数字の意味はわかりません。途方に暮れた紀子が、とりあえず荷物を預けようとコインロッカーに向かった時、ロッカーに書かれた数字を見て「これだ!」とひらめきます。

紀子がロッカーの数字をたどっていくと、思った通り「54番」のロッカーの前に、1人の若い女性が立っていました。「ミツコ」ですと自己紹介する紀子を、上野駅54は「私はクミコです、始めまして」と挨拶をしてきます。するとそこに、「クミコの父です」「クミコの母です」と、次々に「クミコの家族」が現れ、同じように紀子に挨拶をしてきます。

戸惑う紀子を連れて、ミツコは「父親」の運転するバンに、家族たちと一緒に紀子を乗せて、駅を出発します。一行が向かった先は、一家の祖母の家でした。1人暮らしをしているらしい祖母は一行の到着に大喜びし、クミコたちも祖母に会えたことに感激の言葉を語ります。

祖母の家に上がったクミコたちの言動は、「典型的な、幸せな家族のヒトコマ」に思え、そんな中にまじって祖母の歓迎を受けている紀子も、クミコの家族の一員になったような気がしていました。そして祖母の家を後にした一行は、「別の祖母」の家へと向かいます。クミコたちはこうして1人暮らしの人々の家を巡り、希望通りの家族を演じる「レンタル家族」のサービスをしていたのです。

一方、紀子の妹で、紀子と同じ高校に通っていたユカは、紀子とは違いハキハキした性格の女子高生でしたが、それは表向きそうしているだけで、その方が田舎町の高校生活を何事もなく送れると考えていたからでした。内心紀子と同じようなモヤモヤを抱えていたユカは、突然家出した姉の行方を探し始めます。

ユカは姉が利用していたと思われるサイト「廃墟ドットコム」を見つけ、ハンドルネームの「ミツコ」が紀子だと察します。自らも「ヨーコ」という名前で掲示板に参加し始めたユカは、不思議なことに気付きます。サイトを立ち上げると、最初の画面に赤い点と白い点が表示されるのです。

そして紀子が家出をしてから半年後、ユカはサイトの「点の数」が一気に増えていることに気付きます。それは、前の晩に起きた新宿駅での女子高生集団自殺とリンクしているのではないかと、ユカは考え始めます。死んだ女子高生の数と、増えた「赤い点」の数が一致していたのです。

そしてユカは、姉の行方を探す過程を、「父親が探している」ものと仮定した物語を創作し、それをノートに書き綴っていました。ノートには「紀子が家出をした翌日、私は会社を辞め、娘の捜索に集中した」と父親が言ったかのように書いていましたが、実際に父親が会社を辞めたのは、家出の半年後でした。

ユカもまた、姉の上京に反対しながら、「形だけの幸せな家族、幸せな生活」を維持することに懸命な父親に愛想をつかしており、その創作ノートは「こうあって欲しい」というユカの願望を現したものでもありました。そしてユカは姉と自分の「行方」のヒントをノートに書き残し、姉を追って家出をします。

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