「共喰い」のネタバレあらすじと結末の感想

サスペンス映画

共喰いの紹介:2013年公開の日本映画。小説家・田中慎弥の短編小説であり、第146回芥川賞受賞作品『共喰い』を映画化したヒューマンドラマ。戦後のとある田舎町を舞台に、人間の性と暴力が静かに描かれている。

予告動画

共喰いの主な出演者

篠垣遠馬(菅田将暉)、会田千種(木下美咲)、篠垣円(光石研)、琴子(篠原友希子 )、篠垣仁子(田中裕子)、刑事(岸部一徳)、若い刑事(淵上泰史)、アパートの女(宍倉暁子)

共喰いのネタバレあらすじ

簡単なあらすじ

①性行為中に暴力を振るう父・円の元を去った遠馬の母・仁子は、近くで魚屋を営んでいる。仁子の左腕は空襲で失い、現在は義手。高校生の遠馬は、将来父のように暴力を振るうようになるのではと覚えて生きていた。 ②愛人の琴子が妊娠し円の元を去る。円は遠馬のガールフレンド・千種をレイプ、それを知った仁子は円を殺害。逮捕された仁子は、自分の人生を台無しにした昭和天皇の崩御が遅れ、恩赦を受けることを望んだ。千種は仁子の跡を継ぐ。

【起】- 共喰いのあらすじ1

(この作品は、全編を通して「現在の遠馬が昭和63年の自分をふりかえって語る」という形式を取っている。しかし「現在の遠馬」が顔を出すことはなく、声のみである)

「俺が17の時、父が死んだ。昭和63年だった」

昭和63年7月、山口県下関市。
篠垣遠馬は夏休み間近の今日、17歳の誕生日を迎える高校生男児です。
遠馬が住む地域は「川辺(かわべ)」と呼ばれました。文字通り、川のそばです。
川の上流は住宅地を貫く道の下になって見えず、川の下流もまた国道に蓋をされているので、川が表面に露出しているのは、その地域だけでした。
川はお世辞にも綺麗とはいえず、下水道の整備が完全ではなく、汚水が川に注ぎ込むようになっています。

遠馬は現在、父親の篠垣円(まどか)と、35歳の父の愛人女性・琴子と3人で暮らしていました。
実の母である篠垣仁子(じんこ)は、遠馬の家と学校への途中にあたる川の近くで、魚屋をしています。遠馬が見る仁子は、いつも魚をさばいていました。
その日も仁子は魚をさばいており、下校途中の遠馬を見ると「今、帰りね。誕生日やね。コーラ飲んでいくか」と言い、遠馬が断ると「ほんならまたおいで」と言います。

仁子の左腕は、義手でした。仁子は現在、60歳近くになっています。遠馬は遅くにできた子でした。
仁子の左腕の手首より先がないのは、戦争中に空襲に遭い、焼けて倒壊した家屋の下敷きになったからです。手首を失う代わりに、命を拾ったのでした。
終戦からしばらくして、仁子には結婚を考える相手ができました。
ところが相手のあいさつに行くと、相手の母親が「まさか手のない子が生まれてくるんやなかろうね」という言葉を吐いたために、素早く相手の母の口をこじ開け、左腕の先を咥えさせて「あんたのその舌、胃袋まで押し込んじゃろうか」と仁子は告げたそうです。
結婚話は仁子の意思で流れ、両親が戦争で亡くなっていたので、仁子は川辺の魚屋に住み込みで働き始めました。そのまま川辺に居着きます。
仁子はそのまま独身を貫くつもりでしたが、ある夏祭りで知り合った10歳も年下の男性・円と付き合うようになり、結婚しました。年のいった、手のない自分を嫁にしようとする男が現れると、仁子は思ってもみなかったそうです。

ところが結婚後、仁子は円について知ることになりました。
1つは円が女性関係にだらしないこと、そしてもう1つはセックスの最中に女性を殴ることです。
仁子が妊娠すると円は暴力の癖を引っ込めて、その分、他の女性を渡り歩きました。
円は「自分の子どもが欲しい」男で、「自分の快楽のためならば、女性が暴力を振るわれて不愉快な思いをしようがかまわない」身勝手な男でした。
仁子が遠馬を出産してしばらくすると、円はまた仁子に暴力を振るい始めたので、仁子は篠垣の家を出て、その頃になると前の店主から譲り受けた魚屋で、独り暮らしを始めることにしたそうです。
遠馬を連れて出なかった理由は至極簡単なもので、「遠馬はあの男のタネじゃけえね」というものでした。
家を出た頃、仁子は2人目を妊娠していましたが、中絶しました。「あの男の子どもはあんた一人で十分じゃけえ、病院で引っ掻きだしてもろうたんよ」と、仁子は言います。
仁子は円と正式に離婚しておらず、だから苗字は篠垣のままでした。

