映画:アイネクライネナハトムジーク

「アイネクライネナハトムジーク」のネタバレあらすじと結末

アイネクライネナハトムジークの紹介:伊坂幸太郎の小説「アイネクライネナハトムジーク」を原作とした実写映画作品。同作は仙台市在住の伊坂幸太郎が仙台を舞台に執筆した作品であり、今作も撮影はオール仙台ロケで行われている。監督は「たまの映画」「愛がなんだ」などでしられる今泉力哉が務めた。また、原作小説はシンガーソングライターの斉藤和義が伊坂に作詞を依頼し、作詞をしたことがなかった伊坂が短編「ナハトムジーク」を代わりに執筆したことが発端となっていることから、今作の音楽は斉藤和義が担当している。

あらすじ動画

アイネクライネナハトムジークの主な出演者

佐藤(三浦春馬)、本間紗季(多部未華子)、織田一真(矢本悠馬)、織田由美(森絵梨佳)、織田美緒(恒松祐里)、久留米和人(萩原利久)、ウィンストン小野(成田瑛基)、板橋香澄(MEGUMI)、美奈子(貫地谷しほり)、藤間(原田泰造)、亜美子(八木優希)

アイネクライネナハトムジークのネタバレあらすじ

簡単なあらすじ

【起】- アイネクライネナハトムジークのあらすじ1

アイネクライネナハトムジークのシーン1  肌寒い仙台の夜。仙台駅の前でスーツを着た男がバインダーを持ち、歩く人々に声を掛けますが、誰も見向きもしません。少し離れたところでは、大勢の人々が商業施設の外に設置された大型ヴィジョンに釘付けになっています。おー、と声を出したり、あぁ、と落胆したり。そんな中で街頭アンケートの為に立っている男は、空しくなってきました。そして、向かいで立ってギターの弾き語りをする男に少しずつ引き込まれていき、誰も聴いていないその男の歌に聴き入り始めました。

 美容室。常連の香澄の髪は美容師の美奈子にドライヤーをかけてもらいながら、何かを言いました。ドライヤーを切って美奈子が聞き返すと、香澄は「格闘技って好き?」と聞きました。美奈子は「格闘技ってあの格闘技ですか?なんか野蛮じゃないですか。あまり好きじゃないかもしれないです」と答えて、再びドライヤーをかけ始めました。香澄は「そっかぁ」と笑ってしばらくした後、もう一度何かを聞きました。また美奈子がドライヤーを切って聞き返すと、香澄は「彼氏とかいないの?」と言いました。美奈子は首を横に振りました。それを鏡越しに確認した香澄は「私の弟がいるんだけどさ、どうかな?」と提案しました。突然の提案に美奈子が困惑していると、香澄は弟の良いところを話し始めました。「弟さ、優しいんだよ。街で二人で歩いているときに私が不良に絡まれてもすぐにぺこぺこ謝るし。野蛮なことが嫌いなのかなぁ」と言う香澄の言葉を美奈子は「そうなんですかぁ」と言い、再びドライヤーのスイッチを入れました。

 休日、佐藤は大学時代の同級生の織田一真と由美の家を訪れました。一真は適当な性格で、佐藤とは大学に入ったばかりの頃から友人でした。由美は大学でもマドンナ的な存在で多くの男子から憧れの的となっていました。佐藤も始めは由美に興味を持っていましたが、すぐに友人関係になり、恋愛対象からは外れていました。そして、大学在学中に一真と由美は付き合い始め、すぐに由美は妊娠しました。二人とも大学を辞め、一真は居酒屋で働きはじめました。それからもう5年。その時生まれた長女の美緒はもう5歳になり、既に二人目も生まれていました。小さなマンションの一室にすむ織田一家。佐藤が玄関を開けると美緒が立っており、「おぉ、佐藤じゃん」と一真そっくりの口調で言いました。佐藤も「おぉ、美緒じゃん」と返して笑いました。
 おもちゃで遊ぶ美緒を横目に、佐藤は一真と由美と3人で食事をしていました。一真は相変わらずの適当な口調で「彼女とかいねえのかよ」と訊ねます。佐藤は「いねぇよ」と笑いますが、一真は「なんでだよ」と質問を続けました。佐藤は少し考えて「出会いがないからなぁ」と言いました。それを聞いた一真は箸を置き、「あのな、じゃあ聞くけどよ。出会いってどんなのだよ」と聞きました。佐藤は「出会いは出会いだよ」と曖昧な答えを返します。一真は呆れたように「まさかお前、落ちてたハンカチを届けたのがきっかけ、みたいなドラマチックな出会いを期待してるんじゃないだろうな」と言います。会話を聞きながらしばらく黙っていた由美もようやくここで口を開き「いいじゃない別に。素敵で」と言いました。すると佐藤もそれに同調して「そうだよ。自由だろ」と言いました。一真は二人の意見を聞き「そういうドラマチックな出会いで結婚する奴は、ドラマチックな出会いそのものに引かれてるんだよ。例えばそこで全く別の奴と出会ってたら、そいつと結婚するのか?そんな出会いをした奴は後から後悔するんだよ」と言ったあと、箸をまた握って食べ始めました。佐藤は一真の言葉を聞き頭の中が混乱し始めてしまい、深く考えることはやめました。

