映画:ボーダー 二つの世界

「ボーダー 二つの世界」のネタバレあらすじと結末

ボーダー 二つの世界の紹介:「ぼくのエリ 200歳の少女」などで知られる、ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストの短編小説を基にしたスウェーデン映画。イラン系デンマーク人のアリ・アッバシが監督を務めており、第71回カンヌ国際映画祭ある視点部門にてグランプリを受賞した。第91回アカデミー賞においては、メイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされた。日本公開は2019年。

あらすじ動画

ボーダー 二つの世界の主な出演者

ティーナ(エヴァ・メランデル)、ヴォーレ(エーロ・ミロノフ)、ローランド(ヨルゲン・トーソン)、ティーナの父(ステーン・ユンググレーン)、アグネータ(アン・ペトレン)

ボーダー 二つの世界のネタバレあらすじ

簡単なあらすじ

【起】- ボーダー 二つの世界のあらすじ1

ボーダー 二つの世界のシーン1 主人公のティーナが、草むらでコオロギを手に取って触感を楽しみ、自然に放す場面から物語は始まります。
スウェーデンの港で税関職員として働くティーナには、違法物を持ち込む人間を嗅ぎ分けるという特殊能力がありました。いとも簡単に突き止められる上に高精度で、現場では彼女の能力は重宝されていました。
しかし、ティーナは人とは違う容姿のせいで、孤独と疎外感を抱えていたのです。

ティーナはいつものように到着ゲートに立ち、歩いてくる乗客の中から一人の青年を呼び止めます。
青年からバッグを受け取ったティーナは、中を開けずに同僚の職員に渡して、3~4リットルの蒸留酒だと告げます。青年は自分で購入したものだと言い張りますが、ティーナは未成年が所持するのは違法だと指摘し、密輸の罪で逮捕してもいいのだと厳格に対応します。
酒を没収された青年は、捨て台詞のようにティーナに侮蔑的な言葉を投げつけるのでした。

ティーナは森の奥深くにある自然に囲まれた家で暮らしています。
職場から帰宅すると、柵の中で多頭飼いされている犬たちが、一斉に彼女に向かって吠え始めます。同居しているボーイフレンドのローランドの犬です。
ローランドは品評会に出す犬の飼育に明け暮れており、ほとんど働いていません。ティーナに養われながら我が物顔で振る舞う彼は、酒を飲みながらテレビを観たり、浮気をするような怠惰な日々を過ごしていました。
ティーナはローランドを愛してもいませんでしたが、誰かが家にいてくれることをありがたく思っていました。
裸足で森を散歩するのが日課のティーナは、この日野生のキツネに出会って声をかけます。
帰宅してからローランドと食事をしますが、彼女はパスタをまずそうに食べるのでした。

翌日、ティーナは入国したスーツ姿の若い男性から怪しい匂いを嗅ぎとり、荷物確認をします。
彼女の同僚が検査をおこなって問題なしと判断しますが、ティーナは男性にスマートフォンの提示を求めます。男性のスマートフォンを手にとると、彼女は鼻に近づけて匂いを嗅ぎ、SDカードを取り出しました。
青ざめた男性はSDカードを奪い取り、口に含んで飲み込もうとします。しかし、職員が取り押さえて彼の口からカードを奪い返し、警察に通報するのでした。

持ち場に戻ったティーナは、今度はみすぼらしい身なりの怪しげな男性を呼び止めます。
男性はティーナと風貌がよく似ており、薄笑いを浮かべながら素直にバッグを渡しました。
バッグの中を検査すると、謎の装置がついた金属製の箱が入っていました。一見爆弾のようですが、男性は昆虫の孵卵器だと説明します。
男性に違和感を抱くティーナはさらに嗅覚を研ぎ澄ませますが、法に抵触する所持品はなく、そのまま解放しました。
そしてティーナは、彼に強いシンパシーを抱くのでした。

休日、ティーナは老人ホームに住む認知症の父親を訪ねます。
唯一の家族である父親を大切にしている彼女は、禁じられている煙草をこっそり吸わせてあげたりしていました。
父親はティーナの元で好き勝手に過ごすローランドを快く思っておらず、度々気にかけていましたが、いつも上手くいっていると答えるのでした。

自宅に戻ったティーナは、父親に会いに行っていたとローランドに報告します。しかし、彼は競馬に夢中で話が噛み合いませんでした。
気晴らしに外へ出たティーナのそばに、野生の大きなヘラジカが近づいてきます。鹿は怯える様子もなく、じっと撫でられるのでした。

