「CUT(2011)」のネタバレあらすじと結末の感想

CUT(2011)の紹介:「駆ける少年」「ベガス」などヴェネチアやカンヌ映画祭で高く評価されるイラン人監督アミール・ナデリによる2011年製作の日本映画。監督と西島の出会いで企画が始動、彼を主人公とし長年構想していた脚本を書き上げたのだとか。映画に人生を捧げる男秀二に資金援助していた兄が殺害され、金の出所を知った彼は兄の遺した借金を”殴られ屋”で返済すると決意するが。共同脚本には「EUREKA ユリイカ」の青山真治が参加。常盤貴子、笹野高史、菅田俊、でんでんなどが脇を固めている。

予告動画

CUT(2011)の主な出演者

秀二(西島秀俊)、陽子(常盤貴子)、ヒロシ(笹野高史)、正木(菅田俊)、高垣(でんでん)、ナカミチ(鈴木卓爾)など。

CUT(2011)のネタバレあらすじ

【起】- CUT(2011)のあらすじ1

秀二は映画監督で無類の映画バカです。
住まいは古いビルの屋上で、壁は名作映画のチラシで埋め尽くされ、キッチンは部屋の一角に置いてあるカセットコンロ、扉の無い仮設トイレと、表側にはやはりチラシだらけの軒下にボロいソファと小さなスクリーンがあり、そこで”東京シネフィル”と題した古い名作映画の自主映画会を開き、そのチラシもきちんと並んでいます。観客用の椅子は廃品の簡易椅子やビールケースで、皆思い思いに座り、フィルム映写機で映画を観賞する形式です。

彼は今日もトラメガ(ポータブル拡声器)と上映会のチラシを持って街中を駆けずりまわり、制止しようとする警官の隙を見ては怒りをぶちまけます。
途中で会った映画仲間のナカミチは「お前はいっつも逃げてる感じだな」と呆れ、「この辺でやると警官に捕まるから…映画の話、してただけなのに」と言う彼を、いつか大事になるんじゃないかと心配だ、「町の人間も警察も昔ほど大らかじゃないしね」となだめます。
秀二は壁を蹴りながら「今日が上映会じゃなかったら逃げずに演説続けてたのに!どこ行っても警察や町の人間やらが出てきて、規則だの許可が無いとだめだのって!もう耐えられない!!」と怒ります。
「もう、映画を上映する場所なんかどこにもなくなったんすよ!完全に奪われちゃったんすよ!冗談じゃないっすよ!…映画がダメになる」そう言って彼はトラメガで「映画をダメにするクソ××」と叫び始めます。
「映画の芸術的側面は死に絶えようとしている!今ある映画は全て娯楽映画に過ぎない、だかがつて、映画が映画だった頃、我々はそれが芸術であり同時に娯楽であった事を忘れてはいない、あの頃の映画をもう一度見直してほしい、シネコンで作ってる金儲け主義のクソ野郎どもの手から映画を取り戻し、本当に美しい映画の光で照らし直せば、映画は必ず甦ってくる!死ぬなら勝手に自分たちだけで死ねばいい!だが連中は映画をその巻き添えにした、本物の映画を小さな檻に閉じ込めた揚句に殺してしまった、そんなことは許してはいけない!映画は我々と同様、自由にこの世界に存在しなければならない、本物の映画とは、そう言うものであるはずだ!」…彼はそう演説し、黒沢明監督の墓まで走り手を合わせ、「先生ならどうされますか?先生たちの遺された財産が、毎日のように燃えて灰になってしまう、かつて先生たちが作ったような作品が作りたい、映画はすでに死んでいます。僕は自分の映画が作りたい、僕は…生き残りたい!」と語りかけます。

その夜。彼の屋上劇場には40人ほどの観客が集まり、彼が主宰として挨拶と映画の紹介をしフィルムの提供先であるシネフィル東京に感謝の意を述べ、バスター・キートン監督と清水宏監督のサイレントの短編映画の上映が始まります。
場内は和やかで、秀二を含め皆が映画に笑みを漏らす中、いかつい黒服の男が2人入ってきて秀二に耳打ちをし連れ出します。
彼が連れて行かれたのはヤクザの組事務所で、ボスの正木と古参の老人ヤクザ2人が待っていました。
正木は遺骨を前にして、秀二の兄信吾はプロの取り立て屋として12年間組に貢献し息子のように思っていた、けれど秀二の映画が売れたら必ず返すからと借金を重ね、ついには事務所にも組にも内緒で中国マフィアの縄張りを侵して揉め事になりハジかれた(射殺された)と話します。それらは全て秀二の知らない事実でした。
正木は次に信吾の借金の残高が1254万あると明細を渡しますが、ここで借りた金で作った映画が3本残っているだけで金は無いと言う秀二に、ならばマグロ船に乗るか、保険に入って事故死するかのどちらかだが、利子は増え続けるが期限は2週間あるから考えろと言い、遺骨を渡し解放します。