【承】- アイネクライネナハトムジークのあらすじ2

アイネクライネナハトムジークのシーン2  翌朝、会社へ向かう途中の道でふと一真との会話が頭を過ぎり、なんとなくハンカチや財布が落ちていないか見ながら歩いていました。すると後ろから「落とし物?」と声をかけられて慌てて振り向くと、上司の藤間でした。佐藤は挨拶をして、「なんでもないです」と言って一緒に会社へ向かいました。

 夜。美奈子がテレビを観ているとき、携帯電話が鳴りました。出ると、知らない男の声でした。「姉が美奈子さんが僕に用があるって言っていたんですけど」と言います。美奈子が「姉?」と聞くと、男は「板橋香澄の弟です」と言いました。香澄は本当に弟に美奈子の電話番号を教えていたのでした。美奈子は困惑して「特に用はありませんけど...香澄さん何か勘違いをされているのではないでしょうか」と言いました。香澄の弟は「あぁ、そうですか。なんかすみません」と詫びました。美奈子が電話を切ろうとすると、ソファーの下からゴキブリが現れました。思わず悲鳴を上げてしまう美奈子。香澄の弟は電話越しの突然の悲鳴に驚き「大丈夫ですか?」と声をかけます。美奈子はゴキブリが出たことを伝えると、香澄の弟は笑いました。そして美奈子も恥ずかしくなり、一緒になって笑いました。

 職場で藤間と二人で残業をしていた佐藤は、アイスコーヒーを片手にデータのアップロードが終わるのを待っていました。二人が務める会社はマーケットリサーチの会社で、そのリサーチ結果をアップロードしている所でした。立ちながら佐藤は、デスクに座っている藤間に話しかけました。昨日大学時代の友人夫婦の家に行ったこと、別の友人が結婚すること、その披露宴の二次会の幹事を任されたこと、ゲームはビンゴで本当にいいのか悩んでいること。話続けますが、藤間からの反応が無いことに気づきます。佐藤が藤間の方を見ると、藤間はデスクの上を見つめたまま固まっていました。様子のおかしい藤間に佐藤が話しかけると、藤間は突然大きな声を上げ、デスクを蹴飛ばし、床に転がり落ちました。慌てて佐藤は藤間に駆け寄ろうとしますが、躓いてコーヒーをコンセントの上にこぼしてしまいました。すると、事務所中のコンピュータが一気にダウンしてしまいました。藤間は床に座り込んだまま声を上げて泣いていました。
 翌日、会社ではシステムの復旧作業が行われていました。部長によると、藤間の妻が娘を連れて東京の実家に帰ってしまったのだといいます。藤間は有給で会社には来ていませんでした。そして佐藤は、戻らなかったデータを補うための街頭アンケートを命じられてしまいました。

 美奈子は香澄と喫茶店にいました。あの日以来、美奈子は毎晩香澄の弟の学と電話を楽しんでいました。まだ直接会ったことはありませんでしたが、少しずつ美奈子は学のことがきになり始めていました。しかし前日、学から突然「仕事が忙しくなるから電話できなくなる」と告げられていました。そのことを香澄に話すと、香澄は他の席で男性が読んでいる新聞を指さしました。そこには「今夜 日本人初のヘビー級チャンピオン誕生なるか ウィンストン小野」との見出しがありました。美奈子が「なんですか」と聞くと、「今晩ウィンストン小野が勝ったら、あなた学からプロポーズされるかもよ」と言いました。美奈子は動揺し、「そんなのは嫌です。他力本願じゃないですか」と言って、お金を置いて出て行ってしまいました。香澄は呆然としたあと、「他力本願?」と呟きました。

 なかなか街頭アンケートが上手くいかず、佐藤は気が付くと向かいで立ってギターの弾き語りをしている男の歌に聴き入っていました。大型ヴィジョンにはウィンストン小野の試合が映し出され、人々が夢中になっています。どれくらい経ったか、佐藤がふと横を見ると、スーツ姿の女性が立って男の歌を聴いていました。綺麗な横顔に佐藤が見惚れていると、その女性も気が付き佐藤の方を見ました。慌てて佐藤が目を逸らすと、女性は立ち去ろうとしました。ふと冷静になった佐藤は女性を追いかけて声をかけました。「あの、アンケートにご協力していただけませんか?」と言われた女性は「あぁ、良いですよ」と笑顔になりました。佐藤はそれを聞き「え、良いんですか?」と聞きました。女性は「ダメですか?」と聞き返しました。佐藤は「お願いします」と言ってバインダーとボールペンを渡しました。職業欄に「フリーター」と書くその女性の左手には、小さな文字で「シャンプー」と書いてありました。佐藤は思わず「シャンプー」と口に出してしまいました。女性はそれを聞くと、照れ笑いしながら「今日安いんですよ。忘れないように」と言いました。佐藤はあぁ、と言って笑ったあと、「就活中ですか?」と聞きました。女性ははい、と言い「立ち仕事って大変ですね」と言いました。それを聞いた佐藤はいえいえ、と言い「座りっぱなしも大変でしょうけどね」と返しました。

