「蜜のあわれ」のネタバレあらすじと結末の感想

蜜のあわれの紹介:2016年4月1日公開の日本映画。大正から昭和にかけて活躍した詩人で小説家の室生犀星が、自身をモデルに老作家と金魚の化身とのエロティックな日常を描いた小説を映画化したファンタジー。二階堂ふみが老作家の仕事場に現れては自由奔放にふるまい、惑わす金魚の化身・赤子を演じる。

予告動画

蜜のあわれの主な出演者

赤井赤子(二階堂ふみ)、老作家(大杉漣)、田村ゆり子(真木よう子)、芥川龍之介(高良健吾)、金魚売りの男(永瀬正敏)、愛人・まる子(韓英恵)、医者(上田耕一)、バーテンダー(渋川清彦)

蜜のあわれのネタバレあらすじ

簡単なあらすじ

①老作家をおじさまと呼び、自分をあたいと呼ぶ女の子の正体は金魚。金魚の正体を知るのはほかに金魚売りの男だけだった。そんな金魚の元に幽霊・ゆり子が現れる。 ②ゆり子は金魚の赤子が作り上げた幻想だと言われるが、赤子は信じたくなくて家を出て死ぬ。老作家も病を患い、逃れられない死を経験する。

【起】- 蜜のあわれのあらすじ1

1960年頃のお話。
老作家は2階建ての一軒家に、病気の妻と金魚と暮らしていました。
金魚は3年前に、金魚売りの男から300円で買ったもので、普段は庭にある池に放していますが、家の中に金魚鉢もあります。病気の妻は1階の奥の部屋で19年間も寝たきりです。
老作家の願いが叶ったのでしょうか、ある時から金魚は時々人間の姿を取るようになりました。人間の歳の頃でいえば17歳くらいです。
人間になった金魚は赤い洋装で、自分のことを「あたい」と言いました。金魚が人間になれるのを知るのは、老作家と、「3歳っこ」と呼ぶ金魚売りの男だけです…現時点では。
その日も「退屈さんに殺される」と嘆いた金魚は、老作家が金魚を描いて得た金2000円から一部お小遣いをもらい、外に遊びに出かけました。お出かけには水筒は欠かせず、赤い水筒には「犀」の字が刺繍されています。
老作家は出かける金魚に「5時までには帰っておいで」と注意しました。昼のあかりの筋と夕方のあかりの筋で迷いそうになるのが5時だからです。
〔第一章 あたいの初夜〕
お出かけから戻ってきた金魚は、尾びれを怪我していました。老作家が「愚連隊」と呼ぶ野良猫たちに原っぱで追いまわされ、やられたのです。
千切れかかっている尾びれをくっつけてもらうよう、金魚は言います。「あのねおじさま、接いでくださいな、うまく唾を塗って、ぬめぬめにしてね」と頼みました。
老作家は金魚のお尻の丸みと尾びれが大好きで、「これも描いておきたい」と言います。
うまく尾びれを接いでもらった金魚は「びっちり締まってる。あたい、うきうきしてきちゃった」と言うと、レコードをかけて踊り始めました。老作家はそれを見て喜びます。
金魚は老作家と一緒に寝ることもありました。ある時、金魚は「海の上を渡る1匹の金魚の夢を見た」と言います。
老作家の講演会に行った金魚は、そこで髪を長く垂らした和装の女性に出会います。女性は気分が悪そうで、金魚は会場の外へ連れ出すと水を勧めました。いつも水を持ち歩いているのかという問いに、金魚は「あたい、いつでも水が欲しい性分なの」と答えます。
水筒の「犀」の字を見た女性は、金魚を老作家の関係者かと質問しました。女性は15年ほど前に老作家に書きものを見てもらったことがあると言い、田村ゆり子と名乗ります。
老作家との関係を聞かれた金魚は「おうちの身の回りのことをする、秘書」と言いますが「夜ご一緒に寝ることもあるわ」と付け足しました。ゆり子はエロティックな妄想をします。
しかしその妄想で「そんな強くいじっちゃ駄目。ねえおじさま、尾びれはね、優しく撫でおろすようにするの」と金魚が言ったことから、「尾ひれ?」とゆり子は驚きます。
「ぶしつけだけれど、あなた先生と関係がありますの? その、お抱きになるの?」と聞かれた金魚は「抱いたりしたら、つぶれてしまいます」と大真面目に答えました。
ゆり子との会話で何やら男女の関係は楽しそうだと思った金魚は、「してくださらなくちゃ駄目って言うわ」と決意します。
金魚は老作家にゆり子を紹介しようとしますが、ゆり子は姿を消していました。左手首に痣があった「田村のおばさま」と言うと、老作家は「彼女は12年前に死んだ」と発言します。
ゆり子は12年前に、自宅の離れで心臓麻痺で死んでいました。左手の痣は腕時計の痕で、誰かに抜き取られたものでした。ゆり子は幽霊なのだ、そう金魚は思います。