仁子の魚屋の裏手にはアパートがあり、その1階のベランダには、スリップ姿の女性が椅子に腰掛けていました。
女性がベランダにいない時には、円か別の男性がアパートに来ていることを意味します。女性は身体を売ることで、生計を立てていました。
遠馬は道を通る時、いつもスリップ姿の女性を確認します。

遠馬には恋人がいました。会田千種という女性です。
互いにとって初めてのセックスは、夏休み前の遠馬の誕生日まで取っておこうと約束していたのですが、遠馬は結局すぐ約束を破り、もう千種と関係を持っていました。

【承】- 共喰いのあらすじ2

誕生日である今日、遠馬は千種と神社の神輿を入れてある倉で、セックスをします。
遠馬はもう回数を数えていませんでしたが、千種は今日が13回目だと言いました。まだ痛いそうです。
遠馬は自分が円のように、いつか千種を殴ってしまうのではないかと恐れていました。千種は否定しますが、遠馬は円の血を引いているがゆえに、性行為の最中に暴力を振るいそうな恐怖に怯えています。

千種と会ってから帰宅すると、琴子がケーキを作って待っていました。
琴子は飲み屋街のホステスで、酒の弱い円が通い詰めて口説き、1年前から家で一緒に暮らし始めていました。
琴子も円に暴力を振るわれているらしく、時々目や頬の周りに痣ができます。その日も左目の下に、大きな青い痣がありました。
琴子が「デートやったん?」と聞いたので、遠馬にガールフレンドができているのを父の円が知ります。円はそれを知ると「わしも若いのともういっぺん…」と言って、どこかへ出かけていきました。他の女性のところかもしれません。
暴力を振るわれるのに、なぜ別れないのかと遠馬が質問したことがありました。
琴子の答えは「うちの身体、ええんやって。殴ったらもっとようなるんやって」というもので、それを聞いた遠馬は琴子のことを、ひどく頭の悪い女に思います。
そう思いつつ琴子を欲する自分のことを、遠馬はやはり円の血が流れていると感じて、恐れを抱きます。

円はよく分からない仕事をしていました。
遠馬が幼い頃から、家にはいろんな電話がかかってきました。外国語の言葉を話す人がかけてくることもあり、明らかに風体の悪い者も訪ねてきます。
家の中にも倉庫にもガラクタばかりなのですが、それが円の商売のようでした。
要は、まっとうではない仕事です。

夜、眠れずにいた遠馬は、物音を聞いて部屋をのぞき見しました。
蚊帳の中で、父の円と琴子がセックスをしていました。円は最中に、何度も琴子の頬を平手打ちしたり、首を絞めたりします。

明日から夏休みという日。
いつものように神社で千種とセックスした遠馬は、まだ千種が性行為をよいものと思えないことを知らされ、自分の技量不足なのかと落ち込みます。
千種は「経験と努力の問題」だと答えました。
神社の境内で遊ぶ小学低学年の子どもたちは、遠馬と千種が具体的に何をしているかは理解していなくても、2人が恋人同士だということは分かっています。ですからいつも神社へ行くと、子どもたちは2人を冷やかしました。冷やかしはするものの、子どもたちは遠馬と千種が好きで、あたたかい目で見守っています。

帰宅した遠馬は、父の円と鰻釣りをする約束をしたのに、円が留守だと知りました。
琴子が言うには、円は最近、琴子の周囲をかぎ回っているそうです。
琴子から「店に来る若い男の客との仲を、円が疑っている」と聞かされて、思わず「ほんとなん?」と聞き返しました。円が疑っていることなのか、琴子に誰か他の男がいることなのかと聞き返され、後者だと答えます。琴子は否定しました。
円がいないので、遠馬は独りで鰻釣りに出かけます。
母の仁子がいる川の側は、魚を捌いた後のものを捨てるからか、よく鰻が集まりました。
遠馬はそこで鰻釣りをするのが好きでした。父、母、自分の親子3人が集まれる、貴重な場所だったからです。
遠馬は父の円が釘を加工して作る「釘針」を使い、鰻を釣りました。鰻を待つ間、仁子が魚を捌く様子を見ます。
仁子は魚を捌く時用の義手を持っていました。ふつうの義手とは異なり、魚を固定するために細くて長い金属の骨が何本も筒状になったものです(茶筅に似ている)。
父の円が改良した義手で、壊れるたびに自転車屋や時計屋などに持ち込んで修理していましたが、今では直せる者がいません。