 ボクシングの試合も白熱し、ウィンストンが優勢になり始めました。ブラウン管に映るその中継を部屋で見ていた美奈子。あんなことを言って喫茶店を飛び出しはしたものの、やはり気になって中継を観ていたのでした。少しずつウィンストンのパンチが多く当たるようになり、美奈子はいつの間にか「いけ」「そこ」と声を出して応援していました。次の瞬間、ウィンストン小野の見事なストレートが相手選手の顎を捉えました。相手は倒れたまま起き上がることができず、ゴングが鳴りました、その瞬間、ウィンストン小野は日本人初のヘビー級チャンピオンとなりました。

 サラリーマンにアンケートを書いてもらっていた佐藤は、町中で歓声が上がったのを聴き、「あ、勝ったんですね」と言いました。男性も「みたいですねぇ」と言いました。

 ウィンストンが喜ぶ姿をテレビ越しに見ていた美奈子は呆然としていました。香澄が言っていたことが本当ならば... その時、携帯が鳴りました。出ると、相手は香澄でした。「観てた?」と聞く香澄に美奈子は正直に「はい」と言いました。香澄は「電話、多分夜中になるんじゃないかな。チャンピオンは取材とかで忙しいだろうし」と言いました。え、と聞き返す美奈子に香澄は真相を明かしました。「私、旧姓小野っていうんだよね」と言う香澄に美奈子は「香澄さん結婚してたんですか」と驚きます。「行ってなかったっけ、ととぼける香澄はさらに続けて「弟ボクサーでさ。リング名はウィンストン小野」と言いました。美奈子は驚きのあまり声すら出なくなっていました。

 それからしばらく経った頃。美奈子は学と友人の家に向かっていました。あの後二人は交際することになったのでした。街を歩けば、学の元へちびっこたちが「チャンピオンだ!」と言って駆け寄ってきます。美奈子はその様子を笑顔で見ていました。
 美奈子は学と共に大学時代の友人夫婦の家を訪れました。織田一真と由美に挨拶する学。一真は相変わらずの馴れ馴れしさで学に「よぉ、チャンピオン」と挨拶しました。由美は「まさか美奈子ちゃんの彼氏がチャンピオンだとはねぇ」笑いました。一真は美奈子と学に「もうひとり来るから。サインしてやってくれ」と言いました。学は「良いですけど、ただ『ウィンストン小野』って書くだけですよ」と言い笑いました。

 公演のトイレから出てきた佐藤が自転車のかごにしっかり色紙が入っていることを確認し、跨ろうとすると、トイレの裏からなにか声が聞こえてきました。なんとなくトイレの裏を覗くと、制服姿の男子が数名固まり、一人の男子をいじめていました。佐藤はそっと近寄り、「何してんだ?」と答えました。すると男子たちは慌てて立ち上がり「遊んでいるだけです」と答えました。真ん中にいる男子は座り込んだままです。佐藤はその男子に「本当?」と聞きますが、何も答えません。周りの男子たちは「行こうぜ」と言って立ち去ってしまいました。佐藤は残された男子が鼻血を流していることに気づきました。「鼻血出てるぞ」と声をかけますが、その男子は佐藤の方を見向きもせずに立ち去ろうとします。佐藤は後ろから肩を叩き、振り向いたその男子にハンカチを差し出しました。その男子は自分の鼻を触り、ようやく鼻血が出ていることに気づいたようでした。その時、佐藤の電話が鳴りました。出ると相手は一真でした。「まだ来ねえのかよ」という一真に佐藤は事情を説明しました。

 公演に一真と学が到着しました。佐藤はヘビー級チャンピオンが目の前にいることに感激し、握手してもらいました。するとそこへ女子高生がやって来て、男子の元へ駆け寄りました。その男子の姉のようでした。その男子は耳に障害があり、補聴器をつけているのですがそれでもあまり聞こえないようでした。姉は手話で「大丈夫?」と確認しました。学はその男子にいじめられるのなら、ボクシングを始めたらどうだいと提案しました。実はその男子も学のことを知っているようで、感激していました。そして学は「次の防衛戦は、絶対に勝ってベルトを守る。約束するよ」と宣言しました。一真は足元に落ちていた太い木の枝を拾い、折ろうとしますが中々折れません。次にその少年に渡しますが、彼も折れません。最後に受け取った学はそれを簡単に二つに折ってしまいました。
 後日、その男子は自分の部屋でウィンストン小野のポスターを前にシャドーボクシングを始めました。

 佐藤は居酒屋で藤間に学から貰ったサインを手渡しました。藤間は喜び「ありがとう。娘も喜ぶよ」と言いました。妻と娘は帰ってきていませんでしたが、娘とは電話をするようになり、今度行われるウィンストン小野の初防衛戦のチケットを自分と娘の分手に入れたと嬉しそうに話します。佐藤はその様子を見て安心していました。そして佐藤は藤間に「奥さんとの出会いってどうだったんですか?」と聞きました。藤間は笑いながら「聞いたら絶対笑うよ」と言いました。佐藤は「大丈夫です。笑いませんよ」と言うと、藤間は妻との出会いを教えてくれました。街で藤間が財布を拾ってあげたのが最初だと言います。佐藤は一真が話していたことを思い出し、「藤間さんは、その時財布を落としたのが奥さんで良かったと思いますか?」と聞きました。藤間は少し考えたあと、「わからないなぁ」といって日本酒を飲みました。