その事務所は、一見ボクシングジムのような倉庫の奥に事務所があり、リング脇のバーには古参ヤクザのヒロシと化粧っ気のない若い女陽子がいます。秀二がバーに近づくと、リング脇の小部屋の賭場から15人ほどの組員が出て来て、彼を注視します。
彼は、陽子が作った兄のキープボトルの日本酒をロックで一気飲みしてえずき、事務所から出て行きます。陽子はそれをカウンター下の監視カメラで見ていました。
秀二の部屋の留守電には何度も兄からのメッセージが入っていました。困ってるんだ、会いたい、話がしたい、訪ねたがいなかった、時間が無い…。「恥ずかしくて電話に出れなかった…兄貴がいなくなったら、俺はどうしたらいいかわからない…兄貴、どうしたらいい?」彼は2人で写った写真の兄に語りかけます。

【承】- CUT(2011)のあらすじ2

翌日、秀二は有り金を持って組事務所に行きリング脇のベンチに座ります。その日は組の連中がいて小部屋からも怒声が響き、陽子はここが安全な場所じゃない事は判ってるでしょと声を掛けますが、秀二は僕にとっては安全な場所だと言いサンドバッグを叩きます。
また、正木も秀二に出て行けと言い、陽子にも組上部に知られると厄介だ、金を持って来た時以外ここに入れるなと言い置いて出掛けて行きます。
秀二は陽子にナイフと手持ちの現金を突きだし、借金の返済に充ててくれと言い、信吾が死んだ場所を聞きます。信吾が死んだのは、ジムの奥の古びた広いトイレで、その血を拭いたのは彼女でした。
賭場で揉めて出て来たヤクザのボス高垣は、秀二が信吾の弟だと知ると一杯飲もうと絡み、「僕にはお金が必要です。仕事を下さい。何でもやります」と言う彼に、拳銃を咥えて引き金を引いてみろ、お前映画屋なんだってな?これも映画みたいなもんだ!とけしかけます。
秀二は「僕は死なない。いくらくれますか?」と言い、高垣は嗤って札入れの金を数えさせ、14万だってよ?どうする?と迫ります。秀二は銃を咥えて引き金を引きますが弾は無く、高垣が床にばらまいた金を拾い集め陽子に渡します。
次に高垣は、ヒロシに秀二を殴ったら1発に付き秀二に1万やると言い、子分にもお前らも殴れ、1発5000円だと嗤います。
その間も陽子は何度も止めに入りますが、秀二は「殴ってください。ただし、兄貴が死んだ場所で」と言い出します。

タカシは隙を見て取りたてに出かけ、ジムには数人の子分が残り不安そうに様子を窺っています。
トイレには高垣と手練れの子分ら数人が行き1人ずつ秀二を殴ります。高垣は傍で囃し、陽子は無惨に腫れ上がった秀二の顔を見てもう無理だと止めますが、子分らは手加減無しで殴り続け、秀二は何度倒されてもふらふらと立ち上がります。
やがて秀二は名作のタイトルと製作年を呟き始め、からかわれても止めません。中でも強面の1人が腹にキメて立ち上がれなくなった時、金額は15万に達していました。高垣は秀二の耳元でもうお終いだよ!とおどけて金を払おうとしますが、秀二は陽子に何かを囁きます。
「高垣さんも殴ってくれって」…高垣たちは慄然として彼を見つめます。
陽子は、あんたの63万とさっきの14万5000円、全部で77万5000円と秀二に金を渡し、信吾の酒を出します。が、兄貴の事はよく知ってたんですか?聞かれても答えませんでした。陽子やヒロシ、高垣たちは、彼が信吾の弟だという事で一目置き、映画監督だという事も知っている様子でした。
彼はその晩、ボロボロの体で屋上を走りながら、金で映画を汚すクソ野郎ども、エンターテインメントなんて横文字で映画を穢すクソ業界人、恥知らずどもが!…と呟いていました。