【承】- ボーダー 二つの世界のあらすじ2

ボーダー 二つの世界のシーン2 ある日、ティーナは警官のアグネータに呼び出されます。
以前スーツの男性から押収したSDカードから、大量の児童ポルノ動画が発見されたというのです。
アグネータはどのような方法で彼を摘発できたのかを尋ねます。するとティーナは、人の羞恥心や罪悪感、怒りなどの感情を嗅ぎ分けることができると説明しました。
それを聞いたアグネータは、男性がスヴァーネホルム近辺を頻繁に訪ねており、児童ポルノの出所を大方割り出せたといいます。ティーナの能力を見込んだアグネータは、動画の作成者を特定するために協力を要請するのでした。

後日、あの男性が再び入国して、ティーナに近づいてきます。
ティーナは荷物検査を実施しますが、やはり違法な物は発見できませんでした。何かあるのは間違いないと言って、ティーナは同僚の男性職員に身体検査をおこなうよう頼みます。
検査を終えた職員は、当惑した様子でティーナに驚くべきことを告げました。なんと彼には男性器がなく、女性器のようなものがあったというのです。
また、腰に傷跡があったとも言います。それを聞いたティーナは、性転換手術の痕跡かと尋ねますが、傷は尾てい骨の辺りで手術跡にしては遠すぎると職員は答えました。
ティーナは大きな衝撃を受けます。なぜなら彼女にも尾てい骨の辺りに傷跡があったからです。父親はその傷のことを「子どもの頃にぶつけて怪我をした」としか説明していませんでした。

ティーナは個室にいる彼(彼女)に、男性に検査を任せたことを詫びに行きます。
しかし、さほど気にしていない様子で、自分のことを世界中の虫を採集している旅行者だと説明します。
それからまるでティーナを誘うように、彼女の家の近くのホステルに泊まる予定だと教えてくれるのでした。
最後に自分の名前はヴォーレだと告げて、去って行きました。

帰宅途中、ティーナは突然車道に飛び出してきた男性に驚かされます。
正体は隣人のステファンで、妻のエスターが産気づいたので病院まで運ぶよう頼んできました。
運転中、ティーナは鼻を動かして車を停めます。ステファンは急いでほしいと声をかけますが、ティーナは木々の間から列をなして現れた鹿が、道路を渡るのをじっと待ちました。

隣人夫婦を病院へ送り届けたその夜、酒に酔ったローランドがティーナのベッドに乱入してきます。
強引に求められますが、ティーナは「私にはできない」と跳ねのけるのでした。
ローランドが悪態をつきながら出て行くと、窓の外に先日出会ったキツネが来ていました。ティーナが窓ガラスに指をくっつけると、キツネは窓越しから指を舐めます。ティーナはそれを見ながら照れ笑いを浮かべるのでした。

自宅近くのホステルに出向いたティーナは、裏庭の木の幹から幼虫を採取するヴォーレを見つけます。
ヴォーレは捕まえた幼虫を食べ始め、気持ち悪いと感想を述べたティーナに「(気持ち悪いなんて)誰が決めた?」と尋ねます。ティーナは思わず「みんなが決めた」と答えました。
ヴォーレは「本当は食べたいくせに」と虫を差し出し、嫌がっていたはずのティーナはそれを食べてしまうのでした。

その後ティーナは、ヴォーレに自宅の離れを貸すことにします。
到着するといつものように犬たちが激しく吠え始めますが、ヴォーレが獣のような唸り声を上げると、途端に大人しくなりました。
ティーナはヴォーレを古い知り合いだと紹介しますが、ローランドは露骨に気味悪がり、彼を連続殺人犯呼ばわりするのでした。
ティーナのこめかみには、幼い頃雷に打たれて残ったケロイドがありました。それを見たヴォーレは、自分にも同じ跡があると言って鎖骨の辺りを見せます。
それからティーナはヴォーレにキスをされそうになり、咄嗟にかわすのでした。

その夜、一人で森に入ったヴォーレは、横たわった状態で叫び声を上げます。
やがて苦痛から解放されたヴォーレの股間から、何かが出てきます。

【転】- ボーダー 二つの世界のあらすじ3

ボーダー 二つの世界のシーン3 翌日、ティーナは男性警官と共にスヴァーネホルムへ向かいます。
自転車で通りかかった男性から怪しい匂いを嗅ぎつけたティーナは、尾行してアパートの一室を突き止めます。
ティーナがメールボックスを開けて中の様子を探っていると、男女が飛び出してきて「警察を呼ぶ」と憤慨します。付き添いの警官は謝罪し、ティーナを連れてその場を後にするのでした。
報告を受けたアグネータは、捜査は慎重におこなうように求めますが、ティーナは赤ん坊がひどい目に遭わされていることは確かだと主張します。
警官も赤ん坊の声を聞いており、あのアパートの住人は出生届を出していないと報告するのでした。