 翌日、佐藤は結婚式の二次会のビンゴ大会の景品の買い出しに出ていました。ショッピングモールの様々な店を回り、最後に入ったオシャレな店でシャンプーとリンスのセットを見つけました。佐藤はそれを見てあの日アンケートに答えてくれた女性のことを思い出していました。果たしてあの後しっかりシャンプーを買うことはできたのだろうか。そんなことを考えながら、そのセットをレジに持っていきました。

 後日、佐藤は一真と由美の家を訪れていました。幼い子供の面倒を見なければいけないため由美は留守番ですが、一真はトランクにビンゴの景品が詰まった佐藤の車に乗り、式場へ出かけました。その途中、道路工事をしている場所があり、一車線通行の場所がありました。女性の工事員に止められ、先頭で停車する佐藤の車。すると佐藤はその工事員を見て気が付きました。彼女こそ、あの日アンケートに答えてくれた、左手に「シャンプー」と書いていた女性でした。女性は佐藤には気が付かず、そのまま佐藤の車を行かせようとしました。佐藤もそれに従い、一度発進しましたが、すぐに路肩に停めて車を降りました。一真は驚き「は!?」と叫んでいました。


 いよいよウィンストン小野の初防衛戦。会場には多くの観客が詰めかけていました。その中には藤間と娘もいました。娘は藤間から貰った小野のサイン色紙を握っています。試合開始のゴングが鳴り響き、観客が歓声を上げます。しかし、小野は終始劣勢。最終的に見事なパンチを食らってしまい、KO負けしてしまいました。会場内がため息でいっぱいになりました。藤間も無念の表情を浮かべています。

 トランクからシャンプーとリンスのセットを取り出し、工事現場へ走る佐藤。後ろから女性に声をかけました。女性は振り向き、「はい?」と不思議そうな表情をしています。佐藤は自分のことを覚えていないことに気づき、息を切らしながら「立ち仕事は大変ですね」と言いました。それを聞いて女性もようやく思い出したようで、一転笑顔を浮かべ「座りっぱなしも大変でしょうね」と言いました。佐藤は安堵し、シャンプーとリンスのセットを手渡し、「これ良かったら」と言いました。女性も笑顔のまま「ありがとうございます」と返しました。

 後日、仙台に戻った学の元には多くの手紙が届きました。励ましの手紙や批判の手紙。その中に一枚、「弟ががっかりしています。期待させないでください」とだけ書かれたはがきがありました。そのはがきを見て落ち込む学を、遠くから美奈子が心配そうな表情で見つめていました。

【転】- アイネクライネナハトムジークのあらすじ3

アイネクライネナハトムジークのシーン3  10年後。仙台のとある高校の音楽室。合唱の授業が行われていました。合唱を男の音楽教師が中断させます。一人の男子生徒を指さし、「林!お前はいつもここでメロディが外れるな。お前もう本番でここは口パクにしたらどうだ」と言いました。すると、その後ろにいた男子生徒が前に出てきて、「あきらめろっていうことですか」と質問しました。教師は「だって仕方ないだろう。何回やってもできないんだから」と言います。それに対しその男子生徒は「先生、いつもテストのときに『最後まであきらめるな』っていうじゃないですか」と言うと、教師は「それは...」と言葉に詰まってしまいました。その様子を見ていた女子生徒の亜美子が隣に立っている女子に「久留米くん、やるね」と言いました。その女子も「すごいねぇ」と言いました。

 その夜、久留米は両親とファミレスを訪れていました。父親はブリの照り焼き定食を注文したはずでしたが、届いたのはとんかつ定食。それでも父親は「いや、大丈夫ですよ」と言ってそれを受け取りました。久留米は父親に「良いのかよ」と聞きますが、父親は「まあな」とだけ言います。そして会社の上司からかかってきた電話に出るために店の外に出ました。窓越しにぺこぺこと頭を下げながら電話をする父親を見て久留米は母親に「俺は絶対父さんみたいにはならない」と言います。母親はそれを「あっそ」と聞き流しました。久留米は続けて「父さんみたいに社会の歯車にはならない」と言いますが、母親は「あのね。世の中の高校生はみんなそんなこと考えてるの。母さんだってそうだったよ」と言いビールを喉に流し込みました。久留米は何も言えなくなってしまいました。