【承】- 蜜のあわれのあらすじ2

金魚は老作家に、ゆり子がどんな書き物をしていたか聞き、「親しくなった男友達が言い寄ってくる、それが怖いという内容だった」と老作家は答えました。
バーでおしゃべりしながら、金魚はバーの水槽の水がもう2週間換えられていないことを指摘します。バーテンダーは「毎日換えているが今日は忘れた」と言いますが、金魚は水槽の中の魚たちと会話して「水を換えたらお塩をひとつまみ入れてね。くたびれた金魚には、ほんのちょっぴりお塩がいるのよ」と言います。
店にいた金魚と老作家の背後に幽霊のゆり子が現れ、金魚は老作家を連れて追いかけました。川べりまで追いかけますが、ゆり子は一礼すると川へ飛び込みます。
帰宅した金魚は、老作家に「あたいを恋人にしてちょうだい。いいこと? おじさまたちのひと月があたいにとっての一日なの。短い人生、楽しいことでいっぱいにしたいの」とせがみ、老作家は「僕もとうとう、金魚と寝ることになったか」と言いました。
金魚を恋人にすることにした老作家は、金魚に名前をつけます。「赤い井のなかの赤子、赤井赤子」と金魚が希望し、金魚の名は赤子と決定しました。
キスしたら胃の中に入りそうと言う老作家に、赤子は「金魚はいつも燃えてるの。身体の中まで真っ赤なの」「今夜はあたいの初夜だから、大事にしてちょうだいね」と赤子は言い、老作家と赤子は正座して礼をします。
夜、老作家は口の中にうろこが入っているのを見つけました。
2階へこっそりあがった赤子が、2階の鏡台で紅をひこうとすると、鏡が割れてその断片に老作家の過去の女性たちを見て怯えます。
その頃老作家は、大正13年(1924年)、芥川龍之介が自殺する3年前に、震災で避難した老作家の元へ遊びに来てくれた時の夢を見ていたと言いました。芥川は女性を2人連れて楽しんでいます。
芥川の辞世の句「水洟や 鼻の先だけ 暮れ残る」は文学的だと思うと、老作家は言いました。
「おじさまのお腹の中が恋しくて、出てくると淋しいみたい」と赤子が言うと、老作家は「まるで君を孕んでるみたいだな」と答え、「あたい、死んでもおじさまに会いたいな」と赤子は言いました。
〔第二章 金魚のそら似〕
ゆり子は赤子の正体を知りたくて、ある日赤子を尾行します。しかし赤子もゆり子がつけていることを知っていました。
金魚売りの男のところへ行った赤子は「3歳っこが偉くなったもんだ」と言われ、赤子は金魚のなかに紛れます。赤子を見失って去りそうになったゆり子に飛び付くと、金魚だと正体を明かしました。赤子の正体を知る者が3人に増えます。
金魚と知ったゆり子は「元は中国のフナよ」と赤子に憎まれ口を叩きますが、赤子は「愛する人と結ばれるために海を渡ったのね」と言い、ゆり子に「嫉妬のお化けがツノ生やす」とからかいました。ゆり子は幽霊として「勝手に出てきてしまうのよ」と白状します。
10円の花を買う老作家を見た赤子とゆり子はあとをつけました。赤子は老作家が映画を見に行くと信じていましたが、ゆり子は「もう2か月たりと、シネスコープ(映画)は見ていない」と指摘します。
映画館の裏にある家に、老作家の愛人がいました。老作家は赤子に映画と嘘を言い、愛人宅へ通っていたのです。
ショックを受けた赤子に、ゆり子は自分の世界に来るよう誘いました。5時が近いことを赤子が言うと、ゆり子も「ふた筋の道」のことを知っており「先生は皆に同じ話をしてるのね」と言います。