【転】- 共喰いのあらすじ3

その義手が使えなくなったら、人を雇うか店を誰かに譲るかと仁子は考えていました。息子の遠馬に「あんた、(魚屋を)せん?」と聞きます。
その日釣れた鰻を、遠馬は仁子に渡しました。仁子は捌いておくと言います。

琴子が遠馬に、妊娠したことを報告しました。生むつもりです。
それを聞いた遠馬は欲情し、電話で千種を神輿倉に呼びました。
無理にしようとしますが、千種が拒否するので、口でしてくれと頼みます。
もみ合いになった時、遠馬は千種の首を絞めてしまいました。
すぐに手を離したものの、セックスの時に暴力を振るう円の片鱗が自分にも現れたと感じて、遠馬は怖くなります。
千種と別れた後、仁子のところへ行った遠馬は、琴子の妊娠を母に報告しました。仁子は琴子もしばらくの間は、暴力を振るわれなくなるだろうと言います。
「あの男の血を引くのは、あんたひとりでええっちゃ」
仁子は捌いて白焼きにした鰻を鍋に入れ、遠馬に渡しました。

遠馬が鰻を持ち帰ると、父の円は喜びます。
下水の川で取れた鰻なので衛生上に問題があり、琴子も遠馬も箸をつけません。それを問題視しない円だけが、「生姜じょう油使うちょるそじゃけえ、におわんぞ」と言いながら、喜んで口に運びます。

遠馬は電話で何度も千種に会いたいと告げますが、千種は断りました。
前回、首を絞めたことを挙げられて「あんた、死んでくれん?」と言われます。
遠馬が千種と付き合っていることを知っている母の仁子も、心配しました。まさか暴力を振るったのではないかと言われ、遠馬は言葉に詰まります。
仁子は初めて暴力を振るわれた時、本気で円を殺そうかと思ったと言いました。自分が気持ちよくなりたいがために、セックスの時に暴力を振るう円。その目が恐ろしげなことや、遠馬も同じ目をしていることを、仁子は注意します。

琴子が遠馬に、家を出て行くことにしたと言いました。琴子が完全にいなくなるまで、円には内緒にしてくれと頼みます。
遠馬は琴子に謝りました。今までずっと自分は、暴力を振るう円と子を作る行為を行う仁子や琴子のことをばかにしていたけれども、本当にばかだったのは、円を止めない自分だったと告白します。父・円と同じくらいばかだと遠馬は言いました。
琴子は「自分と自分の親のことを、ばかって言うの、ようないよ」と答えます。
千種とセックスもできない遠馬は、それまでずっと風呂場で自慰をして精液を下水に流していました。
意識する琴子も出て行くと聞いた遠馬は、アパートのベランダで下着姿の女性のところへ行きます。

行為の後、遠馬が「代金は親父から貰うて」と告げると、女性は「安う言うちょってあげるけえね。お父さんほどめちゃくちゃやなかったけえ」と答えました。
千種が家に訪れて、仲直りすると言いますが、遠馬は暴力を振るわない自信がありません。
「あさって、社(やしろ)で待っとるけえ」と言われたものの、遠馬は行くか行かないか悩みます。
家に入ると、父の円が琴子の腹を、いとおしそうに撫でていました。仁子の言うとおり、妊娠中は琴子も暴力を振るわれずにいるようです。

翌日、琴子が遠馬にだけあいさつすると、家を出て行きました。
さらにその翌日。台風がやってきて、せっかくの祭りが中止になります。
円がアパートの女性から聞きつけて、「どんどんやったらええ。お前も、ばっしばっしやりながらじゃろうが」と、セックスの間の暴力について触れました。
かっとした遠馬はつい、琴子がいなくなったことを告げます。そうやって円を傷つけたつもりでしたが、円は「わしの子ども、持ち逃げしよった」と言うと、雨の中、家を飛び出ていきました。
自分が容易に逃げ出せない「川辺」から、琴子がたやすく抜け出したことが、遠馬はうらやましかったのです。

【結】- 共喰いのあらすじ4

子どもたちが遠馬のところへ来ると、騒ぎ出しました。
子どもたちが制止したのですが、遠馬を待つ千種を見つけた円が、無理矢理に社へ引きずり込んだそうです。
遠馬は、千種が祭りの日に社で待っていると言っていたことを思いだし、雨の中を走り出しました。
社へ行くと、千種は倒れていました。子どもたちが止めてくれようとしたのだけれど、倉の中に入れられて、鍵をかけられたそうです。
千種はレイプされていました。「神輿倉でしよったバチが当たったんかね」と言います。
遠馬は「俺が来とったらよかった」と言い、父・円を殺すと答えました。
「止めんけど、助けて。一人じゃ立てん」と言う千種を、遠馬は立ち上がらせます。