 その日の放課後、久留米が帰ろうとしていると、隣の席の女子に呼び止められました。「今日暇?ちょっと付き合ってほしいんだけど」と言われました。久留米は特に何も予定が無かったため、「いいよ」と言いました。二人で自転車を漕いでいると、久留米はその女子から「久留米くんこの前凄かったね。音楽の時。先生に意見するなんて。亜美子も凄いって言ってたよ」と言われ、久留米は「そうかなぁ」と返しました。到着したのは駅の駐輪場。目的を聞いていなかった久留米は「織田さん。何しに来たの?」と訊ねました。織田は「昨日ここに留めたんだけど、戻ってきたら青い紙が貼られてたんだよ」と言います。久留米は「それは、あれでしょ。券売機でシール買わなかったからでしょ」と言いますが、織田は「いや、確かに貼ったんだよ」と言います。「絶対に誰かが剥がして自分の自転車に貼ったんだよ」と言います。その人物を見つけるのを手伝ってほしいというのです。
 しばらく二人で見回りましたが、ふと久留米はあることが気になりました。「織田さん。なんで僕だったの?」と訊ねると、織田は「クラスのみんなから聞いたんだけど、久留米くんのお父さんて強面のアッチ系の人なんでしょ?だから何かあったら久留米くんならなんとかなるかなぁと思って」と言いました。久留米は自分の父親を思い浮かべますが、どう考えても携帯で電話しながらぺこぺこ頭を下げるあの父親がそんな人物ではないことは確かでした。久留米は言い出せず、「まぁ、そうなのかなぁ...」と曖昧な答えを返しました。「織田さんのお父さんは?」と聞くと、織田は「どうしようもない、居酒屋のおやじだよ。全く、どうしてあんな奴がお母さんと結婚できたのかわからない」と言いました。織田の母はどうも大学時代にマドンナ的な存在だったらしく、それが何故だらしない男と結婚できたのか不思議に思っているようでした。久留米は、織田はそのマドンナだった母親の血を継いでいるのかもしれないと思いました。するとその時、一人の男性が自転車を停め、辺りを見回した後、隣の自転車からシールを剥がして自分の自転車に貼り移しました。それを見た織田はすぐにその男の元へ走りだしました。慌てて追いかける久留米。織田は男の肩を叩き「ちょっとおじさん!」と声を掛けました。「なんだよ」とぶっきらぼうに応じる男。「シール剥がして自分の自転車に貼りましたよね?私昨日やられたんですよ」と厳しい口調で話す織田。しかし男は一切動じず「知らねぇよ。証拠はあるのかよ」と答えます。それを見ていた久留米はいてもたってもいられなくなり、男に向かい走っていきましたが、男に突き飛ばされてしまいました。そして男は織田の腕を掴み、「証拠がねぇなら適当なこと言うんじゃねぇ。大人をなめんなよ」と怒鳴りました。倒れていた久留米がもう一度立ち向かおうとすると、ふと視界に自転車が入ってきました。顔を上げると、そこには久留米の父親が立っていました。久留米が驚いて声をかけようとすると、父親は口元に手を当て「しゃべるな」というジェスチャーをしました。父親はゆっくり織田と男の元へ近づいていきます。男がそれに気づき、「何だよお前。関係ないだろ」と言うと、久留米の父親は「えぇ。私も関係があると思われたくないのですぐに立ち去りますが、あなたはこちらのお嬢様がどなたの娘様かご存じでいらっしゃるのかなぁと思いまして」と言いました。「な、なんだよ」と少し動揺した男に久留米の父親は「もしご存じでいらっしゃってそのような態度をとられているのでしたら素晴らしい度胸の持ち主だなぁと思いまして」と続けました。そして織田に「お嬢様。くれぐれもお父様には宜しくお願い致します」と言った後、自転車を押して立ち去っていきました。男はすっかり怖気づいてしまい、「わ、わかったよ。買えばいいんだろ」と言って券売機の方へ歩いていきました。久留米と織田は呆然としたまま目を合わせていました。久留米は救世主が自分の父親だとは言い出せず、黙ったままでした。

 一真が家で寝ていると、美緒が高校から帰ってきました。美緒は一真が既に帰ってきたことに驚きます。「居酒屋は?」と聞くと一真は「腹痛いって言って帰ってきた」と笑います。そして「どうも今日佐藤が勝負に出るらしいぞ」と言います。美緒が「勝負って何?」と聞くと一真は「決まってるだろ。プロポーズだろ。高級なレストランを予約したんだってよ」と笑います。美緒が「え、紗季さんと?」と聞くと一真は「決まってるだろ」と言ってソファーに再び寝転がりました。相変わらずのだらしなさに呆れた美緒は、今日の駐輪場での出来事を話そうかと思いますが、床に落ちていた一真のアダルトビデオを見つけると、それを拾い、一真の目の前でゴミ箱に投げ入れて自分の部屋に入りました。

 夜景の見えるレストラン。佐藤と紗季は食事をしていました。次々と運ばれてくるコース料理に舌鼓を打つ二人。デザートまで食べ終わり、食後のコーヒーを楽しみ、会計を済ませて店を出ました。そして二人は歩いて、一緒に住んでいるアパートまで帰ってきました。すると紗季が「そういえば牛乳切らしてたんだった。買ってくるね」と言って一人歩いていきました。佐藤は紗季を呼び止め、「本当はさっきの店で言おうと思ってたんだけど」と言い、ポケットから小さな箱を取り出しました。開けるとそこには指輪が入っていました。「結婚してください」とプロポーズしましたが、紗季は少しがっかりしたような表情を浮かべ、「なんでさっきお店で言わないの?」と質問しました。「なんか、違うかなぁと思って」と曖昧な答えを返しました。
 部屋に入りダイニングテーブルに向かい合わせで座る二人。何も言葉は発しません。ふと紗季が「なんか...私わからなくなってきた」と言うと、佐藤も「わからないのはこっちだよ」と呟きました。「何が?」と紗季が聞くと佐藤は「俺たちもう出会って10年だよ」と言いました。それを聞いた紗季はすぐさま「出会って10年経ったら結婚するの?」と聞き返しました。それからまた会話は途切れてしまいました。