ある日、ティーナはヴォーレと一緒に、森へキノコ採りに出かけます。
ティーナは森を歩きながら、子どもの頃信じていた妖精の存在を打ち明けます。そして自分は染色体に欠陥がある醜い人間だと嘆き、子どもを産めない体であることも明かすのでした。
「私は普通じゃない」と語るティーナに、ヴォーレは「人と違うのは君が優れている証だ」と言葉をかけました。

それからティーナとヴォーレは、エスターの家で生まれたばかりの赤ん坊を見せられます。
ティーナは赤ん坊を慈しみますが拒絶され、ヴォーレは怖がられて大泣きされるのでした。

またある日、例のアパートにやってきたティーナたちは、住人のカップルが留守にした隙に部屋へ忍び込みます。
ティーナはトロフィーの中に隠されていたビデオカメラを発見し、内容を確認した警官は赤ん坊に性的虐待を加える凄惨な映像に顔を歪めます。

ローランドはドッグショー出演のため、長期間留守にすることになりました。
雨が降り出して落雷の音を聞いたティーナは、怯えながら家中のプラグを抜きます。外に佇んでいたヴォーレを招き入れて、2人はテーブルの下で身を寄せ合うのでした。
雨が止んで恐怖を共に乗り越えた2人は、森へ出かけました。キスをして激しく求め合いますが、下着を脱いだティーナの股から突如男性器が伸び始めます。
ティーナはそれをヴォーレの女性器に挿入し、2人は獣のような雄叫びを上げるのでした。

自分が何者なのかと混乱するティーナに、ヴォーレは「我々はトロールだ」と答えます。
独特の風貌も、人の感情を嗅ぎ分けられる特殊能力も、雷を引き寄せる体質であるのも、全ての違和感はティーナが人間ではなかったからなのです。
さらに、ティーナが長年気になっていた尾てい骨の傷跡は、尻尾があった箇所だと説明してくれます。ヴォーレ同様、ティーナの尻尾は切除されていたのです。
ヴォーレは自分たちのようなトロールが、フィンランドで放浪生活をしていると語ります。こちらから探すことはできないため、向こうから連絡があるのを待っていると話し、ティーナはうれしそうに聞き入りました。

その後2人は、多くの時間を森で過ごすようになりました。
あるとき、全裸で森の中を駆け回り、川で絶叫しながら水遊びを楽しみます。
ティーナが自分の正体を中々明かさなかったのは何故かと尋ねると、ヴォーレは「君が人間の生活に適応していたから」と答えます。
ヴォーレはトロールとして生きていくのは大変だと語りますが、ティーナは「でもキレイ」と返しました。

ヴォーレの両親は人間たちに捕まり、10年間実験材料として拷問のような生活をしていたといいます。両親が亡くなると、ヴォーレは施設をたらい回しにされながら成長しました。
ティーナは赤ん坊に性的虐待をおこなう人間を逮捕したことに触れて、家具を揃えたアパートで暮らす一見普通のカップルが、あのような行為をしているのに困惑したと漏らします。
ヴォーレは子どもまで道具のように扱う人間は地球に寄生する虫だと言い切り、いずれトロールに復讐される運命なのだと嘲ります。
ティーナは自分の父親のように、邪悪ではない人間もいると言いますが、ヴォーレはその父親もずっと嘘をついてきたと返します。
ティーナがずっと父親だと思っていたのは人間であり、本当の両親はとうに亡くなっていることを、ヴォーレから教えられるのでした。

翌日、老人ホームを訪れたティーナは、自分の本当の両親は誰なのかと父親に問い質します。
父親は言葉を濁しますが、何かを隠しているのは明白でした。するとティーナは「私の人生は全部嘘だったの?」と投げかけます。
さらに、自分が幼少期からいじめを受けて育ってきたこと、それを打ち明けても父親は何も言ってくれなかったことを、涙ながらに語り出すのでした。
2人は口論へと発展しますが、看護師が間に入ってティーナを追い出しました。

ある日、ヴォーレの目を盗んで離れへ足を運んだティーナは、ガムテープが巻きつけられた不審な冷蔵庫をこっそり開けます。
中には段ボール箱が入っており、そこには生きた赤ん坊がいました。ティーナやヴォーレに似た容姿の赤ん坊は、冷蔵庫の中へ入れられているのに元気に生きており、か細い声を発するのでした。