翌日、秀二は再び事務所に行き、正木から”殴られ屋”をやるなら相応の場所でやれ!と説得されますが、秀二は「ここでできないのなら、僕はもうどうなっても構いません。ここでなきゃダメなんです。兄貴が殺されたあのトイレでなきゃ…あそこでなら、どんなに殴られても痛みを感じないんです。兄貴のためにもここでやらせてください」と言い張り、正木は上と揉めれば俺にはどうにも出来んと言いつつ許可します。返済期限まではその日を入れて11日。正木は「返せるわけねぇよな」と呟きます。
秀二はその足で、ジムの賭場に乗り込んで深々と頭を下げ「お願いがあります。僕には金が必要です。サンドバッグ代わりに僕の腹、殴ってもらえませんか?」と言い、その日は130万稼ぎ、見とどけ人のようになった陽子とヒロシに何度も頭を下げます。
彼は溝口健二監督の小さな墓に参り、その墓碑銘に腫れた頬を当て指でなぞり、夜には作品に抱かれるように青黒くなった腹をさすります。
バーには噂を聞いた組員らが集まり、トイレで1人足を踏み鳴らす秀二に陽子がそっと塗り薬を差し出します。「クソクズ映画!」…彼は何度も怒りに任せてそう怒鳴り、足を踏み鳴らし顔を突きだし組員たちを煽り殴られます。陽子はその横で彼らを並ばせ集金しています。
バーには正木が来て手下に状況を聞きます。その日は陽子が吊り上げ1発8000円。彼は12人ほどに殴られ朦朧としながら、クソクズ映画と呟いていました。
「本物の映画を見てください!現在の映画は娯楽映画ばかりです!かつて映画は真に芸術であり真の娯楽であった、現在も真の映画とは何かを考え創り続けている監督が存在します!彼らの映画を見に行ってください!そこには真実と芸術とそして真の娯楽があるはずです!…」彼は屋上からトラメガで叫び続けます。

翌日、秀二は再び正木から説得されますが、何か言いたげに近づくヒロシを指差し「小津監督の映画に出て来るお父さんに似てますね」と言い、思わずテレビで見たけど感動したよと言うヒロシに「小津監督は世界で最も偉大な監督の1人です」と微笑み深々と頭を下げます。バーには組員たちが鈴なりで彼を待っていました。
その夜の作品はジョン・フォード監督の「捜索者」。家族が無事再会し穏やかなテーマ曲が流れても彼はスクリーンの前のボロソファで昏々と眠り続けていました。
夜が明けると彼はまた事務所に行き、ヒロシがレフェリーのようにサポートする中、殴られ、何度倒れても立ち上がり、名作映画のタイトルと制作年を唱え、足を踏み鳴らしていました。正木は事務所で頭を抱え、陽子も心配そうにトイレの入口を行ったり来たりしています。
彼は信吾の遺骨に手を合わせ、借用書に残高を書き込みます。期限まであと3日、残高はまだ500万近くありました。
その夜は上映会でしたが、客たちは青黒く腫れ上がった顔で微笑む彼を見てギョッとします。上映作品は新藤兼人監督の「裸の島」。彼は微笑みながら日本のモノクロのシネマスコープ作品の中では最も重要な作品だと讃え上映します。
閉会後、彼は心配するナカミチに転んだだけだと言い、映画が撮れてないから上映会だけは止めないと話します。ナカミチは書き終えた脚本を持込み中だがもう3年撮ってない、頭がおかしくなりそうとこぼします。秀二はまだ書いてる、必死に進めてると話し、その晩は脚本を書き進めます。