 それから数日後、佐藤が会社から帰ると、机の上に「しばらく実家に帰ります」と書かれた紙が机の上に置いてありました。
 翌朝、佐藤は有給を使って会社を休んでいました。後輩が部長にその理由を聞くと、部長は「お前に街頭アンケートをさせたくないんだってさ」と言いました。

 放課後、久留米は美緒に「今日も一緒に帰れる?」と訊ねました。すると美緒はいつもと違う様子。「私、アルバイト始めたから」と断ると、久留米は「え、どこ?今度見にいくよ」と言いました。美緒は苦笑いを浮かべて「いや、いいよ」と言って教室を出て行ってしまいました。その光景を見た亜美子は「バイトを見に行くって何?」と言って笑っていました。

【結】- アイネクライネナハトムジークのあらすじ4

アイネクライネナハトムジークのシーン2  夜の生放送のスポーツ番組。一人の男がゲストとして出演していました。司会者がそのゲストに質問します。「今回、10年ぶりの王座挑戦ですが、いかがですか?」学がその質問をきいて答えます。「確かに、体は衰えたかもしれませんが、まだ自信はあります」学は、10年ぶりにヘビー級王座に挑戦することをきめたのでした。司会者が再び質問をします。「10年前、ベルトを手にした試合後のインタビューで『会いたい女性がいる』とおっしゃっていましたが、それが今の奥様ですか?」その質問を聞いた学は照れ笑いをします。スタジオでは妻の美奈子が息子を抱きながら収録の様子を見守っていました。

 織田家では、美緒が由美と言い争いをしていました。一真が東京で行われる学の王座挑戦の試合のチケットを3枚手に入れ、美緒と友達を誘ったのですが、美緒は乗り気になれなかったのです。「東京には行きたいけど、だらしない父さんと一緒に、ましてや友達にも会わせるのは嫌だ」と主張する美緒に対し、由美は「お父さんだって楽しみにしてるんだから」と言います。確かに一真はチケットを手に入れたときから嬉しそうにしていました。美緒は由美と弟が行けばいいと言いますが、弟は野球の練習があるため、二人とも行くことができないと主張します。言い争いの末、納得ができない美緒は家を飛び出してしまいました。

 静かな部屋で一人座る佐藤。食器を洗おうと台所へ向かうと、食器用洗剤が切れていることに気づきました。佐藤は財布だけを持って薬局へ向かいました。店内に入り、洗剤コーナーで自宅の洗剤の詰め替え用を探していると、横から「あ、佐藤じゃん」との声が。見ると、ラフな部屋着姿の美緒がしゃがみこんでいました。佐藤も「あ、美緒じゃん」と口に出しました。
 アイスクリーム屋で向かい合わせで座りアイスを食べる佐藤と美緒。佐藤は美緒から家を飛び出してきた経緯を聞き、「あいつも変わらねぇな」と笑いました。「なんであんな奴がお母さんと結婚できたのかわからない」という美緒の言葉を聞いた佐藤は、大学時代の一真と由美のことを話し始めました。由美は同学年の間では一番の美人として扱われ、マドンナでした。一方の一真は適当さで有名の男。佐藤も最初は由美に憧れていましたが、由美が一真に好意を寄せていると知り、応援する立場になったといいます。そして二人は交際し、大学在学中に由美は一真の子供を妊娠しました。それが発覚すると一真はすぐに大学を辞め、居酒屋で働き始めました。一真は佐藤に「生まれてくる子供のためにもしっかりしねえとな」と話していた事。佐藤はそれを美緒に話しました。美緒はそれを聞き、改めて自分が両親に愛されているということに気づきました。

 進学塾の受付に座っていた紗季。いつも通り高校生が次々に来塾します。「紗季さん、こんばんわ」と言ってきたのは、高校生の亜美子とその友人。亜美子は一枚の色紙を自慢げに紗季に見せます。「これ。10年くらい前にお父さんが会社の後輩を通じてもらったんだって」というその色紙。見ると「藤間さんへ ウィンストン小野」と書かれています。紗季が「すごいじゃん。今度また試合するんだよね」と言うと亜美子は「そう。うち両親離婚してるんだけど、お母さんが私と家を出た頃に、お父さん試合のチケットを取ってくれて。負けちゃったんだけどね。今度は勝ってほしいなぁ。観たいんだけどなー」と言い、授業に向かっていきました。