【転】- 蜜のあわれのあらすじ3

赤子が迷わないように蝋燭の蝋を垂らしたゆり子は、赤子を向こうの世界へ案内しました。ゆり子は『ロマンスの行方』という作品を書いています。
「あたい、恋人になるんじゃなかった。一日中男のことばかり考えている」と言った赤子に、ゆり子も同感だと言いました。ゆり子は2か月前から幽霊として現れるようになったそうです。
2か月前に何があったか、帰った赤子は老作家に詰め寄りましたが、「あんずの木の根元で会ったな」と老作家はとぼけました。「もしあたいが死んだら、それからは水ばかり眺めていることでしょう」と赤子は老作家に不満をぶつけます。
愛人を偵察するため、赤子は金魚売りの男に協力してもらい、愛人の部屋へ忍びこみました。
その日、老作家は愛人の家で金魚になった赤子を見つけますが、金魚はどれも似ているので確信が持てずにいます。
愛人といいムードになった老作家は久しぶりに勃起し、事に及ぼうとしましたが、嫉妬した金魚の赤子が邪魔をしました。老作家は怒りまくり、「返してきたまえ、気が散る」と言います。
老作家に他にも女性がいたことを悲しんだ赤子は泣き、それをゆり子が慰めました。
痣になった腕時計はある男性からのプレゼントでしたが、死体になったゆり子の腕から抜き取ったのも、その男性でした。男性は知らぬ顔でそれを他の女性に贈ったそうです。
赤子はゆり子の痣を治そうと手首を舐め、ゆり子は赤子を押し倒しました(肉体関係という意味での)。赤子は「お友達にならない?」と言いますが、ゆり子は赤子の胸を揉み、首に唇を這わせます。
赤子は笑い始め、ゆり子も「そうね、お友達になりましょう」と言って迫るのをやめ、レコードをかけて2人で踊りました。
〔第三章 死と税金〕
赤子が朝帰りしました。出迎える老作家に頭突きした赤子は、バカ、スケベと罵ります。老作家は、昨日愛人宅にいた金魚は赤子だと知りました。
レントゲンを撮られた老作家は、肺病を患っていると医師に言われます。医師は大学病院に紹介するから、すぐにでも行け、残りの時間を有意義に使うために仕事を絞れとアドバイスしました。
帰宅した老作家の部屋に、亡き芥川の幽霊がいて微笑します。
赤子が「あたい、おじさまの子どもが欲しい」と言い出しました。老作家は「それは、僕の予定にない」と断りますが「予定は作るもの。大事に育てるから」と赤子は言い張ります。
あげく「だれか(金魚)と交尾する。交尾してまいる!」と言って家を飛び出していき、老作家も「交尾はいかん!」と叫びました。
赤子は金魚売りのところへ行って、交尾の相手の紹介をお願いします。
老作家は時計の秒針を止め、2階へあがります。2階の部屋には全裸の赤子がいて、若い別の男が赤子を抱いていました。
芥川の幽霊は「(萩原)朔太郎も死んでいるようだ」と言い「死と税金からは逃げられない」と老作家に言います。老作家は芥川と談笑しました。
〔第四章 命あるところ〕
赤子が孕みました。大きくなった赤子の腹を、いとおしそうに老作家は撫でます。
ゆり子を見かけた赤子は大きな腹で追いかけ、「春には生まれます。卵でびっちりよ」と言いました。ゆり子は今日こそ老作家に会うと決意しますが、口紅を貸してほしいと赤子に頼みます。