【転】- CUT(2011)のあらすじ3

翌日、事務所に上部からの通達が入ると同時に、幹部とその子分たちがやってきます。
幹部たちは正木を通さず、直接トイレで殴られていた秀二に会い「上はこれ以上ここで死人が出るのを望んでない、今すぐ出てけ」と言い、ここじゃなきゃダメなんだ!と言う彼に、ならばショバ代10万と見張りに付ける手下2人の車代4万、1日14万の支払いを言い渡し帰って行きます。
正木は、こうなる事は判ってたが、俺にはどうする事も出来ん、個人的に期限無しの金を貸すからそれで終わりにしないか?と持ち掛けます。黙って聞いていた秀二は、ならば最後の1円まで僕を殴ってくださいと言い、俺は殴れないと言う正木に「あなたに僕を殴れない理由があるように、僕にも殴られずには金を貰えない理由がある、問題は金じゃない、もしそうなら銀行強盗でもやってます」と返します。
そして、面倒を掛けたことを詫び、上に逆らってまで味方をしてくれたこと、このトイレで稼ぐことを許してくれたことにも感謝していますと言い、幹部にショバ代を払ったので金額は少ないが今日の分です、明日は必ずこの不足分も一緒に払いますと言い金を渡します。

秀二は「無」と刻まれた小津安二郎監督の墓に手を合わせ、その夜もトイレで殴られます。
その夜の稼ぎはまだ33万、彼はトイレの入口に立つ無表情の幹部の子分の前で足を踏み鳴らし、もっと稼がなきゃ!顔殴ってくれよ!顔!殺してみろよ!と狂ったように叫んで組員をど突き煽ります。突き飛ばされた組員たちは次々と値を吊り上げ3万!5万!と上がって行きます。
全員が金を使い果たした後も、彼は血まみれで生きてる!生きてる!と叫んで自分の頬を叩きながら興奮し、陽子が慌てて用意した氷水で顔を冷やしようやく落ち着きます。その日の稼ぎは71万、ヒロシは全然足りないとこぼし出て行きます。
陽子は自分の胸に顔を埋め気を失った秀二を抱きしめるべきか迷いますが、間も無く「ヒロシさん!今いくらですか?!」と飛び起きた彼に、71万、全然足りないと冷たく言い出て行きます。
トイレの入口には「残り日数2日 1発1万円」と札が貼ってあります。
翌日、彼は陽子の巻いた包帯をむしり取り、361万9000円のためになんか死ねない!と呟きます。その夜はモノクロ映画のウサギ狩りシーンで撃たれ、女が湖に落ちるシーンで飛び起き「映画を作りたい!生き残りたい!」と叫びながら部屋の中を歩き回っていました。

【結】- CUT(2011)のあらすじ4

そして最終日。
彼は「明日は借金を返す最後の日です。361万9000円。もう私には時間がありません。自分に賭けることにしました。100発パンチを受けます。耐えられるかどうか分かりません。最後までやり通すつもりです。その間に今日この日まで私の全てだった100本の映画の事を考えようと思います。100本の映画。100発のパンチ。ただそれだけ」と書いた札を持ちスクリーンの前で瞑想し、「もう十分だ。映画は売春じゃない。映画は芸術です」と潰れきった声で呟きます。
バーにはスーツを着た猛者たちが集まり、陽子とヒロシはやってきた幹部の手下に何か言おうとしますが彼らはいつも通り無表情で、正木もじっとその時を待っている様子です。
陽子は部屋の隅で背を向けていた秀二に、ただうなづき、彼も少し微笑んだように見えます。

ヒロシは「秀二さんは100発のパンチを受けます。何発で倒れるか、そこに賭けてもらいます」と言い、組員から金を預かり賭け帳を付けます。秀二は唸って床を踏み鳴らし、1発パンチが決まるごとに字幕で名画の英題と監督、制作年が映し出されます。パンチは強く、重く、彼の命を削り続けます。組員たちは猛り怒声が飛び交いますが、秀二の頭には名画が浮かび、風の音とカラスの鳴き声だけが聞こえています。50発を過ぎても、彼は起き上がり床を踏み鳴らし水をかぶり、横やりにパンチが飛んできてもまた立ち上がります。
そして残り30発となった頃、怒号が戻り、彼の演説が響きます。
「映画の芸術的側面は死に絶えようとしています!金に塗れた表面だけ映画の振りをした偽の映画によって、映画は抹殺されようとしている!シネコンで作っているあの金儲け主義のクソ野郎どもから映画を取り戻し、もう一度映画を甦らせてください!そのためには本物の映画を見る事です!かつて映画は真に芸術であり、真に娯楽であった!我々はそれを知っていたはずです!…現在シネコンに掛かっているのはほとんどが娯楽映画です!娯楽映画はいくらあっても構わない!だがそのせいで本物の映画を見る機会が無くなる事だけは許してはならない!本物の映画には、金でできた偽の映像ではなく、本物の人間の肉体と魂とでできた本物の映像があります!現在の真の映画とは何かを考え映画を作り続けている監督が世界には数多く存在します!彼らの映画を映画館に見に行ってください!そこには真の芸術とそして真の娯楽があるはずです!映画館に行ってください!本物の映画をもう一度見直してください!映画は必ず甦ってくれます!映画は我々と同様、自由にこの世界に存在しなければならない!本物の映画とは!そう言うものであるはずです!…」
…「街の灯」「少女ムシェット」「キートン将軍」となった瞬間、彼の耳は耳鳴りで塞がります。彼は両耳を押え狂ったように暴れ初めて怯えます。周囲には怒号が飛び交い猛った組員たちが群がっていましたが、彼の目には上映会のチラシが見え、自分の荒い息遣いだけが聞こえます。
やがて怒号がとぎれとぎれに戻り、彼の前では必死で組員たちを抑えるヒロシがいて、秀二が床を踏み鳴らすのを合図に、さあ!次は誰だ?!と怒鳴っていました。