 美緒が家に帰ると、由美が夕食の準備をして待っていました。美緒は由美に「なんでお父さんと結婚したの?」と聞きました。由美は考えたあと、「わからないけど、放っとけないんだよね」と言って笑いました。一真の方を見ると、ソファの上でだらしなく眠っていました。その傍にはボクシングのチケットや東京へ行くための荷造りの痕跡がありました。そんな父を見て美緒は「なんか、分かる気がする」と言って笑いました。

 ある日の昼間。紗季は実家近くのバス停からバスに乗り、職場の塾へ向かっていました。すると、途中のバス停から亜美子が乗ってきました。紗季は「あれ、亜美子ちゃん今日塾だっけ?」と聞くと、亜美子は「いえ、東京行くんです」と言いました。それを聞き、紗季は思い出しました。「あぁ、ボクシングね。あれ今日だったか」亜美子は美緒とその父親と東京でウィンストン小野の王座挑戦の試合を観にいくことになったのでした。そして亜美子も思い出したように笑いながら話はじめます。「うちのクラスの男子。今日もしウィンストン小野が勝ったら、私の友達に告白するみたいなんです」と言いました。紗季は「へぇ、素敵ねぇ」と答えますが、亜美子は「そうですか?なんだか嫌じゃないですか?他力本願みたいで」と納得はしていない様子でした。

 階段が多くある神社。久留米はジャージ姿で階段を駆け上がり、そして駆け下りるという行動を繰り返していました。何度目かの往復で駆け上がると、久留米はそこから見える仙台の街並みに向かって「頼むぞー!ウィンストン!」と叫び、両拳を空へ突き出しました。

 夜。東京の会場は熱気に溢れていました。ウィンストン小野が10年ぶりにヘビー級王座に挑戦する。会場中が沸き上がっていました。学が入場し、大歓声が上がります。相手のチャンピオンも入場し、いよいよ試合開始のゴングが鳴りました。拍手をする観客。その中には美緒と一真、亜美子もいました。

 部屋でテレビもつけずに一人、ダイニングテーブルで牛乳を飲む佐藤。飲み干すと、なんだかいたたまれなくなり、コートを着て家を出ました。何も考えずに歩く佐藤。気が付くと、仙台駅の前に辿り着いていました。人々がヴィジョンに映るボクシングの試合に一喜一憂しています。そこから少し離れた場所では10年前と同じ男が10年前と同じ歌をギターで弾き語りしています。佐藤はゆっくりその男の前に歩いていきました。10年前。街頭アンケート中にこの歌を聴き、気が付くと横に就職活動中の紗季が立っていました。それから道路工事の現場で再会し、10年間交際。ようやくプロポーズしましたが、紗季は苦い顔をして実家に帰ってしまいました。思い出すだけで情けなくなった佐藤は、何気なくバス乗り場へ通じる階段を見ると、紗季が階段を下っていました。急いで追いかけますが、紗季はバスに乗り行ってしまいました。佐藤は次のバス停まで先回りしようと決め、走り出しました。

 学は対戦相手のチャンピオンに追い詰められていました。やはり10年前の動きとは程遠い動き。観客も徐々に落胆の雰囲気になっていました。何ラウンド目かが終わった頃には、学はもうフラフラの状態でした。セコンドやトレーナーが駆けつけました。学にはも彼らの声も届きません。腫れた目で観客席を眺めると、一人立ち上がっている青年がいました。その青年と目が合った学は、どこかで見た気がするその青年を思い出していました。するとその青年は太い木の枝を取り出し、真っ二つに折ってみせました。その青年を思い出した学は、グローブをはめた手を使い、手話で「大丈夫」と話しました。

 バス停にたどり着きますが、再び発車してしまうバス。佐藤はこんなことを何度も繰り返していました。次のバス停は公園の前。佐藤は公園の裏から入り、近道してようやくバスより先にバス停にたどり着きそうでしたが、公園のベンチの前で一人で泣いている男の子がいました。佐藤が男の子に気づいたと同時に紗季が乗るバスが到着しました。窓越しに目が合う佐藤と紗季。紗季は佐藤がいることに驚きます。佐藤は迷いますが、男の子に駆け寄り、「大丈夫か?」と声をかけました。その様子を見つめる紗季。そこへ男の子の母親がやってきて、佐藤は引き渡しました。礼を言いながら帰っていく親子を見送り、バス停の方を見るともうバスは行ってしまっていました。さすがに体力が限界に近づいた佐藤は歩きながら歩道に出て次のバス停の方向を見ると、そこには紗季が立っていました。ゆっくりと近づく佐藤と紗季。紗季は少し呆れたような声で「何してるんですか」と言います。佐藤は「なんか、わからなくなって」と答えます。そして佐藤は「あの日のことだけど、まだいいから。ゆっくり考えて」と言いました。そして後ろから聞こえてきた別のバスの音に気づき「あれでも大丈夫でしょ?」と言い、紗季をバス停まで引っ張っていきました。停車したバスに紗季を乗せました。紗季は困惑しながら「いや、でも...」と言いますが、佐藤は笑顔のまま「返事はまだまだ後でいいから。ゆっくり考えてよ。おやすみ」と言いました。その直後にバスの扉は閉まり、紗季を乗せたバスは発車しました。佐藤はそれを見送ると、ゆっくり帰路につきました。