【結】- 蜜のあわれのあらすじ4

会話したゆり子は、赤子がもう「あたい」と言わなくなったと気づきました。「だって、母になるんですもの」と赤子は答えます。
赤子は老作家にゆり子を会わせようとしますが「そんな女は存在しない」と言われました。赤子は、すぐには理解できません。
田村ゆり子というのは、老作家の原稿の中に出てくる登場人物でした。赤子はそれを読んで、いつしか田村ゆり子という幽霊を幻想の中で作り上げてしまったのです。
「人間はね、頭の中で作りだした女と連れだっている場合がある」と老作家は言いました。「特に作家はね」と付け足します。
赤子はゆり子を追おうとしますが、老作家は制止しました。「君は孕んだ責任を全うしたまえ」と言いますが、赤子は追って外に出ます。
ゆり子は「私ね、先生がこの世に呼び戻してくれないかと思って、会いたいと思って、はかない夢を見ていました。これで気がすみました」と言いますが、赤子は「違う、おじさまは照れてらしただけ」とゆり子に応えます。
「なんでみんな不幸なんだろう」と赤子は言い「不幸にさえなれなかった女が、ここにいるわ(赤子自身のこと)」と言うと絶叫しました。
「元気な赤ちゃんを生んでね」と言うと、ゆり子は小舟に乗って川を去ります。それを見送りながら、赤子は「暖かくなったらまたきっといらっしゃい。わたくし、待ってるから! きっとよ!」と叫びました。
老作家の元に戻った赤子は荷造りをして「わたくし、おいとまさせていただきます」と老作家に言います。「勝手な」と老作家は言い、赤子に追いすがりました。
追って2階に行った老作家は赤子の尻を噛み、赤子は老作家を蹴ります。咳をする老作家に「勝手にくたばれ! 私は生きる!」と言いました。
「僕がいなくなったら、赤子もいなくなるんだよ。分からん。分からんから小説を書くんじゃないか」「君を見ていると命のあわれを感じる」と言った老作家は「どんなに書いてもあの世へは持っていけない」と嘆き号泣します。
「ひとりにしないでくれ」と老作家は病のことを赤子に告げますが、赤子は去り、老作家は残されました。
…金魚売りの男が、老作家のところへ金魚の死体を持ってきます。
「ガキがね、目の前で石っころみたいに蹴飛ばしてた」と言う金魚売りは、赤子の死体を海に出る4丁目の橋のところで拾ったと言いました。金魚売りの男が見つけた時にはまだ息があったのですが、死んでしまったそうです。
その時、不思議なものを見たと金魚売りの男が言いました。金魚の死体を回収した帰り道、空に赤い光が燃えながら飛んでいく様子を見た金魚売りは、それが「3歳っこの魂なんじゃないかと思った」と告げます。
金魚の死体に手を合わせた老作家は「ねんごろに弔います」と言うと、両てのひらの上に乗せて奥の部屋に行きます。和室にある水だけの空っぽの金魚鉢を見た老作家は、声をあげて泣きました。
金魚売りは、金魚売りの声をつぶやきながら去ります。
…お手伝いさんに声をかけられた老作家は、身支度をして立とうとして、仰向けに倒れます。赤い光に、輝く光に目を開いた老作家は「おじさま、いつまでさぼってらっしゃるの?」という赤子の声を聞きました。
両手で老作家の頬を包んだ赤子は「ひとを好きになるということは、楽しいものでございます」と言うと笑い、踊ります。
老作家も踊りに加わり、赤子と老作家はいつまでも踊り続けました…(ラストは老作家も仰向けに倒れて死んだのではないかと思われる)。

みんなの感想

ライターの感想

文学的志向の濃い作品。しかも完成度が非常に高い。
これは二階堂ふみの魅力が最大限に生かされた作品だと思う。
微妙に会話がエロティック。昭和初期の会話体のままなので、序盤少し戸惑う人もいるかも。
映画開始10分くらい経過したところで金魚のダンスが始まるのだが、これがどう見ても「金魚のダンス」にしか見えない! アッパレ、脱帽!
この作品はどのキャスティングも成功している。
大杉蓮は当然のこと、真木ようこは「田村のおばさま」と呼ばれるにふさわしい落ち着きを放ち、シーンは少ないながらも高良健吾の芥川は、まんまだろ、と思った。
原作では会話だけで話が進むのだが、それを映像化したのが今作品。
原作のイメージを崩さず、新たなワールドを見せてくれた(ちなみに原作は、田村のおばさまと別れるシーンで終わる)。
映像美がとにかく完璧。ぜひ一度ご鑑賞あれ。

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