遠馬が円を殺すつもりでした。千種も止めないと言います。
ところが千種を預けに仁子のところへ行くと、事情を察した仁子が「あんたはここにおり。(千種を)守っちゃり」と言うと、包丁を持って出ていきました。
仁子は川べりへ円を追い詰め、義手で円を刺します。
(包丁を持って行ったのだが、使ったのは義手)
円は仁子の義手が腹に刺さったまま、川に落ちました。仁子はそのまま神社へ行き、灯籠に腰掛けて煙草を吸います。
覆面パトカーに乗った刑事2人が仁子のところへ来て、任意同行を求めました。仁子は抵抗することもなく、2人の刑事に連れられて警察へ行きます。
遠馬は、あるじのいなくなった母・仁子の魚屋のシャッターを開けると、お礼のかわりに掃除をしました。

仁子は円殺害容疑で逮捕されました。
遠馬が面会に行くと、仁子はすっきりした顔をしています。魚用の義手もなくなったし、もう魚を捌く必要もなくなったと言いました。
何か差し入れすると言う遠馬に断った仁子は、「あの人(昭和天皇)、血、吐いたらしいね」とぽつりと呟きます。新聞の一面に大きく載っていたと言いました。
仁子は、判決が出るまで生きていてほしいと言います。恩赦があるからです。
「あの人(昭和天皇)より先に、死なんぞと思うとった。あの人が始めた戦争で、手を失ったけえね」
…昭和天皇が始めた戦争で手を失った仁子は、その後の人生を狂わされてしまいました。適齢期に結婚する相手の親に、手がないことをばかにされ、結婚話は流れました。
10歳年下の円と結婚することになったのも、左手がないからです。
狂わされた人生の帳尻を、せめて「恩赦」という形で奪い返したい…そう仁子は思っているのです。

遠馬はその後、琴子の店を探しに行き、会いました。琴子は元気そうにしています。
琴子は遠馬を自分の部屋に案内すると、「したかったんじゃろ」と誘いました。
遠馬は尻込みしますが、琴子は妊娠しているから、避妊の必要もないと言います。
「弟か妹をつつくかと思うと」と遠馬が遠慮すると、琴子は「お父さんの子どもじゃないよ」と言いだしました。遠馬は驚きます。
(注:発言の真意は定かではないが、「円の子ではなく、私だけの子」と言いたいのではないか)
「お父さんみたいに殴らんといかんの。手加減してくれるなら、殴ってもいいよ」
そう言った琴子は「お腹の子どもが動いた」と言って笑いました。
(性行為に及んだかどうかは謎。しかし「腹の子が動いた」という言葉を聞いて遠馬はひるんでいたので、していない可能性があり)

遠馬が川辺に戻ると、千種が魚屋を開いて、魚を捌いていました。
仁子の跡を継いで、千種が魚屋をするようです。
その夜、身体を重ねた千種は、遠馬に「殺されるんと手、縛られるんと、どっちがええ? あんたの手はうちをかわいがるためにあるんやないの」と言うと、遠馬の手を頭の上で縛りました。そして千種が遠馬にまたがります。
痛くないのかと遠馬が聞くと、「もう痛くない」と千種は答えました。

…年明け。
昭和64年1月7日、午前6時33分。昭和天皇が亡くなります。
満潮に近い時間でした。

〝in memory of my mother〟の文字。

みんなの感想

ライターの感想

見終わった瞬間「うまい」と思わずうなってしまった。
原作との違い、原作では「仁子の『右』手が義手」映画では左。
仁子の恩赦うんぬんの発言は、原作では一切なし。この、恩赦うんぬんが監督の付け加えたメッセージ。
最初に「あの人」と言われた時、「だれ?」と一瞬考えた。新聞の見出しと言われ、「あっ!」と気付いた時、粟肌が立った。
もちろん性行為の最中に暴力を振るうという、円の身勝手かつひとりよがりの行為の嫌悪描写などが悪目立ちするが、主題はここではない。
そして、仁子も「何が何でも生きたい」というわけではない。「シャバに出てやりなおしたい」というわけでもない。
戦争でなくした腕のために、仁子は結婚を台無しにされた。それを「恩赦」として受け取らなければ、割りに合わない、これは仁子の一種の「意地」だ。
それが判ると途端にこの作品の深みが理解できるし、仁子という女性の哀愁を帯びた生きざまが浮き彫りにされる。
昭和63年という設定をうまくいかした作品。

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