【結】- ボーダー 二つの世界のあらすじ4

ボーダー 二つの世界のシーン2 赤ん坊への性的虐待で逮捕された男性は、パトカーで護送されていました。
パトカーの前にヘラジカが現れたかと思うと、男性は何者かに引きずり降ろされ、地面に頭を叩きつけられてあっという間に死亡します。
現場の残り香からヴォーレの仕業だと気づいたティーナは、一人で後を追います。

ヴォーレを見つけたティーナは、怒りに満ちた眼差しを向けます。
ヴォーレが冷蔵庫に入れて育てていた赤ん坊は、自分が産んだのだと説明します。未受精卵で生まれた子どもは不完全で、極めて短い命だというのです。
ヴォーレは定期的に身ごもり出産した未受精児を、人間の赤ん坊と取り替える「チェンジリング」をおこなっていました。そしてさらった人間の赤ん坊は、児童ポルノのブローカーに売っていたのです(男性は口封じのため殺された)。
「我々を苦しめた罰だ」と悪びれる様子もなく語るヴォーレに、ティーナは激怒します。「あなたは怪物だ」と責めますが、ヴォーレは「人間ならそうだが、幸いなことに俺は違う」と返すのでした。
ティーナは歯を剥き出しにして、猛獣のように吠えました。

ヴォーレと別れたティーナは、エスターの家に救急車が停まっているのを不審に思い、様子を見に行きます。
エスターは郵便物を取りに行っただけだと言って泣き出し、ベビーベッドの側にはステファンと救急隊がいました。ベッドで眠る赤ん坊の顔を見たティーナは、ヴォーレが産んだ未受精児にすり替わっていることに気づきます。
血相変えて離れに戻ると、ヴォーレは荷物と共に姿を消していました。そして「君は人間ではない。フェリーで待つ」と書かれた置き手紙を見つけるのでした。

夜、フェリーに乗り込んだティーナはヴォーレを見つけます。
ヴォーレは2人で子孫を増やして人間に復讐しようと不敵な笑顔で語りかけますが、ティーナは拒否します。
「人間になりたいのか?」とヴォーレが尋ねると、ティーナは「残酷になることに意味を見出せない」と答えて、「これを人間的な感覚だというの?」と付け加えます。
ティーナが合図をすると、隠れていた警官がやってきてヴォーレに手錠をかけます。ヴォーレはティーナに別れを告げると、警官の拘束を解いて海へと飛び込み、姿を消してしまうのでした。
帰宅したティーナは、いつものようにテレビを観ていたローランドを追い出しました。

その後、看護師に付き添われてティーナの家を訪れた父親が、過去の経緯を話します。
彼が精神病院に看守として勤務していた頃、たくさんのトロールが収容されていました。その中にティーナの両親もおり、彼らが亡くなった際にまだ幼かったティーナを引き取ったというのです。
父親は娘が欲しかったのだと語り、ティーナを人間の子どもとして育てました。
ティーナは自分に名前があったのかと尋ねます。すると父親は本当の名は「エーヴァ」だと答えて、両親の遺体は病院の本棟裏に埋葬したと教えます。
父親の話を聞き終えたティーナは、怒りに震えるのでした。

ティーナは精神病院の本棟裏へ足を運びました。
そこには大きな石が墓標のように並べられているだけで、ティーナは両親の墓の前で佇みます。

ある日ティーナが自宅へ戻ると、大きな木箱が届けられていました。
恐る恐る箱の蓋を開けてみると、腰に尻尾がついたままの赤ん坊のトロールが入っていました。
絵はがきが添えられており、「1000の湖がある国、フィンランドへようこそ」と綴られていました。送り主はフィンランドのトロールコミュニティーでした。
ティーナはむずかる赤ん坊を抱いて、外へ連れ出します。コオロギを捕まえて食べさせてやると、赤ん坊の機嫌が直り笑顔になりました。
それを見たティーナの顔も思わずほころぶ場面で、物語は幕を閉じます。

みんなの感想

ライターの感想

リアリズムと寓話が色濃く描写された、これまでに観たことがないようなファンタジー作品でした。ヴォーレと出会い本当の自分を知ったティーナは、本能に目覚めていく過程で激情を発見して成長していきます。トロールと人間の狭間で揺れながらも、他者を傷つけないという真っ当なルールを守ることを選んだ彼女の高潔さには胸を打たれました。ティーナが好感を持てるキャラクターだからこそ、ヴォーレも彼女のような生き方をしていればと思わずにはいられませんでした。幸せそうに赤ん坊を抱くティーナのラストカットからは、今後どちらの世界に属するのかという、いかにも人間らしい思慮を吹き飛ばしてくれるような力強さを感じました。土や水の匂いが漂ってきそうな、北欧の美しい森も見どころです。

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