残り12発。「大地のうた」「戦艦ポチョムキン」…「もう十分だ。映画は売春じゃない。映画は芸術です」…「2001年宇宙の旅」「晩春」「捜索者」「サンライズ」「蜘蛛巣城」「月世界旅行」「アタラント号」「雨月物語」「8 1/2」そして「市民ケーン」…
ケーンが「ローズバッド…」と呟きスノーボールがその手から転がり落ち、バラの蕾が描かれたソリが燃やされ、煙突から立ち上る黒煙はやがて小津安二郎監督の墓碑銘「無」と言う文字に変わります。
秀二はそれでも生きていて、信吾の血が付いていた窓辺を血だらけの手でなぞります。
最終日の稼ぎは375万9000円。ショバ代14万を引いて完済します。

翌日。正木は借用書に認めを書いて判をつき、「ここに残って一緒に仕事しねぇか?」と誘いますが、顔が腫れあがり両目がほとんど塞がった秀二は、少し考え「もう一度お金を貸してください」と言います。微笑んで見守っていた陽子とヒロシは顔を見合わせ、正木は憮然としていくら欲しいんだ?と聞き、彼は「3500万」と答えます。
正木は「なんでなんだ?命懸けでやっと借金返したんじゃねぇか」と笑いますが、秀二は無言で動きません。古参の1人は上に聞いてみたらどうでしょうと言い、正木は奥に電話をしに行きます。
秀二はヒロシと陽子に微笑んで頭を下げ、2人も微笑みます。

「はい、よぉーい!スタート!」…秀二の声が響きます。

みんなの感想

ライターの感想

ウサギ狩りと布を巻いた女が池だか川だかに落ちるシーンがどの作品からの引用なのか判らず申し訳ないです。名作へのオマージュシーンが他にもあるそうなので、名作映画ファンの方が見ればもっとマニアックに楽しめる作品かと思います。
このアミール・ナデリ監督、数々の賞を獲得した異才だそうですが、受賞作品がレンタルDVDには見当たらず、ああシネフェスとかで上映される作品なのねとなって初めて、しまった!”金儲け主義のクソクズ映画”の棚にあるはずないのかと気づくワナ。本作以外で唯一DVD化されているのは「駆ける少年」のみのようですね(2017年現在)。本作もかなり激しく賛否が分かれ、しかもムカついているのはむしろ自称映画マニアの方々らしいのも興味深いところです。映画監督に限らず全てのクリエーターは”稼げる映画”=”撮りたい映画”じゃないし、この秀二のように大金をさくっと貸してくれる兄がいるわけでも、飲まず食わずで仙人のように暮らして行けるわけでもない、大概の場合、ナカミチのように脚本を書いては持ち込んで、揚句にバイトが本業になってしまうケースが間々あるし、そもそも”名作”とは撮ろうと思って撮れるわけじゃない。”クソクズ作品”があるからこそ”名作”がある…私はそう信じて止まないのですが。
監督が西島と出会った瞬間から温めていた構想のイメージ通りだ!と口説き、秀二を西島として脚本を仕上げ、撮影中は一切出演者と喋るなと厳命されたとか。暴行シーンは真に迫っていて、西島の息遣いや体温を間近に感じるし、アジテーションも胸に響きます。見てよかった。

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