 ボクシングの会場は騒然としていました。リングの中心で立つ学と、倒れているチャンピオン。しかし、観客は落胆の声。最終ラウンド終了間際に学が繰り出したストレートは見事に相手の顎を捉えダウンを奪いましたが、ヒットした瞬間が試合終了のゴングが鳴った僅かに後だと判定され、学は判定負けとなってしまったのでした。壮絶な試合とまさかの結末に呆然としながら会場を後にする観客たち。一真はぶつぶつと文句を言いながら歩き、美緒はそれを聞き「うるさいなぁ」と愚痴をこぼします。亜美子はその親子の会話を聞きながらニヤニヤしていると、ふと前を歩く青年のカバンから木の枝が落ちたことに気が付きました。亜美子はそれを拾いその青年に声を掛けますが、振り向きません。肩を叩くとようやくその青年が振り向きました。二人はしばらく言葉を交わさずそのまま見つめ合っていました。それに気づいた一真が「あれ?」と呟きました。

 翌日。誰もいない学校の音楽室で一人、久留米はスマートフォンでウィンストン小野の試合のハイライトを観ながら「おーい!俺はどうすりゃいいんだよウィンストン!」と叫んでいました。
 その夜。両親とファミレスで食事をすることになっていた久留米はファミレスに行きました。店員に「喫煙席で、あとから2人来ます」と言い席に座りました。すると、奥の方の席から「どうしてくれんだよ!」という男の怒鳴り声が聴こえてきました。そして「申し訳ありません」と謝る女性店員の声。周りの客がざわつく中、久留米はその店員の声に心当たりがあった久留米はゆっくりその声の方へ近づきました。「謝るだけか?それで済むのか?俺が頼んだのはとんかつ定食だよ!これはブリの照り焼きだろうが!」と怒鳴り続ける男にひたすら謝っている、ファミレスの制服姿の美緒。久留米はそっと近づき、その男に「あのぉ」と声を掛けました。「なんだよ。関係ないだろ」という男と、横を見て驚く美緒。久留米はそれに気づきながらも他人を装い、「えぇ。私も関係があると思われたくないのですぐに立ち去りますが、あなたはこちらのお嬢様がどなたの娘様かご存じでいらっしゃるのかなぁと思いまして」と言いました。「な、なんだよ」と少し動揺した男に久留米は「もしご存じでいらっしゃってそのような態度をとられているのでしたら素晴らしい度胸の持ち主だなぁと思いまして」と続けました。そして久留米はようやく美緒の方を向き、「お嬢様。くれぐれもお父様には宜しくお願い致します」と言い、立ち去ろうとしました。美緒は笑顔で会釈しました。男は「わ、分かったよ。これでいいよ」と言いブリの照り焼き定食に箸をつけました。久留米は一度は席に戻ろうとしましたが、向き直り「あと、お嬢様。一つだけ言わせてください。好きです」と言って、そのまま笑顔で店から出て行ってしまいました。美緒は客からの視線に気づき、急いで業務に戻りました。

 佐藤が仕事から帰ると、自分の部屋の灯りがついていることに気づきました。玄関を開け入ると、紗季が台所に立ち料理をしていました。笑顔で「おかえり」と言う紗季に佐藤は「ただいま」と言いました。そしてようやく佐藤も笑顔になり「おかえり」と言いました。紗季も笑いながら「ただいま」と返しました。

 吐く息が白くなる寒さの中、突発的な行動に少し後悔していた久留米は仙台駅前で立ちながらギターの弾き語りをする男の歌を聴いていました。だんだんとその男の歌に引き込まれ、夢中になっていきました。そこへ、アルバイトを終えた美緒がやってきて、久留米に気づきました。そっと近づき横に並んでみますが、久留米は歌に夢中で気が付きません。肩透かしを食らった美緒は少し拗ねながらわざとらしく久留米の前を通りました。ようやく気付いた久留米に美緒は笑みを浮かべました。久留米も笑顔になり、何も言葉を交わさないまま並んで男の歌を聴いていました。

 久しぶりに向かい合わせになり夕食を食べる佐藤と紗季。しかし佐藤は何を話したら良いのかわからず紗季が作った肉じゃがを食べていました。すると紗季が「良いですよ」と言いました。佐藤は何のことかわからず「なにが?」と返しました。紗季は、呆れたようにはぁ、とため息をつき、「結婚!」と言いました。ようやく気付いた佐藤は驚き「え、良いんですか?」と言いました。紗季はその反応に笑いながら「ダメですか?」と返しました。佐藤はようやく喜びの笑顔を浮かべ、箸を置きました。紗季もそれに気づき箸を置き、姿勢を正しました。佐藤は真っすぐ紗季の眼を見つめ「末永くよろしくお願い致します」と言いました。紗季も「こちらこそよろしくお願い致します」と返答しました。そして二人は揃って笑った後、再び箸を握りました。

みんなの感想

ライターの感想

自分の地元が仙台なので、「あ、これはあそこだ」という楽しみ方ができました。ストーリーも、何気ない日常が繋がっている作りになっており、楽しめました。

映画の感想を投稿する

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください